魔法少女リリカルなのは DOUBLE STANDARD   作:トータス

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一気に決着へと向かいます。


すれ違う思い

決着へと向かう道

 

 

公園の木々が生茂る中、その体は有った。

 

「くっそぉ! 置いて来る事しか、出来なかった!

せめて、だれか・・・」

 

 プレシアから手酷く叱責され、打ちのめされるフェイト。

それを止めようと割って入るも、たやすく押し退けられたアルフ。

 

 せめてもの慰めは、デュオが居なかった事・・・

幼い子に、その様な様子を見せなくて済んだ事・・・

 だが、それだから、連れ出す事も適わなかった・・・

自分一人が外へと、助けを求める事しか・・・

 

 意識が途切れ、倒れ伏す。

 

 

 

 暫くし、辺りが騒がしい。

 

「・・・どうしたの、アリス?

そんなに引っ張って!」

 

 ガサガサと、茂みを掻き分ける音と共に、懐かしく感じる、何かの匂いがした。

 

「ウ、ウウゥ・・・」

「! ・・・鮫島! 来て!

この子、連れて帰るから手伝って!」

「はい、直に手配いたします!」

 

 それだけが聞こえ、運ばれて行くのが分かった・・・

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

「・・・様子は、どう?」

「今は、眠っている様です。

虐待されていた様子ですから、余りお近付きにならない方がよろしいかと」

「・・・分かった。でも、あの子は、付きっきりね」

「はい、デュオが居なくなってからは、憔悴していましたが・・・」

「連れ出してみて、正解だったみたいね」

「はい、そうして見たお嬢様の目が正しかった」

「でも、鑑札も無いし、こんなに大きな子、何処から逃げて来たのかな?」

 

 

 そんな声が聞こえた・・・

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 助けを求める者、求められた手を取った者。

そう有る事を是とし、その事をただ、遂行する者。

喜びと共に、今暫くの辛抱を求められた者。

ただ、絶望し、動く事を、考える事を、放棄してしまった者。

 

 それらの者が、一堂に会する時、次への扉が開かれた。

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 一方、時の庭園では・・・

 

「じゃあ、もう暫くの間、我慢して貰える?」

 

 コクコク

 

「必ず、迎えに来るから。

それまでは・・・」

 

 ギュウ!

スカートの裾を掴んで離さない。

 

「さぁ、そろそろ放して上げて。

アナタにはアナタの仕事が有るから、アナタのお仕事は?」

 

 そう、ウーノから諭されたデュオ。

まだ放したくは無いが、任された事はやると決めている。

 

【・・・オニゴッコ!】

「はい、良く出来ました!」

 

 そう言いながら、優しく頭を撫でる。

 

「ウーノ姉様の方が、上手くコントロール出来てるみたいだけど・・・」

「何となく分かるだけよ。貴女も自分の仕事に戻って。

直に分かる様になるわ」

 

 プレシアに扮したドゥーエに向かって言う。

 

「はいはい。じゃあ、シナリオはこれで良いのね?」

「ええ、それで精々それっぽく演出して貰えると、目を眩ませるのには良いと考えられるわ」

 

 その様子を、離れた所から伺っていたプレシアが口を挟んだ。

 

「それにしても、見分けが付かないわね。

鏡合わせの自分を見ている様ね」

「ええ、私は自分を偽り、他人に成り済ます能力の使い手ですから」

「そう。じゃあ、どっちがどっちか、判る?」

 

 そう言って、立場を入れ替えるプレシアとドゥーエ。

目を白黒させながら、二人のプレシアを見比べるデュオ。

 

 戸惑いつつ、片方に寄り添う。

 

「・・・私で、良いの?」

 

 コクコク!

 

「・・・そう、本当に?」

 

 ・・・コク

 

「あらあら、駄目だったわね」

「本当に、何処で見分けたのかしら」

 

 プレシアとウーノはお互いの意見を出し合う。

匂い、仕草、声、入れ替わりを見て覚えた等と、意見は尽きない。

掴まれているプレシア(ドゥーエ)は、戸惑いつつ、尋ねる。

 

「・・・何処で、見分けたの?」

【色。魔力ノ、色】

「・・・見えない筈なんだけど・・・」

【??? 見エルヨ?】

「そう、アナタには、私が何処に居ても、判るのね?」

 

 コク

 

 小さな頷きに、応えを返すドゥーエ。

偽りの姿であっても、自分を見分ける事が出来る存在。

自分だけを、見続ける存在。

 

 そんな存在が居る事を知り、何気なく、嬉しく感じている。

ただ、そんな感情には気が付いてはいない。ただただ、特別である事が、代わりで無い事が、嬉しかった。

それに対し、返せるモノを知らぬまま、行動で返す事にした。

 

 キュッ!

そっと、抱き締められる。

両腕ごと、抱きしめられ、抱き返す事が出来ない。

ただ、その温もりに浸る。

 

「さ、ココからは仕事よ。準備は良い?」

 

 コク!

力強く、頷きを以て返す。

 

「じゃぁ、私はココで。

プレシア女史をご案内するから、後はよろしくね」

「ええ、こちらは特に問題は無さそうだから、心配しないで。

お嬢様も、茫然自失されている様だし、騙すのは一寸気が引けるけど・・・」

「そんな事は関係ないわ、アレは人形でしか無いのだから。

気に病む必要は無いわ」

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 管理局の突入が開始され、取り敢えずは、見知らぬ相手からは逃げ回るデュオ。

 

 

 子供を保護しようと、奮闘する武装隊メンバー達の会話

 

「あ! 居たぞ! 要救護者!」

「ほーら! 怖くない怖くない! こっちへおいで!」

「だぁ! 逃げられたっ!」

「お前が怖い顔をしているからだっ!」

「イイヤッ! お前だっ!」

「お前らが独身で、彼女も居ないからだろ?」(唯一の妻帯者だが、隊一番の強面)

「お前に言われたくはねぇっ!」×3

「はっはっはっ! 違いを・・・何処だ!?」

 

 既に何処にもいなかった。

 

 

 狭い隙間や、ダクトを通り、縦横無尽に逃げ回る。

それに振り回される武装隊。

 

 未だ、子供一人を捕まえる事が出来ないでいる事に、業を煮やし。

最終兵器が投入された!

 

 最終兵器 =クロノ・ハラオウン

 

 バインドで捕縛を試みるも、尽く外される。

設置されている場所が見えて居るかのごとく。そこを避けて逃げられる。

 稀に、バインドで捉え掛けるが、手を巨大化させ、叩き落して逃げる!

 

 部屋へ逃げ込んだと思えば、相手が入って来たら入れ替わりに、頭上を掏り抜け相手を煙(けむ)に巻く。

そんなイタチゴッコが続いた。

 

 最終的に、早期に保護する事は諦め、落ち着いてからゆっくりと捜索する事となった。

そのままでは流石に拙いと考え、少数の捜索隊を組織する事になった。

顔見知りで有るだろう、なのはとユーノに白羽の矢が立った!

 

 

「デュオー! 出ておいでぇ!」

「おぉーい! 大丈夫だから!」

 

 五分後

すんなりと出て来た、逃げ疲れたのか、背負われながらであった。

 

「どうして、逃げてたの?」

「そうだよ? 何も、危ない事は無い筈だよ?」

【イカノオスシ!】

 

 その答えを聞き、それなりに考えて逃げていたらしい事は判った。

 

「でも、アルフさんは?」

【シッテルカラ、大丈夫!】

「じゃあ、僕は?」

【・・・インジュー!】

「な、なぜに・・・」

「??? ナァニ、ソレ?」

【エット!】

「わーわーわー! そ、それより! フェイトは!?」

 

 なのはは意味が判らず尋ねるが、ユーノによって遮られた。

 

「そ、そうだった! フェイトちゃん!」

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 プレシアに化けたドゥーエによる自滅の演技により、容疑者不在・もしくは死亡したモノとして、事件は幕を閉じた。

戦闘機人たるドゥーエにとっては、虚数空間で有っても生存・離脱は可能である事から、その様な作戦が取られた。

 

 

アースラ艦内・通路

 

 

「あ! デュオ! 大丈夫!? 怪我は無かった!?

アイツ(=プレシア)に変な事、されてなかった?」

 

 そう心配するアルフ。

フェイトも心配だが、恩人を一人でそんな危険な所に置き去りにした事が気に掛っていたようだ。

 

 フルフル!

 

「そんな、黙って無くても良いんだ!

何が有ったのか、それとも何も無かったのか。

兎に角、無事だったんだな!」

【オ家ニ、連絡入レタ!】

「へ? それって?」

【皆、元気ダッタ!】

「そ、そっか、身内がまだ居たんだな?

それで、連絡が取れたって言うけど、帰れるのか?」

【・・・ワカンナイ】

「だったら、こっちから交渉して見るよ!

アースラに乗れれば、早く帰れるだろうし・・・」

【ダメ、内緒ナノ。ダカラ、言ワナイデ】

 

 そう伝えながら、口元に手を遣り、黙っていてとハンド・サインをするデュオ

 

「う、判った。借りが有るし・・・

でも、フェイトに聞かれたら、言うけど、構わない?」

 

 ・・・コク

 

 頷きを答えとして返し、小指を差し出す。

 

「ああ、こっちの約束事だね?

良いよ、じゃあ」

 

 そう言って、同じく小指を差し出し、絡める二人。

 

【指切リゲンマン嘘吐イタラ、オ肉千日分ヨーコス!

指切ッタ!】

「は? そ、そうなのか!?

ど、どうしよう!?

そ、そんな約束だったとは!?

えっと・・・三年近く!? うわぁああ!!」

 

 ゴロゴロと、のた打ち回るアルフ。

 

「はっ! そうかっ! 誰にも言わなければ良いんじゃん!

アー吃驚した!」

「あ! アルフさん! どうかしたんですか?

そんな大騒ぎして」

「あ、聞いてよ、なのはぁ! 私、とんでもない約束しちゃってさぁ!」

「えっと、どんな約束なの?」

「うん、デュオの・・・」

【オ肉!】

「ヴッ! ゴ、ゴメン! 忘れて!」

 

 それだけ言うと、走り去った。

 

「??? どうしたんだろうね?」

【ネー?】

「どうしたのかな?」

 

 そらとぼけるデュオ。

疑問符だらけのユーノとなのは。

そこへ、クロノとエイミィがやって来た。

 

「やっと見付けた」

 

 サッと、なのはの後ろに隠れるデュオ。

何気に盾とする様に陣取り、更にユーノを囮とする準備も・・・

 

「君には、公務執行妨害と、次元漂流者としての登録が待っているんだ。

手間を掛けさせないでくれ」

 

 そう言って、デュオの手を取ろうとする。

だが、その手の前に、なのはが立ち塞がった。

 

「・・・待ってください!

こんな小さな子を、連れて行くんですか!?」

「な、なのは! これは、決まった事なんだ。

だから、逆らったりしたら・・・」

 

 心配するなのはに対し、それをなだめようとするユーノ。

 

「そう言う事だ、そう手荒い事をする訳じゃない。

ただ一寸、捜索願が出ていないかを調べるだけだし。

ミッド出身なら、住民登録もされている筈だから、それらを照合するだけだ。

公務執行妨害に関しても、それだけの魔法技術を持っている事を考えれば、登録もされている筈だ」

「・・・それなら、大丈夫、かな?」

 

 そう言って、退こうとするが、デュオはその後ろから出て行こうとはしない。

 

「えっと、大丈夫だよ?

悪い人じゃないから、安心して?」

 

 クロノをジーっと見詰め、一言。

 

【悪イ人!】

 

 場が硬直した。

 

「え、えっと、何処に悪い人が居るのかな?」

 

 エイミィがそう尋ねる。

 

 サッと指さされるクロノ。

 

 クロノは自分の後ろかと思い、横へとずれる。

指先も、その動きに沿ってずれる。

更に動くクロノ。

更にその後を追う指先。

 

「プッ! ク、クロノ君!」

「わ、笑うな、エイミィ!」

「えっと・・・デュオ、君? 何処が悪い人なのか、お姉ちゃんに教えてくれるかな?」

 

 微妙に情報を改竄するリンディ提督。

 

「か、母さんまで!」

「クロノ、ここでは艦長。もしくは提督と呼びなさい」

「う、はい、艦長。・・・ですが!」

「クロノ執務官。貴方はこの子がした事が悪いと言うけれど、その理由を聞いてからでも、遅くは無いと思わない?」

「・・・はい」

「じゃあ、教えてくれるかな?」

【黒クテ、トゲトゲ! 悪イ奴!】

 

 そう言うと、クロノの衣装を指差した。

黒いコートに、左右の腕の辺りには棘らしき突起が一つづつ・・・

 

「なっ! この服の何処が!?」

「「「「・・・」」」」「「「プッ!」」」

 

 何となく、納得が行った様子の人々。

偶々通りかかり、話を聞き付けた隊員達。

 

 結果的に、公務執行妨害は多大な勘違いから起きた。不幸な事故と言う事で、不問に付された。

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 バニングス邸

 

 

「デュオ!? どこに行ってたのよ? 心配したのよ!」

 

 ぎゅーっと、抱き締められ、青ざめる。

 

「アリサちゃん! それ以上は・・・」

 

 すずかは、流石に苦しいのではないかと、心配し止めに入ろうとするが・・・

なのはが、それをそっと引き留める。

 

「にゃはは。えっと、デュオの出身地の知り合いの人が、偶然通りかかって連れて行ってたみたいなの。

それで、領事館の方に・・・」

 

 嘘、と言うには強引であるが、納得させる事が出来るだけの根拠が揃った嘘を並べる。

だが、心配で心配でしょうがなかった様で、アリサは周りが見えてはいない。聞こえても居ない?

 

「えっと、このままそっとしておこうか?」

 

 すずかはアリサの心情を鑑み。そっとしておく方が良いのでは、と考える。

 

「・・・そうだね、そっとしておくのが良さそうなの」

【・・・タッケテー、クルシイ!】

 

 何か聞こえるが、なのはは聞こえなっかた事にする様だ。

 

【心配させた罰なの。そのまま、もう暫くは我慢なの!】

 

 そのままそっと部屋から退出し、扉を閉めるすずかとなのは。

 

「でも、なのはちゃん。デュオ君、どうなるのかな?」

「うーん、どうなるのかな?」

「このまま、もう会えなくなるのかな?」

「あ、そうなるかも知れないなの・・・」

「でも、向こうの家族の人も、心配してるんだよね?」

「・・・そう、なの」

 

 そう直には、見付からないかもしれない。

だけど、見付かって欲しい。

 このまま、ずっとここに居る事も、良いとは思うが、向こうの家族が見つかった時、そちらに帰らざるを得ない。帰るべきでもある。

そうなってしまえば、海を越え、と言う訳にはいかず、簡単に会えるとは言えない。

 それでも、こっちに残って欲しいとも、言えない。

 

 その相反する気持ちを抱え、悩む。

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 アースラ艦内・艦長室

 

「リンディさん!」

「なぁに? なのはちゃん?」

「あ、あの! デュオ君の、家族が見つかったら、もうこっちには来れなくなっちゃうんですか?」

「・・・うん。そう簡単には、行き来するのは難しいわね。

でも、こっちに痕跡(戸籍・登録)が残っているのなら、暫くはこっちに居る事になると思うわ。

手続きもあるし、直にでも帰すってわけでもないから」

「そ、そうですか・・・」

「でも、勝手に来ちゃう人も、居るのよねぇ」

 

 そう言って、なのはの後ろにいる人物へと、視線を送る。

その視線に、冷や汗を流すユーノ。

その答えを聞き、視線を辿るなのは。

 

「え? ユーノ君? ・・・!

ユーノ君なら、また来れるんだよね?」

「う、うん!」

「なら、その時に一緒になの!」

 

 淡い思いから、力強く頷くが、打ち砕かれた!

 

「ゴホンッ! 提督、犯罪を誘発しそうな発言はやめてください!

ユーノも、それに流されない様に!」

「あらあら、執務官としては見逃せない?

それとも、あの子が苦手になっちゃったのかしら?」

「・・・それとは別です!」

「悪(ワ・ル)・い・人(ヒ・ト)!」

「エイミィも!」

 

 最近、この話で弄られる事が多いクロノ。

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 バニングス邸にて、リンディ提督が大使館職員を装い、面談が行われた。

バニングス家当主と、デュオに関する話し合い。

 

「・・・では、親類縁者が見つかるまで、此方で引き続き、預かって頂くと言う事で宜しいですか?」

「はい、こちらも異存は有りません。

家族と一緒に暮らす事が一番ですが・・・」

「こちらとしても、無理にとは申しませんし、申し上げる事も出来ません。

ただ、見付かるかどうかが、まだはっきりしませんが、そうなった時に備えなければ成りませんので・・・」

「いえいえ、お立場を考えれば、当然のことです。

ですが、こちらとしましても、これっきりと言う事が無い事を願う次第でして・・・」

「・・・解ります。私も、最近考える事が有って、近く養子を取ろうかと考えて・・・」

「・・・失礼ですが、ご家族は?」

「息子が一人。もう手が掛らなくて、あっと言う間に、独り立ちしていました」

「そうですか、私は娘が居るのですが、しっかりしていて、もう少し子供らしくても、と考えるのですが、中々。

デュオ君は、そう言った点では楽しませてくれるもので・・・」

 

 一寸した争奪、牽制が水面下で行われていた。

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 取り敢えずは、犯罪に巻き込まれた可能性もある事から、引き続きバニングス家での生活が決まった。

フェイト、アルフは、アースラでミッドチルダへと移動する事に・・・




とまぁ、こうなったのではないかと・・・捏造して見ました。

次回 新たなる秘密?

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