魔法少女リリカルなのは DOUBLE STANDARD 作:トータス
ディエチが何を持って来たのか、詳細を忘れていたので、追加しました。
ミッドチルダ山間部・地下建築物内
「フム、これで良いだろう」
スカリエッティは、姿見の前で衣服の乱れを整えた姿を見て言った。
「・・・ドクター? その格好でお出でになるのですか?」
「何か悪いかね? ウーノ」
「大いに。先ず、白衣のままです。
それに、仮の身分が出来たとはいえ、そう易々と引き取れると思おいですか?」
「・・・駄目か? それなりに時間を掛け、十分な資産と実績を作り上げたつもりだが?」
「ええ、確かに。十分過ぎるだけのモノでは有ります。
ですが、ドクター自ら赴く必要は無いかと思われます!」
「だが、こういった場面では・・・」
睨みつけられ、尻すぼみになった。
「ドクターが行かれる必要は有りません。
私達の誰かが行けば十分です!
・・・と言う訳だから。
私とドゥーエとトーレは今は動けないし・・・。誰か、行きたい?」
「ハァーイ! 私、行って見たい!」
真っ先に手を上げ、意志表示するセイン、つられてディエチも手を上げる。
「・・・私も、会って見たい」
「お前達、遊びに行くのでは無いんだぞ?」
そうチンクは窘めるが、
「もー、チンク姉は硬(かった)いなぁー。そんな事、判ってるって!」
「だが、お前達だけで行かせるのは忍びない、私も付いて行こう」
「とか言っちゃって! ホントは自分が行きたいくせにぃ!」
「何だと! そ、そんなことは、無い・・・」
カッとなるが、その声は尻すぼみに・・・
「んー? 聞・こ・え・なぁい!」
セインが茶化すと、
「わ、私も行くぞ!」
「あら、そんな事言ったって、向こうで上手く立ち回れるのかしら?」
「クアットロ、貴女は行かなくても良いのよ?」
「え? ウーノ姉様? それは、どう言う事?」
「貴女にやって貰うべき仕事は、まだ幾つか有るから」
無情な宣告が言い渡された。
一寸落ち込み、項垂れるクアットロ。
「それに、そう大人数で行くモノでもないから。
三人にお願いできるかしら?
穏便に事を進めて頂戴。
事を荒立てたり、揉め事は起こさない様に。
判った?」
「了解!」
「ハァーイ!」
「・・・判った」
・・・ ・・・
表向きの旅券(パスポート)を取得し、管理外世界へと赴く三人。
季節は夏、世間一般では夏休みに入っている。
チンクは、ゴシックな服装 =黒のゴシック・ロリータ
セインは、パンク・ファッション =チューブ・トップにホット・パンツ、皮のチョッキ
ディエチは、白のワンピース =ストレートなワンピースに、編み上げブーツ
せめて、一寸でも気が晴れればと、用意したのはクアットロであった。
・・・ナンパが多かったり? ・・・全て黙殺されました。
目的地としたバニングス邸。
門前払いでは無く、応接室へと通され、さほど待たされる事無く当事者が現れた。
「デュオは、お嬢様と共に、現在出かけて居ります。
暫くの間は、帰っては来れません。
あと一週間ほど掛りますが、宜しいですか?」
「・・・そうですか、我々はデュオの叔母に当たる者で、本人かの確認に赴いた次第です」
「それはそれは、ご心配なされたでしょう」
「・・・はい。見知らぬ地に、一人放り出され、寂しい思いをさせてしまったと。
せめて、もっと早くに見付かっていればと思う次第で・・・
まさか、遠い異国の地で見つかるとは思いもしなかったので、遅れてしまいました」
「それは、大変な思いでしたでしょう」
「はい。ですが、見付かったのであれば、せめて我々家族の元で過ごさせたいと、父も申しております」
「あの、父と仰いますと?」
「はい、我々の父に当たります。
私達は、血縁は有りませんが、互いに姉妹として、お互いを思いやっている次第です」
「では、どの様なご家庭で?」
「我々は、父を筆頭に、十二人居ります。
私は、その中で五番目に当たります、チンクと申します」
此方は六番目と十番目に当たる妹達です」
「どうもー、セインでーす!」
紹介され、何時もの調子で応えるセイン。
「ディエチ、です」
若干、緊張気味に応えるディエチ。
「デュオは、私の姉の子供でして。今回は、こちらに来る事が叶わず、代わりに我々が赴いた次第です」
「それは大変ですな。
ですが、今出掛けている場所は海外なので、今暫くは帰って来れないかと思います」
そう応える鮫島に対し、チンクは考えるそぶりを見せながら、その事をウーノへと伝えた。
「そうですか・・・では、何処の辺りかを、お教え願えませんか?
そこまで行けるとは限りませんが、誰かしら、その近くに居るかもしれませんので・・・」
「そこまで仰られるのでしたら、メキシコへ向かっている最中です」
「・・・メキシコ、ですか。
では、帰って来られるのは一週間後でしたね。その頃、またお伺いいたします」
「はい、お手数をお掛けいたします」
「いえ、そこまで判っていれば、そう心配する必要もないと分かりました。
デュオは、良い方々に助けられた事が判っただけでも、良かったと思います。
では、また後日。お会いしたいと思います」
「はい、デュオに言付けはなさいますか?」
「・・・イエ、驚かそうかと思いますので、今回は秘密にしていて貰えますか?」
「では、左様に承ります」
「お願いいたします」
・・・ ・・・
喫茶店(翠屋に有らず)にて、今後の事を相談する三人。
「で、結局は、連れては帰れなかった訳だし、どうするの?」
「まぁ、今は判断待ちだな。
直に連絡も入るだろうから、暫くは自由にしていろ」
それを聞いて、セインは手を上げ、声を張り上げた。
「ふぅーん、じゃあ! すいませ~ん!」
「はぁい! 少々お待ち下さい!」
ウェイトレスの女性が来ると、矢継ぎ早に注文をするセイン。
判らない単語や、メニューについて質問をする。
そっと控え目に注文をするディエチ。
やれやれと言った様子だが、自分の注文を告げるチンク。
「・・・あの、こんなに召し上がるんですか?」
注文されたモノの種類と量に、呆気に取られつつ聞いた。
「あ、それとこれも!」
更に追加を注文するセイン。
「・・・かしこまりました、注文を確認させていただきます」
ウェイトレスは、呆気に取られながらも、つらつらと注文を復唱し、奥へと下がって行った。
「で、ドクターからは何て?」
下がって行ったのを確認してから、セインは聞いた。
「ああ、穏便に連れて来る様にとの事だ。
その事は変わらない」
「じゃあ、どうする?」
「そーだよ! このまま帰って来るまでを、どう過ごすかって事でもあるよ?」
あーだこーだと話し合うが、中々答えは出ない。
そうこうしていると、
「ねぇねぇ、彼女達! 今、閑かな?
もし、良かったら俺らと一緒にドライブしない?
ココの代金は持つからさぁ!」
そう声を掛けて来たのは、軽薄そうな男三人組。
「邪魔だ」
「イヤ、暇じゃないから」
「消えて」
素気無く言い放つ三人。
「はぁ? 今何て言ったのかな?」
「邪魔だ」
「イヤ、暇じゃないから」
「消えて」
更に言い放つ三人。
「はぁい! お待たせしました!」
タイミング良く、注文していた物が届いた。
所狭しと並ぶ料理で覆い尽くされたテーブル。
「おいおい、これは多過ぎるんじゃないかな?
良かったら手つ・・・」
そう言い掛けたが、尻すぼみに消えて行った。
淡々と、早いペースで積み上げられる皿。
黙々と、消えていく料理。
スゴスゴと引き下がらざるを得ない三人組。
・・・ ・・・
一週間後
再度、面会すべく。バニングス邸へと赴く三人。
「はい、少々お待ち下さい。
ただいまお連れいたします」
そう言って通されたのは、また同じ応接室。
待つ事、十数分。
開かれた扉から、小さな子供が飛び出した!
【! チー姉!】
その胸の内に飛び込み、ギュウッ! と抱き締める!
「あぁ、やっと会えたな」
「へぇー、こんなんなんだ」
【アッ! セイ姉!】
抱き締めたまま、声がした方へと顔を向けるデュオ。
そうしていると、今度は反対側から手が伸びて来て、頭を撫でられた。
【ディエ姉!?】
「ん、良い子良い子」
暫くそのままに、されるがままで居た。
その様子を、微笑ましく見つめるバニングス家当主。
「ン、ン! 済みません、長らくお待たせしてしまった様で・・・
では、改めて紹介させていただきます。
私はこの子の叔母に当たります、チンクと申します」
「あ! 私はセイン!」
「ディエチです」
「ご丁寧にありがとうございます」
「それで、不躾なのですが、コレを、父から預かってまいりました。
お納めいただきたい」
そう言って、小振りなスーツケースを差し出すチンク。
鮫島は、執事として間に入り、受け取る。
中身を確認し、見える様にかざす。
そこには、宝石の如く見えるが、そのどれとも該当しない輝きを放つモノが鎮座していた。
それなりに大きく、一寸したインテリアとしても通用する大きさであった。
「・・・これは、一体?」
「我々は、こちらとは余り交流が無い為、こういう形とさせていただきました。
こちらでは、希少土類(レア・アース)と言われるモノを、父が結晶化させたモノだと伺っております」
「ほぅ、それほどの技術をお持ちとは・・・」
それを聞き、傍に控える鮫島に目配せをする。
鮫島はそっと肯き、スーツケースを外に控える者に手渡し、指示をする。
「ただ、父は偶然の産物でしか無いので、余り興味を持てないとかで・・・
有益に使えるのならと。お持ちする事となった次第です」
「では、お父上は科学者ですか?」
「・・・はい、余り名前は表には出ないのですが、ある意味有名な様です。
それと、不躾なのですが・・・
デュオの今後の事でお話が・・・」
「・・・判りました、お伺いいたしましょう」
「では、デュオは一度我々の元へと帰らせていただきたい」
「それは・・・構いませんが」
「その後、もしよろしければ、ホーム・ステイと言う形で、またお願い出来ますか?」
「・・・それで、宜しいのですか?」
「はい、一度はもう会えないかとも考えましたが、ここでの生活にも慣れている様なので。
此方の環境が整うまでの間、お預かり願えないかと・・・」
「・・・判りました。お引き受けいたしましょう」
「では! 宜しくお願いいたします!」
「所で、そちらの環境とは?」
「あ、はい。父の研究を狙う産業スパイが現れまして。
今回の事故も、その関係かと・・・」
「では、そうならない様にと言う事で?
でしたら、何時まででも構いませんよ。
そちらの気が済むまで、お預かりいたします」
「そう言って頂けると、こちらもお願いした甲斐が有ります」
「イエイエ、こちらとしても、娘が自分の弟の様に可愛がっておりますから。
どうぞ、お気になさらずに・・・」
かくして、当初の目的通り、デュオの帰還と緊急避難場所の確保がなされた。
・・・ ・・・
月村家・庭園
「で、帰っちゃったの?」
そこで事の顛末を話すアリサとすずか。
「そう。まぁ、また改めて来るって言ってたし。
向こうの家族も良い人そうだったし。
そんなに心配はして無いわ」
「でも、アリサちゃん?」
「何? すずか?」
「うん、猫達が怖がって寄って来てないよ」
「は? そんな事・・・」
遠巻きに、様子を伺う様に安全地帯(すずかの後ろ)から、脅えた様子でこちらを伺っている猫達。
「チョ、一寸! 何でそんな遠巻きなの!
ほらほら、こっちおいで?」
向こうから寄って来ないのなら、こちらから出向くと近寄ると・・・
一層怯えた様子で逃げ去って行く猫達。
「ほら、イライラしてたら、また逃げちゃうよ?」
「うぅ! でも、イキナリだったの!
まだまだ一緒に居られると思ってたのに!」
「でも、また来てくれるんでしょ?」
「・・・そーなんだけど、そう簡単に直って訳にも行かないでしょ?」
「まぁ、そうだね」
そんな事を話していると、新たな来客が訪れた。
「あ! アリサちゃん! すずかちゃん! 元気だった?」
「なのはちゃん、久しぶり!」
「えぇ、まぁ。あ、これ、お土産。デュオからもね」
そう言って、紙包みと小さな箱を手渡した。
「わぁ! ありがとう!
えっと、何処へ行って来たの?」
「メキシコ、向こうをアチコチね」
「へぇー、いいなぁー。
あ、開けて見ても良い?」
「うん、私からのは良いけど、デュオからのお土産は、ココでは開けないでね」
「え? うん、分かったけど、どおして?」
「開けない方が、身の為だからね」
「??? それじゃぁ判らないよ?」
「まぁ、知らない方が良いわね」
「えぇ? アリサちゃんは中身、知ってるの?」
「・・・聞かないで。
一応、止めはしたの。
でも、こっちの方が良いからって・・・」
「あ、私はコレを貰ったわ」
そう言って、すずかが指し示したモノは、綺麗な花の刺繍で彩られたハンカチ。
「じゃあ、開けるね!」
開けて見ると、意匠は違うが、同じく綺麗な花の刺繍のハンカチ。
「わぁ! 綺麗! ありがとう! アリサちゃん!
所で、デュオ君は?」
「・・・帰ったわ」
「え? それって・・・」
「なのはちゃん。つい最近、身内の方が見えて、連れて帰っちゃったんだって」
「そうなんだ・・・寂しくなるね。
あ・・・じゃあ、お土産が何か、見ておこうかな」
「あ! 駄目、なのは!」
一歩遅く、開けた後で有った。
開けた途端、硬直するなのは。
その手の中から、箱が滑り落ちる。
小さな箱から転げ落ち、テーブルに転がる。それは小さな陶器で出来た黒い頭蓋骨(しゃれこうべ)。
「え、えっと。なのは? 一応、止めたのよ?
でも、どうしてもこれにするって、聞かなくって・・・」
「えっと、私のも、開けて見るね!」
そう言って、自分のモノも確認するすずか。
同じ様なモノで有ったらどうしようと、戦々恐々。
「あら? 可愛い!」
その中身は、ジャガーを象った木像だった。
「・・・アリサちゃん。これって・・・」
「あー、その、ね。二人を意識して選んだら、こうなったんだって」
「すずかちゃんがジャガーで、何で私が骸骨なのかな?
今度、O・HA・NA・SHIしないといけないよね?
デュオ君は、何処に居るのかな?」
「あー、その、ね。もう帰っちゃったし。
当分の間は、こっちには来れないと思うから・・・
その、それだって、向こうの立派なお土産なんだよ!
一生懸命、交渉して、値切って、選んだんだから!」
向こうではお土産は値切るのが当たり前。
それをしないと幾らでも高くされてしまう・・・
【デュオ、当分の間は、こっちに来ない方が良いわ!
だから言ったのに!
出来れば、なのはが忘れた頃にでも、来る事をお勧めするわ】
そんな事を内心では考えていた。
「まぁまぁ、お茶でも飲んで落ち着いて」
・・・ ・・・
時と場所と相手が変わり・・・
「そっか、じゃあ、帰っちまうんだな。
まぁ、またどっかで会えるだろうし、そん時はよろしくな!
ん? これ? 土産?
おう! ありがとうな! じゃあ、元気でな!」
そう言って、別れた。
その日食べたアイスは、酸っぱかった。
「なんや! このアイス!」
「ああ、土産だって。
何でも、ライムのアイスだってさ」
「ふぅん、こないな味のアイスも有ったんやな」
「でも、これ。シャーベットじゃないし、クリームなのよね」
「ああ、これなら私も食べられるな」
「ウム、甘過ぎず、さっぱりとしていて食べ易いな」
概ね好評で有った。
・・・ ・・・
その様子を遠くから伺う黒猫。
「やっと邪魔が居なくなったね。
アリア、そっちは?」
【うん、こっちは特に問題は無いわ。
それよりも納期を前倒しで納品できるって!】
「そりゃ朗報だね!
こっちは、友達とやらが実家に帰るとかで、当分は無関係な相手は居なくなるみたいだよ」
【そっかぁ、こっちの都合とはいえ、追い掛けたりして脅かしちゃったもんね。
あの子には悪いことしちゃったね、ロッテ】
「でも、しょうが無いよね。
その為に、父さまがどれだけの思いをしてきたか・・・」
【うん。もうじき、その思いも報われるよね】
「そうだね。だから、この事は、私達だけで何とかしなくちゃいけない!」
・・・ ・・・
二週間後
小さくドアが叩かれ、それを迎えんとドアの前へと詰め寄る犬達。
大歓迎され、迎え入れられた。
デュオは入って来るなり、アリサお嬢様に抱きつき、声も無く泣き始めた。
「え!?」
少し落ち着いてきたかと思われた頃、
「・・・どうしたの?」
そう問われ、モバイル・PCの様なモノを取り出したかと思ったら、その場で何やら打ち込み始めた。
【家出して来た】
「・・・何で?」
【見解の相違?】
「・・・随分、難しい事を知ってるのね。
それで、ちゃんと行き先は行ったの?」
フルフル!
「言わなきゃダメでしょ!
きっと心配してるわ、連絡先は?」
【・・・・・・】
「もう、頑固なんだから」
そうこうしている内に、
「お嬢様、お電話が入っております」
執事の鮫島から、連絡が入っている事を教えられた。
「判ったわ、良い? すぐ戻って来るから、それまでに連絡先を教えなさいね?」
そう言って電話を受け取ると、
【もしもし! そちらにデュオが窺ってはいませんでしょうか!?
・・・申し遅れました。
私は、デュオの伯母に当たります、ウーノと申します。
父と話をしていて、一寸話がこじれ、飛び出してしまって・・・
そちらに行ってはいませんか?】
「ああ、丁度よかった、こちらから連絡を入れようとしていたんです。
今さっき、こちらに来たばかりなので。
・・・替わりましょうか?」
【・・・お願いできますでしょうか?】
「はい。デュオー!
ウーノさんから連絡が入ってるわよ!
出て上げなさい!
ほら、聞くだけ聞いて、それからでも構わないでしょ?
あ、すみません。
スピーカーでも構いませんか?」
【はい、こちらは構いません。
お願いできますか?】
「はい、どうぞ」
【デュオ? 聞こえているわね?
ビックリしていると思うけど、それが事実なの。
あっちには、もう戻れなくなってるの。
だから、気持ちが落ち着いたらで良いから、また連絡してね?】
・・・コク
「・・・判ったみたいです」
【・・・そうですか。それと、不躾なお願いなんですが・・・】
「はい、何でしょう?」
【デュオが落ち着くまでの当分の間、そちらで預かっては頂けませんか?】
「・・・ええ、それは構いません」
【・・・あと、何か、異変が有ったらすぐにでも此方にご連絡願えますか?
何分、一寸特殊な持病があるので、こちらで無いと対処が難しいモノなので・・・
もちろん、感染する様なモノではなく、体質的なモノなのですが・・・
何分、珍しい症例なので・・・】
「えっと、それは、どんなモノなんでしょう?」
【・・・そうですね。手足が石の様なモノで覆われたり・・・
硬くなったりするような事が有ったら・・・
すぐにご連絡ください。
すぐにでも、駆けつけます】
「・・・判りました。もし、その様な事が有ったら、そちらにご連絡すれば良いんですね?」
【ハイ。一応、直に連絡が付く様に、専用の連絡装置もお送りしますので、お願いいたします】
「はい、その様な事が無い様、こちらも気をつけさせて貰います」
【よろしく、お願いし・・・ザ・ザザァー】
途中から、ノイズだけが流れて来た。
「もしもし!? どうかしましたか!?」
【・・も・・もうし・・・ござい・・・】
【ウーノ姉様! 無事!?】
「もしもし!?」
【はい! こちらセイン! 一寸立て込んでおりまして!
また後ほ・・・ブヅッ】
途中から、途切れた。
「な、何なの!?」
【ドシタノ?】
そう書かれたそれを示すデュオ。
「判んないけど、途中で切れちゃった」
そう聞いて、ソワソワと落ち着かない様子だ。
「まぁ、心配なのは分かるけど。今は、どうする事も出来ないわ。
次に連絡が来た時は、直にでも帰れる様にしていなさい」
・・・コク!
・・・ ・・・
数日後・電話がまた鳴り響く。
【もっしもーし! デュオは、そちらに居りますでしょうか?】
「はい! あの! そちらで、何が!?」
【あ、アリサお嬢様? 私、セインと申します!
えっとですね、この間は、父の研究を狙った産業スパイ(管理局)が押し掛けましてぇー。
その迎撃に手間取りまして・・・】
「そ、それで! お話していた方は!?」
【・・・一寸怪我が酷いですね。でも、大丈夫です!
また元通りになるみたいなんで】
「そ、そうですか、良かった!」
【それでですね、お願いと言っては、何なんですが。
デュオを当面の間、そちらで預かっては頂けませんか?
こちらとしては、このゴタゴタが片付かないと、安心できませんので・・・】
「あ、はい! それは構わないかと思います。
えっと、デュオに替わりましょうか?」
【あー、お願いしても、良いですか?】
「ええ、それは構わないです。
デュオ! セインさんから」
そっと受話器を受け取り、耳に当てるデュオ。
【・・・デュオ?】
コンコン! 受話器の口元の辺りを軽く、ニ度叩く。
【元気?】
コン!
【そっか、それなら、良いんだ。
こっちは、大丈夫だから。
暫くは、寂しいと思うけど、そっちに居てね】
コンコン!
【アハハ! そうは言っても、今はまだ、危ないからね。
言う事を聞いてね。
あ、一寸待って、チンク姉に替わるから!
ほら! チンク姉!】
一寸声が遠のき、何やら揉めている様だ。
【な、何を話せば良いんだ!?】
【んー、何でも良いと思うよ?
声が聞ければ、安心するだろうし。
兎に角! 声を聞かせてあげるべきだよ! ホラ!】
【ア、ン、ン! その、デュオ・・・こちらは特に問題はない!
だが、安全が確保できるまでは、そちらのお世話になる様に!
以上だ!】
【駄目だって! そんなんじゃ!】
【何を話したら良いのかが判らん!】
【もー、しょうがないなぁ。
デュオー、チンク姉、心配でしょうがないってぇ。デュオの事が!】
【な! そ、そんな事は・・・】
【ん? 無いの?】
【イ、イヤ、そんな事は・・・
と、兎に角、今は他に仕事が有るからな!】
【ア、逃げた!
えっと、一寸待ってね! トーレ姉! 一寸!】
【何だ? 今はそれどころでは・・・】
【今、デュオと繋がっ】
【もしもし? デュオか?】
【は、早や!】
コン!
【そちらは、どうだ?
良い所か?】
コン!!
【そうか、それなら、良い。
元気でな】
【って、それだけ!?
・・・もう居な】(いし)
【ハァイ! デュオ! 元気にしてる?】
コン!
【って、クアットロ姉様! 割り込まないでよ!】
【何よ、何時までも喋ってる方が悪い!
替わりなさい】
【そうは言っ】ブヅッ!
【よし!・・・これで、邪魔者は消えたわね。
まぁ、アナタがこっちへ戻って来たとしても、何も出来ないし、邪魔になるだけだから。
当面は、そっちで大人しくしていなさい。
じゃあ、こっちが落ち着いたら、連絡を入れるわね!
・・・判った?】
コンコン!
【もう、聞き分けなさい!
聞き分けが無い子は、ダー・メ!
じゃぁ、もう切るわよ!】
コンコン!
幾ら待てども、また繋がる事は無かった。
・・・ ・・・
数時間後
「・・・すみません、バニングスさんのお宅へは、どう行ったら」
そう道を尋ねる、清楚可憐な白のワンピース姿の女性が、海鳴市へと現れた。
大き過ぎる荷物と共に・・・
「よー、姉ちゃん、重そうだね。
代わりに俺が持とうか?」
そう言いながらナンパ男は、荷物を取ろうとするが、その重みに耐えきれず、崩れ落ちた!
その荷物を片手で持ち上げ、周囲をあっと言わせるディエチ。
「いいえ、それには及びません。
この荷物は私の甥のモノなので、さほどには重くも有りませんから」
それだけ言って、早々に立ち去ろうとした・・・
「あ、えっと、バニングスさんのお宅ですか?」
傍に止まっていた車から、声がした。
中を伺うと、メイドが運転しており、一目で自分の同類である事が判った。
相手も、それとなく気付いた模様だ。
「ご存知なのですか?」
「ええ、これからすずかお嬢様をお迎えに行く所ですし、ご一緒しますか?」
「・・・ですが、そこまでお世話になる訳にも」
「えっと、デュオ君の親族の方で、良いんですよね?」
「・・・はい、バニングス家に御厄介になっているので。せめて、身の回りのモノだけでもと思いまして・・・」
「だったら一緒に行きましょう」
「・・・では、御厄介になります」
そう言いながら、その車へと乗り込んだ。
その時、大いに車が沈み込んだが、気にする者は特に居なかった。
「えっと・・・」
「ディエチ、とお呼びください」
「あ、ご丁寧にどうも。
私は、ノエルと申します。
月村家のメイドをしています」
車を走らせながら、お互いに名乗りを上げた。
「すみませんが、デュオが今、如何しているかは、ご存知ですか?」
「えっと、又聞きなのですが、暫くは落ち込んでいたみたいですね」
「・・・そうですか」
「あの、何が有ったのか、聞いてもよろしいですか?」
「ア、すみません。
その事に関しては、お話しする事は適いません」
「・・・そうですよね。でも、気にしては居たみたいですよ?
皆さんの事」
「・・・私達は、あの子に酷な事を、告げてしまいました。
その事は、何時かは告げなくてはならない事で有り、今回はそれが速過ぎたので・・・」
「・・・」
「ですが、私達があの子を案じている事には、変わりは無いんです」
「・・・そうですか。その事を、解って貰えると良いですね」
「時間は掛ると思われますが、何時かは、理解してくれると信じています」
その事を話している間にも、車は目的地へと着いた。
「ありがとうございます」
「いえ、こちらも同じ所へ向っていただけですし。また、お話し出来ると良いですね」
「・・・はい、またお会い出来る時を、楽しみにしています。
・・・原型(Arche type)たるノエル」
後半は、口の中だけで、告げた。
「え? 何か、仰いましたか?」
「いえ、お気になさらず。
デュオの事を、気に掛けて頂き、ありがとうございます」
それだけ告げると、玄関へと歩いて行った。
途中、すずかとすれ違い際、
「あ、こんにちは」
「はい、こんにちは、すずか様」
「え!? ど、どうして私の事を?」
「はい、デュオから伺っておりましたので・・・
お初にお目に掛ります。
デュオの叔母に当たります、ディエチと申します。
以後、お見知り置きを。
・・・夜の方」
「あ、そうだったんですか!
それじゃあ、今回は・・・」
すずかの顔が、一寸だけ曇った。
「いえ、今回は着の身着のまま、飛び出して行った、デュオの身の回りの品を届けに伺ったまでです。
ですので、直に連れ帰ると言った事では有りません。
今後も、お手数をお掛けすると思いますが、宜しくお願いいたします」
「いえ、そんな。
素直で良い子ですよ、デュオ君」
「はい、そう言って頂けると、こちらとしても安心して預ける事が出来るので・・・」
「あ、直帰られてしまうんですか?」
「・・・はい」
「・・・そうですか」
「では、いずれまた」
「はい、またお会いしましょう」
そう言って別れた。
その後ろ姿を見送り、すずかは車へと乗り込んだ。
「ねぇ、ノエル。
あの人・・・」
「はい、お気付きになられましたか?」
「・・・うん、ノエルと同じ?」
「・・・だからでしょうか?
デュオ君が、私達に当たり前に接するのは・・・」
「うぅん。それだけじゃないと思うよ。
でも、デュオ君は、違ったんだよね?」
「はい、多少は異なる所は有りますが、当たり前の子供の様に見受けられました」
「なら、それで良いんじゃない?」
「・・・そう、ですね」
そのまま車を走らせ、遠ざかる。
・・・ ・・・
バニングス家・応接室
「デュオが、お世話になっております」
深々と、頭を下げるディエチ。
それを受け、
「いえ、そこまでされるには及びません。
それほど手が掛るモノでは有りませんし、そこまでされると、こちらとしても・・・」
そう遮る鮫島。
「ですが、急に押し掛けたりしたモノですから・・・」
「イエ、お気になさらず。
・・・デュオには、会って行かれますか?」
「・・・今は、まだ顔を合わせ辛いので・・・」
「・・・左様ですか。ですが、あちらはそうは思ってはいない様です」
そう言いながら、窓の方を示す。
そこには、窓から中を伺う様に、顔を出すデュオの姿が有った。
「!」
「行って差しあげたらどうですか?」
「・・・ですが、どんな顔をして会えば・・・」
「そのままのお顔で、会って差しあげればよろしいかと・・・」
その顔は、心配していたが、安心した様子が、ありありと浮かんでいた。
「では、少し、失礼します」
そう言って、窓まで近付き、そっと抱き上げた。
【・・・心配掛ケテ、御免ナサイ】
「・・・ゴメンね、驚かせちゃったよね」
【・・・ン】
「だけど、それを覆す事は、出来ないから。
時間は掛るだろうけど、解ってね」
【ン】
「でも、今暫くは、こっちで待っていてくれるかな?
落ち着いたら、迎えに来るよ」
【ン】
「それまで、元気でね」
【ン】
それだけ伝えると、降ろし。
元の席へと戻った。
「宜しいのですか?」
「はい、今は、時が解決してくれるのを、待つしか無いので」
そう言って、今後の話へと、話は変わっていった。
・・・ ・・・
思い付くがままに、思い浮かぶがままに・・・
・・・ ・・・
ディエ姉が持って来てくれたモノ
衣類=多数・各種 長期に亘るだろう事から、相応に。
下着=多目
護身用デバイス×2 腕輪型 一対ニ型
登録済み・・・鼻薬が効いてます! 札束ビンタ、往復付き!?
左 ガトリンク・レフト
手首が少し下へとスライドし、連射可能な砲身へ。
右 キャノン・ライト
水平二連式の砲身を持ち、それが連結し、遠距離砲撃用へ。
一応、非殺傷設定?
そんじょそこらのチンピラ(管理局局員)相手であれば、一掃出来る?
本職(武装隊員)で有れば、牽制位?
無駄に超高性能? 過保護とも言える・・・
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多目的ツール 様々な工具として使える、主にデバイスの調整用・・・
次回 号外・メキシコ編 ビバ・メヒコ!
メキシコでの実体験です。ほぼ事実です。