日本郵便の保険販売で新たに保険料二重払いや無保険状態の契約が発覚した。かんぽ生命保険をめぐっても同様の問題が発覚。日本郵政グループは事業のあり方を根幹から刷新する必要がある。
問題が発覚したのはアフラック生命保険から委託を受けたがん保険だ。がん保険では、がんになった顧客の加入を防ぐため加入後三カ月間保障は受けられない。
これだと乗り換えの際に三カ月間、新旧保険料を二重払いするか無保険になるかを迫られる。アフラックは二〇一四年、乗り換え後に新規分の保険料だけを支払う制度を導入。日本郵便に対しこの仕組みを使うよう再三申し入れた。
だが日本郵便は「既契約の切り替えは少数」などとして受け入れてこなかった。この結果、顧客が不利益を受ける恐れのある契約が昨年五月から一年間で約十万四千件に上ることが判明した。
つまり日本郵便は顧客の不利益を知っていながらそれを放置し、営業を続けていたことになる。しかも今年十月まで改善せずに営業を続ける方針だ。普通の経営感覚なら一日でもそういった営業はできないはずだ。
がん関連に限らず保険は、人々の不安心理を万が一の場合の保険支払いという形で和らげるビジネスである。それ故、より顧客の気持ちに寄り添った丁寧な営業姿勢が必要なのは言うまでもない。日本郵便にはその姿勢が根底から欠けているのではないか。
日本郵便では、同じグループのかんぽ生命保険販売でも過去五年間に約十八万三千件の不正が疑われる契約が判明している。今回も含めノルマ偏重の経営姿勢が問題の温床になった形だが、そもそも経営陣に事態を改善する意欲があるのか疑問を持たざるを得ない。
政府は日本郵政の株式の57%を保有している。ただ同グループはその株式比率を減らし、政府の影響力から脱してより自由な経営体制を構築する計画だ。
だが顧客を顧みない現在の経営姿勢のまま完全民営化の道を歩んでいいのか。
〇七年に実施された郵政民営化は国民へのサービス向上が目的だった。しかし現状はとても向上したとはいえず、民営化の意義さえ薄れつつある。しかもノルマ至上主義がまん延し働く場としても問題が生じている。
ここはグループ全体の経営刷新を含む解体的な出直しを強く求めたい。
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