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日々のコト♪♪

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「パパから?」

「はい。ご自宅のお庭で育てたイチゴを
朝一で刈取り皆様でお召し上がり下さいと、先程届けて下さいました」

女官2人が抱えている籠の中には溢れんばかりの真っ赤なイチゴ。

大学が休日の朝。
朝の挨拶から戻ると 東宮は甘い香りでいっぱいだった。
この甘い香りの正体は 府院君様がチェギョンの為に育てたイチゴ。


「すごぉ~い! シン君見て!! パパが育てたイチゴがこんなに沢山!!」


「ああ。 府院君様がチェギョンの為に育てたイチゴだ」


「美味しそうだね~」

チェギョンは今にでも食べだす勢いで大きな瞳を輝せ籠のイチゴを見つめている。

「このイチゴ、早く料理長の元に持って行って下さい。そうじゃないと、チェギョンが涎を垂らしそうだ」

「よだれ?! シン君! 子供じゃないんだからよだれなんてしないわよ!」

頬を膨らませて僕を見上げるチェギョン

「子供じゃなかったな。食い意地が張っているだけか?」

「なっ!? 酷い!!」

頬をさらに膨らませ、僕に小さく拳を向けてくる
叩かれる寸前で腕を掴み

「拗ねないでさっさと朝食にしよう。そろそろおまえの腹の虫が騒ぎ出すんじゃないか?」

「朝食!! チェ尚宮お姉さん、朝食にイチゴは出るかな?」

「はい。本日の御茶のお時間にも料理長がお作りになったデザートをお出し致します」

「わぁ~ 楽しみ~!! 今日の訓育 デザートを楽しみに頑張れそう」

チェギョンが小さくガッツポーズを取る。

その姿に僕もチェ尚宮も小さく溜息を吐いた。

「やっぱりおまえは食い意地が張ってるな。色気より食い気だ」

小さく呟いた僕にチェ尚宮が自分の教育不足とばかりに深々と頭を下げた。


「ん? なに? シン君何か言った?」

「いや。本日の訓育しっかり学んで下さい妃宮様。チェ尚宮を困らすなよ」

「大丈夫! 今日はイチゴのデザートを楽しみにサクサク終わらせるわ! それより、早くご飯食べに行きましょ?」


僕の腕を引っ張り朝食に急ぐチェギョンに僕もチェ尚宮も苦笑いしあとをついていく。




「甘酸っぱ~い! シン君、美味しいね」

ミルクたっぷり掛けたイチゴを頬張り 幸せな声をあげるチェギョン。

「ああ。味も香りも格別だ」

「シン君はイチゴのデザートで何が好き? 料理長さん、どんなデザート作ってくれるかな?」

まったくこいつは
朝食のデザートでイチゴを食べている今も、御茶の時間のイチゴのデザートで頭はいっぱいらしい。
チェギョンらしい考えに僕は呆れながらも微笑ましく思う。
デザートでこんなにも喜ぶものか。

「チェギョンの好きなデザートをリクエストすれば、料理長は喜んで作るだろ」

「本当? 訓育の前に水刺間に寄ってもいいかな?」

「直にリクエストしに行くのか?」

「…だめ?」

そう言ってチェギョンは下から僕を見上げた。
こいつお得意のお願い光線だ。
瞳をうるうるさせ僕を見上げる この光線。
たまに思う
こいつは絶対に解ってやっているんじゃないかと
僕がこの光線に弱いって事を
いや チェギョンのこのお願い光線は僕だけじゃなく 宮全体が弱い。
チェギョンにコレを出されたら断れる人間は今の宮には居ない。
…一番断れないのは僕だけど。


「チェ尚宮、訓育の前に水刺間に寄ってやってくれないか」

「はい」

「それと、今日のチェギョンの予定は?」

「本日は午前中に訓育、昼食後は皇后様、へミョン姫様と刺繍の予定であります」

「姉さんと?」

「はい」

あの姉さんが刺繍?
刺繍ところが裁縫自体が苦手なはず
それが刺繍だと?
…何が嫌な予感がする


「シン君? どうしたの? ここにシワ寄ってるよ。考え事?」

チェギョンの指が僕の眉間に触れシワを伸ばす
その指を掴みテーブルに起き ギュッと握る

「チェギョン。御茶の時間、一緒に過ごそうな」

「え? うん。いつも一緒に過ごしてるじゃない。可笑しなシン君。はい、あ~ん」

「ぐっ」


柔らかな笑顔を見せ チェギョンはミルクたっぷりのイチゴを僕の口に入れた。

口いっぱいに甘酸っぱさが広がる
それを呑み込み

「約束だからな」

チェギョンの頬を手の甲で撫でた。


…コン内官やチェ尚宮・女官達が居なければ 今ここでチェギョンのそのふっくらしたイチゴより紅い唇に口付けるのに

…いや
口付けるだけじゃ終わらないな
イチゴの様に甘い香りを放つチェギョンの躰中を堪能し喰らい尽くすだろ

そう
昨夜のようにー・・・

「シン君、本当、このイチゴ甘いね」
昨夜のチェギョンはこのイチゴ以上に甘かった

「シン君には甘過ぎるかな?」
…甘いのが苦手な僕が唯一 喰べられるのがチェギョンだ

「どの果物よりイチゴが美味しいよね?」
チェギョンは人生で一番美味しい果実だ

「ずっと食べていられるわ」
ああ、そうだ
僕はいつだって どこだって 何度だってチェギョンを喰べていたいんだ

昨夜の様にー・・・

「…んっ…シ、ンく…ん…」
頭の中に昨夜の艶めき恥らう瞳のチェギョンが僕の下で揺れ
甘い吐息交じりに僕の名前を必死に呼んでいる…




「…君? シン君?…シン君!!」
肩を揺すられ飛んでいた思考が戻る。

「あ?」

僕の下ではなく
目の前のチェギョンの大きな瞳と視線が合う。

「シン君、どうしちゃったの?
さっきから上の空で何考えてるの?」

不思議そうに覗き込んでいる大きな澄んだ瞳。
無垢の澄んだ瞳のチェギョンに自分の欲望を見透かされそうで 僕は慌て視線を逸らした。

「し、執務でちょっと厄介な案件があってそれを思い出したんだ」

僕は何事も無かった様に冷静に話す。

「大変ね。今日中には終わるの?」

能天気で人を疑う事を知らない僕の妻はすぐに信じた。、

昨夜のチェギョンの姿を思い出し 欲情していた。
今すぐにでも…抱きたい。
…朝からこんな欲望を抱いていると知ったらチェギョンはどうするだろ?


「シン君のバカ~!! 変態! エロ皇太子!!!」


とかなんとか言うんだろうな。
イチゴの様に真っ赤な顔をして。
それを思うと可笑しくなり緩む口を手の甲で隠した。


「今日のシン君なんだか変よ。イチゴに何か入ってたかな?」

「イチゴ…」

ああ
…そうか
イチゴが僕の欲望を駆り立てたんだ
東宮に漂う甘い香りはチェギョンの香りそのものなんだ

確かイチゴの花言葉に
誘惑
甘い香り
あなたは私を喜ばせる
無邪気
…なんてあったな。

どれもチェギョンそのものだ。

イチゴの香りは花言葉通り
無邪気な甘い香りで僕を誘惑し
僕を喜ばせる。


イチゴの香りはどの媚薬より僕を狂わせる。
合房の時に呑まされた宮秘伝の漢薬よりも効き目は抜群だ。



「シン君、そろそろ食べ終えて執務に行かないと」

僕としてはまだまだこうしてチェギョンと居たいが
控えているコン内官が先程から何気なく時計を見ているのが目の端に入っていた。

「そうだな。チェギョン、訓育しっかりな」

「うん。シン君も執務、無理しないでね」

「イチゴのデザートの事ばかり考えるなよ」

「は~い。考えない代わりにこのイチゴの香りが宮全体に漂っていたらもっと頑張れるのになぁ~」

宮全体にイチゴの香りだって?
冗談じゃない!
チェギョン おまえには頑張れる香りかもしれないが
僕には忍耐 辛抱 我慢を強制される香りだ。
今でさえ限界なのに

この香りの中 執務なんて……拷問だ




「シン君とのお茶の時間を楽しみに頑張って来ます」

そう言ってチェギョンはチェ尚宮と共に訓育に行った。
…違うな 訓育の前に水刺間に寄り料理長にデザートのリクエストをしに行った。

「僕も今夜のデザートを楽しに頑張るとするか」

チェギョンの背中を見送り小さく呟いた僕の声に後ろに控えているコン内官が反応した。

「殿下、ご用意するデザートがあれば料理長に伝えますが」

「いえ、残念がら僕の好きなデザートは料理長ではなくチェギョンしか用意出来ないで。さ、山積みの書類を片付けに行きましょう」

「はい。殿下」


今夜のデザート…チェギョンを思い執務室に歩く僕の足取りはほんの少しだけ軽かった。

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