だが本来は、米軍や米政府が日本や韓国から伝えられた機密情報を第三国に漏らすのは信義に背き、日米、韓米間のGSOMIAに反していた。
このため米国は日本と韓国に直接のGSOMIAを結ばせ、心置きなく日米韓で円滑に情報交換ができるようにしたかったのだ。
日本では民主党タカ派が日韓軍事協力に熱心で、菅直人内閣の前原誠司外相は2010年12月7日の日米韓外相会談で「安全保障、防衛分野での日韓協力を推進したい」と述べた。
前原外相は11年1月2日の韓国「毎日経済新聞」のインタビューでは、「韓国との同盟関係を結ぶことを期待する」と語ったと報じられた。
外務省は「大臣は同盟とは言っていない」と発表したが目標の方向は同じだ。
前原氏は外国人である在日韓国人から献金を受けていたことが同年3月4日に発覚、7日に外相を辞任した。
当時から韓国では日本との軍事協定締結に反対の世論が強かったが、なんとか2012年6月29日に野田政権の玄葉光一郎外相と駐日韓国大使が外務省で署名することが決まった。
ところが予定時刻の50分前に突如、韓国の李明博(イ・ミョンバク)政権が署名延期を申し出て、ドタキャンされるということも起きた。
韓国では、「親日派」が「売国奴」と同意語となっており、政府も激しい世論に逆らい難い。
今回の日韓対立も文在寅(ムン・ジェイン)大統領の思想傾向よりも、韓国人一般の対日感情に起因するところが大なのだろう。
韓国軍の「仮想敵」は日本
軍備増強の口実に
一般の国民だけでなく、韓国軍は日本を「仮想敵」とする姿勢を露骨に示してきた。
冷戦が終了した1990年代から「主な敵は日本か北朝鮮か」との「主敵論争」が起き、国防白書から北朝鮮を敵視する表現が削られたこともあった。
北朝鮮の海軍、空軍は貧弱だから、韓国の海軍、空軍が軍備増強の予算獲得を図るには日本を仮想敵にする必要があったのだ。
韓国海軍は1987年、ドイツに「209型」潜水艦(潜航時1300トン)3隻を発注したが、北朝鮮海軍は弱体だから、当然議会では「なぜ潜水艦が必要なのか」との質問が出た。
これに対し、海軍側は「日本の海上通商路を襲撃するためだ」と答弁した。