肋間神経痛は、何らかの理由によって肋間神経が圧迫・刺激されることで胸や背中に鋭い痛みが生じる状態を指します。肋間神経痛を引き起こす原因にはさまざまなものがありますが、なかには原因が特定できないものもあります。今回は、肋間神経痛の原因、症状、治療などについて解説します。
肋間神経痛とは、肋間神経が圧迫・刺激されることによって背中から胸にかけて痛みが生じる状態を指します。
体を動かすなどしたときに、突然、強い痛みが生じる点が特徴です。
肋間神経痛は、あばら骨の間を通る肋間神経が圧迫・刺激されて起こるとされています。
肋間神経が圧迫・刺激される原因として、体のゆがみや事故、椎間板ヘルニアなどが考えられています。そのほか、骨粗しょう症が原因となったり、帯状疱疹の治療後に現れたり、ストレスも関係しているといわれています。しかし、原因を特定できないことも多いとされています。特に高齢者における肋間神経痛は、悪性疾患(がんなど)が関与している可能性も考慮する必要があります。
ストレスが原因と考えられる場合、ストレス要因を取り除くなどの適切な対処を行えば、肋間神経痛は2週間~1か月程度で症状が治まるといわれています。ただし、ストレスが原因の肋間神経痛に限らず、神経痛は慢性化しやすい傾向があります。
肋間神経痛になりやすい人には、いくつかの特徴があります。
一つ目は、中年期以降の女性です。女性は、特に閉経後、骨密度を維持する働きのある「エストロゲン」というホルモンの分泌が少なくなるため、骨粗しょう症になりやすくなります。先述したとおり、骨粗しょう症は肋間神経痛の原因のひとつとされているため、結果的に肋間神経痛を引き起こす可能性があります。
二つ目は、免疫力が低下している人です。免疫力が低下することで、帯状疱疹のウィルスに感染するリスクが高まります。帯状疱疹でできる水ぶくれが肋間神経を傷つけることで、肋間神経痛になりやすくなります。帯状疱疹ウイルスによって肋間神経が傷つけられることで、肋間神経痛を引き起こします(帯状疱疹後神経痛)。
三つ目は、ストレスや疲れをためやすい人です。先述のとおり、ストレスが肋間神経の痛みに対する感受性を高め、肋間神経痛を引き起こすことがあります。
肋間神経痛が疑われたら、整形外科や麻酔科(ペインクリニック)へ相談しましょう。そのほか、内科や神経内科で相談することも可能です。
肋間神経痛では、解熱鎮痛薬、非ステロイド抗炎症薬、抗けいれん薬などを用いて痛みを和らげる治療を行います。
そのほか、痛みの生じる末梢神経に麻酔を注射して痛みを抑える神経ブロックや、鍼灸療法などが行われることもあります。
ほかに、無理な姿勢をせず痛みが和らぐよう、しっかりと休養をとることも大切です。
肋間神経痛の治療に漢方が使われることがあります。「当帰湯(トウキトウ)」「疎経活血湯(ソケイカッケツトウ)」「痛散湯(ツウサントウ)」などの漢方薬が用いられます。
漢方による治療は、症状に直接アプローチするというより、人間が本来持っている治癒力を引き出すことに重きを置いているのが特徴です。作用は緩やかで、必ずしもすぐに効果が現れるとはいえませんが、全身のバランスを重視し、少しずつ状態を改善に導くことが期待できます。
なお、漢方による治療は、西洋医学的治療と組み合わせて行われることもあります。漢方による治療を希望する際には、医師に相談してみてください。