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異世界転移で女神様から祝福を! ~いえ、手持ちの異能があるので結構です~ 作者:コーダ

第8章 配下編

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第125話 白銀の騎士と黄金の竜

始祖神竜エルと魔神の攻撃に関して、効果の下方修正をします。

具体的には、エルは死に際の一撃のサイズを1kmから100mに、魔神は『アブソリュート・ゼロ』を1kmから500m、-200℃から-100℃にする予定です。

理由は黄龍戦を書いている時、改めて読み返して攻撃が強力すぎじゃね?と思ったからです。もっと言うと、黄龍以上に凄そうに見えてしまったからです。

エルに関して言えば、最初の最終試練だからって派手な事をさせ過ぎました。

エル「10分の1は酷すぎるのじゃー!」

 黄龍ファンロン戦の準備を終えた俺達はブラウン・ウォール王国の中心部、平たく言えば砂漠のど真ん中にやって来ていた。


 砂漠の真ん中と言っても、砂があるのは表面だけで、少し掘れば栄養満点の土が顔を出す。

 この辺りは元々『精霊界』があった場所で、レインによる地球化テラフォーミングの影響を1番強く受けているのである。

 いずれは緑あふれる土地となり、名実ともにブラウン・ウォール王国の中心都市になると予想される。土地の権利はアドバンス商会の物なので、とんでもない利益になることだろう。


 現時点では、最も人里から離れた開けた空間なので、上空で黄龍ファンロンと戦うのにこれ以上の立地はないだろう。上空なのに立地とはこれ如何に……。

 ついでに言うと、黄龍ファンロンが通過するのも丁度この真上である。


「万が一の時はレイン、頼んでもいいか?」


 コクコクと頷き力こぶを作るようなポーズをとる大精霊のレイン。

 相変わらず表情と仕草だけで全てが伝わってくる。


 レインにはいざという時に地上を守るように頼んである。全長1km、体重500トンの黄龍ファンロンが地上に激突したら大惨事になるからな。

 精霊女王となり、精霊を統べる立場になったレインなら、本気で頑張ればその被害も押さえることが出来るようだ。


 落下物を回収する竜人種ドラゴニュート部隊、魔法を消し去るセラ、黄龍ファンロンの落下を防ぐレイン。

 ここまでやれば、無用な被害は最小限に抑えられるだろう。


「そろそろ行って来るかな」

「仁君……気を付けて下さいね……」

《がんばれー!》

「地上は任せて欲しいですわ」

「じゃあ、後で呼んでねー」


 さくら、ドーラ、セラ、ミオに見送られ、俺とマリアは天空竜ブルーに跨る。


「ブルー、行けるか?」

「もちろんよ!いつでも行けるわ!」

「じゃあ、行くぞ!」

「うん!」


 俺が声をかけると、ブルーは力強く翼を羽ばたかせ、そのまま蒼穹へと飛翔した。

 ブルーは相当に張り切っているのか、凄まじい速度で急上昇していく。


 ブルーの持つユニークスキルである<天地無用ゼログラビティ>は、飛行時に重力の影響を無視できるようになるという特殊なスキルだ。

 普通に空を飛ぶ場合でも有効だが、その能力が最も活躍をするのはやはり上昇時だろう。

 何故なら、通常の横方向の移動と変わらない労力で縦方向にも移動できるのだから。


 10分もしない内にエリアを2つ超えてしまった。

 もう少し分かり易く言うと、地表をエリア1とした場合に、上方向に2エリア分移動してエリア3に到達したと言うことだ。

 黄龍ファンロンがいる成層圏付近、つまりエリア4にももうじき到着できるだろう。


A:黄龍ファンロンがマスターの方に接近しております。


 アルタからの報告が入った。

 うん?巡回ルートに向かっているんだから、当然のことだろう?


A:いいえ。真っ直ぐにマスターの今いる地点、つまり黄龍ファンロンの巡回ルートから外れた下のエリアへと向かっているのです。加えて、今までよりも明らかに移動速度が上がっています。


 巡回ルートを外れても俺達・・を目指して移動をしていると言うことか。

 一体、何が起きているんだろうな。


 悩んで止まる訳にもいかないので、そのままブルーにはエリア4へと向かってもらうことにした。若干、速度は落としてもらっている。

 しばらくすると黄龍ファンロンの姿が見え始めた。


 黄龍ファンロンは俺達がイメージする龍そのもので、全身が黄色……と言うよりは黄金色に眩く輝いていた。

 俺の格好が銀色ベースの騎士鎧姿なので、対比すると滅茶苦茶絵になるだろう。

 タイトルは『白銀の騎士と黄金の竜』に決まりだ。

 ……惜しむらくは金色のドラゴンと言う時点で減点対象であることくらいか。


 それはともかく、とにかくデカい。

 1kmと言うと、新幹線を2本並べたよりも長いことになる。

 そんな龍がその巨躯をくねらせながら進んでくる様子は圧巻の一言である。

 ……あ、お約束のように手に宝珠を持ってる。あれ、後で貰おう。


 目視したことだし、そろそろステータスを再確認しておこうか。


名前:黄龍ファンロン

LV1000

性別:なし

年齢:測定不能

種族:龍神

スキル:

身体系

<完全耐性LV->

その他

森羅万象オールインワンLV->

備考:天空を統べる神。人類に課せられた最終試練の1つ。


森羅万象オールインワン

龍神に相応しいスキルを統べる統合スキル。


 ああ、レベル、性別、年齢、備考は今更コメントしないよ。

 例え原初の時代から生きていたとしても不思議ではない生物?だし……。


 それにしても、やっぱり雑だなぁ……。


 <完全耐性LV->以外に個別スキルを持たず、統合スキル1つで全てを終わらせるなんて、手抜きをするのもいい加減にしろと言いたい。

 スキル名こそ偉そうだが、その実何も説明していないのである。

 名前から効果が全く読めないスキルは手抜きである。


 <森羅万象オールインワン>を調べれば、どの様なスキルが統合されているのか確認することが出来る。

 それに加え、<森羅万象オールインワン>独自のユニーク効果もあるようだ。中々に強力だが、残念ながら俺の脅威となる物はなさそうだ。


 ステータスも織原よりは圧倒的に弱いし、戦えば恐らく余裕をもって勝てる。

 後は(会話が通じれば)話をして、良い奴なら帰宅、良くない奴なら討伐だな。

 丁度こっちに向かってきているし。


 ああ、そうだ。そろそろミオを呼ぶとしよう。

 黄龍ファンロンとの戦いが始まってからでは遅いからな。


《ミオ、そろそろ『召喚サモン』をするぞ。準備はいいか?》

《おっけー!<環境適応>もセット済みよー》


 一旦、ブルーに静止してもらって、その隙にミオを『召喚サモン』した。


「ご主人様、お待たせー。アレが黄龍ファンロンかー。……凄い迫力とステータスね」


 呼び出したミオが黄龍ファンロンを見て驚く。

 ミオを呼んだので、今後の説明をすることにした。


「まずは俺が<天駆スカイハイ>を使って、黄龍ファンロンの相手をするから、マリアとミオはブルーに乗って離れていてくれ。相手の出方によって、戦うか帰るかを決める」


 俺には空中を移動する手段が3つある。


 1つ目は騎獣であるブルー。

 2つ目は魔法の道具マジックアイテムである『不死者の翼ノスフェラトゥ』。

 3つ目は元祝福ギフトのユニークスキル<天駆スカイハイ>である。


 ブルーはマリアとミオを乗せるから除外。

 『不死者の翼ノスフェラトゥ』は黒いマントで騎士鎧姿と会わないから除外。

 消去法で俺の空中移動方法は<天駆スカイハイ>一択となる。


 2人を乗せたブルーに離れるように指示をして、俺は<天駆スカイハイ>を使って空中に直立する。

 なお、黄龍ファンロンが巨大すぎるので、ブルーには数km程離れてもらった。


 黄龍ファンロンは俺に向かって真っ直ぐと飛んできている。

 先程、黄龍ファンロンのことを新幹線で例えたが、実際には新幹線よりもよほど速い。


 もし、止まる気配を見せずに突っ込んでくるのなら、こちらは剣を構えて受け止めよう。

 上手く行けば、黄龍ファンロンの開きが出来上がる。……黄龍ファンロン、食べられるのかな?


A:食べられます。


 ウナギ?

 ……いや、吸収するからね。食べる予定はないからね。



 残念ながら、黄龍ファンロンが俺に突っ込んでくることはなかった。


 正確に言うと、全く止まる気配がないから剣を構えたのだが、俺から1kmくらい離れた地点で急停止したのである。

 慣性の法則など知った事かとばかりに、本当にその場で停止したのである。急ブレーキではなく、1時停止である。


《小さき者よ。何故神の領域たる空を犯した?》


 黄龍ファンロンはその巨大な瞳を俺に向け、<思念波>によって語り掛けてきた。

 <思念波>とは<森羅万象オールインワン>に含まれるユニークスキルで、一方通行ながら<契約の絆エンゲージリンク>の念話と似たようなことが出来る。


「人に何か尋ねるのなら、まずは名乗ったらどうなんだ?」

《これから死にゆく者に名乗る名などない。我が問いに答えれば、苦しまぬように一瞬で消滅させてやろう》

「……そんな風に言われて、素直に答える奴なんていないと思うぞ」


 この時点で、『いい奴だから帰る』可能性はほぼ0%になりました。

 ちなみに、耳がいいのか普通に喋っただけで、こちらの声が聞こえているようだ。


《それもよかろう。ならば苦しんで死ぬと良い》


 そう言って、黄龍ファンロンは身体を捻った。

 たったそれだけの動作で、周囲には衝撃波が吹き荒れる。


 これは<森羅万象オールインワン>に含まれる<天威>というスキルの効果だ。

 <天威>は天候を操るという超強力なスキルだ。


 元々巨大な黄龍ファンロンが身体を捻れば、それだけで周囲には風が吹き荒れる。

 それを<天威>によって強化することで、衝撃波へと昇華させたのだ。


 ちなみに、衝撃波は受けたけど特にダメージもありません。

 きっと、鎧が良い仕事をしたのだろう。


A:無くてもダメージを受けていません。


 知ってる。


《何?揺らぎもしないだと?》


 流石の黄龍ファンロンも驚いたような声(<思念波>です)を上げる。


「そんな挨拶代わりみたいな衝撃波で倒せると思ったのか。少々、舐めすぎじゃないか?」

《小さき者がよく言う。よかろう、挑発に乗ってやろう。我が攻撃・・を受け、後悔するがいい》


 黄龍ファンロンにとって、今の衝撃波は攻撃の内には含まれないようだ。

 相手が俺と言うことに加え、空中で戦っているからイメージが付きにくいとは思うが、今の衝撃波が直撃したら、大抵の国の首都は壊滅的な打撃を受けるんだよ。

 その証拠に、遠く離れているブルーが体勢を崩しかけていたからね。……しまった。飛行に特化したブルーだと、影響が少なくて黄龍ファンロンの凄さが伝わらない。


 俺がそんな事を考えていると、黄龍ファンロンが次の行動に移った。


《『黒雲』、『大雷おおいかづち』》


 二言黄龍ファンロンが呟くと、俺の周囲1km程の空間が黒い雲、雷雲で覆われた。

 そして、その中を何度も何度も雷が走り、その全てが俺に襲い掛かってくる。


 これも<天威>の効果の1つ、黄龍ファンロン単体攻撃・・・・だ。

 1kmも覆って単体攻撃もクソもないが、黄龍ファンロンの規模で言えば、効果範囲は随分と限られている。


 その気になれば、もっと広範囲、それこそ1国の天候を操ることさえできるのだから。

 しかし、先程の衝撃波への対応を見て、効果範囲の広い攻撃では俺へダメージを与えることは出来ないと判断したのだろう。

 なので、効果範囲が狭いが威力の高い攻撃(<雷魔法LV10>相当)を選んだという訳だ。


 まあ、この程度の攻撃ならば、避けるなり受け止めるなりどうとでもなる。

 セラなら、コレも無効化できるんだけどな。一見自然現象だけど、魔法扱いっぽいし……。


 大したことが無い攻撃でも、何度も続くと鬱陶しくなってくる。

 俺は『聖剣・アルティメサイア』を振るい、周囲の雷雲を消し飛ばした。なお、聖剣の効果ではなく、単純な腕力によるものである。


《馬鹿な……》

「次はこちらから行かせてもらうぞ」


 驚いている黄龍ファンロンを無視して、空中を踏みしめて駆ける。


 そう言えば黄龍ファンロン、人間が宙に浮いていることにもノータッチだったよな。

 最初の問答も深くは追及してこなかったし、基本的に人間の都合や事情、理屈なんてどうでもいいんだろうね。


《むう!》

「はあ!」


 俺に接近されることに本能的な危機感を抱いた黄龍ファンロンが、咄嗟に手元の宝珠から特大の雷撃を飛ばしてきたので、それを聖剣で弾く。

 あの宝珠、そんなことも出来るんだ。やっぱり欲しい。


 黄龍ファンロンはその僅かな時間で、俺から距離を取ろうと回避行動に移っていた。

 しかし、あまりにも巨大なので逃げ切れる訳が無いのは当然である。


 俺は黄龍ファンロンに接近すると、斬撃を加え……ずにその背に飛び乗った。


《何!?》


 そのまま、足元に聖剣を突き刺す。


《ぐう!?》


 そのまま、俺は黄龍ファンロンの背の上を走り出した。

 突き刺した聖剣は黄龍ファンロンの身体を引き裂き続ける。


 余談だが、血しぶきは出なかった。普通の生物では無いようだ。


《ぎゃあああああああああああああ!!!》


 絶叫を上げる黄龍ファンロンが激しく身体をゆする。

 もちろん、俺を振り落とすことなどできない。

 なお、万が一落ちても<天駆スカイハイ>で帰ってくることは可能だ。


《おのれ!》


 黄龍ファンロンは自身の身体に雷を走らせる。

 体表を攻撃されるのなら、体表に攻撃をし返すと言う作戦のようだ。基本的には正しい対処法と言えるだろう。


 俺は雷が流れる一瞬だけ小ジャンプをして回避する。その一瞬は聖剣も引っこ抜く。

 そして着地の勢いを利用してもう1度聖剣を突き刺す。そして走る。


《ぐぎゃあああああああああああああ!!!???》


 激痛が身体を襲っているのは間違いないのだが、HP的にはそれほど減ってはいない。

 黄龍ファンロンのHPが馬鹿みたいに高くて、有効打になっている気がしない。

 人間で言うと、身体に針を何度も刺されているような状態である。まあ、いずれは失血死で死ぬだろう。黄龍ファンロンが相手でも、いずれはHPが尽きるだろう。


 何度も体表に攻撃を仕掛けてくる黄龍ファンロンだが、そのこと如くを回避する。

 使ってくる技を見ればわかるのだが、基本的に黄龍ファンロンの攻撃は範囲攻撃である。言ってしまえば雑な攻撃なのだ。


 相手が大きかったり、数が多かったりすれば凄まじい威力を誇るだろう。

 しかし、小回りは利かない。人間1人だけを相手にするような攻撃が全く存在しない。先程の『黒雲』、『大雷おおいかづち』が良い証拠だ。

 もちろん、そんな相手と相対する機会が無い存在であることは間違いがない。

 使う機会のない技を持っている訳もない。


 つまり、強大な力を持った人間1人と言うのは、黄龍ファンロンにとって1番の天敵であるとも言える。そんな人間がいれば、の話だが。

 そして、そんな人間がここにいた。


《ぐううううううううう!!!》


 黄龍ファンロンは唸りながら上方向に向かって飛翔を始めた。

 今度は単純な速度で振り落とそうとしているのだろう。


 そろそろ同じことを続けるのも飽きて……いや、流石にそこまでされた状態で身体の上を走るのは難しく、力及ばずに黄龍ファンロンの背中から振り落とされる。


《はあ、はあ……。矮小な人間風情が、よくも我が身に傷をつけてくれたな。その代償、その命で償ってもらうぞ》


 息を切らしながら偉そうなことを言っても、全然威圧感がありませんね。

 ちなみに黄龍ファンロンの奴、俺から10km以上離れている。思っていた以上に腰が引けているようだ。黄龍ファンロンの腰が何処にあるのかは知らない。


A:頭から数えて600m付近が腰にあたります。


 あ、はい。

 今、俺の知識の中に『黄龍ファンロンの腰の位置』と言う、2度と使うことのない知識が格納されました。……捨てたい。


《所詮は人間、遠方からの攻撃は防ぐことしか出来まい。『大雷おおいかづち』は防げたようだが、それも、いつまでも続けられる物でも無かろう》


 どうやら、黄龍ファンロンは遠距離攻撃に徹することを決めたようだ。

 頭から600m付近が引けているな。

 ……早速使ってみたけど、思っていた以上に使い難い。


《『雷玉らいぎょく』、『炎玉えんぎょく』、『氷玉ひょうぎょく』、『風玉ふうぎょく』、『光玉こうぎょく』》


 黄龍ファンロンが唱えるたびに、直径100mはあるであろう巨大な球体が浮かび上がる。その球体は黄龍ファンロンが手に持った宝玉に似ており、黄龍ファンロンの周囲をふよふよと飛び回っている。

 マップで確認すると、それぞれが対応する属性の魔力を帯びていることが分かる。


 ボスとの空中戦で、ボスの周囲に球体が浮遊し始めたら、次に何が起こるだろうか?


《行け、『五玉』》


 当然、シューティングゲームのボス戦、俗にいう弾幕ゲーが始まるに決まっている。


-ドドドドドドドドドド-


 それぞれの球体から、それぞれの属性を持った攻撃が絶え間なく放たれ始めた。


 『雷玉らいぎょく』からは轟音を響かせる雷。

 『炎玉えんぎょく』からは鉄さえ溶かす火球。

 『氷玉ひょうぎょく』からは巨大な氷槍。

 『風玉ふうぎょく』からは不可視の衝撃波。

 『光玉こうぎょく』からは目もくらむような光線。


 5つの宝玉からそれぞれ、1発でカスタール首都を壊滅させるクラスの攻撃が連射される。

 何故、態々カスタールの首都を槍玉に挙げたのかは不明だ。


「『飛剣連斬』」


 数10発もあればカスタール王国が地図から消滅するほどの過剰攻撃。この世界で相対した中で最も強大な攻撃に対して俺が取る戦術は迎撃である。


 <飛剣術>による超高威力の飛ぶ斬撃を連射していく。

 それらの斬撃は黄龍ファンロンの放った攻撃と衝突して消滅する。


 意外と少ないんだよね。敵の弾幕に攻撃判定のあるシューティングゲーム。

 普通に考えて、避けるよりも攻撃を当てて迎撃する方が楽なのに……。


 お互いの遠距離攻撃がぶつかり合いせめぎ合うシーンは胸熱ですね。

 特に、今の俺は騎士をロールしているので、格好良さと言うのは大事にしていきたいな。


《何故!?何故これすらも防げるのだ!? ……いや、いつまでも防げる訳が無い。このまま押し切ればよいだけだ》


 一発も攻撃が届いていないことに驚愕しつつも、いずれは押し切れるだろうと攻撃を続けることを選択した。

 これが、黄龍ファンロン最大にして最後の失敗だった。


《我が魔力・体力はまさしく無尽蔵。人間風情に押し負けることなどありはしない》

「それはどうかな」

《何?》


 俺は、少しだけ『飛剣連斬』のペースを上げた。


《ぐっ!?ぐは!?》


 途端に迎撃の均衡が崩れ、黄龍ファンロンの方に余剰の『飛剣連斬』が着弾した。


 少しずつ、本当に少しずつ『飛剣連斬』のペースを上げていく。


《ぐが!?ぐえ!?がふ!?ごば!?》


 少しずつ、少しずつ黄龍ファンロンの被弾が増えて行った。

 途中、黄龍ファンロンの周囲にあった球体に『飛剣連斬』が直撃し、球体が破壊されると言うゲームらしいイベントが発生したりもした。


《や、止めろ……。ぐぶ!?もう、ぶび!?止めてくれ……。べぼ!?》


 ついには全ての球体を失い、抵抗する術を失って『飛剣連斬』をその身に食らい続ける憐れな黄龍ファンロンが残されることになった。


 剣を突き刺して走るより、『飛剣連斬』の方がダメージ効率がいいようだ。

 <飛剣術>スキルレベルの分が攻撃力に加算されるからかな?突き刺して走るだけだと、<剣術>の補正すら受けられなさそうだし……。


 HPが10%を切ったあたりで、聖剣の『威力制御』を使用してダメージを抑える。

 そして、黄龍ファンロンの馬鹿みたいに多かったHPも残すところ1%を切った。


「これで止めだ!」


 俺は<天駆スカイハイ>を使ったまま<縮地法>を発動し、黄龍ファンロンの眼前で大きく聖剣を振り上げる。


《や、やめ……》


 恐怖を滲ませながら黄龍ファンロンが避けようとしたので、俺は剣を止めた。


「まあ、止めを刺すのは俺の仕事じゃないんだけどね」

《は?》


 次の瞬間、黄龍ファンロンの真下から、ミオの放った矢が脳天を貫いた。


《けぷ?》

「ゴメンね?不意打みたいな真似をして」


 変な<思念波>をまき散らして、黄龍ファンロンのHPは0になった。

 ミオに止めを刺させると言う約束だったからね。約束は守らないと。



 空に留まる力を失い、黄龍ファンロンが地上へと落下を始める。

 すかさず黄龍ファンロンに触れ、<生殺与奪ギブアンドテイク>のレベル8効果によって吸収する。

 ついでに、黄龍ファンロンの手からポロっと零れ落ちた宝珠も回収しておく。


 アルタ、黄龍ファンロンの疑似人格化はしなくてもいいけど、記憶だけは確認しといてくれ。


A:了解いたしました。


 どうして成層圏付近をうろついていたのか、その理由を知っておきたいからな。

 今までの経験で考えると、大した情報は持っていないだろうけど……。ほら、始祖神竜エル大天使シューベルトも肩書きは大層なくせに碌な情報を持っていなかっただろ。


L:扱いが酷いのじゃ。


 そう言えば、エルもついて来ていたんだっけ。ずっと黙っていたから忘れていたよ。


L:本当に扱いが酷いのじゃ。戦闘の邪魔にならんように黙っておったと言うのに……。


 エルに話しかけられたくらいで不利になるような相手でもなかったけどな。


L:妾よりも格上の『最終試練』相手にその余裕……。ますたー、『竜の森』で戦った時、その気になれば妾の事を一瞬で殺すことも出来たじゃろ?


 まあ……、出来たな。

 時間に余裕がある時は、一瞬で殺すなんて勿体ないことをするつもりはないけどね。


L:はあ、本当にマスターは色々と規格外じゃな。さて、龍神がボロボロにされるところも見れたし、妾は先に戻るとするのじゃ。


 そう言って、俺の中からエルの反応が消えた。


 <拡大解釈マクロコスモス>によって強化された<多重存在アバター>の効果により、疑似人格であるエルに新しい能力が追加された。

 それが『任意の配下の近くで顕現する』と言う能力である。分かり易く言うと、俺の配下の間を自由に転移できるようになったと言うことだ。


 地上にいる誰かの近くで顕現をしたのだろう。なお、着信拒否も出来る。


>拡大解釈がLV6になりました。

>新たな能力が解放されました。

拡大解釈マクロコスモスLV6>

効果対象が60に拡張されました。


>拡大解釈がLV7になりました。

>新たな能力が解放されました。

拡大解釈マクロコスモスLV7>

効果対象が70に拡張されました。


 本当に<拡大解釈マクロコスモス>のレベルアップ速度は速いな。

 <生殺与奪ギブアンドテイク>や<多重存在アバター>のレベルアップ速度とは比較にもならないぞ。

 と言うか、<多重存在アバター>のレベルを追い抜いてしまった(<生殺与奪ギブアンドテイク>はレベル8なのでまだ負けていない)。


 いつも通り効果対象数しか増えない<拡大解釈マクロコスモス>のレベルアップは、はっきり言ってそれほど重要ではない。

 今日の本命はミオの強化の方なのである。


「ご主人様、やったよー!」


 ブルーに乗ったミオが叫びながら近づいてくる。


「武器も神話級ゴッズになったし、私も<超越>スキルと『超越者』の称号をゲットできたわよ!LAラストアタックマジ美味しいです!」


 神話級ゴッズになった武器を掲げながら嬉しそうに言う。


彗星弓・コメット

分類:短弓

レア度:神話級ゴッズ

備考:魔力を矢に変換、自動追尾、飛距離極大補正、不壊、所有者固定


 流星ミーティア彗星コメットになっていました。

 コレ、純粋な昇格と言っていいのかな?

 まあ、強くなったのは確実だし、細かい事を突っ込むのも野暮と言うものか。


 それにしても、『自動追尾』が付いたのは面白いな。

 ああ、剣と魔法のファンタジー世界でやることじゃないと突っ込みたくなる。


「この『自動追尾』、ご主人様のマップと組み合わせるとかなり凄そうね。マップで確認できる範囲なら、何処にでも自動追尾で狙い撃てるみたい……」


 ミオも同じく『自動追尾』に注目していたようだ。

 相変わらず、俺と着眼点が似ているミオである。


「まさしく、殺し屋的な意味でスナイパーだな」

「人聞きが悪すぎない?」

「屋敷に居ながら魔物が倒せるようになったな」

「横着しすぎじゃない?」


 俺が『自動追尾』の有用な使い方を提案しているのに、ミオはお気に召さない様子。


「料理の片手間に魔物退治とか……」

「出来なくはないけど、余計な事をしている間に料理の味が落ちるかもしれないわよ?」

「料理中の狙撃は禁止する!」

「ご主人様、それ普通。普通の事だから」


 くだらないやり取りを終え、俺も再びブルーに乗り直す。


「ブルー、地上に戻ってくれ」

「分かったわ」


 上空ですることも無くなったので、ブルーに乗って地上へと帰還する。

 『ポータル』は空中には設置できないので、直接降りて行くしかないのだ。


舞台が空中、相手が仁と言うことで、黄龍さんの強さが伝わったのかが心配です。

他の最終試練にも言えることですが、本来最終試練は1国を簡単に滅ぼせるような存在です。

黄龍は高度を下げて天候を変えれば、大陸規模で壊滅的な被害を与えることも出来ます。

1回、壊滅的な被害を出させてから倒す方が敵の脅威度は伝わるのですが、そこまでは仁が許容しない事が多いので中々に難しいです。

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