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日々のコト♪♪

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「あれ チェギョン1人?」

「うん。ファン君は今来たの?」


昨夜、インと遅くまで飲んでいたせいで、今朝はなんだか身体が怠く、1限目の講義を自主休講した僕はカフェテラスに来た。
午前中のカフェは学生も疎らで静かだ。
いつもの場所。
カフェの奥、8人掛けの席にチェギョンが1人、スケッチブックを手に座っていた。
「チェギョンが1人なんて珍しいね」
「一限目が休講になって、ガンヒョンは図書館で調べ物でシン君は講義中よ。私はここでスケッチしてたの。ファン君、どうぞ」
チェギョンがテーブルに広げてある色鉛筆や本やらを片付け、僕に目の席を進めた。
「あ、いいよ、そのまままで。何を描いてたの? 課題?」
「ううん。時間潰しにここから見える風景を描いてるの」
少し見せてくれたスケッチには、カフェから見える木やら建物が柔らかいタッチで色鮮やかに絵描かれていた。
「相変わらず上手いな」
「そうかな? これは好きなように描いてるからイタズラ描きみたいなものよ」
「チェギョンの絵やデザイン、感性ってすごいと思うし、僕は好きだよ」
「本当? 嬉しい」
はにかんで頬を赤らめスケッチを見るチェギョン。
その姿は、可憐で無垢な少女のようで・・・

トクンッ

ん? なんだ?
今、胸の奥の何かが鳴った気がした。

「ファン君はどうしたの?」
「朝起きれなくて」
「ファン君が? 珍しいわね」
そう言いながらチェギョンの目はスケッチを見、手は忙しそうに色鉛筆を走らせていた。

邪魔してはいけない気がして
何も言わずにスケッチをするチェギョンを見ていた
静かなカフェの空間
チェギョンの絵描くリズムが響いて、心地よく思える

楽しそうにスケッチをしているチェギョン。

僕は鞄からカメラを取り出し、チェギョンに向けシャッターを押した

カシャ!

シャッター音にチェギョンが顔を上げる

「いま撮ったの?」
驚いた顔のチェギョンに返事をする代わりに僕はまたシャッターを押す
「ちょ、ちょっと待って!」
慌てて手を伸ばしカメラのレンズを隠そうとするから、僕は少し後ろに仰け反る
「ごめん。チェギョンがあまりにも楽しそうで良い表情してたから、つい」
「ついって…、撮るなら言ってから撮ってよ」
少し頬を膨らませ怒ったように抗議するチェギョン。

頬を赤らめ可憐な少女の表情
楽しそうにスケッチしてる表情
驚いた表情
頬を膨らませ怒った表情

皇族なのに表情がコロコロ変わるチェギョン
まるで百面相だ。
皇族がこうも感情を出していいのかと思うけれど、そこがチェギョンの良いところなんだ。
シンも言ってたな。

「あいつの表情を見ていたら飽きない。最高の被写体だ」

って。
確かに、スタイルだけが良いモデルや顔だけが良いモデルよりも撮りかいがあるかも。


「チェギョン、撮るよ」
「えー!まってまって」
チェギョンは目を閉じ小さく深呼吸をしてから、ゆっくり目を開けカメラを見つめた。
レンズフィルター越しに見るチェギョンの表情は…
穏やかで落ち着いていて柔らかで輝く笑顔。
プリンセススマイルのチェギョン。

ートクンッ

…あ、れ? まただ。
また胸の奥が鳴った。
なんだろ? これ・・・?
カメラを下ろし、僕は不思議な感覚に落ちそうになるのを、軽く頭を振り、それをなんとか抑えた。

「ファン君どうしたの? 大丈夫?」

「あ、うん。大丈夫。チェギョンのプリンセススマイルがあまりにも見事でびっくりして」
この気持ちを悟られたくなく、誤魔化すようにェギョンをからかう。
「それどういう意味?!」
「だって、妃殿下になった頃はよくピースしてただろ? あの頃に比べたら妃殿下は大人になったなぁと思って」
ニヤッと笑ってチェギョンを見ると、決まりが悪そうに顔をぱっと赤らめた。
「それは言わないで。あの頃は何も解らなくて写真を撮る時はピースサインが礼儀だと思っていたんだから」
唇を突き出し話すチェギョン。
先程のプリンセススマイルをした同じ人物だとは思えない。

カシャッ

僕はまたシャッターお押した。

「あー! また撮った。撮るなら言ってよ」
「撮るって言ったら、チェギョンはプリンセススマイルするだろ?」
「ダメなの?」
「残念ながら僕はプリンセススマイルには興味なくてね。妃殿下のチェギョンの写真なら誰でも撮れるだろ?」
「ファン君も同じ事言うのね」
「同じ事?」
「うん。シン君にね『おまえに撮るって言うとプリンセススマイルするから言わない。俺は妃殿下のチェギョンより素顔のチェギョンが撮りたい』って前に言われたの。だからシン君が撮ってくれる時はいつも隠し撮りのような感じで、いつ撮られてるかわからないの」
不満そう言うチェギョン。
「皇太子殿下が妃殿下を隠し撮り?」
「そ、そんな変な意味じゃなくて!!」
ニヤッと笑って聞くと慌てて否定するチェギョン。
「くくっ。わかってるよ。チェギョンは本当、昔も今もからかいがある」
「昔って、ファン君達はからかいなんて可愛いものじゃなくて、意地悪してたじゃない?」
あの頃を思い出したのか、チェギョンは怒りをこめて僕を睨みつけた。
ー・・・空気が変わった
チェギョンの周りはいつもふんわりしているのに、今は冷たくピリッとした空気だ。
普段見たことないチェギョンのその表情に、この空気に僕は戸惑い視線を伏せた。
そうだよな。
あの頃の僕達はチェギョンに酷い態度をとっていた。
からかうなんて可愛いものではない。
それに、僕達はあの頃の事をきちんと謝ってはいない…

「チェギョン、あの頃はごめんね」

僕は睨んでいるチェギョンの目を見て遅過ぎる謝罪をした。

チェギョンは睨んだまま何も言わない。
僕らの間に沈黙が流れる。

・・・今更謝ったて許せるはずないよな
チェギョンの視線に耐えられなくなり、瞼を閉じようとした僕に

「ファン君」

いつもの柔らかいチェギョンの声で呼ばれた。
閉じかけた瞼を開けると、先程の睨んだ目はなく、いつもの優しくて柔らかいクリクリした大きな目が僕を見ていた

「もう済んだ事よ。いつまでも私が気にしていると思う? ファン君がからかうから、私もお返ししただけよ」
イタズラが成功して嬉しそうに笑い、ピースサインをした。
「はぁ~。なんだよそれ」
僕の身体から力が抜ける
いつの間にか僕は身体が強張っていたんだ。
いくら庶民出のチェギョンでも、今じゃ立派な皇族、皇太子妃殿下だ。
チェギョンの睨みはシンと同じ空気も作りだし、相手を平伏せさせるには充分な力を持っているんだ。
お妃教育の成果なのか、それとも、元々の天からの賜物か・・・
…ま、本人は気付いてないだろうけどね。

「チェギョンってすごいよ」

カメラを構えシャッターを押しながら僕は呟いた。

「それ、イン君にも言われた」
「インにも?」
「うん。チェギョンお前ってやっぱりすごいって。…何がすごいのかな?」
唇に人差し指をあて、首を傾げ考えるチェギョン
う~ん?!
と、唸り声が聞こえそうな程考えるチェギョンに僕はシャッターを切る。
チェギョンが首を左に傾けた時
「あ」
レンズフィルター越しに見えたあるモノに僕は思わず小さな声を出した

チェギョンの左耳の後ろ
紅い痕
それはたぶん・・・
シンの自分だけのものだという印

ズキン

ん? 今度はなんだ?
…胸がちょっと苦しい


「ね、何がすごいの?」

僕の小さな声は聞こえてなかったのか、チェギョンが考えても無理!って感じで僕に聞いてきた。

「ん? チェギョンのすごいところは…」

カメラを下ろし、チェギョンを見る

「あのシンを独占欲の塊にして夢中にさせてる・・・ところかな?」

左耳の後ろを指差し言うと、チェギョンは頬を一気に赤くなり髪をグルグルと首に巻き付けた。

「大丈夫だよ。さっきチラッと見えただけだから」
「もぉ~やだ…恥ずかしい」
テーブルに突っ伏し、小さく聞こえる泣きそうな声のチェギョン。
「皇太子夫婦が仲が良いのは国民としては嬉しい事だよ」
苦しい胸を隠すようにチェギョンをからかう。
「?~っっ」
唸って顔を上げないチェギョン。
「あのシンにそこまでさせるチェギョンはすごいよ、本当。愛されてますね~
チェギョン妃殿下は」
ふざけて言うと、チェギョンはむっくと起き上がり
「ファン君からかってるでしょ?」
赤く染めた頬をぷくっと膨れ僕を睨んだ。
さっきの睨みとは違い、まったく怖くもない。
シャッターを切り続ける僕に
「ファン君!!」
チェギョンが声を上げるけど、やめてあげる気はない。
今、この瞬間のチェギョンを僕だけか撮れるんだから。

…ん?
んん?
え?
なんで?
…どうして僕はこん風に思うんだ?

チェギョンはシンと夫婦で
チェギョンはシンの大切な人で
チェギョンは妃殿下で
チェギョンはシンと同じぐらい大事な仲間…なのに
なんだよ この気持ち
僕どうしたんだ?
これじゃまるで僕はチェギョンに…
僕が?

「まさか…ね?」

「何がまさかなの?」

レンズフィルター越しにチェギョンと見つめあったまま、僕は凄い勢いで色々と考えた。


僕が?
いやいや、まさか?
だってそんな・・・
昨日インに忠告したのは僕だ
その僕・・・が?

「あ!」

チェギョンの視線はレンズを通り越し、嬉しそうに声を出した。
これ以上ない嬉しそうな表情でぱっと顔を輝かす。
先程のプリンセススマイルより、もっと
数倍も輝いて幸せに満ちた笑顔。

ドックン!
…今日一番大きな何かが胸の奥で鳴った。
「ふっ」
短く息を吐き

カシャ

僕は最後の一枚を撮った。
僕に…レンズに向けられた笑顔ではないけれど、チェギョンの一番良い顔をカメラに収めた。

チェギョンにこの笑顔をさせられのは、この世界でただ一人。
アイツしかいない。

イ・シン

チェギョンの大切な人で
僕の大事な友人

カツン、カツン

革靴のリズムが近づいて来る
心無し急いでいる様な・・・

あ、ヤバイな。
カメラでチェギョンを撮っていたなんて知られたら…僕の命がないかも。
いや、命よりも先にカメラが危ない。
こっそりカメラを鞄にしまう。

「シン君」

チェギョンの弾む様な声。
僕の後ろにシンの気配を感じ振り向き片手をあげ挨拶する。

「よっ! シン」

「ファン」

明るい僕とは対照的な低い声の不機嫌そうなシン。

写真撮ってたの見てた?
カメラが入っている鞄を咄嗟に掴む。
シンの鋭い視線が僕から離れない。
一瞬にして冷たい汗が背中を伝う。
なんとも言えない緊迫感が僕をジワジワと締め上げる。
…だめだ。耐えられない。
自分から暴露してラクになろうかと思った時

「ファン、今来たのか?」

シンより少し遅れてやって来たギョンの間の抜けた声が、この場の緊迫感を解いた。

「朝怠くてね。講義出ないでカフェに居たんだ。偶然、チェギョンも休講になったらしくて、チェギョンのスケッチ見てたよ」

嘘は言っていない。
余計な事も言ってない。

「チェギョンと2人きりで?」
シンの目が僕を見下ろす。
…ああ。こんな光景、昨日見たな。
見下ろされてたのは僕じゃなくインだったけど。
「ぎゃはははっ! シン、いくらアヒルが好きでもファンに嫉妬するなよ~。相手はファンだぜ?何もあるわけないだろ。なぁ? ファン」
ギョンが高笑いし僕を見る
「当たり前だろ。あるわけないよ」
「そうだろ? ほら、ファンもこう言ってるんだし、シン、その空気を消せよ」
ギョンがシンの周りの空気を両手で大袈裟に払う。
「やめろ、鬱陶しい」
シンがギョンの頭を叩き、チェギョンの隣に座る。
「いってぇ~!! バカになったらどうするんだよ?!」
「大丈夫だ、ギョン。それ以上バカにならない」
「アヒル! ちゃんとシンを躾ておけよ」
「残念ながらギョン、躾けるのチェギョンじゃなく俺の仕事だ」
ニヤリ笑うシンに、チェギョンの顔が真っ赤になる。
それをギョンがまたからかって騒いでる


いつもの日常が始まった
ギョンが騒いで
そのうち、皆も加わってもっと賑やかになるんだ
その中で、シンとチェギョンはお互いに寄り添っていちゃついて、また、ギョンがからかって騒いで、シンやガンヒョンに冷たくされ、それを見て皆が笑って…

僕はこの日常が大好きだ。
この日常がずっと続けばいい

ただ、インには言わないと。
「なに騒いでるんだ?」
いつの間にかインが僕の隣に来て居た。
「僕、インの気持ちがわかったよ」
「は? なにが?」


「シンとチェギョンが大切な仲間だってことに」


インは解らないって顔をしてるけど、勘のいいインは直ぐに気付くだろう。
その時は、インとまた朝方まで飲み明かそう。
大切な仲間の話をしながら


今日撮った写真は僕の宝物にさせてもらうよ シン

シンはいつも傍でその笑顔を見れるんだから
写真の笑顔は暫く僕が独占してもいいよね?

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    こんばんは(^。^)y-.。o○

    地味な存在のファン君にドキッとさせられたぁぁ~~!
    チェギョンちゃんはやっぱり妃宮よりシン・チェギョンなんだよね❤

    [ - ]

    2014/5/12(月) 午前 3:48

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