核兵器開発も、朴正煕大統領時代の1970年代、ひそかに相当進めたが、米国に察知され、やむなく中断した。

 核弾頭の代わりに韓国の弾道ミサイルと巡航ミサイルは、上空から手榴弾大の小爆弾約900発を放出し、サッカー場数面に等しい地域を制圧できる。

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 韓国陸軍は人員49万人で、陸上自衛隊の3.6倍、米陸軍の46万7000人を上回る。戦車2500両、装甲車3300両、ヘリコプター59機を保有し、西欧各国の陸軍並みに近代化している。

 米陸軍が、冷戦終了の1989年には韓国に3万1600人いた兵員を、今は1万9200人に減らしたのも、韓国軍が通常戦力で圧倒的だからだ。

 冷戦時代のイデオロギーがなお残る日本では、韓国は味方という感覚があるから、こうした韓国の軍事力の著しい増強をメディアなどが報じることは少ないが、韓国はすでに軍事大国なのだ。

 経済面でも韓国のGDP(2016年)はロシアの1.2兆ドル余りをしのぐ1.4兆ドル余りの規模だ。

 1人当たりのGDPは約3万2000ドルで日本の78%だが、物価を加味した購買力平価だと日本の94%に当たり、IMF(国際通貨基金)は2023年に日本を抜く、と予測している。

 一方で、北朝鮮のGDPは167億ドルで韓国の84分の1に過ぎず、人口も2500万人で韓国の半分以下だ。

 米国はGDPで隣国メキシコの約17倍、人口は2.5倍だから、朝鮮半島の南北の国力の差は、米国とメキシコの差以上だ。

 韓国の国防予算は今年度で46.7兆ウォン(約4兆円)で日本の約76%だが、韓国の国防中期計画(5年)では年平均7.5%増加し、2023年には61.8兆ウォン(約5.4兆円)となり、今年度の日本を上回る。

差をつけられた北朝鮮が
核を放棄する可能性は低い

 韓国に国力、軍事力で大差をつけられた北朝鮮は、対抗策として核と弾道ミサイル開発に力を集中し、もし韓国、米国の攻撃を受けたときには、核で報復する能力を持つまでに至った。

 だが北朝鮮の方が韓国や米国、日本を攻撃すれば、激しい報復攻撃を受けて滅亡するのは必至だから、自ら先に攻撃をする公算は小さい。

 北朝鮮が核ミサイルを使うのは米、韓国軍の攻撃を受けるなどで滅亡が迫り、「死なばもろとも」の心境になった場合だろう。

「抑止」は相手側の理性的判断を前提とするもので、自暴自棄に陥りかねない北朝鮮の核ミサイル攻撃に対しては、日米韓が報復力を示すことで攻撃をさせない抑止戦略をとっても効果はない。「自爆テロに対しては極刑でのぞむ」と宣言しても防止はできないのと同じだ。