一面97自治体が独自通知 子宮頸がんワクチン接種
国が積極的な接種呼び掛けを中止している子宮頸(けい)がんワクチンについて、多くの自治体が対象者に対する個別の案内を控える中、全国で少なくとも九十七の自治体が独自に通知をしていることが分かった。厚生労働省が三十日、公表した。本紙の調べでは中部九県(愛知、岐阜、三重、長野、福井、滋賀、静岡、石川、富山)でも二十一自治体が通知を実施。「将来の不利益にならないよう、ワクチンの存在を知らせる必要がある」などとして、情報提供に踏み切る動きが広がる現状が浮き彫りになった。 厚労省によると、国内では年間一万人が子宮頸がんに罹患(りかん)し、亡くなる人は約二千七百人。原因となるウイルスの感染を防ぐワクチンは二〇一三年四月、法律に基づいて自治体が実施する定期接種となった。 しかし、接種後に体調不良を訴える報告が相次いだことから、国は同年六月、ワクチンを公費負担による定期接種としたまま、接種を促す「積極的勧奨」を差し控えるよう自治体に通知。積極的勧奨の中止以降、約70%あった接種率は1%未満に落ち込んでいる。 厚労省は三十日、ワクチンの安全性などを検討する専門部会で、同省の調査に「個別に通知をしている」と答えた自治体数を報告。昨年秋、厚労省のリーフレットの配布状況をはじめ、情報提供の実態を全自治体にアンケートした。個別に通知している自治体名については公表していない。 本紙の調べでは、中部九県で通知をしているのは愛知が最多の六自治体。長野は四つ、富山と静岡はそれぞれ三つ、三重は二つ、岐阜と福井、石川はそれぞれ一つの自治体が「郵送などで通知をしている」と回答した。滋賀はゼロだった。 専門部会では、国による別の調査の結果も公表。接種の対象となる十二~十六歳の女性の約39%が「子宮頸がんワクチンの意義・効果を知らない、聞いたこともない」と答えていた。感染症の専門家ら委員からは「全ての自治体で個別に通知すべきだ」「情報提供は予防接種行政の最も重要なことだ」といった意見が出た。 子宮頸がんワクチンを巡っては、世界保健機関(WHO)が安全性と有効性を認める一方、健康被害を訴えて国などに損害賠償を求める裁判の原告は百三十人を超え、各地で審理が続いている。 (森若奈) <子宮頸がんワクチン> 性交渉によって感染、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)を防ぐワクチン。70カ国以上で定期接種の対象になっており、日本では小学6年~高校1年相当の女子が計3回の接種を受けられる。厚労省はリーフレットで、接種によって10万人当たり595~859人の罹患を回避できるとする推計を紹介。一方、2017年8月末までに報告された副反応の疑いは10万人当たり92・1人、うち52・5人が重篤と判断されたとしている。 今、あなたにオススメ Recommended by PR情報
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