三塁打が出ればサイクル安打だった7回は空振り三振。阿部は「スーパースターは打つんでしょうけどね」と苦笑した。それでも活躍は色あせない。5号ソロを含む3安打でプロ初の1試合4打点。今季の安打数も「101」まで伸ばした。
2回2死から九里のフォークを左中間席に放り込み、反撃ののろしを上げた。4回1死一、二塁では左中間フェンス直撃の同点二塁打。5回2死二、三塁では島内の154キロを右前に運び、2点を追加した。
山本と並んだお立ち台。「最高で~す!!」と叫ぶ19歳右腕に目を細めた。「言わせました。まさか2回も言うとは思わなかったんですけど。リベンジしましたね」。もとは巨人・阿部の専売特許。「リベンジ」と表現するいきさつがあった。
本拠地開幕戦だった4月2日の広島戦(ナゴヤドーム)では祖父江につられて叫んだ。同17日のDeNA戦(同)ではインタビュアーに乗せられた。ところが同19日のヤクルト戦(同)では再三けしかけられてもかたくなに別の言葉を紡いだ。
「2回目のときにどこか僕のキャラじゃないなと思ったんです。阿部さんのものを僕が使うのもおこがましいですし」。ただ、ファンが盛り上がるフレーズを完全に封印するのも忍びない。だから後輩に促すと決めた。
ところが、19日はともに上がった笠原に言わせるはずが、恥ずかしがり屋な左腕も拒否。誰も口にせず、本拠地には微妙な空気が流れた。4カ月を経て復活したフレーズに「もう僕は言わないですよ」と阿部。言葉ではなく、プレーで目立つ。(高橋雅人)