まだ勝機は残っている。そう期待した延長10回裏は、5番手の遠藤に3人でねじ伏せられた。彼の経験の浅さが僕が抱いた望みの理由だった。
「焦ることなく一人ずつ投げようと思いました」。プロ初セーブ。今どきの20歳は気後れすることなど知らないようだ。そして、気付いた。広島のチームセーブ数はこれで16。途中からクローザーの座を離れている鈴木博でさえ14セーブ。12球団最少の数だった。
4連覇に黄信号が灯っている理由が、ここににじみ出ているのかもしれない。遠藤が誇らしげにウイニングボールを持ち帰る30分ほど前には、10セーブ目をかけてマウンドに上がった中崎が、中日打線につかまった。1点差のあと1人、あと1球から福田に同点打を浴びる。
通算115セーブの中崎が打たれた次は竜の現クローザー・岡田がやられた。1人目の野間は上々の空振り三振。続く鈴木に左翼フェンス直撃の二塁打を打たれ、投げっぷりが怪しくなった。代打・メヒアを申告敬遠で塁を埋めたのに、安部にストレートの四球で満塁。会沢に右前に運ばれたのが決勝点となった。
「使っているのはこちらだから」。3連投というところも含め、与田監督は岡田への風を防ぐ壁となった。経験のある投手が立て続けに打たれ、浅い遠藤がセーブをつかむ。取材歴豊富なある記者がつぶやいた。「岩瀬さんって、本当にすごかったんですね」。重圧。緊張。やったことがない僕でも想像はつく。割に合わぬ役どころだが、誰かがやらねばチームは勝てない。救いになるかは別として、今季はクローザー受難は中日だけではない。セ・リーグで「安定」という言葉がふさわしいのは、DeNA・山崎だけだろう。
借金12の5位。分相応に来季を見据えたい。太い方程式の確立は、巻き返しへの必要、十分、絶対の条件だろう。その輪郭だけでも見て、シーズンを終えたい。