埼玉県知事選で、野党四党が支援した新人候補が事実上の与野党対決を制した。安倍内閣の支持率は依然堅調だが、野党勢力を結集すれば、有力な選択肢となり得ることを示したのではないか。
二十五日投開票の埼玉県知事選は立憲民主、国民民主など野党四党が支援した無所属新人の元参院議員大野元裕氏(55)が、自民、公明両党推薦で無所属新人のスポーツライター青島健太氏(61)ら四氏を破った。地方自治体の首長選挙ではあるが、七月の参院選後初の大型選挙での野党勝利は、国政に与える影響も大きい。
第一に、地域事情は違うが、野党候補が一本化すれば与党候補と十分に渡り合えることを示した。
自民党県連と対立する上田清司知事の全面支援を受けた大野氏を立民、国民、社民の各県組織が支持、共産も自主支援となった。事実上の野党統一候補である。
対する与党側は、埼玉県が立民の枝野幸男代表の地元であることも意識して、告示前から二階俊博自民党幹事長や菅義偉官房長官が応援に入るなど国政選挙並みの態勢で臨んだが、競り負けた。
参院選では、三十二ある改選一人区のうち、野党統一候補が十勝するなど善戦した。参院選の改選一人区や衆院選の小選挙区など当選者が一人の選挙では、野党勢力を結集しなければ「安倍一強」の与党にはとても対抗できまい。
今回の知事選期間中、立民、国民両党が衆参両院での会派合流に合意した。衆院会派「社会保障を立て直す国民会議」の合流も検討される。離散した旧民主党勢力の再結集にすぎないが、それでもバラバラよりはましだ。
立民、国民両党には会派合流や知事選勝利を弾みに、ほかの野党間との連携も密にして、自民党に代わる選択肢を有権者に示す責任がある。二〇二一年秋までには衆院選、今年十月には参院補選がある。残された時間は少ない。野党連携の協議を加速させるべきだ。
投票率は5・68ポイント増の32・31%と、〇三年以来十六年ぶりに30%台を回復した。
事実上の与野党対決で有権者の関心が高まったのだろうが、県選挙管理委員会が埼玉を自虐的に描いたギャグ漫画を活用して啓発に乗り出した影響もなしとは言えまい。
地方、国政を問わず低投票率は代表民主主義の基盤を崩す。いまだ30%台とはいえ、投票率がなぜ上昇したのか。選管や各陣営の努力を多としながらも、要因を分析し、今後に役立てるべきだ。
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