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 	人工知能(AI)の急速な発展を支えるハードウエアの主役として「GPU」とよばれる半導体が注目を集めている。もともとはパソコンゲームなどでCG(コンピューターグラフィックス)を動かすために使われていた画像処理用の半導体だ。高速で膨大な計算ができるGPUの特性を活用して大量のデータを短時間で学習できるようになったことが、AI発展の突破口になった。
 米グーグルのアルファ碁が世界のトップ棋士を破るなど、AIが注目を集めている。病気の診断や自動運転など、社会への応用も期待が高い。深層学習(ディープラーニング)と呼ぶ新技術の登場でAIは急速に発展してきた。
米グーグルのアルファ碁が世界のトップ棋士を破るなど、AIが注目を集めている。病気の診断や自動運転など、社会への応用も期待が高い。深層学習(ディープラーニング)と呼ぶ新技術の登場でAIは急速に発展してきた。 この深層学習を使えばAIは人間に頼らずに学習できるが、学習でも実行でも膨大なデータを処理する必要がある。通常のコンピューターでは頭脳にあたるCPU(中央演算処理装置)と呼ぶ半導体がこうしたデータ処理を担当する。しかし深層学習に必要なデータはあまりに多いので、CPUだけでは時間がかかりすぎてしまう。
 そこで使われるようになったのが、画像処理用のGPUだ。アルファ碁では多数のCPUに加えて約180個のGPUが使われ、開発が進む自動運転用のシステムでも周囲の人や物を認識する技術にGPUが活用されている。
 CGなどの精細な映像は、立体を三角形に細かく分割して、画像処理をする。個々の三角形につける色や質感などの時間ごとの変化を表示するため、単純だが膨大な計算が必要になる。GPUはこうした計算に特化した半導体で、最新型のチップにはコアと呼ぶ小さい計算機が最大で約5000個並ぶ。GPUを手掛ける米半導体大手、エヌビディアの広報担当者によると、翻訳の学習に使う場合でCPUでは2個で半日かかる計算を、GPUは1個でも6時間で終えられるという。
 CPUはプログラムを動かすなど計算以外の機能を持つのでコアは大きくなる。ひとつのチップには最大で20個ほどのコアしか入らない。GPUは機能を計算に絞ることでコアを小型化。CPUの200倍以上のコアを1個のチップに詰め込んで、CPUを大幅に上回る計算性能を実現する。メモリーとのデータのやりとりでも、規格が決まっているCPUに比べて高速化できる利点がある。
 GPUの計算の速さに目をつけた東京工業大学教授の青木尊之さんは、同大のスーパーコンピューター「TSUBAME(ツバメ)」にGPUを導入した。最新GPUを搭載したAI向けなど業務用のボードは100万円を超えていて、市販品で20万円強のCPUに比べて高いが「価格当たりの計算能力はGPUのほうが高い。計算が速いだけでなく、小さくなって消費電力も抑えられた」と青木さんは説明する。ツバメは省エネを競う世界ランキングでトップになり、膨大なデータの処理が必要なAIの学習などに活用されている。

新型GPUを手に講演する米エヌビディアのジェンスン・ファン最高経営責任者(8日、米ラスベガス)=ロイター
GPUの歴史は古く、1970年代に登場したパソコン用部品が源流とされる。以前から高速に計算できるGPUの長所をAIなどの他の用途に活用する試みもあったが、使い勝手が悪くうまくいっていなかった。GPUを動かすためには、コンピューターの技術の中でも特殊な知識が必要だったからだ。
 この不便さを解消したのが、ゲーム向けのGPUを主力にしていた米エヌビディアが2006年に公開した「CUDA(クーダ)」と呼ぶソフトウエアだ。このソフトを使えば、通常のコンピューターを動かしている知識でGPUを動かせる。ソフトは無償で公開され、大学の授業などでも活用された。「普通の人が使える環境が整った」(青木さん)ことがきっかけになり、GPUがスパコンやAIで活用されるようになった。
 AIへの応用で最初に注目されたのは「ILSVRC」という世界的な画像認識のコンテストだ。12年の大会で、世界各国の研究チームが1%ほどの精度の改良で競う中、カナダのトロント大学の研究チームが10%も精度を向上させて大差で優勝した。GPUを活用した深層学習を導入したAIで、大量の画像データを学習した。
 GPUを使ったAIは自動運転などのほかにも、様々な分野での活用が期待されている。コンピューター断層撮影装置(CT)で撮影した画像から病気を見つけて医師の診断を助けたり、工場で不良品を判別したりする研究などが進む。(遠藤智之)    スポンサーサイト
         
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