6球目が外れ、フルカウントになった。今季、ここまで10打数無安打と相性の悪いカウント。福田の頭の中を巡ったのは、相性よりも別のことだった。「大瀬良は四球を出したくない投手。見ていても、フルカウントから甘く来ていた」。必ず甘く来ると信じ、神経を研ぎ澄ませた。
0ー1の6回2死走者なし。一発がほしい場面だった。実際、カットボールが甘くきた。渾身(こんしん)の一振り。快音が響き、地鳴りのような大歓声も起きる。福田は「どうかなと思った当たりだった」と口にしたが、打球はグングン伸び、バックスクリーンへと達した。起死回生の13号同点ソロだ。
「本塁打が打てればと思った。唯一の甘い球を捉えることができた」
大瀬良には、前回対戦まで今季は3戦3敗。1完封を含め、いずれも完投を許していた。福田も5打数無安打。それでも今回は「1、2打席目の感覚で勝負できると思った」と言う。状態は悪くない。「何とかしなきゃいけないと思っていた」。その強い気持ちも難敵を打ち砕くことを後押しした。(島田明)