雨中の練習を終え、着替えた藤嶋に「WHIPって知ってますか?」と聞いてみた。
「何か聞いたことはあるんですけど、よくわかってないんですよ」
投手を評価する指標の一つで、被安打+与四球を投球イニングで割る。要するに1イニングあたり、自分の責任で何人の走者を出しているかを示している。大リーグでは公式記録なのだが、実は藤嶋のWHIPが大変なことになっている。
19イニングを投げて0.53。防御率が0.00なのだから当然かもしれないが、この数値は優秀の上に超がつく。例えばセ・リーグ最多セーブの山崎(DeNA)が1.13で、パ・リーグの松井(楽天)でも0.78。同じく最多ホールドもセのジョンソン(阪神)が0.84で、パの宮西(日本ハム)が0・80。つまり藤嶋は球界屈指のリリーバーである。そんな話をしていると、小林正人球団広報がなぜか胸を張っている。
「世界一。実は怪物…。WHIPといえば、黙っていられません。僕のことをそう書いてくれたのは、中日スポーツなんですから」。そんなことがあったのか! 過去記事を調べてみたら、2011年オフに見つかった。左のショートリリーフとしてリーグ連覇に貢献した小林さんのWHIPは、驚異の0.55だった。最多勝&最優秀防御率の吉見が0.87で、MVPの浅尾が0.82。そんな両輪を上回る数値は、その年の大リーグにもいなかった。
「そうなんですか。点を取られないようにと思って投げていますけど、ランナーを出さないにこしたことはないですからね。じゃあ30イニング投げて、コバさんを超えられればいいですね!」。藤嶋は元気よく答えてくれた。
ちなみに先発投手の目安は1.20以下がエース級と言われているが、大野雄は1.08でリーグ2位。少なくともWHIPでは7勝7敗の投手ではない。藤嶋ともども、誇っていい数値である。