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【社説】

日米大枠合意 多国間協調の道探れ

 成果を急ぐトランプ米大統領との日米貿易交渉が決着した。日本は、米国の市場開放圧力に譲歩したものの、米国を多国間協調の枠組みに連れ戻す次の戦略づくりに取り組むべきだろう。

 交渉の焦点のひとつは日本の農業、米国の自動車という政治的に重要な産業での駆け引きだった。

 大枠合意で日本は、米国が離脱する前に環太平洋連携協定(TPP)で合意していた関税の引き下げ水準を牛肉、豚肉などで維持した。半面、日本が求めていた米国への輸出車にかかる関税2・5%の撤廃は先送りとなった。これもTPPで合意済みだったが、対日貿易赤字の削減を求めるトランプ大統領に日本が譲歩した形だ。

 二十五日の首脳会談では、交渉とは別枠として米国産のトウモロコシの購入が突然取り上げられた。詳細は明らかではないが、国内農業への影響を見極める必要があるだろう。

 昨年九月に交渉入りで合意し、わずか一年での決着は貿易交渉としては異例の早さといえる。

 指摘されているように来年秋の大統領選を控え、成果を急ぐトランプ大統領と、日米協調を最重視する安倍晋三首相が折り合う形での合意だったといえる。

 ただトランプ大統領の政策は気まぐれで予測ができない不安がつきまとう。

 日本の基幹産業である自動車への25%追加関税や輸出数量制限について、一連の交渉や大枠合意では「発動しない」との確約を得るには至っていない。

 激化する米中の貿易摩擦で各国の株価が下落し、世界経済の動向は波乱含みとなっている。大統領選が迫り、米国の景気が悪化するようなら、有権者へのアピールとして持ち出してくる懸念は消えない。貿易協定に署名する九月下旬の日米首脳会談で、確約を取る必要がある。

 二〇一七年一月にトランプ大統領が「米国第一主義」を掲げてTPPを離脱してから自由貿易、国際協調体制は大きく揺らいでいる。今回の先進七カ国(G7)首脳会議では、首脳宣言が出せないところまで状況は悪化している。

 日本は自由貿易を重視し、TPP11や日欧経済連携協定(EPA)を粘り強く実現してきた。

 米国との二国間交渉の決着後は、米国をどのように国際協調体制に引き戻すかが日本の重要な課題となる。

 

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