@chablis777
シャブリ

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(なつ)さあ 優 帰ろう。
えっ?(優)帰らない。
(茜)今日は 明子のお誕生日だからよ。
あっ そうか。 明ちゃん おめでとう。(明子)ありがとう。
優ちゃんも お誕生日する!あ…。
ママは帰っちゃうよ?いいよ。
茜さんと一緒にいる。茜さんと一緒がいい。
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
(戸が開く音)・(坂場)ただいま。
お帰り。
(坂場)どうした? 優は?
いない。えっ?
茜さんの家に泊まるって。どうして?
今日は 明ちゃんの誕生日なのよ。
それで 置いてきたのか?
優が そうしたいって どうしても…。
ごめん 何もしてなくて…今 ラーメンでも作るから。
心配なら 今からでも迎えに行けばいいじゃないか。
下山さんも 今日は早めに帰ったから誕生日のお祝いはもう終わってるはずだよ。
一緒に迎えに行こう。
それだけじゃないかもしれない。えっ?
優は 茜さんと離れたくないのよ。
どういうこと?
茜さんに預けられなくなるという話をしてたから 優の前で…。
4つになるまで 私といるよりずっと長く一緒にいたからね 茜さんと。
分かるのよ 私には。
子どもは一緒にいてくれる人が一番だから。
一番 好きなのよ。
ん。ううん。
ありがと。

はい もしもし。
ああ… すいません…。
すぐ迎えに行きます。 はい…。
♪~
優ちゃん ママ もう少しで来るからね。
(チャイム)(下山)はいは~い。
ああ。すいません。どうぞ どうぞ。
優…。
ごめんなさいねどうしても泣きやまなくて…。
こちらこそ ご迷惑をおかけしました。いや…。
朝まで待とうって言ったんだけどね。
茜さん ありがとうございます。本当 すいません。
優ちゃん ママに会えてよかったね。
じゃあ またね。
さあ 優 帰ろう。
すいません…。
♪~
その日の夜を その時の優のぬくもりをなつは 一生 忘れることはないでしょう。
えっ… また作画監督を?
(佐藤)そう。 ここは また君しかいない そう思ってね。
あの ちょっと待って下さい。次は 作画監督ではなくいち原画に戻りたいと思っているんで

すが…。
(山川)どうして?せっかく実績を上げたところなのに。
子どもが まだ保育園で6時以降は 人に預かってもらわなければ働けないんです。
それで できるなら 6時に子どもを迎えに行ける仕事にしたいと…。
(山川)今更 そんなこと言われても困るよ。
こっちは当てにしてるんだから 君の力を。必要としてるんですよ。
そう。 君のように原作のイメージを崩さずに原作以上に キャラクターをかっこよく描けるアニ

メーターそういないからね。
また 漫画原作なんですか?
そう。 これだ。
「魔界の番長」?
そう。 魔界からやって来た魔物に体を乗っ取られた番長の話だ。
番長…。この番長が 純情な男でね。いちずに片思いをしている女の子がいるんだがこの番

長に取りついた魔物がその女の子を好きになってしまうんだよ。
人間の敵なのに 人間を好きになるそれが また番長を苦しめる。
それで 魔界の魔王を裏切るわけだ。その度に 番長は魔人に変身して人間を守るために

戦うんだよ。
また裏切って戦うんですか?
(佐藤)そう。 君にぴったりだろ!いや…。
やってくれるよね?やってくれたら 昇給も約束しよう。
参ったな…。
(桃代)そりゃ あれだけ「キックジャガー」を成功させたんだから会社は もう一回やれって言

うでしょ。
いや それは うれしいんだけど…。作画監督は もうやりたくないの?
やりたくないわけじゃないけどなるべく 6時に保育園に迎えに行けるようにしたいから。
ああ…。
それにね こういう暴力的なものを描くのは もうやめたいんだけど。
会社の都合を聞いてたらやめられないわよ。
私の場合は その逆だけど。ん?
あっ そうだ 今日は モモッチから話があるって言ってたよね。 何?
うん… 実はさ 私 辞めるのよ。
えっ?東洋動画を辞める。
ええっ… どうして?
私は この何年か ずっとトレースの仕事をしてきたでしょ。
トレースの仕事にやっと自信がついてきたところなのにトレースの仕事自体が減っていくんだ

もん。
ああ…。機械が手早くやってくれちゃうからね。
仕上げの仕事には作画をセルに書き写すトレースとそのセル画に色を塗る彩色があります。
このころからトレースマシンという機械を使って作画の線を簡単にセルに写せるようになりま

した。
トレースの仕事を合理化するため東洋動画は いち早くそれを取り入れたのです。
要するに 私は もう用済みなのよ東洋動画にとって。
いや そんなことないでしょ。
まあ 私にとっても もう用済みなのかなこの会社は。
えっ? 辞めて どうするの?
うん… この間 それでマコさんに相談しに行ったのよ。
マコさんに?
(麻子)モモッチ 色に興味ある?色? 彩色のことですか?
色を塗ることじゃなくてこういう色を決めること。
私は 色指定の仕事も仕上げがやってもいいと思ってるの。
えっ? 色指定を?
東洋動画では 全部色は美術が決めてるでしょ。
まあ 背景は そうするしかないとしても動画の色は仕上げがやってもいいと思ってる。
モモッチなら そういうことに興味があると思って。
あります!
その言葉が決め手だった。
色指定がやりたかったの?
だって 今まで 色を塗りながらこのキャラクターの服の色は違う色の方がいいのにななんて

思ってたんだもん。
なるほどね… モモッチにはそういう才能があるかもしれない。
才能というより好きなことかもしれないって思ったの。
それで 行くことに決めた!
ふ~ん…。
はあ…モモッチまで マコさんの会社に行くのか。
何だか 取り残されていくみたいだな…。
(仲)なっちゃん。あっ 仲さん。
なっちゃん よかったね。えっ?
さっき 山川社長と佐藤製作部長から泣きつかれてね。
君に なんとか作画監督を引き受けてもらえるよう説得してほしいって言われたんだ。そのこ

とですか…。
昇給も約束されたそうじゃないか。
はい…。
子どもとの時間は欲しいか。
やっぱり無理かな…。
すいません。
それも ありますけど…実は 作品に乗れないんです。
なるほど… そうか。
そうだとしたら僕が君に言えることは 何もないな。
えっ…。
こっからは なっちゃんが自分で決めるしかない。
アニメーターとして どこを目指すかそれは もう誰も教えてはくれないだろう。
そうですね。
僕は… なっちゃんが決めたとおりでいい。
はい…。
うん。
我々は いちアニメーターとして奥原さんの意思を尊重したいと思います。
今までは当たり前だと思っていたことを会社から望まれなくなることが一番苦しいんです!
(拍手)
♪~
はい…。
ママ ありがとう。何が?
今日は 来てくれてありがとう。
♪~
優…今日は 公園で遊んでから帰ろうか!
うん!うん。 よし 行こう。
なつは 結局 作画監督の仕事をまた引き受けました。
なつよ とにかく前を向いて歩いていこう。


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