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 不毛な消耗戦を、いつまで続けるのか。

 米国と中国が、互いに輸入する製品に追加関税をかける新たな対抗措置を打ち出した。9月1日以降、年末にかけて、ほぼすべての輸入製品に高関税をかける。

 わずか2カ月前、6月末の首脳会談で、交渉再開と新たな追加関税の見送りに合意したはずだった。首脳間の約束は、それほど軽いものなのか。冷静さを取り戻し、解決に向けた対話を重ねなければならない。

 トランプ米大統領が、中国からの輸入品ほぼすべてに対象を広げる追加関税「第4弾」を8月上旬に決めると、中国は、中国企業が米農産品の購入を一時停止したと発表。750億ドル(約8兆円)分の米国製品への5%と10%の追加関税も打ち出した。止めていた自動車関連の追加関税も再開する。

 これに対抗して、米国は合計2500億ドル(約26兆円)分の中国製品にかけている追加関税を25%から30%に引き上げるほか、第4弾も10%から15%に引き上げることを決めた。

 トランプ氏は、米国企業に対して中国に代わる取引先をすぐに探すよう命じると、ツイートした。規模で世界の4割を占める米中両国の経済を、力ずくで分断しようというのか。グローバル化の流れに逆行する動きは、世界経済を混乱させるだけだ。米中の対立の激化は、各国の金融市場もますます不安定にしている。

 中央銀行である米連邦準備制度理事会(FRB)にも、トランプ氏はたびたび批判の矛先を向けるが、金融政策だけで堅調な経済は維持できない。米中、そして世界経済にとって最善の策は、報復の連鎖を完全に断ち切ることだ。

 米国の公聴会でも、安い価格の消費財にも高い関税がかかることになるとして、各業界から反対の声があがっている。

 知的財産の侵害などで、中国には問題があるという米政府の指摘は理解できる。しかし強圧的な姿勢は中国を硬化させ、前向きな結果をうまないことは、これまでの制裁・報復の繰り返しが証明している。

 春先までの協議で、中国の産業補助金政策の見直しなどで両国は歩み寄ろうとしていた。話し合いを続け、粘り強く着地点を探るしかない。そのためにはもちろん、中国が自らを世界経済にどう調和させるのか、解決策を示す必要がある。

 中国の改革の遅れは、日本や欧州も指摘している。高関税による脅しではなく、多国間も含む対話で決着を図るべきだ。

 対立がエスカレートするほど、解決は遠のく。

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