第125話 白銀の騎士と黄金の竜
具体的には、エルは死に際の一撃のサイズを1kmから100mに、魔神は『アブソリュート・ゼロ』を1kmから500m、-200℃から-100℃にする予定です。
理由は黄龍戦を書いている時、改めて読み返して攻撃が強力すぎじゃね?と思ったからです。もっと言うと、黄龍以上に凄そうに見えてしまったからです。
エルに関して言えば、最初の最終試練だからって派手な事をさせ過ぎました。
エル「10分の1は酷すぎるのじゃー!」
砂漠の真ん中と言っても、砂があるのは表面だけで、少し掘れば栄養満点の土が顔を出す。
この辺りは元々『精霊界』があった場所で、レインによる
いずれは緑あふれる土地となり、名実ともにブラウン・ウォール王国の中心都市になると予想される。土地の権利はアドバンス商会の物なので、とんでもない利益になることだろう。
現時点では、最も人里から離れた開けた空間なので、上空で
ついでに言うと、
「万が一の時はレイン、頼んでもいいか?」
コクコクと頷き力こぶを作るようなポーズをとる大精霊のレイン。
相変わらず表情と仕草だけで全てが伝わってくる。
レインにはいざという時に地上を守るように頼んである。全長1km、体重500トンの
精霊女王となり、精霊を統べる立場になったレインなら、本気で頑張ればその被害も押さえることが出来るようだ。
落下物を回収する
ここまでやれば、無用な被害は最小限に抑えられるだろう。
「そろそろ行って来るかな」
「仁君……気を付けて下さいね……」
《がんばれー!》
「地上は任せて欲しいですわ」
「じゃあ、後で呼んでねー」
さくら、ドーラ、セラ、ミオに見送られ、俺とマリアは
「ブルー、行けるか?」
「もちろんよ!いつでも行けるわ!」
「じゃあ、行くぞ!」
「うん!」
俺が声をかけると、ブルーは力強く翼を羽ばたかせ、そのまま蒼穹へと飛翔した。
ブルーは相当に張り切っているのか、凄まじい速度で急上昇していく。
ブルーの持つユニークスキルである<
普通に空を飛ぶ場合でも有効だが、その能力が最も活躍をするのはやはり上昇時だろう。
何故なら、通常の横方向の移動と変わらない労力で縦方向にも移動できるのだから。
10分もしない内にエリアを2つ超えてしまった。
もう少し分かり易く言うと、地表をエリア1とした場合に、上方向に2エリア分移動してエリア3に到達したと言うことだ。
A:
アルタからの報告が入った。
うん?巡回ルートに向かっているんだから、当然のことだろう?
A:いいえ。真っ直ぐにマスターの今いる地点、つまり
巡回ルートを外れても
一体、何が起きているんだろうな。
悩んで止まる訳にもいかないので、そのままブルーにはエリア4へと向かってもらうことにした。若干、速度は落としてもらっている。
しばらくすると
俺の格好が銀色ベースの騎士鎧姿なので、対比すると滅茶苦茶絵になるだろう。
タイトルは『白銀の騎士と黄金の竜』に決まりだ。
……惜しむらくは金色のドラゴンと言う時点で減点対象であることくらいか。
それはともかく、とにかくデカい。
1kmと言うと、新幹線を2本並べたよりも長いことになる。
そんな龍がその巨躯をくねらせながら進んでくる様子は圧巻の一言である。
……あ、お約束のように手に宝珠を持ってる。あれ、後で貰おう。
目視したことだし、そろそろステータスを再確認しておこうか。
名前:
LV1000
性別:なし
年齢:測定不能
種族:龍神
スキル:
身体系
<完全耐性LV->
その他
<
備考:天空を統べる神。人類に課せられた最終試練の1つ。
<
龍神に相応しいスキルを統べる統合スキル。
ああ、レベル、性別、年齢、備考は今更コメントしないよ。
例え原初の時代から生きていたとしても不思議ではない生物?だし……。
それにしても、やっぱり雑だなぁ……。
<完全耐性LV->以外に個別スキルを持たず、統合スキル1つで全てを終わらせるなんて、手抜きをするのもいい加減にしろと言いたい。
スキル名こそ偉そうだが、その実何も説明していないのである。
名前から効果が全く読めないスキルは手抜きである。
<
それに加え、<
ステータスも織原よりは圧倒的に弱いし、戦えば恐らく余裕をもって勝てる。
後は(会話が通じれば)話をして、良い奴なら帰宅、良くない奴なら討伐だな。
丁度こっちに向かってきているし。
ああ、そうだ。そろそろミオを呼ぶとしよう。
《ミオ、そろそろ『
《おっけー!<環境適応>もセット済みよー》
一旦、ブルーに静止してもらって、その隙にミオを『
「ご主人様、お待たせー。アレが
呼び出したミオが
ミオを呼んだので、今後の説明をすることにした。
「まずは俺が<
俺には空中を移動する手段が3つある。
1つ目は騎獣であるブルー。
2つ目は
3つ目は元
ブルーはマリアとミオを乗せるから除外。
『
消去法で俺の空中移動方法は<
2人を乗せたブルーに離れるように指示をして、俺は<
なお、
先程、
もし、止まる気配を見せずに突っ込んでくるのなら、こちらは剣を構えて受け止めよう。
上手く行けば、
A:食べられます。
ウナギ?
……いや、吸収するからね。食べる予定はないからね。
残念ながら、
正確に言うと、全く止まる気配がないから剣を構えたのだが、俺から1kmくらい離れた地点で急停止したのである。
慣性の法則など知った事かとばかりに、本当にその場で停止したのである。急ブレーキではなく、1時停止である。
《小さき者よ。何故神の領域たる空を犯した?》
<思念波>とは<
「人に何か尋ねるのなら、まずは名乗ったらどうなんだ?」
《これから死にゆく者に名乗る名などない。我が問いに答えれば、苦しまぬように一瞬で消滅させてやろう》
「……そんな風に言われて、素直に答える奴なんていないと思うぞ」
この時点で、『いい奴だから帰る』可能性はほぼ0%になりました。
ちなみに、耳がいいのか普通に喋っただけで、こちらの声が聞こえているようだ。
《それもよかろう。ならば苦しんで死ぬと良い》
そう言って、
たったそれだけの動作で、周囲には衝撃波が吹き荒れる。
これは<
<天威>は天候を操るという超強力なスキルだ。
元々巨大な
それを<天威>によって強化することで、衝撃波へと昇華させたのだ。
ちなみに、衝撃波は受けたけど特にダメージもありません。
きっと、鎧が良い仕事をしたのだろう。
A:無くてもダメージを受けていません。
知ってる。
《何?揺らぎもしないだと?》
流石の
「そんな挨拶代わりみたいな衝撃波で倒せると思ったのか。少々、舐めすぎじゃないか?」
《小さき者がよく言う。よかろう、挑発に乗ってやろう。我が
相手が俺と言うことに加え、空中で戦っているからイメージが付きにくいとは思うが、今の衝撃波が直撃したら、大抵の国の首都は壊滅的な打撃を受けるんだよ。
その証拠に、遠く離れているブルーが体勢を崩しかけていたからね。……しまった。飛行に特化したブルーだと、影響が少なくて
俺がそんな事を考えていると、
《『黒雲』、『
二言
そして、その中を何度も何度も雷が走り、その全てが俺に襲い掛かってくる。
これも<天威>の効果の1つ、
1kmも覆って単体攻撃もクソもないが、
その気になれば、もっと広範囲、それこそ1国の天候を操ることさえできるのだから。
しかし、先程の衝撃波への対応を見て、効果範囲の広い攻撃では俺へダメージを与えることは出来ないと判断したのだろう。
なので、効果範囲が狭いが威力の高い攻撃(<雷魔法LV10>相当)を選んだという訳だ。
まあ、この程度の攻撃ならば、避けるなり受け止めるなりどうとでもなる。
セラなら、コレも無効化できるんだけどな。一見自然現象だけど、魔法扱いっぽいし……。
大したことが無い攻撃でも、何度も続くと鬱陶しくなってくる。
俺は『聖剣・アルティメサイア』を振るい、周囲の雷雲を消し飛ばした。なお、聖剣の効果ではなく、単純な腕力によるものである。
《馬鹿な……》
「次はこちらから行かせてもらうぞ」
驚いている
そう言えば
最初の問答も深くは追及してこなかったし、基本的に人間の都合や事情、理屈なんてどうでもいいんだろうね。
《むう!》
「はあ!」
俺に接近されることに本能的な危機感を抱いた
あの宝珠、そんなことも出来るんだ。やっぱり欲しい。
しかし、あまりにも巨大なので逃げ切れる訳が無いのは当然である。
俺は
《何!?》
そのまま、足元に聖剣を突き刺す。
《ぐう!?》
そのまま、俺は
突き刺した聖剣は
余談だが、血しぶきは出なかった。普通の生物では無いようだ。
《ぎゃあああああああああああああ!!!》
絶叫を上げる
もちろん、俺を振り落とすことなどできない。
なお、万が一落ちても<
《おのれ!》
体表を攻撃されるのなら、体表に攻撃をし返すと言う作戦のようだ。基本的には正しい対処法と言えるだろう。
俺は雷が流れる一瞬だけ小ジャンプをして回避する。その一瞬は聖剣も引っこ抜く。
そして着地の勢いを利用してもう1度聖剣を突き刺す。そして走る。
《ぐぎゃあああああああああああああ!!!???》
激痛が身体を襲っているのは間違いないのだが、HP的にはそれほど減ってはいない。
人間で言うと、身体に針を何度も刺されているような状態である。まあ、いずれは失血死で死ぬだろう。
何度も体表に攻撃を仕掛けてくる
使ってくる技を見ればわかるのだが、基本的に
相手が大きかったり、数が多かったりすれば凄まじい威力を誇るだろう。
しかし、小回りは利かない。人間1人だけを相手にするような攻撃が全く存在しない。先程の『黒雲』、『
もちろん、そんな相手と相対する機会が無い存在であることは間違いがない。
使う機会のない技を持っている訳もない。
つまり、強大な力を持った人間1人と言うのは、
そして、そんな人間がここにいた。
《ぐううううううううう!!!》
今度は単純な速度で振り落とそうとしているのだろう。
そろそろ同じことを続けるのも飽きて……いや、流石にそこまでされた状態で身体の上を走るのは難しく、力及ばずに
《はあ、はあ……。矮小な人間風情が、よくも我が身に傷をつけてくれたな。その代償、その命で償ってもらうぞ》
息を切らしながら偉そうなことを言っても、全然威圧感がありませんね。
ちなみに
A:頭から数えて600m付近が腰にあたります。
あ、はい。
今、俺の知識の中に『
《所詮は人間、遠方からの攻撃は防ぐことしか出来まい。『
どうやら、
頭から600m付近が引けているな。
……早速使ってみたけど、思っていた以上に使い難い。
《『
マップで確認すると、それぞれが対応する属性の魔力を帯びていることが分かる。
ボスとの空中戦で、ボスの周囲に球体が浮遊し始めたら、次に何が起こるだろうか?
《行け、『五玉』》
当然、シューティングゲームのボス戦、俗にいう弾幕ゲーが始まるに決まっている。
-ドドドドドドドドドド-
それぞれの球体から、それぞれの属性を持った攻撃が絶え間なく放たれ始めた。
『
『
『
『
『
5つの宝玉からそれぞれ、1発でカスタール首都を壊滅させるクラスの攻撃が連射される。
何故、態々カスタールの首都を槍玉に挙げたのかは不明だ。
「『飛剣連斬』」
数10発もあればカスタール王国が地図から消滅するほどの過剰攻撃。この世界で相対した中で最も強大な攻撃に対して俺が取る戦術は迎撃である。
<飛剣術>による超高威力の飛ぶ斬撃を連射していく。
それらの斬撃は
意外と少ないんだよね。敵の弾幕に攻撃判定のあるシューティングゲーム。
普通に考えて、避けるよりも攻撃を当てて迎撃する方が楽なのに……。
お互いの遠距離攻撃がぶつかり合いせめぎ合うシーンは胸熱ですね。
特に、今の俺は騎士をロールしているので、格好良さと言うのは大事にしていきたいな。
《何故!?何故これすらも防げるのだ!? ……いや、いつまでも防げる訳が無い。このまま押し切ればよいだけだ》
一発も攻撃が届いていないことに驚愕しつつも、いずれは押し切れるだろうと攻撃を続けることを選択した。
これが、
《我が魔力・体力はまさしく無尽蔵。人間風情に押し負けることなどありはしない》
「それはどうかな」
《何?》
俺は、少しだけ『飛剣連斬』のペースを上げた。
《ぐっ!?ぐは!?》
途端に迎撃の均衡が崩れ、
少しずつ、本当に少しずつ『飛剣連斬』のペースを上げていく。
《ぐが!?ぐえ!?がふ!?ごば!?》
少しずつ、少しずつ
途中、
《や、止めろ……。ぐぶ!?もう、ぶび!?止めてくれ……。べぼ!?》
ついには全ての球体を失い、抵抗する術を失って『飛剣連斬』をその身に食らい続ける憐れな
剣を突き刺して走るより、『飛剣連斬』の方がダメージ効率がいいようだ。
<飛剣術>スキルレベルの分が攻撃力に加算されるからかな?突き刺して走るだけだと、<剣術>の補正すら受けられなさそうだし……。
HPが10%を切ったあたりで、聖剣の『威力制御』を使用してダメージを抑える。
そして、
「これで止めだ!」
俺は<
《や、やめ……》
恐怖を滲ませながら
「まあ、止めを刺すのは俺の仕事じゃないんだけどね」
《は?》
次の瞬間、
《けぷ?》
「ゴメンね?不意打みたいな真似をして」
変な<思念波>をまき散らして、
ミオに止めを刺させると言う約束だったからね。約束は守らないと。
空に留まる力を失い、
すかさず
ついでに、
アルタ、
A:了解いたしました。
どうして成層圏付近をうろついていたのか、その理由を知っておきたいからな。
今までの経験で考えると、大した情報は持っていないだろうけど……。ほら、
L:扱いが酷いのじゃ。
そう言えば、エルもついて来ていたんだっけ。ずっと黙っていたから忘れていたよ。
L:本当に扱いが酷いのじゃ。戦闘の邪魔にならんように黙っておったと言うのに……。
エルに話しかけられたくらいで不利になるような相手でもなかったけどな。
L:妾よりも格上の『最終試練』相手にその余裕……。ますたー、『竜の森』で戦った時、その気になれば妾の事を一瞬で殺すことも出来たじゃろ?
まあ……、出来たな。
時間に余裕がある時は、一瞬で殺すなんて勿体ないことをするつもりはないけどね。
L:はあ、本当にマスターは色々と規格外じゃな。さて、龍神がボロボロにされるところも見れたし、妾は先に戻るとするのじゃ。
そう言って、俺の中からエルの反応が消えた。
<
それが『任意の配下の近くで顕現する』と言う能力である。分かり易く言うと、俺の配下の間を自由に転移できるようになったと言うことだ。
地上にいる誰かの近くで顕現をしたのだろう。なお、着信拒否も出来る。
>拡大解釈がLV6になりました。
>新たな能力が解放されました。
<
効果対象が60に拡張されました。
>拡大解釈がLV7になりました。
>新たな能力が解放されました。
<
効果対象が70に拡張されました。
本当に<
<
と言うか、<
いつも通り効果対象数しか増えない<
今日の本命はミオの強化の方なのである。
「ご主人様、やったよー!」
ブルーに乗ったミオが叫びながら近づいてくる。
「武器も
彗星弓・コメット
分類:短弓
レア度:
備考:魔力を矢に変換、自動追尾、飛距離極大補正、不壊、所有者固定
コレ、純粋な昇格と言っていいのかな?
まあ、強くなったのは確実だし、細かい事を突っ込むのも野暮と言うものか。
それにしても、『自動追尾』が付いたのは面白いな。
ああ、剣と魔法のファンタジー世界でやることじゃないと突っ込みたくなる。
「この『自動追尾』、ご主人様のマップと組み合わせるとかなり凄そうね。マップで確認できる範囲なら、何処にでも自動追尾で狙い撃てるみたい……」
ミオも同じく『自動追尾』に注目していたようだ。
相変わらず、俺と着眼点が似ているミオである。
「まさしく、殺し屋的な意味でスナイパーだな」
「人聞きが悪すぎない?」
「屋敷に居ながら魔物が倒せるようになったな」
「横着しすぎじゃない?」
俺が『自動追尾』の有用な使い方を提案しているのに、ミオはお気に召さない様子。
「料理の片手間に魔物退治とか……」
「出来なくはないけど、余計な事をしている間に料理の味が落ちるかもしれないわよ?」
「料理中の狙撃は禁止する!」
「ご主人様、それ普通。普通の事だから」
くだらないやり取りを終え、俺も再びブルーに乗り直す。
「ブルー、地上に戻ってくれ」
「分かったわ」
上空ですることも無くなったので、ブルーに乗って地上へと帰還する。
『ポータル』は空中には設置できないので、直接降りて行くしかないのだ。
舞台が空中、相手が仁と言うことで、黄龍さんの強さが伝わったのかが心配です。
他の最終試練にも言えることですが、本来最終試練は1国を簡単に滅ぼせるような存在です。
黄龍は高度を下げて天候を変えれば、大陸規模で壊滅的な被害を与えることも出来ます。
1回、壊滅的な被害を出させてから倒す方が敵の脅威度は伝わるのですが、そこまでは仁が許容しない事が多いので中々に難しいです。