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 アフリカ東部の主要国ケニアは、キャッシュレス社会だ。銀行口座がなくても携帯電話で送金や決済ができる。電子マネーの取引額はGDPの約半分だ。

 都市部の出稼ぎ労働者が農村の家族に少額の送金をする利便のために生まれた。いまでは他の国にも爆発的に広がった。

 ドローンによる輸送や、携帯アプリによる農産物管理。先進国で時間をかけて発展した新技術が一足飛びに普及する。アフリカは技術革新の舞台だ。

 そんな大陸のいまと未来を話し合う国際会議、第7回アフリカ開発会議(TICAD7)が28日から横浜市で開かれる。

 アフリカの国は50あまり。その首脳らや国際機関が集う場で相互理解をさらに深めたい。

 大切なのは、「援助する側」と「される側」という上下の関係でなく、対等なパートナーとして向き合うことだ。

 TICADが四半世紀前に始まったときは、日本の経験を生かした援助の模索がテーマだった。21世紀に入りアフリカの経済が地力をつけると、課題は貿易や投資に移った。とはいえ、日本のアフリカ貿易は08年をピークに伸び悩んでいる。

 アフリカの人口は中国やインドに匹敵する13億人。30年後には倍増し、世界の4分の1を占める見通しだ。今年5月には域内の関税撤廃などをめざす自由貿易協定も発効した。巨大な統一市場への期待も膨らむ。

 ただ、危うさも残る。経済成長を石油などの天然資源に頼る面が強く、資源価格の低迷にともない近年は陰りが見える。

 さらに、独裁国家や強権的な政権が少なくない問題は続いている。成長の果実が底辺まで届かず、格差が広がり、政情が不安定になる傾向がある。

 投資を呼び込むには、統治機構の透明性や民主的な制度が欠かせない。日本企業がアフリカ進出に二の足を踏む理由もそこにある。日本政府は、その懸念を率直に伝えるべきだ。

 貿易や投資の面では、中国がアフリカで突出した影響力を示すようになった。00年からはTICADに対抗するように、3年ごとに中国アフリカ協力フォーラムを開いている。

 しかし、日本が中国との競合意識に走っても、建設的ではない。中国からの多額の借金を抱えることへの警戒感は、アフリカ各国の間でも増している。

 この大陸の発展はまだら模様であり、貧困解消や保健衛生、教育の改善など、人々の生活基盤を底上げするための課題は残されたままだ。砂漠化など気候変動の影響も見過ごせない。

 「援助から投資へ」が時代の流れだとしても、支援の原点を忘れてはならない。

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