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異世界転移で女神様から祝福を! ~いえ、手持ちの異能があるので結構です~ 作者:コーダ

第8章 配下編

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第124話 騎士装備と黄龍

時系列的には「第122.5話 一握りの救済」よりも前になります。

 のんびり10日目。


 本日はカスタールの屋敷で鍛冶をしているドワーフ少女、ミミの元を訪れていた。


「騎士用の……剣と鎧のセット……ですか……?はい……、出来ます……」


 もうじきエルガント神国で開催される首脳会議参加のため、仮の姿ジーンの装備を整えるためである。


 俺の仮の姿であるジーンの肩書は女王騎士だ。当然、装備もその肩書きに相応しいモノでなければならない。しかし、俺は女王騎士の称号に相応しい鎧を持っていない。

 ついでに言えば、『英霊刀・未完』は身バレの恐れがあるので使いたくない(エルディア戦の時は帯剣していなかった)。

 今更バレて困るモノでもないが、正体不明の騎士の正体が、身につけている装備品からバレるのは、とてつもなく格好悪いだろう。絶対に嫌だ。

 と言う訳で、剣と鎧のセットを専属の鍛冶師であるミミに頼むことにしたのだ。


「任せてもいいか?」

「もちろん……です……。私は……その為に……生きているのですから……」


 たどたどしい口調ながら、恍惚とした表情を見せるミミ。

 何と言うか……重い……。


「それで……、採寸をさせていただいても……構わないでしょうか……?私如きが……仁様に触れるなど……、恐れ多いにも……程があるのですけど……」


 ミミは一切口には出さないけど、俺の事を神様扱いしているのは間違いがない。

 これ、マリアやルセアにも匹敵するレベルじゃないか?


「ああ、今すぐでいいか?」

「はい……。直ちに……」


 パッと鍛冶師の顔に戻り、採寸の準備を始める。

 オーダーメイドの鎧を作るなら、当然採寸も必要だよな。


 直ぐにメジャー的なアイテムを持ってきたミミに採寸される。

 ドワーフと言うことで小柄な為、椅子に乗りながら俺の身体の寸法を測る。

 小柄なくせに巨乳の為、採寸の最中に胸が身体に当たる。……俺に触れるのは恐れ多いのではなかったのだろうか?


「そうだ。セラも同行をするから、ある程度形を似せた鎧をもう1つ頼めるか?」


 他のメンバーでは女王の護衛としての威厳が足りないので、セラが同行することになっている。護衛の装備に大きな差があるのはどうかと思うから、セラの分も頼んでおく。


「はい……。分かりました……。後で……採寸のために……お呼びします……」

「併せて頼む」

「ところで……、材料は……オリハルコンで……」


 ミミが材料の話をし始めたところで急に停止する。


「どうしたんだ?材料だったら、態々オリハルコンなんて使わないで、ミスリルくらいでいいぞ。普段使いする訳でもないからな」

「駄目です!!!」


 俺のセリフを聞いたミミは、普段のたどたどしい口調が何処に行ったのかと言う程に大きな声ではっきりと拒絶した。


「仮の姿とは言え、仁様がお使いになられる装備に、ミスリルなど相応しくありません!私が、今できる最高の装備を作ります!オリハルコンでもよろしいでしょうかと聞くつもりでしたが、妥協はいけません!最高の金属を用意します!」


 ミミは真剣な顔でまくしたてるように話を続ける。


「最高の金属?オリハルコンじゃないのか?」


 ミミのセリフに気になる点があったので質問をする。

 もちろん、俺は鉱物には詳しくないが、何となくファンタジー物のお約束のようにオリハルコンが最高の金属だと思っていた。


「はい!オリハルコンと他の金属を混ぜ合わせた合金があり、それが最高の金属となります……。申し訳……ありません……。少々……、興奮して……しまいました……」


 いつものようにたどたどしい口調に戻るミミ。

 口調はっきりタイムはそれほど長く続かないようだ。


「へー、それは知らなかったな。で、その合金を作るのは大変なのか?」

「多少は……。でも……、ステータスを……確認できるので……、相当楽に作れます……」


 合金の配合比率をステータス上で確認すれば、比較的簡単に作れるらしい。


 この合金の情報源はアルタなので、一般には一切情報が出回っていない。

 それに、オリハルコンは伝説の金属なので、合金にするという発想自体が不可能に近い。

 何が言いたいのかと言うと、仮の姿ジーンの剣と鎧は、誰も知らない世界最高の金属を素材に、聖剣を作れるユニークスキルを持った鍛冶師が鍛え上げた一品になると言うことだ。仮の姿には明らかに過剰すぎる装備である。


「ちょっと過剰すぎるけど……、まあいいか。よし、じゃあミミに任せるから、良い物を作ってくれよな?」

「はい……。全力を……尽くします……。では……、すぐにでも……取り掛かります……」

「時間はまだあるし、焦らなくていいからな。ゆっくり、じっくり、丁寧に作ってくれ。無理をして急がれても、品質に不安が残るだけだからな」

「はい……。努力します……。でも……スキルがあるから……大丈夫です……」


 ん?スキル?

 チラリとミミのステータスを確認してみる。


名前:ミミ

LV45

スキル:<剣術LV7><槍術LV6><鑑定LV8><鍛冶LV8><聖魔鍛冶LV-><不眠不休ワーク・ホリックLV->


不眠不休ワーク・ホリック

睡眠、休憩をしないで活動が出来る。効果発動中は眠気、疲れを感じることはない。ただし、効果を解除する、もしくは蓄積量が限界になった場合、効果発動中の眠気、疲れが一気に現れる。


 なんか、いつの間にかデンジャラスなユニークスキルを持っているんですけど……。


A:ルセア達が回収したユニークスキルの1つです。ミミが所有権を勝ち取りました。


 ルセア達奴隷メイドの仕事の1つに、ユニークスキルの回収と言うのがある。

 簡単に言えば、ユニークスキルを持った魔物を倒したり、ユニークスキルを持った奴隷を購入したりと言うものだ。

 じわじわとユニークスキルの数が増え続け、今では俺も全てを把握できていない程である。面白い物もあるだろうし、今度メイド達にプレゼンでもしてもらおうかな。


A:伝えておきます。


 この<不眠不休ワーク・ホリック>と言うスキルは、眠気や疲労を後回しに出来るようだ。睡眠や休憩の総量は変わらないから、集中して連続で作業をする者に向いているスキルだろう。……鍛冶師とか。

 納得である。


「それでも、無理はするなよ」


 スキルで誤魔化せるとは言え、身体に良いかどうかは別問題である。

 栄養ドリンクを常用するのが身体に良くないのと同じだろう。

 誤魔化す必要が無いくらいに健全な生活をするのが1番である。


「はい……。仁様のご配慮……有難く頂戴いたします……」


 恭しく頭を下げるミミ。

 本当にいちいち反応が大げさである。



 3日後、ミミから剣と鎧が出来たので1度着装備してみて欲しいと頼まれ、マリアと共に鍛冶場へと向かう。


 余談だが、鎧を着るのなら手伝いが必要と言うことで、何名かのメイドが付いて来ている。

 いや、屋敷内を移動するときは、ほぼ必ず数名のメイドが付き従って来るんだけどね。


 なお、セラの分はまだらしく、他のメンバーはついて来ていない。


「仁様……、お越しいただき……ありがとうございます……」

「騎士鎧が出来たんだよな?」

「はい……、出来ております……。本当は……仁様の元に……お持ちしたかったのですが……、その場で調整できるのが……1番ですので……、本当に……申し訳ございません……」

「気にするな。それが1番効率的だろうからな」

「ありがとうございます……」


 俺の元に持ってくるより、俺が出向いて調整する方が効率的なのは間違いがない。

 俺の事を第1に考えるのが暴走して、無暗に非効率なことをされても嬉しくはない。

 その点をミミは理解してくれているようだ。

 思わずマリアの方を見て見る。


「仁様、どうかいたしましたか?」

「いや、なんでもない」


 ……マリアはあまり理解してくれていない気もする。


「それで……、こちらが頼まれていました……剣と鎧です……」


 そう言ってミミが示したのは、テーブルの上に鞘に入ったまま置かれた剣と、トルソーのようなものに掛けられた鎧だった。


 剣は以前見せてもらった聖剣・メサイアと同じように直刀だ。

 メサイアは真っ白だったが、今度の直刀は白銀に輝いていた。そして、多少ではあるが装飾が施されていたし、所々に金色でアクセントをつけるようになっていた。

 まさしく、高い地位にある騎士が装備するに相応しい存在感と、威厳を放っている。


 鎧も同様に白銀の輝きを放ち、金色がアクセントとなることで、全体的な風貌を剣とマッチさせているようだ。

 存在感、威厳も剣同様にかなりのモノだろう。

 一方、装飾は剣を振るうのに邪魔にならないように徹底的に抑えられ、機能美の方を追求したことが窺える。

 その上で、美術的価値が損なわれないようにされているのは見事としか言えないだろう。


 それでは、肝心かなめのステータスである。


聖剣・アルティメサイア

分類:刀

レア度:幻想級ファンタズマ

備考:所有者制限、勇者強化、魔族特効、瘴気除去、威力制御、不壊、HP自動回復、MP自動回復、状態異常耐性付与、武器召喚


聖鎧・アルティメイル

分類:鎧

レア度:幻想級ファンタズマ

備考:所有者制限、勇者強化、不壊、光線反射、HP自動回復、MP自動回復、状態異常耐性付与、重量無効


 驚くべきことに、剣も鎧も伝説級レジェンダリーを越え、幻想級ファンタズマの領域に届いていた。

 ミミの言い分だと、もうしばらくは幻想級ファンタズマは作れないと思っていたのだが、嬉しい誤算である。


幻想級ファンタズマを作れるようになったのか?」

「はい……。あ……、いいえ……、残念ながら……、これだけです……。仁様に……求めて頂き……自分で思っていた以上に……興奮していた……みたいです……」


 <聖魔鍛冶>は精神状態の影響を受けるスキルだ。

 単純に技術が向上しただけではまだ不足で、精神状態がベストに近い状態だったから出来た、ある種の偶然の産物のようだ。

 と言うことは、セラの分の装備はここまで強力にはならないと言うことだな。


「そうか。これからも頑張ってくれ」

「はい……。お任せください……」


 俺が声をかけるとミミがやる気を出すと言うのなら、時々は声をかけてブーストした方が良いかもしれないな。

 幻想級ファンタズマを何度も作っていれば、そのうち慣れて来るかもしれないし。


「さて、早速つけてみるかな」

「お手伝いいたします」


 そう言ってメイド達が鎧を着るのを手伝ってくれた。

 ミミから取り付け方を聞き、その通りに全身に鎧を装着していく。


 効果の中にあった「重量無効」の影響か、手に持っている時はそれなりに重かったのだが、身体に付けた途端重さを感じなくなった。


「うん、やっぱり白系の色は似合わないな」


 数分後、鎧を着こみ、ヘルムを片手に持った俺が呟く。

 基本、暗色を着ることの多い俺なので、見るからに神聖な印象を受ける鎧が似合わない、と言うかしっくり来ない事この上ない。


「そんな事は……ないと思います……。仁様に……お似合いだと思います……」

「ええ、流石です。なんと神々し……むぐ」

「しーっ」


 鎧を着るのを手伝った信者メイドが、俺の事を『神々しい』と言いかけて、横にいた信者メイドに口を押さえられている。

 そりゃ、信者おまえらにとっては、俺が神聖な姿をするのは自然な事かもしれないけどさ……。


 後、マリアがコメントをしていないのは、俺の姿を見て恍惚の表情を浮かべて固まっているからである。


「それで……仁様……。動かしにくい……所はありませんか……?」

「ちょっと待ってくれ」


 そう言って俺はヘルムを被り、身体を適当に動かす。

 聖剣も抜き放ち、軽く振ってみる。

 メイド達に距離を取らせ、少しアグレッシブに動いてみる。


「問題ないな。かなりフィットしていると思う」

「それは……良かったです……」


 俺の動きを極限まで邪魔しないように作られている。

 一流の鍛冶師が作った、オーダーメイドの鎧は伊達じゃないと言う訳だ。


「お、やってるやってる」

《ごしゅじんさまかっこいー!》

「それがご主人様の鎧ですわね。わたくしの分は……まだのようですわね」


 声のした方を見れば、ミオ、ドーラ、セラが入り口から顔をのぞかせていた。


「どうしたんだ?3人揃って」


 俺はヘルムを外して3人に声をかける。


「うん。新作のお菓子を作ったから、その味見とお茶会を開いていたのよ。今はその帰り」

《おいしかったー!》

「ご主人様が鎧を試着していると聞いたので、寄ってみたのですわ」


 ちなみに、さくらもお茶会に参加していたそうなのだが、こちらには寄らずにサクヤの元へお菓子のおすそ分けに行ったそうだ。

 サクヤ、エルディアの件や今度の首脳会議の件で色々と忙しいみたいだからな。


「それで、どうだ?俺的にはあまり似合ってない気がするんだけど……」

「そんな事ないわよ。普通に格好いいわよ」

「そうですわね。似合わないと言うよりは、見慣れないと言う方が正しいですわね」

《かっこいー!》


 自分では似合っていない気がしていたが、格好いいと言われて悪い気はしないな。

 そもそも、今はヘルムを外しているから似合わないと感じるが、基本的に人前でヘルムを取る予定もないから、関係ないと言えば関係ないのである。


「それじゃあ、実際にこの鎧を着て適当な魔物と戦ってみるかな。ミミ、大丈夫か?」

「はい……。問題が……なさそうですので……好きにお使い頂いて……構いません……」


 ミミのお墨付きをもらったので、実際に使い心地を試してみようと思う。



 そう決めたところで、鍛冶場の外から1人のメイドがバインダーを持って入って来た。

 いつもの観光地に関するバインダーに比べたら随分と薄く感じる。


「旦那様、アルタ様に頼まれていました討伐に適した魔物のリストをお持ちいたしました」


 確かに、それならば観光地と比較したら情報が少なくなるのも当然だ。


「……テーブルに置いておいてくれ」

「かしこまりました」


 アルタ、こうなるって予想出来ていたのか?


A:はい。今までの傾向から、装備が完成したら試し切りに出られる可能性が高いと判断しました。装備の依頼がされた時点で、討伐に適した魔物のリストアップ、及び配下達に討伐しないように通達していました。


 予想されていました。

 ……本当に優秀なマネージャーと配下達だよ。


A:お褒めいただき光栄です。


 俺はバインダーをパラパラと捲ってみる。

 俺の趣味に合わせたような魔物が何匹も記載されていた。

 立地的に仕方のない事なのだが、やはりアト諸国連合の魔物が多い気がする。

 あそこは、強大な力を持った魔物の坩堝だったからな(過去形)。最近はティラミス、メープル、ショコラの傭兵組によって、大分数を減らされているが……。


 アルタ、おススメはどれだ?

 リストにはしているが、アルタなりのおススメと言うのもあるんだろ?


A:はい。最後のページに記載してある『龍神・黄龍ファンロン』がおススメです。


 黄龍ファンロンと言うと、元の世界の幻獣だったよな。

 中国の伝承にある四聖獣の中心、長とも言われている大物だ。


 俺は再びバインダーを捲り、最終ページを確認する。


 どうやら、黄龍ファンロンは超上空、具体的には成層圏付近にいるらしい。

 元の世界と同様に、この世界にも成層圏は存在する。多分、宇宙空間も存在するのだろう。

 黄龍ファンロンはその成層圏付近を自由に飛び回り、長い時を生きてきたようだ。


 さて、ここで少しマップの仕様・・についておさらいをしよう・・・

 <拡大解釈マクロコスモス>を得る前、マップは該当エリアと隣接エリアしか表示されなかった。

 そして、<拡大解釈マクロコスモス>を得た後は、該当エリアを含め4エリアが確認出来るようになった。


 ここで成層圏の話に移ろう。

 この世界において成層圏付近と言うのは、地上から3エリア先にある。

 つまり、<拡大解釈マクロコスモス>を得る前は成層圏付近を観測することが困難だったが、得た後は地上からいつでも観測できると言うことになる。


 簡単に言うと<拡大解釈マクロコスモス>を取得後、偶然上空を飛んでいる黄龍ファンロンを捕捉したと言うことだ。


「ご主人様、何と戦うのか決めた?」


 俺の思考が一段落したのを見計らったミオが尋ねてきた。

 俺が考え込んでいる時、皆は気を使って声をかけてこなかったようだな。


「ああ。アルタおススメの『龍神・ファンロン』と戦おうと思う」

「ファンロン?何それ?」

「あれ?ミオも知らないのか?黄龍っていう聖獣なんだけど……」

「ああ、それなら知っているわね。へー、ファンロンって読むんだ……」


 黄龍自体は知っていたようだが、外国の読み方までは知らなかったらしい。

 俺が何で知っていたかって?趣味ゲーム由来の知識だよ。


「強い魔物ですの?」

「ああ、単純な強さもさることながら、とにかく巨大らしい」


 セラの質問に資料に書いてある通りに答える。

 資料を見る限り、全長1km、体重は500トンもあるようだ。

 竜ではなく、龍と言うのは伊達では無いようだ。まさしく、神話の生物である。


「倒して、大丈夫なんですの?」

「倒した後、すぐに吸収する予定だから問題ないだろう」


 流石にそのまま地上に落っことしたら、大惨事になることは間違いなしだ。

 例え海に落ちても、津波の被害が各地を襲うだろう。

 強大な敵と戦うのはいいのだが、それで余計な被害を出していたら意味がない。


「1つ気になったんだけど、ちょっと聞いてもいい?」

「ミオ、どうかしたのか?」

「うん、その名前とその由来を考えると……もしかして、『最終試練』じゃない?」


 ミオに言われてもう1度バインダーの中を見る。

 しっかりと、『最終試練』と記載してある。


「『最終試練』だな……」

「ミオちゃんの……番よね……?」


 俺、マリア、セラの順に『最終試練』を倒し、<超越>スキルを入手した。

 約束通りならば、次はミオが『最終試練』を倒す番である。


「わかった。じゃあ、俺が戦うから、止めだけミオに任せる。幸い、この聖剣には『威力調整』の効果があるから、<手加減>に近いことが出来るみたいだしな」

「何か腑に落ちないけど、仕方ないわね……」


 出来ればミオとしても最初から最後まで戦いたい気持ちはあるらしい。

 しかし、今回はあくまでも騎士用の剣と鎧の試しなので、そこまで譲ることは出来ない。


「残念ながら、そこまでの上空となると、みんなで一緒に行く、と言う訳にもいかないだろう。だから、俺とミオが天空竜ブルーに乗ってそこまで行こうと思う」


 多分、天空竜スカイドラゴンのブルーなら、成層圏付近まで行けるんじゃないかな?


A:行けます。ブルー以外には成層圏付近まで行くことは困難です。『ワープ』を使えば行くこと自体は不可能ではありません。


 無理をすれば見に来るくらいは出来るようだが、そこまでするような物でもない。

 ミオ以外の皆には悪いが、お留守番をしていてもらおうと思う。


《ざんねーん……》

「仕方がないですわね」


 素直に諦めるドーラとセラ、そして当然マリアは……。


「仁様、どうか私もお連れ下さい」


 想定の通りである。

 まあ、マリアがついてくるのは、態々言うまでもない事と言う訳で……。

 ブルーに3人乗ることは可能だが、超上空に向かう以上、2名くらいに抑えておきたい。マリアが同行することになるので、ミオには後から合流してもらおう。


「わかった。ミオ、悪いけど上空に着いてから『召喚サモン』を使って呼ぶからな」

「オッケー。呼ぶ前に声かけてね。いきなり上空に転移したら、多分ビビッてチビるから」

「……善処しよう」

「断言してよ!?」


 ミオの仕事は料理することと漏らすことです。……嘘です。



 黄龍ファンロンとの戦いが決まったので、その準備を始めることにした。


 まず、ブルーを呼んで超上空での戦闘に入ることを説明した。

 俺に頼られることが嬉しいのか、一切の躊躇なく参戦を決定した。


「行かない理由が無いわ。むしろ誘ってくれなかったら、本気で泣いていたわよ」


 とは、ブルーの談だ。

 本当にデレデレである。


 ちなみにブルーを呼んだ時に一緒に始祖神竜エルが付いてきた。


「妾も連れて行って欲しいのじゃ!たのむ、ますたー!」


 普段は疑似的な肉体として顕現をすることにこだわっているエルが、俺と同化した状態でもいいからついて行きたいと言い出したのだ。

 理由を聞いてみた所……。


「龍神とか、サイズとか、まるで妾の上位互換みたいに見えるのじゃ!何か嫌なのじゃ!妾と同じように、ますたーに為す術もなくやられていく姿を見たいのじゃ!」


 自分が相手を越えると言うのではなく、相手が自分と同じところまで落ちてくるところを見たい、と言うことらしい。

 元『最終試練』、いつの間にか随分と俗っぽくなってきたな。


 次に上空での戦いと言うことで、必須のスキルをセットした。

 その名も<環境適応>である。水圧、気圧などの外的要因の影響を極限まで低下させると言う素敵なスキルだ。配下が集めてくれました。

 ぶっちゃけ、高レベルの<身体強化>があれば、<環境適応>は無くても大丈夫なんだけどな。まあ、念のためと言う奴だ。必須って言ったのに……。


 最後、これが1番重要なのだが、現在の黄龍ファンロンの位置情報の確認である。


 先にも述べた通り、黄龍ファンロンは成層圏付近を自由に飛び回っている。つまり、『今どこにいるのか?』と言うのが非常に重要な問題になってくるのだ。

 黄龍ファンロンの飛行速度は相当なもので、最高時速で言えば天空竜ブルーすら凌駕しているらしい。より正確に言うのなら、『成層圏付近を飛ぶときに限り』と言う但し書きが付く。地上付近を飛ぶときはブルーの方が速いそうだ。そもそも降りてこないが……。


 アルタが各地にいる配下達のマップ情報を照らし合わせた所、黄龍ファンロン自由には・・・・飛び回っていないことが明らかになった。

 もっと簡単に言えば、飛行ルートに規則性があったのだ。

 後はその法則に従い、上空で待機すればいいのである。


 本日の昼過ぎ頃に砂漠の国、ブラウン・ウォール王国の上空に黄龍ファンロンが来ることが分かっているので、そこで黄龍ファンロンとの戦いを始めようと思う。

 広大な砂漠が広がっているブラウン・ウォール王国ならば、黄龍ファンロンが落ちるという最悪の事態が起こっても被害が最小限で済むからだ。

 津波と違い、砂が舞い上がるだけならば、何とか出来ないことも無いからな。

 まだ、エルディアからの送った奴隷も到着していないし……。


「それにブラウン・ウォール王国の砂漠には大精霊レインがいるから、落ちてきた黄龍ファンロンくらいなら、受け止めてくれるだろうし……」

「それは無茶な期待じゃありませんか?」


 俺の呟きを拾ったセラが苦笑いをする。


「砂の下も柔らかい土がある土地になっているから、クッションになるんじゃないかという期待もある。黄龍ファンロンが落ちたら、すごい衝撃になるだろうし……」

「ご主人様が色々考えているのは分かったけど、まずは落とさないようにしましょうよ」


 俺が話を続けると、ミオも苦笑いになる。

 苦笑い多いな。ドーラの純真無垢な笑顔が眩しい。


「それは当然だけど、相手が相手だし、手は打っておかないと……」


 今回は放って置いても害の無い相手を倒しに行くので、余計な被害については酷く慎重になっている。ほら、騎士が余計な被害を出したらダメだろ?


 ちなみに、害が無くても『最終試練』と言うだけで討伐対象になります。基本、碌な奴がいないから。

 まあ、話してみていい奴だったら、討伐を取りやめる可能性もあるけどね。ほら、騎士が良い奴を殺したらダメだろ?


わたくしが地上付近に待機して、魔法が飛んできたら消すのですわよね?」

「ああ、頼む」


 同じ理屈で、魔法の流れ弾を警戒し、セラには俺達が戦う下で待機してもらう予定だ。


「よろしくお願いしますわね。ミカヅキさん」

「はい、お任せください」


 セラが相方となる三日月竜ミカヅキに声をかける。

 移動速度や空中での機動の面を考え、竜人種ドラゴニュートに乗って行動してもらう。


「私も頑張ります……」

「わたしもですよー」

《ドーラもがんばるー!》


 こちらに合流したさくら。さくらの相方となった深緑竜リーフ。単独で行動するドーラもやる気になっている。

 この3人にもセラと同様に空中で待機していてもらうようにお願いしている。

 魔法はセラが全て防げるが、地上への影響がそれだけとは限らないからな。


 他にも竜人種ドラゴニュートに騎乗することのできる配下には同じような作業をお願いしている。劣風竜ワイバーンを与えた配下も同様である。

 一応言っておくと、クロード達は来ていない。

 俺の指示でSランクを目指しているクロード達を、態々別件で呼ぶのも悪いだろう。


 さて、ちょっと大げさかもしれないが、出来ることは全力でやって行こうか。


黄龍のイメージはレック○ザです。

メ○進化はしません。

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