魔法少女リリカルなのは DOUBLE STANDARD 作:トータス
相対する二組、乱入する者、横から掻っ攫う者!!
二日後
行方不明とされているとは終ぞ知らず、祖父と連絡が取れた事を純粋に喜ぶデュオ。
言い渡された事を成しとげんとするフェイト。
それを、危険な行為だから見逃せないと、少しでも解り合おうとする、高町なのは。
危険な行為を見逃せないと、割って入る管理局。
そんな、其々の思惑を超え、事態は進む。
なのはとフェイトがジュエル・シードを巡り、相争う最中。
「時空管理局、クロノ・ハラオウンだ!
双方、戦闘行為を中止して貰おう!」
突如、拘束され、身動きが取れなくなったフェイト、アルフ、なのは、ユーノ。
「さて、取敢えずジュエル・シードは封印させて貰おう。
それから、双方。我々の艦へ来て、それぞれの所属と、ココで何が有ったのかを、説明して貰おうか」
そう言って、クロノはジュエル・シードを封印し、アースラへと報告を入れている。
「エイミィ、こちらクロノ。
全員の拘束が終わった、転送を開始してくれ・・・エイミィ?」
艦からの通信はノイズが多く、聞きとり辛い状態になっている。
「どうした? エイミィ?」
・・・ ・・・
一方、捕えられたアルフは、
「くっ! これまでか・・・せめて、フェイトだけでも」
【アウフ、アウフ】
「! デュオ?」
【オー、繋ガッタ。
今カラ行クネ、受ケ止メテ!】
「は? チョ、一寸!?」
背中に衝撃が有り、首に手が回された。
気が付くと束縛が解かれていた。
「え!? !! フェイト!
一旦引こう!」
フェイトのバインドを解いていると、
「あ! 何時の間に!」
再度、拘束しようと拘束魔法(バインド)を放つクロノだが、尽くがアルフの背中の大きな手に阻まれる。
「クッ! 仲間が隠れていたか!」
「! なのは! アレ!」
ユーノに言われた先には、逃げるアルフの背中に取り付く、デュオの後姿。
「え? あっ! デュオ!?」
そう叫ぶも、あっと言う間に見えなくなってしまった。
「どうして・・・」
知らない間に、ドンドン事態は廻る。
・・・ ・・・
管理局の手から逃げ切り、一息つく三人。
「ありがとう。おかげで助かった」
「なぁ、助けてくれたのは良いんだけど、帰らなくても良かったのか?」
【! ・・・ソウダッタ!
如何シヨウ、怒ラレルカナ?】
「さ、さあ・・・そればっかりは・・・」
疑問符付きで尋ねられても困るアルフ。
「それでも、管理局が出て来てるのに、如何して助けてくれたの?」
そう尋ねるフェイト。
【??? 真ッ黒デ、トゲトゲシテタ!
ダカラ悪イ奴!!】
言われて思い当たるのは、管理局の執務官。
「プッ! た、確かに! 真っ黒で、トゲトゲだった!」
「わ、笑ったら、駄目よ、アルフ」
「そう言うフェイトだって、声が笑ってる!」
ひとしきり笑い、落ち着いてきた二人。
ふと、フェイトは疑問を持った。
「じゃあ、私は?」
自分の姿も黒装束で有り、強引に事を進めた面もあった。
悪い人として認識されていないかが、気に掛った。
「あ、そういやそうだね」
ジーっと見詰め、一言。
【??? ・・・悪イ人?】
「う・・・ど、如何しよう、何て言えば良いのかな、アルフ?」
「へ? えっと・・・どう言ったら良いのかな? フェイト」
【??? エット・・・可愛イカラ、正義?】
「え!?」
「ふぇ!?」
【前ニ、可愛イハ正義ッテ聞イタ!
ダカラ、良インダヨネ?】
「え? ええっ?」
「あ、えっと、ソ、ソウ! それで良いんだよ!
・・・多分、きっと!」
同意を求められ、戸惑うフェイト。
一応、賛同する意思を見せるアルフ。
「じゃ、じゃあ! あの、なのはって子は?
あの子も可愛かったと思うけど・・・」
【・・・魔王】
ボソッとつぶやいた。
「へ? それって、どう言う事?」
【ナンカ、偶ニ、怖《コア》イノ・・・ダカラ】
「へ、へぇ・・・そうなんだ」
【・・・魔王滅殺破壊光線(=ディバイン・バスター!)!】=勝手に命名
「な、何!? その、物騒な名称は!」
【ンット。前ニ、ソレ撃ッテタノ!】
「へ、へぇぇ」
「スゴイ名前だな・・・」
【知ッテルノハ、モット凄イノ!
大魔神ナノ! オッカナイノ!】
「もっと、上が有るんだ・・・」
「フェイト、勝てるよね?」
「う、うん。撃つ前に・・・如何にか出来さえすれば・・・」
「と、そう言えば、その手は、大丈夫なの?」
今さらでは有るが、両肘から先が肥大化し、甲冑の様な手と化している。
【エット、爺チャンガ、イザッテ時ハ、コウ出来ル様ニシテクレテタミタイ!】
「・・・じゃあ、問題は?」
【・・・ナイ?】
それだけ言うと、融解するかの如く、元の小さな手へと戻った。
・・・ ・・・
もう暫くの間は、時の庭園に滞在し、連絡を待つ事になった。
その代り、バニングス家への連絡を頼まれたフェイト。
公衆電話から、連絡する事に。
【はい、バニングスです】
刻々と、度数が減って行く!
残り時間はわずか!
「えっと、あの!
デュオを・・・その・・・家で預かっています!
その・・・心配しないでください!
当分は預かります!」
【え!? 無事・・】
ガチャ! ツーツーツー ピピー! ピピー! ピピー!
緊張の余り、即座に用件だけ伝え、切ってしまった。
「はぁぁ! コレで良し!」
「えっと、大丈夫・・・だよね?」
「大丈夫・・・だと思う。
本人が伝えるのが一番だろうけど・・・」
「だよね、喋れないし、手紙って訳にもいかないし。
かと言って、帰って貰うのも不味いしね。
コレで良かったんだよ!」
・・・ ・・・
一方・・・
「逆探は如何だ!?」
「ダメです! 短すぎます!」
「履歴を割り出せ!」
「ハイ!」
資産家の家で有る事から、営利目的の誘拐で有るかも知れないと、大事に・・・
偶々、見掛けた事も有り。
一応、元気そうだったと伝えておこうと、なのは達はバニングス家へと赴いたが、騒然とした邸内。
「えっと、如何したのかな?」
「あ! なのはちゃん!
デュオ君、誘拐されたかも知れないって!
たった今、電話が有ったの!」
偶々その場に居合わせ、興奮した様子で話してくれるすずか。
「え!?」
【ど、如何しよう、なのは!】
【い、言えない! 見掛けただなんて、言えないよぉ!
如何しよう、ユーノ君!】
「それに、誰かに追われてたって情報も入って来たの!」
益々、言い出せなくなった二人。
・・・ ・・・
思い浮かぶがままに、思い描けるがままに・・・
・・・ ・・・
再会? 初対面?
翌日
スカリエッティ・サイドの使者として、現れた二人。
それに相対するプレシア。
「あの二人に、見覚えは?」
そっとデュオに耳打ちし、本物かの確認を促した。
【何デ? 誰カ、違ウノ?】
その態度と、嘘を言っている様子もない事から、信じるに値すると判断した。
「・・・そう、なら問題はないわ。行ってらっしゃい」
そう言うと、そっと背中を押しやった。
デュオはそのまま、小走りに近付き、見上げる。
その足に、ギュウッとしがみ付いた。
しがみ付かれた方は、戸惑いつつも、ぎこちない手で、そっと抱き返す。
それを見て、もう一人が此方へとやって来る。
「初めまして、ナンバーズのウーノと申します。
以後、お見知り置きを」
「ええ、所で、あの子とあの人の関係は?」
「何と申したら良いのかは、判りませんが・・・
親子で有るとだけ、答えさせて貰います」
「・・・そう、親子だったの」
感慨深げに、その様子を見詰めるプレシア。
「ただ、こちらとしては、その様な事実は存在いたしません」
「・・・それは、どう言う事?」
「あの子は、別の時間軸から、此方へと来た可能性が有るという事です。
パラレル・ワールドと言えるかは、不明ですが・・・
存在する筈の無い存在である、という事です」
「・・・そう、それでも、再会できる事は、喜ばしいわ」
「ええ、どんな奇跡が働いたのか、それは判りません。
ですが、向こうでは貴方の娘さんが、一時では有りますが、親代わりとなっていたようです」
「! ・・・そ、それは!」
脳裏に浮かぶは、大人になったアリシアと、その傍で戯れる子供。
そう有る筈だった、世界。
それを、見れるかもしれない。
「細部まで、解析する事は適いませんが、その様な事が有ったらしいとだけ、伝えさせて頂きます」
「・・・なら、早々にそちらへ行こうかしら」
「そう仰って頂けるのなら、早速準備に掛らせていただきます。
取敢えず、管理局の目を欺かなければなりませんので、貴女の死を装って頂きます。
その為の準備は整っております」
「そう、なら直にでも、お願いするわ」
「他に、持っていかれる物は、ございますか?」
「無いわ、娘と実験データーだけ。
それだけの方が良いでしょ?」
「・・・判りました。では、早速手配いたします」
・・・ ・・・
ドクターからは、これから会う相手の母親を演じろと言われたが、如何したら良いのかしら?
他人を演じる事はあっても、全くのゼロからそれらしく演じろと言われても・・・
そんな経験は皆無であり、そうなる事も想定していない事から、考えた事もなかった。
足にしがみ付く子供を見て、如何すればいいのか判らないまま、姉に助けを求める事にした。
【ウーノ姉様、どう接すれば良いの?】
【そんなの、聞かれても判らないわよ!
そこは、自分で何とかしてみなさいよ。その為のISも有るんだから!】
【そんな事を言われても、全く判らない!】
内心半狂乱に成りながら、如何にか演じようと躍起になっているドゥーエ。
そんな弱音を吐かれるとは思いもしなかったウーノ。
そんな事とは終ぞ知らず。微笑ましく、羨ましくも思えるプレシア。
そんな戸惑いとは無縁に、純粋に再会できたことを喜ぶデュオ。
ぎこちなさや、違和感はあるが、そんな事は関係無い。
もう会えないかとも思った相手と、また会えた事が、ただただ嬉しかった。
・・・ ・・・
大人の話が有るから大人しくしていてと、部屋から追い出された。
「所で、もう一人のお嬢様に関しては・・・」
「ああ、要らないわ。もう、アリシアが生き返るのだったら、用済みね」
「・・・でしたら、こちらでお引き受けいたしましょうか?」
「ええ、お願いするわ」
そんな会話を聞いた。
意味は判らないが、何と無く。
フェイトお姉ちゃんの事らしいとだけ、判った。
だから、何気なく、どうしているのかが気になった。
様子を伺おうと、機器を動かしてみる。
そこへ映し出されたモノは、疲労困憊の様子のフェイト。
それを拘束し、連れ去ろうとしている(客観的に)悪人!
!? 捕まってる!?
どうしよう! 助けなきゃ!
えっと、転送装置は・・・行ける!
【行ッテキマァス!】
「え? 何?」
「あら、どうかしたのかしら?」
「ウーノ姉様。あの子、姿が見えないんだけど、何処に居るか判る?」
「さぁ、見て無いわよ。
それより、この先の事をうち合わせましょう」
・・・ ・・・
【! クロノ君! 上空に魔力反応!
え? ひ、低い? 何なの? この低さは!】
「どうした! エイミィ!?」
【クロノ君! 兎に角、受け止めて!】
「は!? どう言う事なんだ!?」
【兎に角、自由落下で子供が落ちて来てるの!
受け止めないと大変なの!】
「わ! 判っ・・・」
ドン!!
クロノは背中にドロップキックを喰らい、一瞬意識が遠くなったが、何とか堪えた。
だが、追い撃ちとばかりに、そこを踏み台に、更に跳んだ!
拘束されて、傍を飛んでいたフェイトへと向かって。
【フェイトオ姉チャン。大丈夫?】
「え? う、うん。でも、どうして?」
【??? 悪イ人ニ、掴マッタンジャナイノ?】
「え、えっと、兎に角、助かった!」
「フェイト! 取敢えず、今は引こう!
これ以上は、また捕まっちゃうよ!」
そうアルフに促され、その場を後にする事となった。
・・・ ・・・
一方では・・・
ズズゥン!
【キャァア!】
「・・・っく! どうした!? エイミィ?」
海に蹴り込まれ、何とか海面まで上がる事が出来たクロノが耳にしたのは、ノイズに塗れた同僚の声だった。
【ク、クロ・・・君。コチ・・艦に・・被害・・・】
そのまま途切れ、ノイズが流れる。
「お、おい! どうしたんだ! 応答してくれ!」
・・・ ・・・
「・・・これで良いかしら?」
「ええ、お手間をお掛けします」
勝手に飛び出して行った子供の逃走を手助けする為、一時的とはいえ、アッサリと戦艦を航行不能に追い込んだプレシア。
「手が掛る子程、可愛いわね」
「その様なモノですか?」
「ええ、アリシアは本当に手が掛ったわ。
でも、その分、可愛いの。だから、あの笑顔をまた眼にする為なら、鬼にでもなって見せるわ」
そう、艶然と微笑んだ。
・・・ ・・・
思い浮かぶがままに、思い描けるがままに・・・