大瀬良が交代を命じられ、マウンドから降りるシーンを初めて見た。6回。2死からの5連続長打で、今季4度目にして攻略できた。102球目。大瀬良にとどめを刺したのは阿部の左越え二塁打だった。
「あの人のおかげですよ! チームとして大瀬良を打ててないのはわかっていただけに、一発(の威力)ってすごいなと思いました。流れが変わりましたから」
目の前を通った福田を阿部はたたえたが、攻撃を「点」で終わらせず「線」につなげた。逆転のカープのお株を奪う大逆転。大瀬良には全敗どころか全て完投を許していた。この二塁打を打つまで、阿部自身も12打数1安打。福田だって昨季の17打数2安打に続き、今季も7打数無安打だった。
「僕が全然、打ってないことも知っていました。そんなに嫌な感じではないんですが、いい投手なのは間違いない。立ってたら勝手に追い込まれているというか…。だから(初球のストライクから)切り替えられて、次の球をしっかり振れてよかったです」
阿部や福田だけではない。この猛攻で白星をつかんだロメロも意地を見せた。大瀬良と投げ合うのは、なぜか必ずロメロ。4度目にして初めて投げ勝った。そして、忘れてはならないのが9回を締めた岡田だ。
広島戦の登板は7月23日以来だった。この日と同じ3点差で迎えた9回だったが、代打・三好の安打から始まり、菊池涼に適時打。直後に同点2ランを浴びた。結局、延長戦でサヨナラ負けした惨劇から1カ月。くしくも代打・三好から始まり、菊池涼で終えた。とくに三好にはバットを1度も振らせずに三振。連勝してなお借金は11もあるが、負け続けていた男たちの意地は堪能できた。打線は大瀬良を打ち、ロメロは投げ勝ち、岡田はやり返した。夏休みも残りわずか。声をからすファンが喜んでくれるのは、こういう物語と白星なのだ。