(cache)悪堕ちしたくてたまらないのに耐性MAXな件

しおりの位置情報を変更しました

エラーが発生しました

3/3

第三話　白雪王子

「一体どういう事だ！、何故洗脳が効いていない！？」

　私は再びあの研究室に運ばれて、また同じ椅子に拘束された。苛立っているのは、さっきの敵幹部。私こそ、どうして悪堕ちできなかったか理由を知りたいね。だって、あの流れは我ながら完璧だったと思うの。特に「私はそんな装置ごときで屈しない！　絶対に！」なんて文句無しの悪堕ちフラグでしょ？　やっぱり、現実の悪堕ちは即堕ち2コマみたいにうまくはいかないのかな。でも、ここで9年もの間抱いてきた夢を諦めるわけにはいかないのよ。私はめげずに次のフラグを立てる！

「正義の魔法少女が悪に堕ちるなんて、ありえない！」

　こうやって、フラグを立てつつ敵の目標を殺すことから悪堕ちさせることに誘導してやるんですよ。いつも引っかかるお兄ちゃんの得意技、使わせてもらったよ！

「その言葉、覚えておけ。」

　敵幹部はにたりと笑った。ふふっ、私の作戦は大成功のようですねぇ。思わず私までニヤつきそうになるのを我慢して、強気な表情を向ける。大切なのは、まさか自分が悪に堕ちるとは思ってもいない態度！　

　しばらく私が高まる興奮を抑えながら敵幹部を睨みつけていると、あいつは周りの部下に私の見張りを命じて研究室を出た。私を悪堕ちさせる道具を取りに行ったんだろうな。ああ、一体どんな悪堕ちが私を待ってるの！？

　私が定期的に拘束を解こうとするそぶりを見せながら敵幹部を待っていると、5分ぐらいで戻ってきた。でも、これは予想してなかった展開。敵幹部は、私と同い年ぐらいの男の子を連れてきた。すらりと背が高くて、ちょっぴり華奢だ。色素の薄い肌が、サラサラとした黒髪を引き立てる。きりっとした瑠璃色の目を見ていると、吸い込まれてしまいそうだ。もし同じクラスにいたら、白雪王子ってあだ名をつけるな。

「俺はミナト。悪堕ち専門の技術家だ。」

　白雪王子もといミナト君は、四肢の自由を奪われている私の前に立ってこちらを見下ろしている。拘束された女の子とイケメンという背徳的なシチュエーションに頰が熱くなる。それより彼、「悪堕ち」って用語を使ったね。ついに本職にも逆輸入されたか。

「どんな者でも、ミナト様の手にかかればあっという間に組織に忠誠を誓うようになってしまうのだ！　既にお前らよりひとつ前の代の魔法少女はミナト様によって全員我々ヴィランズの女怪人に改造されている。お前も女怪人にしてやろう、憎きスウィートピンクよ！　彼女らも、同じ元魔法少女の後輩ができたらさぞかし喜ぶだろう。」

　敵幹部は耳が痛くなるほどの大声で自慢げに言った。なにそれ、ミナト君ったら私の理想の王子様じゃん！　先代の魔法少女を一人残さず悪堕ちさせたエリートだなんて今すぐ結婚、いや奴隷契約してもらいたい！　そんで毎日いろんな方法で悪堕ちさせてもらうんだ。「ご主人様、今日はどんな悪堕ちを体験させていただけますか……？」ってね。でも、ご主人様になってもらうにはちょっと美形すぎるのがなあ。こういうのは、気持ち悪い男に催眠術や特殊なデバイスで屈服させられちゃうのがいいんだよ。でも、イケメンに支配されるのも女性向け小説みたいでいいかもしれない……。

「というわけで、今からお前を怪人にする。痛くはないから、安心してほしい。」

　ミナト君は真顔でさらっと言った。やった、第二希望の肉体改造だ！　しかも彼は実績のあるプロの悪堕ち技師。これは確実に悪堕ちできるでしょう。可愛い後輩系女怪人になるので、待っててくださいね、先輩！

<< 前へ目次

感想を書く場合はログインしてください。

お薦めレビューを書く場合はログインしてください。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。

この小説をブックマークしている人はこんな小説も読んでいます！

設定