魔法少女リリカルなのは DOUBLE STANDARD   作:トータス

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この先、一方的な会話と成りますが、そうなる事はご了承願いたい。


D・S As編
新たなる出来事、新たなる秘密


 一方、久しぶりに友人の所へと顔を出す事になった。

定期面接に出向き、そのまま友人宅へ。

 

「おっ!? 無事だったんか? 誘拐されたとか聞いたで?

・・・その様子だと、誘拐された訳やないんやな?」

 

 コク

 

「まぁ、それなら良いんやけど・・・ひと勝負してくか?」

 

 コクコク!

 

「ほな、ちょぉまっとってや。サクサク終わらせて来るから!」

 

 そう言って、家事を片付けに行った。

 

 

十数分後・・・

 

 

「・・・とりゃ!

・・・そりゃ!

・・・だぁー!

・・・中々!

・・・腕上げたな!」

 

 ピコピコと電子音が鳴る中、没頭する二人。

 

 

久しぶりなので時間を忘れ、気付くと日はどっぷりと暮れていた!

 

 

「あやや! どないしょ! こない遅ぉなったら、帰れんな。

この間みたいな事が有っても何やし今日は家泊って。明日帰るんがええんやないか?

連絡は入れとくし、夕飯も出来とる!

な! そうしとき!」

 

 一寸強引に押し切られた!  ・・・謀られた!?

 

「それにな、お客さん用の布団もこうたったんよ! 無駄には、せえへんよな?」

 

 脅迫された!?

 

「それに今日、ウチの誕生日でな、一緒に祝ってくれん?

ケーキもあるんよ! 翠屋の!」

 

 ・・・コクコク!

ケーキを無駄にしたら、罰が当たるモンねー!

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 鍋を挟み、お互いに鍋の中を突く。

と言うか、よそって貰っている。

 

「いやー、祝ってくれる人が居るんはええなぁ。

小父さんも、仕事が忙しゅうて来るんは難しいし、遠いしなぁ。

あ、でも。祝ってはくれるんよ?

ほら、このカードとプレゼント!

中々にええモンを呉れるんよ、欲しいなぁって思っとるモンをピンポイントで!!

ほら、見てみぃ。この超高級な土鍋!

これが欲しかったんよ!

でもな、高(たっか)いんや!

目玉が飛び出るかぁ思った位!

それに、今日は一人で食べるんやない事の方が、嬉しいなぁ。

ん? 今度は誰か連れて来てくれるん?

そっか、ありがとな。

でも、まだ欲しいモンが有るんよ。

そればっかりは難しいんやけどな。

何時かは、手に入れて見せる!

ん? それが何かって?

それは・・・内緒や!

今、口にしたら恥ずいんよ。

何時か、話せる時が来るまで、待っててや。

・・・ん? もうおねむかい。

ほな、布団敷くから。も少し待っててな」

 

 ・・・コク

 

 

 

「ほな、お休み」

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 なんか、チカチカする?

 

「な、なんや!? 何が起こってるんや!?」

 

 本が宙に浮いている。

鎖で縛られ、開かない様にされている本だ。

 

 その鎖が、今にも千切れそう。

 

 眠い。

 

 邪魔。

 

 ボフッ! ボトッ!

 

 枕を投げ付け、叩き落とし。

枕の下敷きにして眩しくない様にし、ソレを枕に再度寝る。

 

「へ!? ど、どないなったんや?

って! そんなんより、そないな得体の知れんモン、枕にしたら首痛めてまうわ!」

 

 そう言うなり、抱き起こされた。

勢いが付き過ぎ、後ろからゴン! と鈍い音がした。

抱き締められる形で身動きが取れない!

 

 また本が浮き上がり、今度は開いた。

 

「「「「我ら、雲(ヴォルケン)の騎士団(リッター)。

汝を主とし、その命に従うもの成り」」」」

 

 男女四人が跪き頭を垂れている。

 

「さあ、主よ。命を賜りたく」

 

・・・暫し、沈黙が流れる。

 

「・・・なあ、シグナム」

 

 待ちくたびれた一人が顔を上げる。

 

「ヴィータ、黙っていろ」

「そうよ、命令が無いのに、そんなぞんざいな口を聞くモノでは無いわ」

「だってよ、気絶してるみたいだぜ?」

「「「は?」」」

 

 そう言って、顔を上げる三人。

そこには、気絶した子供と、その子に抱き締められ、ジタバタするが身動きが取れない子供が居る。

 

「あ、こっちは起きてる。

なぁ、お前が今度の主なのか?」

 

 沈黙が流れる。

 

「なぁ、何か言えよ」

「・・・一寸待って、ヴィータちゃん。

・・・もしかして、喋れないの?」

 

 ・・・コク

 

「そうか。では、貴方が我々の主なのか?」

 

 フルフル

 

「では、こちらの方が?」

 

 クニャ? と、首を傾げる。

 

「うーん。この子、あんまり判って無いのかしら?

じゃあ、こっちなら、解るかな?】

 

 そう言いながら、途中から念話へと切り替えるシャマル。

 

【! ・・・解ル!】

【では、こちらの方がどなたかと、貴方の名前をお教え願いたい】

【エット、鮫島 デュオ! コッチガ、ハヤテオ姉チャン!

今日ハ遅クナッタカラ、オ泊リ!】

【・・・そう、じゃあ、今日は如何したら良いのか、判るかな?】

【ンット、エット・・・】

 

 一生懸命考えるも、睡魔には勝てなかった。

 

【ファアァ・・・眠イカラ、寝ルノ・・・ZZZ】

「・・・なぁ、寝ちゃったけど・・・」

「ど、どうしましょ! 取敢えず・・・上掛けを掛けてあげた方が良いわよね!?」

「ふむ、取り敢えずは、目を覚ましてからでも遅くはあるまい。

各自、休んでくれ」

「じゃあ、私はココで良いや」

 

 そう言うと、ヴィータはデュオが寝ていた布団に包まった。

 

「では、俺は起きたら知らせるから、ドアの向こうにでも寝て居よう」

「そうか、私は寝ずに待つ事にしよう」

「じゃあ、私は休ませて貰うわね」

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

「はぁ、変な夢見た。本が光ったり、空浮いとったり・・・」

 

 寝惚け眼のハヤテ。

ぼんやりとした頭のまま、何が有ったのかを考えていると、

 

「主ハヤテ、おはようございます」

「そうそう、こんな感じの人が顕わ・・・」

 

 固まった。

 

「・・・主?」

「ふぁあぁっ! 何だよ、もう朝?」

 

 ヴィータはその声で目が覚めたのか、起き上がって来た。

 

【オハヨー!】

「ハイ、おはようございます!」

「おはよう」

 

 見覚えのある姿と、見知らぬ他人が挨拶を交わしていた。

 

「だ、だれや! 何で急にこない人が一杯!?

って、さっきの声は!?」

 

 途中、頭に響く様に聞こえた声が気になった。

 

【ア、ハヤテオ姉チャン! オハヨー!】

「そうそう、こないな声や・・・

って! デュオ!? 声出るんか!?」

【念話ー!】

「へ? 念話?」

「主はやて、私はヴォルケン・リッターの将を務めさせて頂いております。

シグナムと申します。

この者から、仔細伺いました。

この世界では、魔法技術は一般的ではなく、異質な存在であると・・・

ですから、戸惑われる事は有ると思われますが、暫しお時間を頂けますでしょうか?」

 

 

 それから、異世界の事、自分達の事、闇の書の事などを、大まかに説明した。

 

 

「・・・成程、大体判った。

つまり、デュオは魔法使いで、今まではその事を隠しておかんとあかんかったんやな?」

 

 コクコク!

 

「そんで、あんた等は、その闇の書とやらの守り手で、それを完成させる事を、目的とする存在やと・・・」

「ハイ、その暁には、尋常ならざる力を主ハヤテは手に入れる事が可能となります」

「せやけど、ウチにはそんな力、必要あらへん」

「! ですが!」

 

 それをハヤテは遮り、さらに言う。

 

「だけど、ウチの家族になってくれるんなら・・・嬉しいなぁ。

そないな風には、いかへんかな?」

「・・・主ハヤテが、そう望まれるのでしたら・・・」

「それやアカン。家族なんやから、ハヤテで十分や!」

「・・・判りました。その・・・ハヤテ」

「そう、これから、よろしゅうな! 皆!

で、デュオ。・・・この事は、秘密にしといてくれへん?

そんかわりと行っちゃあ、なんなんやけど。

これからも、よろしゅう」

【オー!】

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

新たなる・・・災い?

 

 

 新たに知り合った幼い魔導師に対し、幾つか確認して置こうと、鉄槌の騎士は尋ねた。

 

「・・・なぁ、デュオって言ったか。

アタシはヴィータ、鉄槌の騎士だ。

ヨロシクな!

で、お前は、何が出来るんだ?」

 

 そう問われ、考え込んでしまった。

 

【??? ・・・何ダロ?】

「はぁ? 何が出来るのか、判って無いのか?」

 

 判らないなりに、考えて答えを出してみた。

 

【ンット、エット・・・コレ?】

 

 そう言って、肘から先を巨大なゴツイ手甲へと変えた。

 

「うおっ! ・・・スゲーな! 石化か!

それを使って、両手を覆う様に展開してるのか。

魔力量は、・・・そう大したモンじゃなさそうだけど・・・」

「・・・そうでもないみたいよ」

 

 その様子を離れて見守っていたシャマル。

 

「何だよシャマル、ドコがそうでもないんだ?」

「うん、今調べたんだけど。

リンカー・コアの働きが、殆ど一定のままなの。

殆ど消費されないまま、辺りのモノで賄ってる節も有るわ」

「は? それって、出したら出しっぱなしで散って消えないって事か?」

「・・・多分、固めた魔力をそのまま、コントロールしているのかも・・・

・・・無意識にそう有る事が、当たり前になってるのかな?」

「だから、何なんだ?」

「この子、制御系が突出しているの。

出力系は弱い感じなんだけど、力の消費がやたらと少なく感じるわ。

魔法を使うとしたら、中長期戦をメインとした戦い方かしら?」

 

 それを聞き、思う事が有ったのか、

 

「んな、まどろっこしい戦い方しか出来ないってのか?」

「そう言う訳じゃないけど・・・

即座に大技が出せるタイプじゃないみたいね」

「ふぅん、だったら、あたし等とやったら、即やられちまうのか?」

「そうとは言えないけど・・・多分」

 

 それを聞き、ヴィータは決めた。

 

「なら、デュオ。お前はアタシが守ってやる!」

【??? オー? ビータオ姉チャンガ守ッテクレルノ?】

「応! 任せとけ! ・・・で、その、何だ。

もっかい、その、呼んでくれねぇかな?」

 

 一寸だけ顔を赤らめ、そう呼ばれる事には慣れてはいないが、嬉しそうだ。

 

【??? ビータオ姉チャン?】

「くぅー! 応! 任せろ!」

 

 感無量なご様子。

 

【悪イ奴(=クロノ)カラモ?】

 

 その不穏な響きからか、一寸険しい顔つきで更に尋ねるヴィータ

 

「あん? そりゃ、どんな奴だ?」

【黒クテトゲトゲ! エット、管理局員ノ・・・執務官?】

「は? ・・・お前、管理局に、狙われてるのか!?」

 

 ヴィータはデュオの肩を掴み、確かめる。

 

【??? エット、連レテカレル?】

「・・・そうなの!? 管理局が、もうこの世界にも来てるの?」

 

 その事に驚きつつ、この先の事を心配するシャマル。

 

「くっそぉ! こんな子供を連れ去ろうってのか!?」

【エット、ソロソロマタ来ルッテ!】

「何を騒いでいる」

 

 シグナムが話を聞きつけて来た。

 

「あ! シグナム!

デュオの話だと、管理局の奴ら、この世界にも来た事が有るって!」

【ア! シグママ! 管理局? 来タヨ?】

「何だ? その呼び方は!」

 

 予想外の呼ばれ方に、驚きつつ問い質す。

 

「シ、シグナム。一寸落ち着いて。

子供の言う事だから、上手く伝えられないだけなのよ」

 

 その勢いに押され、心配しつつデュオを抱き寄せるシャマル。

その腕の中から、更に問い掛けるデュオ。

 

【シャママー、変カナ?】

 

 一寸舌足らずな印象は拭えないが、それを耳にした相手には甘い言葉。

 

「・・・え? えっと、もう一度、お願い」

【??? シャママ?】

「か、可愛い! ねぇ、もう一回!」

 

 シャマルはデュオを抱き締め、撫で回す。

 

「待て、シャマル。

私が先だ!」

 

 シャマルから奪い返し、肩を掴み、睨みつけている。

 

【エット、シグママ? シャママ? ビータオ姉チャン?】

 

 シグナムはボッ! と、顔が熱くなり赤くなり、そのまま回れ右をして出て行った。

 

『うおおぉぉぉ!』

 

 と、遠ざかる叫びを耳にしたり?

 

「何や? シグナムが顔真っ赤にして走っとったけど、何かあったん?」

 

 そこには、顔を赤らめるだけで、二人とも反応は無かった。

返事は無い、屍ではないが、反応が無い。

 

「では、私の事はザフィーラと呼んで貰いたい」

【・・・サフラ?】

「・・・ザフィーラで」

【・・・ザフーラ?】

「・・・それで結構」

 

 ザフィーラは、一寸諦めムードで退室して行った。

 

「で、何が有ったん?」

【サー? 名前デ呼ンダダケ!】

「何て?」

【エット、シグママ? シャママ? ビータオ姉チャン?】

「ちなみに、私は?」

【ハヤテオ姉チャン!】

「・・・まぁ、妥当やな」

 

 一寸期待していたらしい、ハヤテ。

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 小学校・教室

 

「ねぇ、なのはちゃん、なのはちゃん」

「何? すずかちゃん」

「なんだか、アリサちゃんの機嫌が悪いみたいなんだけど・・・

あ、そう言えば。デュオ君、また帰って来てないんだって」

「え? でも、朝見掛けたよ?」

「・・・それ、何処で?」

「わ! アリサちゃん?」

「ど、どうしたの!?」

「ああ、気にしないで。

デュオ、内緒で外出して、尚且つ朝帰りだったの。

・・・何だか違う匂いがするみたいで、ウチの子達が大騒ぎだった位よ」

「ふ、ふぅん。でも、無事に帰って来たんだよね?」

「うん・・・でも、向こうで御馳走になったとかで、また帰って来たら寝ちゃったの。

だからドコの誰と友達になっていたのかが判らないのよ!」

「えっと、心配なの?」

「・・・そうね、心配ね。出来れば、居場所が判っていた方が良いからね」

「そっか。じゃあ、今度それとなく聞いて見たら良いなの!」

「そうだよね。

そんな悪い事をしている訳じゃないし、聞いたら答えてくれると思うよ?」

「・・・そうかしら? でも、ウザったいとか、口煩いとか思われないかしら?」

「多分、そんなに気にしないんじゃないかな?」

「・・・じゃあ、なのは。聞いて見てくれる?」

「にゃ!? エット、何でなの」

「だって、この間もデュオと普通に話ししてたじゃない」

「え、えっと、そのぉ・・・ワカッタ、聞いて見るね。

でも、あんまり期待しないでね?」

「まぁ、それで解決するなら、申し分ないし。

頼んだわよ、なのは!」

「にゃ、にゃはははなの」

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 数日後、朝のお散歩。

 

 何時もの通り、ボディーガードよろしく、犬達と共に散歩へ。

途中、なのは姉様と合流。

 

 結界が張られる中、犬達は思い思いの場所へ。

即席のドッグ・ランと化した結界内を、縦横無尽に走り回る。

なのは姉様の出すアクセル・シューターを追い掛けるモノ。

ユーノを追いかけるモノ。(野性を刺激され、狩猟本能丸出し! 生命の危機!?)

構って構ってとデュオと戯れるモノ。

 

「ねぇ、デュオ」

【ナァニ? ナノハ姉様?】

「その、最近は、何処で遊んでるのかな?」

【??? エット、友達ノ所!】

「えっと、そのお友達って、どんな?」

【ン・・・病院!】

「病院で知り合ったの?」

【ソー! オ姉チャン!】

「へぇー、そのお姉さんの所に行ってるんだ?」

【ウン! デネ、ソコモオッキイノガ居ルノ! アウフ位!】

「エット、アルフさん位?」

【ソー、ソコデ遊ンデル!】

「そっか、じゃあ今度、紹介して貰えるかな?」

【ソレハ駄目ー】

「え? 何で?」

【エット、面会謝絶? ナノ!】

 

 約束の為、会わせる訳にもいかず、管理局に関わる者と接触させる訳にもいかない。

その妥協案として、時々目にする言葉を伝えた。嘘は言っていない。

 

「・・・そっか、病院だから、中々会えないんだね」

【ン。デモ、遊ビ行ケルノ!】

「ふぅん。じゃあ、元気になったら、紹介してね?」

【オー!?】

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 なのはは、事の顛末をアリサとすずかに話す。

 

「そっか、病院で知り合った子なんだ・・・

じゃあ、尚更、そっとして置いてあげた方が、良いのかな?」

「まぁ、知らない人がいきなり行っても悪いだろうし。

そっとしておく方が良いかな?

でも、そうなると、また遅くなったりする事も有るだろうし・・・

ねぇ、なのは」

「何? アリサちゃん」

「確か、なのはのお父さん。

武術を教えてるんだよね?」

「? うん、お兄ちゃんとお姉ちゃんに稽古付けてるよ?」

 

 それを聞き、少し考えるアリサ。

 

「・・・じゃあ、デュオに護身術を教えて貰える様に、頼めないかな?」

「うーん。聞いて見ないと判らないけど、頼んで見るね」

「うん、お願いね!」

「うふふ、アリサちゃん。心配なんだ」

 

 そうすずかが言うと、

 

「フ、フン! 弟分なんだから、心配して当然でしょ!」

 

 プイッと、そっぽを向いてしまったが、頬が赤くなっているのが少し見える。

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

翌日・早朝・・・

 

「・・・と言う事だから、今日から家に寄ってね?」

【エット、ナノハ姉様。ドウ言ウ事?】

「今日から、朝の散歩の後は、家で朝ごはんを食べて。

その後、お父さんから護身術を習って来なさいって」

【・・・オ仕事?】

「そう、これもお仕事の内だよ。

だから、頑張ってなの!」

【・・・オー?】

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 高町家にて、朝食

 

「あらあら、お箸使えるのね?」

「うわー、凄いね」

「・・・ふん」

「ははは、しっかり食べておきなさい」

「はい、コレも食べてね」

 

 そう言いながら、なのは姉様は手が届かないモノをよそってくれる。

 

「なんだかお姉さん見たいね、なのは」

「・・・そうだな、何だか急に大人びた感じだな」

「うんうん! どっちも可愛いね!」

「・・・まぁ、そうだな」

「キュー!(=同意)」

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

道場

 

「では、護身術の稽古の前に、護身術について教えておこう。

護身術とは、そもそも自分の身を守る事。

自分が無事である事を、まず考える事。

だから、逃げても良い。

まずは、逃げ切れる様になる事。

これが第一なんだ」

 

 コクコク!

 

「だから、相手を倒すのではなく、相手を怯ませた上で、逃げ切り、隠れて相手をやり過ごす事。

・・・判るかな?」

 

 コクコク!

 

「・・・簡単に言えば、隠れんぼと鬼ごっこと言えば良いかな?

捕まっても、如何にか振りほどいて逃げても良い。

有効な抵抗を効率的に行う事。

但し、本当にどうしようもないと感じたら、大人しく抵抗しない様に。

逃げ切れる時を待つ事も、大事だからね?」

 

 コクコク!

 

「・・・じゃあ、先ずは美由紀。

デュオ君を捕まえて見よう」

「へ? 私?」

 

 何となく興味が有り、見物していた自分にお鉢が回って来るとは考えなかった美由紀。

 

「そうだ、相手役としては丁度良いからな。

本気で捕まえて見なさい」

「・・・ん。分かった!

じゃあ、宜しくね!」

「デュオ君は、美由紀から逃げ切れる様、どんな手を使っても良いからね」

 

 ・・・コクコク!

 

「では、制限時間は五分! 始め!」

「じゃあ、早速!」

 

 即座に捕まえようと、飛び掛かる美由紀。

紙一重で逃げ切るデュオ。

 

「ふふっ! ソレソレッ! 捕まえちゃうぞ!」

 

 面白半分に追い駆け回す美由紀。

それでも、何とか逃げ切ろうとするデュオ。

 

 壁に掛けてある木刀を梯子代わりにし、天井まで登る。

天井の梁の上にまで逃れた。

 

「うわ! そんな所にまで!

でも、甘い!」

 

 そう言うと、助走を付け、壁を蹴って同じ場所まで駆け登った!

 

「さぁ、そろそろ観念したらどうかな?」

 

 そう言ってくる美由紀を余所に、何やらゴソゴソと漁っている。

その様子を疑問に思い、肩越しに覗きこみ、後悔する羽目に。

 

「え!? えっと、それは?」

 

 ユックリと振り返るデュオ。

その手に掴んだモノを、投げ付ける!

 

「キャァァアア!」

 

 即座に逃げ出した!

 

 その悲鳴を聞きながらも、時計を確認する士朗。

 

「・・・そこまで!

二人とも、そこから降りて来なさい」

「ま、待って! 待って! 来ないで! 先ずは、ソレを放して!」

 

 その声を聞き、その手に持った生き物を手放す。

サササッと、梁を伝わり、壁の隙間へと消えて行く。

灰色の肌を持つ、家の守り神(ヤモリ)は、平穏を乱されたとばかりに消えて行った。

 

「はぁ、ビックリした!」

 

 そう言うと、さっさと飛び降りてしまう。

あとに残されたデュオ。

 登る事は出来たが、降りる方法が浮かばない。

飛び降りるには、高過ぎる。

魔法を使えば、その限りではないが、使う訳にもいかない。

 

 その様子を見て取ったのか、助け船が来た。

 

「あー、受け止めるから、そのまま飛び降りなさい」

 

 その声を聞き、事態を察した美由紀。

 

「え? あー、登ったは良いけど、降りられなかったかぁ。

待って、一緒に降りてあげるから、そのままジッとしててね」

 

 そう言うと美由紀は、再度駆け登り、そのまま傍まで来て抱き上げられた。

 

「うわ! 相変わらず軽いね!

じゃあ、行くよ? 口は閉じててね!」

 

 トン! と軽い音と共に、アッサリと飛び降りた。

 

「はい! 着いたよ」

「じゃあ、今回は美由紀の負けだな」

「え? あ、そっかぁ。

逃げ切られちゃったっけ。

・・・でも、あれは、良いの?」

「ん、まぁ、ああいう手も有ると言う事だ。

勉強にはなっただろう?」

「まぁ、ね。あんな反撃が待ってるとは、思いもしなかったし・・・

でも、次はそうは行かないからね?」

 

 コク!

 

「じゃあ、美由紀はそろそろ出ないと危ないんじゃないか?」

え? あ、もうこんな時間?

じゃあ、またね!」

 

 そう言って退場する美由紀を見届け。

 

「・・・今度は、恭也。

相手をして上げなさい」

「は? 何で俺が?」

「まぁ、これも勉強だ。それとも、捕まえる自信が無いのか?」

「そんな事は無(ねぇ)けど・・・」

「じゃあ、デュオ君。

恭也に捕まらなかったら、好きなケーキと紅茶を御馳走しよう。

恭也、捕まえられなかったら、バイト代から差っ引くからな?」

「は!? そんな筈は・・・」

 

 ヤル気満々のデュオを前に、そう言いだす事ははばかれる感じがした。

 

「ん? 何だい?」

 

 裾を引かれ、そちらを見ると、六を表す様に指を示すデュオ。

 

「・・・六人分?」

 

 コクコク!

 

「だそうだ、頑張れ。恭也!」

「な! 増えてる!?」

 

 

 結果、何とか辛くも勝利を収める事が出来たデュオ。

数時間分のバイト代が吹っ飛び、思わぬ散財を強いられた事を嘆く恭哉がいたとか・・・

 後に、その事を恋人に知られ、大いに笑われたとか・・・

 

 

 デュオが勝った方法と言えば・・・

 

 場外に飛び出し、家へと向かい、脱衣所へと飛び込み、後を追う恭也は、妹の攻撃によって撃退、撒いた。

その後、風呂場の窓から抜け出し、寸胴に逃げ込んだ。

その後、桃子さんに見付かるが、シィーっとばかりに合図してやり過ごしたり・・・

 

 紅茶とお菓子は、テイク・アウトして八神家へと運ばれ、優雅に十時のオヤツと成りました・・・

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

持てる者、持たざる者

 

 

 アリサお嬢様の図画・工作の教科書には、古今東西の様々な美術・芸術品が並ぶ。

それを熱心に見ていた所。

 

「デュオ、そんなに興味が有るなら、見に行って見る?

明日は、東京の上野に行くから、見たければ付いて来ても良いわよ?」

 

 コクコク! ブンブン!

 

「じゃぁ、準備をしておきなさい。

明日は早くに出発するわよ!」

 

 コクコク!

 

 荷物と言えるほどのモノはない、水筒・弁当・ハンカチにティッシュ。

お小遣い、手帳!《重要》

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 上野にて、

「デュオ、良いですね。

お嬢様方のお邪魔をしてはいけません。

ちゃんと言う事を聞いて、大人しくしている様に」

 

 コクコク!

 

「イザという時は、その手帳を見せれば、大体解決する事もあります。

それは無くさないように、気をつけなさい」

 

 コク!

 

 そう良い聞かされた。

 

 今回はユー兄はお留守番!

 

 

美術館・入口

 

「じゃぁ、今日は美術館だね!」

「そうだね。でも、凄い人気があって、割と待つみたいだけど・・・」

「まぁ、仕方が無いわね。

その位は待ってあげないと、順番だしね」

 

 タッタカタッタッター!

 

「って! 待ちなさい! チケットがまだ! それに、並びなさい!」

 

 さっさと行列を無視して受付を通り抜け、その向こう側で待っている。

 

「あ、宜しいですよ」

 

 受付の方はそう言ってくれた。

 

「へ? えっと・・・どうして?」

「あの子の付き沿いの方ですよね?」

「は、はい」

「あの子の場合は、無料です」

「えっと・・・」

「それと、付き沿いの方も一人に付き、無料となります」

「そ、それは、どうしてでしょう?」

「手帳をご提示いただけましたので、並ばずにお通り出来ますよ」

「あ! あの! あと二人、友達が居るんですが・・・」

「ああ、そのお友達もどうぞ」

「は、はい! なのは! すずか! こっち来て!」

 

 直に二人も追いついた。

 

「何? アリサちゃん」

「どうかしたの?」

「・・・並ばなくて、良くなったの」

「え? えっと、どうして?」

「何か有ったの?」

「分かんない、デュオが手帳を示したから、チケット要らないって。

だから、貰ったチケット分で大丈夫・・・」

「あの、早く行った方が・・・」

 

 そう受付の方に促され、デュオが先に行ってしまった事を思い出した!

 

「って! 待ちなさい!」

 

 入って直の所で、足踏みしながら待っているデュオ。

 

【ハ・ヤ・ク! ハ・ヤ・ク! ハ・ヤ・ク!】

 

 もはや、早く見たくてしょうがない様だ!

それを押し留める様に捕まえるアリサ!

 

「ま、待って!」

 

 後を追う、なのは!

 

「えっと、お先に失礼します」

 

 すずかは、並んで待っている相手に対して、綺麗に一礼し、足早になのは達の後を追って行く!

 

 その一部始終を見ていた観客から、受付の方に尋ねた。

 

「エット、如何してか、聞いても良いですか?」

「はい、障害者手帳をご提示なされましたので、その様にする事が決まっております」

「・・・障害者?」

「はい、程度や種類は様々で有りますが、一様にそうする事が決まっております」

「それって簡単に・・・」

「取れませんよ。審査には専門医のカルテと申請書類がキチンとしている事などが厳しく定められています。

ですから、そう簡単に取る事が不可能な手帳となります」

「・・・そうですよね。

それを、あんな小さな子が・・・」

「ええ、それでも、それを苦に思ってはいない様ですね」

 

 

 様々な絵画、彫刻、塑像、人気のある展示だと言う事もあるが、人が多い・・・

絵を見ると言うよりは、人の後ろ頭を見ている事の方が多い・・・

 

 そんな良く見えない時は、大人が気を利かせ、見える高さに持ち上げてくれたり、そっと場所を譲ってくれた。

 そんな相手に返す言葉は持てないが、返す事位なら、それは態度で、体語で返す様にして見た。

それを見て、一様に理解して貰えた様だ。

 

 それを見て、

 

「なんか、上手くやってるわね」

「うん、ちゃんとお礼もしてるのなの」

「凄いね、言葉が通じないのに、ちゃんと意味が通じてる」

 

 

 特別展示が終わり、常設の展示へと移る。

 

 何やら悩む男が居る。

 

 じー、じー、じー。

 

「どうしたのかな?」

「さぁ、聞いて見ないと判らないね」

「うん、一寸聞いて見ようかなの」

 

 声を掛けようとした時、その呟きは聞こえた。

 

【・・・コノ人ノ悩ミ、トイレ?】

「ブハッ!」

 

 なのははその独り言でつい、噴き出してしまった。

それを見て、心配する二人。

 

 周囲の人の中にも、何故か笑い転げる人が・・・

天の声が聞こえたと・・・

一寸だけ適性が有ったのかな?

 

「なのは!? どうかしたの?」

「なのはちゃん!? 何が有ったの?」

「ゴ、ゴメン!」

 

 一寸焦ったが、気を取り直し・・・

 

【・・・踏ン張リタイ?】

「ぶはっ! ゲホガホ!」

 

 咽る!

 

【・・・紙ガ無イ?】

 

 蹲る!

 

「な、なのは? どうしたの!?」

「なのはちゃん! 何処か、具合でも?」

 

 フルフル!

何とか否定するが、真っ赤に成りつつ、涙目に!

それでも起き上がり、ふらつきながらも隣へと立った。

 

【・・・悩ミ多キ人、何ヲ悩ムノカナ?】

 

 テレビのナレーションで言っていた事を、何となく呟いて見る・・・

 

「な、何だろうね。何だと思う?」

 

 なのはは、何とか落ち着き、デュオに尋ねる。

 

【ンーット・・・トイレ!】

「ぶふっ!」

 

 その答えに、流石に・・・

 

「どうかしたの!?」

「なのはちゃん!?」

【トイレニ行キタイ!】

 

 純粋にトイレに行きたくなった模様。

 

「ア、アリサちゃん、デュオ君、トイレだって・・・」

「え? わ、判った! 直戻るから!

デュオ、こっちよ!」

 

 急ぎ、その手を取り、そちらへと向かうアリサ!

 

「ココで待ってるね!」

「お願い!」

 

 そう言いながら遠ざかる二人。

 

「お客様、具合が宜しくないのですか?」

「あ、はい、急に・・・」

 

 実際に可笑しく思われた様だ・・・独り言が・・・

 

 一寸だけ、医務室のお世話になった・・・

 

 その間にメールが届く。

 

 白黒大熊猫の前で待つ。

 

「??? 何だろなの」

「何だろうね?」

「えっと、見せて貰っても?」

 

 医務室の方も、何事かと気になったようだ。

 

「あ、はい」

「・・・ああ! ここから斜め向かいの動物園の前だね!

そこに行けば分かるよ!」

「は、はい! ありがとうございます!」

「ありがとうございます!」

 

 

 等身大のパンダ像。

その前で待っていた。

 

「ゴメーン! 今なら割と空いてるみたいで、直に見れるって!」

「え!? そうなの! じゃぁ、見ようよ!」

「わ、私も見て見たい!」

「じゃあ、はい! チケット!」

「え? アリサちゃんの分は?」

「アタシは要らないの。

そのまま一緒に入れるから」

「えっと、手帳で?」

「そう、結構融通が利く見たい」

 

 

 そんなこんなで動物園のパンダを見に行く事に・・・

 

 

 お土産が、物凄い名前の甘納豆になった・・・二種

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

思い浮かぶがままに、思い描けるがままに・・・




次回 乱入? 闖入?

有り得ない事が起ります。まぁ、こうなったのではないかと、捏造しております。
多分に想像の域を出ませんので、こうなったかなと。

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