僕は彼を知っている。この本の後ろのほうに彼のプロフィールが載っていたが、僕と彼とのつながりを示す時代が省略されていた。なのであまり僕から彼に馴れ馴れしく友達ずらしては迷惑なのかなと遠慮する。なのでひとつだけ思い出話を紹介するとすれば、もう10年くらい前だが、彼と僕とあいつとあいつとで、ある演劇を王子で観たあと、朝方まで居酒屋でその演劇の劇中のひとつのセリフ「バカヤロー!」の意味を解釈をしつつ、映画とは何かに花が咲き乱れた、あの日の夜を僕は忘れない。もう朝まで起きてるのは出来ないからだになっちまったけど、死ぬまでにもう一度でいいから、あのメンバーで『魔女の宅急便』の「にゃーん問題」についてでいいから徹底的にギロンしたい。
MENSAとは、イギリスに本部をおき、全人口のうち上位2%のIQ(知能指数)を有するモノが集まる国際的グループのことらしい。彼はメンサの会員なんだそうだ。上位2%と聞くと超エリートに聞こえるけど、50人に1人と見れば、あんまりレアじゃなく思えてくる。
本のタイトルには「メンサ弁護士に挑戦!」ってあるので、「メンサに挑戦」するんじゃなく、彼に挑戦する本。70個の問題と解説が載っていて、ときどきコラムで整数に関するオモシロネタが挟まれている。パラパラと20分くらいで読み終えた。あまりきちんと真面目に解かなかったけど、だいたい挑んだ。問題の構成は、基礎編、応用編、完成編の3段階になっていて、しかも若い番号の問題の解き方を活用して解ける問題も後半にあるので、ステップアップしていけるかんじ。
僕は彼のことを知ってたってのもあるし、僕の場合仕事柄こういうパズル的な問題を考えたり悩んだりすることに慣れているってのもあるから、わりかしちゃんと読むことが出来たんだと思う。もし普通の98%の民衆がこの本を手に取ったら、まともに問題に挑戦しようとするだろうか。そう、そもそもこの本のこの問題を解く必然性(モチベーションというか、ヤル気というか)が我々には無い。メンサ弁護士に勝てっこないのは分かっているので、そもそも挑戦なんておこがましい。
確かに集中して時間をかけて考えなければ解けないパズルがたくさん紹介されているが、どれもなんとなく見覚えがあるものばかりで、解き方を「知ってる」ものが多かった。それもそのはず、全部じゃないけれど、多くの問題が「中学入試問題」の類題や、公務員試験の数的処理、あるいは(専門家のあいだで)有名なパズル問題なのだ。僕はかつて中学入試や公務員試験やSPIなんかのことをいろいろ調べていたから、知ってた問題が多かった(解けるかどうかは別)。前書きにも「難関中学入試とは云々」についての話が載ってる。だからメンサ弁護士に挑戦というよりは、難関中学入試問題に挑戦!っていう印象が残った。
きっとメンサのメンバーたちは、いつもいつも、僕たち98%の衆愚には問題の意味すら理解できないような超難問を解きあったり出し合ったりしてエレガントな生活を過ごしておられることだろう。そういうガチメンサ難問を煽りに煽ってもっと考えてみたかった。そしたら僕も紙と鉛筆を引き出しから引き出して小一時間悩んで、それでも解けず「季さん、参りました!すんませんでした!答教えて!」と頭を下げられた。
いくつか面白いなと思った問題を紹介しよう。考えてみてちょーだい。メンサにチャレンジ!
問題07
482167と395や、25983と7416のように、1から9までの数を1回ずつ用いてふたつの数を作る。このふたつの数をかけ合わせた時、答えが最大になるのは、いくつといくつの時か。
問題54
ある日貯金箱をあけてみた。5円玉、10円玉、50円玉、100円玉が全部で70枚入っていた。硬貨ごとに金額を数えると、金額の比率は4:6:10:15であった。貯金の総額はいくらか。
問題68
赤い帽子3つと白い帽子2つがある。このなかの3つをA,B,C3人にかぶせ、残りのふたつは3人に見せずに隠す。3人はそれぞれほかのふたりの帽子は見えるので色が分かるが、自分の帽子の色は分からない。また隠された帽子の色も分からない。
3人に「あなたの帽子の色が分かりますか?と質問した。まずAは「わかりません」と答え、それを聞いたBも「やはりわかりません」と答えた。するとCは「Bの答えをきいてわかりました。」と言い、自分の帽子の色を正しく答えた。
Cの帽子の色を言え。またその理由を述べよ。