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【羽ばたけ中部勢】

インドア派から卓球大学団体日本一 愛工大・石田、運命変えた「金箔の賞状」

2019年8月28日 紙面から

全日本大学総合選手権(団体の部)でチームをけん引した愛工大・石田葵=愛知県豊田市の愛工大八草キャンパスで(高畑章撮影)

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 運動は大の苦手だったが、金箔(きんぱく)付きの賞状ほしさに取り組み始めた卓球で心身を鍛え、大学日本一を手にした選手がいる。愛工大4年で女子主将の石田葵(22)。7月に開かれた全日本大学総合選手権大会(団体の部)では、22年ぶり4度目の優勝に貢献した。10月の同選手権大会(個人の部)で、有終の個人タイトルを目指す。

 地元・愛知県のスカイホール豊田で、偉業を成し遂げた。5年連続ベスト8止まりだった愛工大は、ベスト4を懸けた専大戦を3-2で突破。勢いを付けて臨んだ決勝は、東洋大を3-0で制した。試合後、石田は卒業生による祝福の校歌で「グッと込み上げるものがありました」と余韻に浸っていた。

 自身が生まれた1997年以来となる団体優勝。前回を知るはずもなく「後から母親に言われて気付いた」とほほ笑む。大会通じて第2シングルスで活躍し、MVPにあたる殊勲賞も獲得。「仲間が他校のエースと対戦する厳しい役回りをこなしたから、私は一点起用となった。チームあっての殊勲賞です」

 卓球を始める前は、特別な習い事もせず、帰宅後にテレビゲームに熱中するインドア派。運動は大の苦手だった。運命を変えたのは、9歳離れた姉・美幸さんが市民卓球大会でとった賞状だ。

 「金箔(きんぱく)がキラキラしていて、皆勤賞でもらえる印刷された賞状とは違った。『何これ~』となって、自分もほしかった」

 当時小1の石田は、父・高敏さんと体育館に通い、競技者のつながりに魅了された。小2から同県安城市のチームに入り、県選抜にもなった。

 中・高は日本一を狙って、大阪の名門校に進んだ。だが、特に高校時代は府大会で同僚との対決に勝てず、全国大会ではサポート役に回った。

 挫折を味わった時、当時の監督から「卓球の力だけではなく、人間性で勝負しろ」と説かれた。自分の練習だけでなく、周囲を見渡すようになった。目標を再設定し、モチベーションを維持する大切さにも気付いた。

 大学3年の昨年から、練習がオフの毎週月曜夜に、教職課程の関連で同県瀬戸市の学習支援ボランティアに参加し、さまざまな性格や境遇の児童・生徒と交流している。両立が厳しい時期もあったが、考え方の多様性を知る経験になったという。

 10月の全国大学総合選手権大会(個人の部)に向け、サーブを磨いている。授業の合間に卓球場を訪れ、ネットに向けて30分以上打ち込むのが日課となっている。「小学生の時からの目標のメダルを狙います」。大学最後のシーズン、個人でも輝いてみせる。 (高畑章)

 ▼石田葵(いしだ・あおい) 1997(平成9)年6月17日生まれ、愛知県西尾市出身の22歳。151センチ、47キロ。西尾市立矢田小、大阪・四天王寺羽曳丘中、大阪・四天王寺高を経て、愛工大に進学した。現在は同大の経営学部経営学科スポーツマネジメント専攻4年。主な成績は、高2の全国高校選抜大会(女子学校対抗)で優勝、大学1年時の全日本大学総合選手権大会(個人の部)女子ダブルス優勝。

 

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