初めて精神科に入った朝か昼かの7月14日
わたしはまだこれから起きる地獄と表すのも生ぬるい日々に気づかないまま隔離室と呼ばれる二重に蓋をされた部屋に入れられた
スマホが持てなくなると言われたのでブロンで引き攣る笑いを浮かべながら看護師さんに向かって、「今友人にしばらく音信不通になるという連絡だけさせてください!」と言った。
嘘だ
私に友人なんて一人もいない、いるのは家族である母と妹だけ。それも先程お別れを笑ってしたばかりである。
看護師に見守られながら隔離室を無音カメラで撮る、まだ観光気分だった。水の流れないトイレと冷たいマットに掛け布団、あとは10cmしか開かない窓も撮った。
私は笑っていた
今からどれだけの時間をここで過ごすのかと考えても、自分の事だとは思えずニコニコしていた。虐待してきた母や罵倒してくる妹と離れられるのは幸せだとすら思った。
スマホをロックし、看護師に渡すと病衣を渡された。見える場所で着替えてほしいと言われた気がする、見えるもなにも、トイレすら剥き出しなのだから隠れるもクソもない。
実は膣にカッターを隠していた私はなるべくバレないよう自然に振舞いながら着替えた。薬物中毒者とは思えないような理路整然とした振る舞いや言動に看護師には「素直でえらいね」と幼稚園児に言うような賛辞をいただいた。
病衣に着替えたらもう看護師がいなくなる、扉が閉まり、ガチャンと2度鍵をしめる音がした。
誰もいない空間にマットとトイレ、緩やかな監視カメラ、私に絶賛の賛辞を送る幻覚の●ッキーの爛れたやつ、ピンクの象。絶好のチャンス。死ぬには出来すぎたシーン。
さっそくいそいそと膣からカッターを取り出しそれを監視カメラに向ける、ざまあみろ、私はお前ら看護師軍を出し抜いた、
信頼など知るか、私の昔からイジメられる理由となったおとなしい顔に騙された奴が悪い。
腕を出し今までの人生に向かって一閃
レイプしてきた犯人に賛辞の一閃
虐待してきた母と妹に万歳の一閃
ざまあみろ、一人でも私のやってることは正しい。
私が地球を救うんだ。
看護師軍が大慌てで二つの蓋を開け部屋に押し入る、私に失礼だぞ静粛にしろ。ほらみろピンクの象が溶けてるじゃないか君らが脅かしたせいだ。
レスラーみたいな看護師に血まみれのカッターを奪われる。そして母のように一喝「どうしてこんなことをしたんだ!!」
そこにいる●ッキーのためだ
拘束帯をセットしたベッドが来た。