親離れ
なんとなく、そわそわとした雰囲気の中、午後は過ぎていった。
ウォルターは少し早めに診療所を閉めると、家族三人を居間に集めた。
話題はもちろん従者の件だ。
「アベル。今日は俺の父親や出生について話そうと思う……」
ウォルターというのは陽性の男であって、暗い顔なんかしない。
いわば自分とは真逆の男だとアベルは思う。
そのウォルターが珍しくも憂いのある顔をしていた。
「実はな、俺の父親はバース・ハイワンド伯爵だ。つまりアベルの祖父さんってことになる。まぁ……認知なんかされないから間違っても親類とは思わないことだな」
あまりにもあっさりとした告白。
アベルは開いた口が塞がらない。
伯爵って雇い主じゃなかったのかよ……。
「なんだって伯爵が俺の父親になったかと言うとだな……俺の母親は伯爵家で馬小屋の掃除婦をしていた。出生身分は農家で、六女だか七女だ。食い扶持が無くて出稼ぎに行って、伯爵家で端女をやることになったわけさ。それでな、伯爵は狩りをしたあと、やたら女を抱きたくなる性分だったらしい。
そんな時に、たまたま身分は低くとも若くて肌の綺麗な女が馬小屋にいたのさ。で、若気の至りってやつだ。
それでお袋を孕ませた。そういう場合、心ある貴族なら適当な住処と仕事を与えて、女を囲う。なに、珍しい話しじゃない……。ところが、ハイワンド伯爵はそれをしなかった。
当時、伯爵はすでに結婚していて子供がいた。浮気は褒められたものではない。しかも、相手は馬小屋の掃除婦だ。いくらなんでも身分が低すぎだった……ということらしい。
もっともそいつは父親の……貴族の言い分だ。反吐が出る腐った態度だ」
ウォルターは出生の秘密を話しているうちに本当に腹が立ってきたらしい。
ぶるぶると震えながら拳を握りしめていた。
「伯爵はお袋の妊娠の申し出を無視した。しかし、確かに腹は出てくる。目障りにもなる。高貴な生まれの妻にこの話しがバレでもしたらカッコがつかない。
というわけで、伯爵はお袋に金を食らわせて永遠に別れることにした。
銀貨を数百枚ほど与えたらしい。
その辺、詳しいことはお袋も教えてくれなかった。
とにかくお袋は、貰った金を元手に小さい店を始めた。俺はその店で育った。父親は居なかったが、別に不幸じゃないさ。けっこう楽しかった。
あれは九歳のときだ。俺は魔力があったから、初級魔法はいつしか自得していたのだが、治癒魔法の才能にも目覚めた。
そこでお袋は伯爵に下手くそな字で手紙を書いた。自分でだ。なにしろ内容が内容だ。代筆は頼めない」
ウォルターは珍しく葡萄酒をあおった。
普段のウォルターは、ほとんど酒を飲まない。
ひどく酔っ払っていたら急患に対応できないというのがその理由らしい。
「伯爵はすぐに俺の元に使者を送った。顔が似ている、という報告を受けて、俺と会うことにした。伯爵は、俺に利用価値を見出した。
アベル。これは大事なことだから良く聞いてくれ。
治癒魔術第五階梯に自己生命抽出という技がある。これは、治癒魔術師の間では禁呪とされている。なぜなら、血縁者に対してだけ、極めて高い治癒効果が望める代わりに、使った本人の命を削る魔術だからだ。
一回目は、体が怠くなる程度だ。
しかし、二回目は若者でも老人になってしまう……」
アベルは何となく予想がついてくる。
「貴族ってのは残酷なやつらだ。口では皇帝のため国のためとか抜かしながら、つまりは自分の利益が全てなやつらだ。
民のことなんか家畜と思っていやがる。
俺は伯爵や継嗣が戦争や陰謀で重傷を負ったときの、捨て駒として見出されたわけだ……。自己生命抽出の使い手として。
伯爵と始めて会ったときには、それに気づかなかったけれどな」
ウォルターの顔に、憎悪の影が宿っていた。
アベルの核にいる男は、ウォルターに酷い親近感を得ていた。
-ウォルターも俺と同じなのか?
親が憎くて憎くてたまらない、そういう人間なのか?
「父上……。父上は父親が憎いですか」
「まあな。今は大したことがないけれど、かつてはぶん殴りたいと思ったな」
「……殴った拍子に殺してしまったとしたら、後悔しますか」
「うっ。きつい質問だな。そうだな、殺意まであったとは思いたくない。たぶん後悔するだろう」
アベルは頷く。その程度の憎しみなのだと。
本当に憎くて憎くて仕方ないなら、殺した後も別に後悔はしない。
むしろ、すっとしたものだ。
一つの正解だと心に落ち着くものだ。
「ああ、話しがそれたな。それで俺は伯爵家遠縁の者という触れ込みで、ハイワンド騎士団に従者として入隊した。騎士団では必死に働いたから、まあまあ評価されたけれど、伯爵の長男や一族からはだいぶ虐められたもんだよ。身分の低すぎる妾腹の子だってな。
でも、そんなことは関係ねぇ。俺は俺だ。働くのは楽しかったし、実力も磨くことができた。仲間だって出来る。いつしか騎士団にすっかり馴染んだ。
ところがだ。その内、その馬鹿長男のやつ、俺が伯爵の隠し子だって酔ったついでに口にした。次の日には城の大勢が俺を奇異な目で見ていたものさ。せっかく居心地が良くなってきたところで妙な雰囲気になっちまって……」
ウォルターが、また酒を口にする。
いよいよ顔が赤くなってきた。
「俺が十四歳の時だ。王道国との戦争は激しくなる一方で、とうとうハイワンド騎士団は中央平原に出陣となった。
俺は長男の直接配下になった。戦争は嫌なものさ。恨みもない奴と殺し合いをしなくちゃならねぇんだから……。
俺は戦闘で初めて人殺しをして、自分の人生を考えたよ。人を治療していれば喜ばれたってのに、わざわざ殺し合いをしなくてもいい気がした」
ウォルターを気遣ってアイラが水の入った木杯を渡した。
ウォルターが一気飲みした。
「それで……あの思い出したくもない忌々しい日がやってきた。戦争の最中、馬鹿長男がヘマをした。功を焦って敵の罠にかかり、重傷を負った。伯爵はそのとき不在だった。馬鹿長男は俺に自己生命抽出を使えと命令してきた。
傷はそれなりに大きかったが、死ぬほどの傷じゃない。普通の治療で十分だった。
だが、やつは魔法に拘った。俺は断った。そうしたら、裏切者と呼ばれた。そのために飼われている犬の癖に、主人に逆らうのかとまで言ったものだ。あいつは俺を憎んでいたね。だから、俺は伯爵家を去ることにした。つまり、そのまま置手紙で騎士団を辞める申し出をして、出奔したわけだ」
「父上。でも、今また伯爵の配下ですよね?」
「まあ、順を追って説明する。俺は騎士団を辞めて……というか逃げて、取りあえず冒険者になった。
戦争で身代金を得ていたから金もそこそこあった。何とでもなると思っていたのさ。それから最初に行ったのは亜人界だ。
別に狼人や亜人ってやつらは見境なしに襲ってくる連中じゃなかった。中には良いやつもいたぜ……。俺は適当に仲間を変えながら、あちこち楽しい放浪の旅をしていた。
第五階梯治癒魔法の使い手だったら、まぁ、まずどこでも引く手あまたなわけだ。俺は非道なことは嫌いだから、気の良い奴らを見つけ出して、その一員になっていた。
で、そんなある日。アララト山脈で狩りや薬売りや道案内で生活していたアイラと出会った。アイラが俺たちの仲間になって、共に旅をするようになって……まぁなんだ。そのうち、くっ付いた」
ウォルターとアイラの馴れ初めを、アベルは興味深く聞いた。
一緒に冒険なんかしていればメンバーとは、うんと仲が良くなるか、メチャクチャ嫌いになるか……両極端になりそうな気がした。
「それで、アイラが妊娠して、冒険者を続けるかどうか決めなければならなかった。また、定住するにしても皇帝国か王道国か、どちらにするかも選ばなくてはならない。亜人界は紛争も多くて、どうも住み心地はよくない。
俺は一時とはいえ王道国と戦った身だ。やはりそちらに行くのは気が引けた。
で、皇帝国に戻ることにしたわけなのだが、一応のことハイワンド伯爵に詫びを入れておくことにした。こっそり舞い戻っているところを見つけられると、逃亡兵として罪に問われる可能性があった。それで詫び状を書いて送った。
返事の手紙の返事はこんな内容だった……。
目付け役から、長男との仲違いの経緯は聞いている。長男にも落ち度はあるから、退団については不問とする。ただし、改めて配下になり治療魔術師として領内の安定に力を尽くせ、という内容だった。
まぁ伯爵にしてみりゃ、精一杯の譲歩かつ取引だろう」
アベルは一番重要なことを聞く。
「僕を呼ぶのは自己生命抽出が目当てですか?」
「そこだな。俺は違うと思っている。というのも、無理やりかけさせようとしても、俺みたいに断って逃げ出す奴もいると学習しているはずだ。
第二に手紙には、いずれ騎士に取り立てると書いてある。これは結構本気でそう思っているはずだ。皇帝国の法律では治癒魔法の医院を開くには貴族でなくてはならない。つまり俺の跡継ぎは最下級の騎士身分とはいえ貴族の必要がある。アベルが騎士にならないと、領内の安定に貢献している治療院が一つ消えることになる」
「………」
アベルはどうすればいいか、考える。アイラの意見も聞きたくなった。
「母上はどう思われますか」
「アベルが向いてないなら勧めない。でも、才能があるよ。だから、行ってほしい。たとえ騎士様にならなくても経験になる。テナナは良いところだけれど、人間は外に出で鍛えられるってものさ。それにウォルターみたいになってほしいって、お母さん思うな。もちろん、アベルが嫌なら行かなくてもいいわよ。
貴族になるだけが人の夢じゃないしね」
「僕、途中で嫌になったら辞めてもいいですか?」
ウォルターは穏やかな笑顔で頷いた。
~~~~~~~~~~~~~~~
-その日の夜。俺はなかなか寝付けなかった。
いろいろ考える。
家族のこと、人生のこと。
思考は纏まらず、粘っこい不安感が込み上げる。
寝床に入って、だいぶしてからやっと浅い眠りが訪れた。
久しぶりに嫌な夢を見た。
浪人時代、バイトをしながら予備校に通っていた。ある日、親父が家に金を入れろと言ってきた。酒代が足りなくなったのだろう。だが、俺だってギリギリの生活だった。学費、雑費、食費……。貯金もしておかないと合格したあとが大変だ。おれは余裕がないことを説明したが、親父は毒づいて説教を始めた。
東大にも行けないような馬鹿を家に居させてやっているのに協力拒否をするとはどういうつもりだとか……。それから棒で、ぶんなぐられた。
止めてくれと頼んでも、いつも無駄だ。
気の済むまで背中や太腿を殴った後、また説教……。
なんでお前は頭が悪いんだ。
なんで成績が悪いんだ。
どうしてレベルの低い高校にしか合格できなかった。
喘息で体も弱い。
お前はこのまま底辺のゴミクズ人生が確定だ……。
一言一言が俺の心を抉った。俺は何も言い返せなかった。
子供のころからずっとこれをやられてきた。
勉強ができなくても、手に職をつけて真面目に働く。それで良いじゃないかと、言ってやりたかった。
だが、言えなかった。
どうせそんなことを言ったって無駄なのだから。
おれは予備校の月謝代を差し出した……。
親父は母親に酒を買いに行かせた。
俺は自分の部屋で泣いた。
誰も俺の涙を知らない。
誰も俺の苦しみと痛みを理解しない。
誰も俺を助けない………。
俺は、一人だった。
~~~~~~~~~~~~~~~
アベルは目を覚ました。嫌な汗を掻いていた。
心臓が跳ねるように鼓動していた。
まだ、夜明け前だ。
目を閉じだが、眠れそうもなかった。
最悪の気分だった。
グズグズしていたくなかった。
アベルは起きると、だるい体を動かす。
軽く運動をして、床に結跏趺坐した。
腹にある魔力の渦を意識して、回転させるようなイメージを持った。
最近、これをやっていると胸や掌にも魔力のツボのようなものを感じる。
そこも意識して高めていく。
しばらくこれをやると、体に魔力が充溢した。
アベルは木刀を持って家から出た。
黎明の空が美しい。
ひたすら素振りをした。
魔力を体に漲らせていると、不可能なことなどないような錯覚を覚える。
だが、現実には、できないことばかりだ。
たとえば空を飛べないかと思いつき、大空を飛ぶイメージを持つ訓練をしたことがある。しかし、体は宙に浮かなかった。
体どころか小石一つと浮かばない。
しかし、ウォルターに習った気象魔術第四階梯の「極暴風」を理解したのちは、激しい風の力で大木を圧し折ったこともある。
自分自身を吹き飛ばせば、一応、空を飛んだことになる。
もっとも、着地の問題があるから怖くて試していない。
魔術や魔力というのは、まだ全く理解しえない。
アベルが分からないことといえば、詠唱である。詠唱は現象の仕組みを暗喩として言い表しているみたいだ。しかし、無詠唱という方法がある。アベルも無詠唱で発動できる魔法を身につけている。たとえば治癒魔法全般だ。
細胞やDNAを意識して、治癒魔法を行使するとき、アベルは詠唱無しで済む。
たぶん、遺伝子というものが生物の根本だと強く意識できることと関係している。
そこまでは分かる。
ということは言葉や意志が魔力という粒子を、望む形に作用させているのだろうか?
不思議だ。
この世界には興味が尽きない。
アベルが思い切り魔力を込めた斬撃を木の杭にくらわせると、木の杭は木端微塵に砕けた。
食事の支度ができたらしく、アイラの呼ぶ声がした。
食卓には温かな料理が並んでいる。
大麦の粥に塩漬け豚の薄焼き。野菜のバター炒め。どれも美味かった。
アベルの成長のためか量も多い。
アベルの核にいる男は前世の食事を思い出す。
母親はいつのころからか料理というものをしなくなった。
子供の頃は賞味期限の切れた弁当とか袋ラーメンばかり食べていた。
ある時……小学生の時だ。
テレビで見た料理を食べてみたくて、作って欲しいと頼んだことがある。
「また今度」
という返事だった。
いつかな? 明日かな? と思った。
三日たっても一週間過ぎても作ってくれなかった。
いくら頼んでも無駄だった。
だから二度と頼むのをやめた。
アイラの料理は本当に美味かった。
猟師の家に生まれたから、肉のさばき方から知っている。
香辛料はハーブ類と唐辛子だけなのに、前世のどの料理より上等だと思った。
「アベル。昨日の話し、受けるってことでいいか」
食事が終わったらウォルターが改めて確認してきた。
決断だから一晩、間を置いてくれたのだろう。
アベルは思う。
いつまでもウォルターとアイラを頼れない。
一人でも生きていけるように実力をつけないとならない。
いつまでも家にいてはいけない。
出ていける時が来た今が、出ていく時だ。
「はい。従者になってみます。貴族になりたいわけじゃないけれど」
「よしっ。じゃあ準備をしないとな」
二人は自室から何かを持ってきた。
「アベルに贈り物がある。まずは俺から」
ウォルターが持ってきたのは短剣だった。
精巧な彫り物が施された鞘から刃を抜く。両刃作りで細身、指の先から手首ぐらいまでの刃長が現れた。
刃に青みがかった不思議な金属光沢がある。
「これは魔力付加のある短剣だ。いまから千年ぐらい前の、有名な魔道具製作者の名が入っている。剣銘は、心臓縛り。かすり傷でも負わせれば、三呼吸程度の時間、相手の心臓の鼓動を強制的に止める」
「死にはしない?」
「死にかけの老人や心臓に病があるような人でなければ、死にはしない。だが、心臓が止まると、体は上手く動かない。心臓がある生物なら、魔獣にも効果があった。だけれど一つ注意がある。連続して使っても効果がない。心臓縛りの効果があるのは最初の一撃だけだ」
「それでもすげえ。どうしたの、これ」
「冒険者時代、アイラと二人で遺物探索をやっていてな。古代遺跡の隠し部屋で見つけた。売ったら十年ぐらい楽に暮らせる金額になる。でも、売らないほうがいい」
「貴重なものなのに、くれるの?」
「ああ。やるよ。それとな、それは所持していることを知られるな。そういった攻撃系の魔道具は持っているだけで警戒されるし、盗もうとする奴もいる。俺も冒険者を辞めてから使っていない」
アイラはネックレスを持ってきた。
「私はこれね。その短剣と同じ部屋で見つけたの。双眼の首飾り。ここに二つの水晶が嵌っているでしょう。これは外れるの。で、こっちの小さい方をテーブルに置いて。こっちの大きい方はアベルが持って、家の外でこの玉に目を近づけて見てごらん」
アベルは言われたとおりにする。
すると、部屋の中が玉から見えた。
魚眼レンズみたいに歪んでいる。
音は聞こえなかった。
それでも中の様子は分かる。
「便利な道具です。ありふれたものなのですか?」
ウォルターが教えてくれる。
「まさか。それも千年前、大帝国の時代にわずかに創られた記録があるだけだ。製法は不明。二つの玉は、だいぶ離れても機能を保つが、魔法結界を隔てると姿は見えない。王族や貴族、高等魔術師などはこういう魔道具の存在を知っている。対策もしているはずだ。でも、アベルの役に立つだろう」
アベルは贈り物を受け取った。
アベルの核にいる男は震えていた。
涙が出てきた。
どうしてこいつらは、俺を愛してくれるのだろうか。
魔法が使えるから?
顔が可愛いから?
そうじゃなかったとしても、きっと同じことをした二人だろう。
いまだ人を信じ切れず、これほどの二人にも怯みや隔たりを持っているのに……。
本当のアベルはあの時の事故で死んじまっているんだよ。
代わりに俺という敗残者、持たざる者が中に入っているんだよ……!
ウォルターとアイラはアベルが泣いているのに気づいた。
「アベル。なによ、泣いているの?」
「母上……、いつも美味しい料理、ありがとう」
-おれの母親は絶対に作ってくれなかったのに。
あんたはおれに美味いものをいつも作ってくれた……。
アイラが笑った。
「母親が子の面倒を見るのなんてあたりまえよ。アベル、可愛いわね。でも、そろそろ親離れよね?」
「うん」
「よしっ。じゃあ、最後におっぱい吸わせてあげる」
アイラは、パッと上着をはだけると胸を出してきた。
アベルは涙で顔がグシュグシュだったけれど、意外な行動に慌てるしかない。
目の前にピンク色をした綺麗な乳首がある。
相手は母親だけれどアイラは二十代で、若々しく、乳房には張りが満ち満ちていた。アベルは何か興奮してしまった。
「ほらっ。これで泣くのやめなさい」
恐る恐るアベルは乳首を口に含んだ。
前世では彼女なんかいなかったから、初めての経験だった。
「あっ。こらっ。舐めるんじゃなくて吸うんだよっ!」
アイラが顔を赤くさせた。
隣のウォルターが物欲しそうに言った。
「あのー。アイラさん。片方が空いているようなので俺にも吸わせてもらっていいかな」
「あとでね」
さて、いよいよアベルが一人立ちです。
騎士団とは、どんなところなのか?!
次回の更新は2016 2/21ぐらいの予定です。