4度目の世界選手権で念願の世界一を狙った田代未来(25)=コマツ=は、またしても分厚い壁に阻まれた。クラリス・アグベニェヌ。リオデジャネイロ五輪準決勝や、昨年の世界選手権決勝―。ことごとく田代に苦杯をなめさせてきた最強のライバルは、やはり強かった。再び決勝で相まみえ、10分を超える死闘の果てに惜敗。これで対戦成績は1勝9敗。2人は抱き合ってたたえ合った。
「まだ弱いなと感じる。追い抜けそうでも追い抜かないと意味がない。アグベニェヌを倒すためにやってきたので、もう一度、しっかり頑張りたい」
アグベニェヌ対策は練っていた。圧倒的なパワーを誇る絶対女王に対する答えは「スピード」だった。田代は「足を止めないこと。圧をかけてくる相手に対して止まらずに対応すること」。じっくり組み合ってはパワーの利を生かされてしまう。かく乱して勝機を探る腹づもりだったが、相手が上だった。
天敵であっても、田代はアグベニェヌを「尊敬する選手」だと言う。強さはもちろん、「本当に練習する」と柔道への真摯(しんし)な姿勢にほれ込む。1年前の決勝では、勝負が決した後、「五輪のファイナルでまたやろう」と声をかけられた。
「必ず勝ちたいと思う選手がいる。だから自分はもっと強くなれる」と田代。1年後の東京へ、ライバル物語にはまだ続きがあると信じている。