真・東方夜伽話

こいし、このココロ

2010/07/13 21:10:45
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こいし、このココロ

猫軍団の幹部
様々な商品…そして商品ともとも言えないガラクタの入り混じった商品棚。


窓から入る日の光。


…いつものように人気のない店内。


そしてその中で一人お茶を啜りながら本を読む僕。


今思えば彼女と出会わなければこんな味気のない生活がずっと続いていたのだろうと僕『森近霖之助』は思った。
そう…彼女との出会いはこんな陽の光が心地よい日だった…





















いつものように来客の少ないこの雑貨屋『香霖堂』。
たまに来る客といっても神社の巫女である霊夢や自称『普通の魔法使い』である魔理沙、そして湖の近くにある吸血鬼の館のメイドなど全然普通でない客しかいないこの店内で、僕はいつものようにお茶を啜りながら外の世界から来た本を読んでいた。

はたから見ればひどくもの寂しい生活かもしれないが僕には満たされた時間である。

特に利潤を求めてやっていることでもなく、単に趣味の反中であるこの店にはこれくらいの閑散さがちょうどいいのかもしれない。

妖怪と人間のハーフである僕は妖怪の血の方が濃いのか生命力が強く、飲まず食わずでもしばらくは生きていけるので別に生活には困ってない。


そう…このくらい静かなのがちょうどいいのだ、特に本を読む環境であるなら…



…カランカラン



そんなことを考えていると不意にドアに設置してあるカウベルの無機質な鐘の音が鳴り響いた。
どうせ魔理沙が冷やかしにでも来たのだろうと思い、本から目を上げずにいると聞きなれない声が耳に入る。

「うわぁー、変なものがいっぱいある」

聞きなれない声、そして人の店の商品を変なもの(確かに変なものもあるが)呼ばわりする者を確認しようと僕は顔を上げる。
そこにいたのは一人の少女だった。銀白色のふわふわした髪に黒いツバの大きな帽子をかぶっている彼女は物珍しそうに店内を物色している。

やがて彼女は僕の視線に気づいたのか、僕の方にとことことやってきてニコニコしながら話しかけた。

「こんにちは、あなたがここの店主?」

ひどく無邪気なその笑顔に一瞬見入ってしまったような気がしたが気のせいだと思い僕は返事をする。

「ああ。僕がこの『香霖堂』の店主の森近霖之助だ。何か探し物かい?」
「ううん、ただ見てるだけだよ。こんな人気のない所に建物があるなんて珍しいなぁって思って入ってみただけだから」

それを言うなら、こんな人気の少ない所を歩き回っている彼女のほうがよっぽど珍しいのだが言わないでおく。

「そうか。ならゆっくり見ていくといい。何か分からない物があったら呼んでくれ。とりあえずどんな物かだけは分かるから」
「うん、分かった」
「……そう言えば聞いてなかったけど、名前はなんて言うんだい?」
「私?私の名前はこいし…古明地こいしだよ」
「そうか。なら…こいしちゃん、改めてよろしく頼むよ」
「うん。よろしく、霖之助さん♪」

そう言って彼女…こいしは再び物色に戻っていった。そして僕も本に目を落とした…







「ねえねえ、これはなんていう物なの?」

しばらくするとこいしは好奇に満ちた目をして僕を呼びだした。
そして案内された場所にあったのは箱のような物だった。

「ああ、これは『ぱそこん』というものだ。なんでも外の世界の式神のようなものでこれがあれば大抵のことができるらしい」
「へぇー、そうなんだ。でもこれ…全然動かないよ」

そう言ってかちゃかちゃといろいろなボタンをいじくるこいし。

「おそらく主の命令しか聞かないようになってるのだろう。よく訓練された式神のようだね」
「ふーん。これが使えたら魔理沙にも勝てると思ったんだけどなぁ」
「…君は魔理沙の知り合いかい?」

まさかこいしの口からその名を聞くとは思わなかったので聞き返してしまった。
するとこいしは笑顔で…そして少し残念そうに答えた。

「うん。前に一回戦ってからお友達になったの。…その時はあとちょっとのところで負けちゃったんだけどね」

あの魔理沙と互角以上に戦えるとは…、このこいしと言う少女は普通の人間…または妖怪ではないのかもしれない。
彼女のことをもっと知りたい、そんな好奇心に負けて僕は質問を続けた。

「こいし、君の種族は何だい?魔理沙と対等に戦えるなんて普通の妖怪じゃないはずだ」

するとこいしはビクリと一瞬体を震わし、そして少し困ったように返事をした。

「…え?わ…私は普通の人間だよ。うん…」
「そうなのか。なら余計とすごいな。人間で彼女とまともに戦えるなんてそうそういないからね」
「そ…そうなんだ」

妙に落ち着きのなくなった彼女に少し疑問を抱く、僕は何か聞いてはいけないことでも聞いてしまったのだろうか?
そんな考えの僕を知ることもなくこいしは再び物色を始め、分からないもの…おもしろそうなものがある度に質問をしてきた。
そしてその時の彼女は終始笑顔だったので僕のそんな疑問も次第に霧散していった。

そしてこいしの物色も終わったころには夕方になっており、そろそろ出歩くには危ない時間になってきた。

「それじゃ、私はそろそろ帰るね。……また明日も来てもいいかな?」

少し不安げな表情のこいし。そんな彼女に僕は微笑んで言った。

「ああ、歓迎するよ。君は魔理沙とは違って商品を壊しもしなければ盗ってもいかないからね。…でも、何かを買っていってくれるとさらに助かるのだが…」

そう言うとこいしの表情は輝くような笑顔に変わった。

「うん!気に入った物もあったから、明日は買っていくね。それじゃ、ばいば~い♪」

元気よく手を振りながら店を出ていくこいし。
カウベルも彼女の元気さに感化されたのかいつもよりも景気のいい音を鳴らした…















(はぁっ…、嘘なんて吐かなきゃよかったな…)

私の家である『地霊殿』へ帰る途中私は彼に嘘を吐いてしまったことをずっと後悔していた。

私の種族は人間ではなく、本当はさとり妖怪である。
さとり妖怪の能力は相手の心の中が読めてしまうこと。そんな能力は夢のようだと言う者もいるが、実際は良いものでもなんでもない。
それはただ嫌われるためだけの能力と言っても過言ではなく、実際この力の所為で私はいっぱい傷ついた。

近づくことでさえ嫌がられ、たまに相手から近づいてきて親身な態度をとってくれても心の中には私への悪意が満ち溢れていた。

だから私はその能力を捨てた。あっても嫌われるだけなら無い方がいいから…

でも―――

(霖之助さんは私といた時どんな事を考えていたのかな?)

最近似たようなことを考えることが多い。
霊夢や魔理沙と戦った時も同じことを考えた。彼女らは今までどんな妖怪と戦ってきたのか、また普段は何をしているのか、といった疑問は親しくなればなるほど大きくなる。
そして彼女らは今までの人と違い私に不自然に優しくするようなことはしない。
私がさとり妖怪だろうが何だろうが周りの人と平等に接してくれる。

それは霖之助さんも一緒であった。
もちろん私がお客さんだったからといった理由もあったのだろうけど、店のことと関係ないことでも彼は普通に接してくれた。

こんな時に私は心を読む力が無い事を後悔してしまう。
都合のいい時にだけ能力が戻ればいいなんて、勝手もいいところなんだけど思ってしまう事はしかたない。


でも、本当のことを言ったら霖之助さんは私を避けてしまうのではないか?
一瞬そんなことを考えてしまってあの時私は嘘を吐いてしまった。

(嘘なんてだめなことなのに…)

心が読めていたころを思い出す。
都合のよい建前に隠されたどす黒い本心。読むだけで気分が悪くなったあんな心。

(私…あの人たちと同じ事をやっちゃったんだよね)


私は――












あの日を境に例の少女、こいしは頻繁に僕の店を訪れるようになった。
始めはすぐに飽きて来なくなるだろうと踏んでいたのだが、そうはならなかった。
人懐っこそうな笑みを浮かべて何度もドアを潜り、商品の説明を楽しそうに聞いてくれた。


そして何より、僕が彼女の相手をまともにしていること自体が驚きだった。
いつもの自分なら店に客がいようがいまいが、増してや話しかけられても必要最低限しか話はしない。

しかし彼女といる時は不思議と話をする気がおきる。
何故かは分からないが、気持ちが落ち着く気がした。


…カランカラン



そんなことを考えていると、毎日の恒例行事となりかけているカウベルの音が店内に響いた。


「こんにちは、霖之助さん♪」

無邪気な笑顔。
見ている僕まで釣られて笑いそうになるその笑顔の主はこいしだった。

「ああ、こんにちは。こいしちゃん」

僕は読んでいた本を机に伏せると彼女に返事をする。
こいしはカウンター横の椅子に腰かけるとおもむろにポーチから袋を取り出した。

「…こいしちゃん、それは何だい?」
「え、これ?えへへ~、内緒だよ。…ここにティーポットってあるかな?」
「あることにはあるが…。生憎のところ僕の家には紅茶はストックしてないんだ」
「ううん、別に紅茶葉はなくてもいいの。じゃあ、台所借りるね」

そう言うとこいしはとてとてと台所へと走っていった。
今の会話から判断して、恐らくさっきの袋の中には茶葉でも入っているのだろう。
ものぐさな僕としてはお茶を淹れてくれるのは助かる。


やはり僕の推測は正解だったらしい。
しばらくすると台所から良い香りが届き始めた。

「おまたせしました~」

香に気を取られていると、僕の隣には既にこいしが座っていた。
透明なポットの中の桃色の液体。さらにその液体の中に花弁のようなものが沈んでいる。
ハーブティの類であることは間違いなさそうだ。

「…上手いものだ。香だけでお腹いっぱいになりそうだよ」
「そ、そうかな?えへへ…お姉ちゃんに教えてもらったんだ」
「なるほど、君には姉がいるのか」

このことも今になって初めて知った事だ。

カップへの淹れ方も美しく、嗅覚、視覚からお茶を楽しむ事ができるので素晴らしい。
問題は…味のほうなんだが。

「じゃあ、頂くよ」
「ドキドキ」
「ふふっ、声に出してまで緊張してるのか」

彼女の一挙一動が全て可愛らしかった。
しかし、味の評価と混合するつもりはない。

まずはカップから立ち上る香を吸いこむ。
なるほど、上品だけどどこかしつこすぎない、それでいて甘い香りが鼻腔をくすぐる。
その香に誘われるように僕は一口その液体を啜った。

「……美味しい」

お世辞でも何でもない、本心が自然と口から滑り出た。
浸出しすぎたあのハーブ特有の強い味がほとんどせず、さっぱりとしていて後味が良い。
そして飲んだ後、喉の奥から鼻に抜けるほんのりと甘い香り。
文句など付けようの無い出来だった。

「ほ…ほんと?やったぁ♪」

こいしは喜びを全身で表すタイプなのだろう。
ぴょんぴょんと跳ねて喜んでいる。そんな彼女にふと笑みが漏れた。

「ああ、本当に上手く出来ている。…これは何のお茶なんだい?」
「これ?えへへ、これはローズティーだよ。私の家で育てた薔薇を使ってるの」
「へぇ、そうなのか」
「ローズティーは不安を和らげる効果もあるんだって。お姉ちゃんがそう言ってたの」
「はは、君のお姉さんは物知りだな」

なるほど、確かに気分が落ち着いてくるような気がする。

「なら、こいしちゃんは何か心配ごとでもあるのかい?」
「え?何で?」
「いや、君がローズティーを選んだのなら不安なことでもあるのかと思ってね。まあ、ただの偶然ということもあるが…」

僕としてはただの会話の繋ぎで言ったつもりだった。
しかし彼女は少し困ったような表情をする。…ちょうど初めて会った時に人間なのかどうかを訊いた時のように。

「…霖之助さん。あのね…」
「ん?」
「その…私…」

俯いたこいしの表情は帽子のツバで確認できない。
何か訊いてはいけない事でも訊いてしまったのだろうか?

「…ううん、何でもない。うん、ただの偶然だよ。良い薔薇が咲いたから、ただそれだけ…」
「…そうか」

彼女の様子からして何か心配事があることは明白なのだが、彼女が言いたくないならそれを無理に訊き出す訳にはいかない。
こいしはまた元の無邪気な笑顔にもどるとローズティーを啜る。

「…あ、ほんとに美味しい。ここまで美味しくできるとお茶菓子がほしいところだね」

意味ありげにこちらを上目遣いで見つめるこいし。
現金な彼女に微笑しつつ、僕は棚にしまってある茶菓子を取りに立ち上がった…





















「あ~あ。…やっぱりだめだな、私」

地霊殿に帰った私はベッドに寝転がり、一人呟いた。
自分がさとり妖怪だって告白する絶好のチャンスだったのに…
有耶無耶にしてまた嘘を吐いてしまった。


「…霖之助さん」


枕を抱きしめ、私はあの店長さんの名前を呟く。
何度も会って話をしていく度に私は彼に惹かれていった。
誰かと話す事がこんなに楽しいことだと久しく忘れていた。しかも、それが私の好きになった相手…
胸がドキドキして、息が苦しくなって、ぎゅってしてほしくなって…



だけど―




…私の種族を知ったら、霖之助さんはどう思うだろう?

誰にも好かれる事の無いさとり妖怪。
ずっとずっと嫌われてきたから、嫌われることには慣れていたつもりだった。
もう心は読めなくても嫌われていることには変わらない…


そんな私に好かれても、全然幸せじゃないよね…


それに、本当の事を知ったら霖之助さんも私から離れちゃうよね…


だから私はずっとずっと嘘を吐いてきた。
独りよがりでも、彼を恋しいと想い続けたかったから…
ただ…彼にだけは嫌われたくなかった…





…コンコン




枕に顔を埋めている私の耳に部屋のドアをノックする音が聞こえた。

「…こいし。入ってもいいかしら?」

その声の主は私のお姉ちゃん。
お姉ちゃんの声を聞いて私は慌てて枕から顔を離す。こんな所を見られたくない。
できるだけ普段通りを装って私は返事をした。

「うん。いいよ」

するとお姉ちゃん、古明地さとりが部屋に入ってくる。
私とは違ってまだ心が読めるお姉ちゃん。
その能力の所為で地底の妖怪からも怖がられ、嫌われてしまっている。

お姉ちゃんはベッドに腰かけると柔らかい表情で私に話しかけた。

「…こいし、何か心配事でもあるの?」
「え?…ど、どうして?」

何だかこの事を聞かれるのは今日だけで2回目だ。
お姉ちゃんは「やっぱり…」とでも言いたげな様子で言葉を続ける。

「何だか最近の貴女は浮かない顔をしてるから。…今日の夕飯の時だって溜息ばっかり吐いてたし」
「そ、そうなの?」

うわ、私ってそんなに分かりやすかったの。
今更ながらに恥ずかしくなってくる。

「…また、誰かに嫌な事されたの?それとも変な事言われたの?」
「…え?」

本当に心配そうなお姉ちゃんの表情。
そうだった、お姉ちゃんはまだ霖之助さんのことを知らないんだ…
だから、私が誰かに嫌な事されたって思って…

「大丈夫だよ、お姉ちゃん。そんなのじゃないから」
「そう?」

ほっと息を吐くお姉ちゃん。

誰からも嫌われているけど、私やペットの皆はお姉ちゃんが誰よりも優しい事を知っている。
こんなに優しくて良い人なのに、どうしてこんな能力があるだけで嫌われてしまうのだろうか?

「…でも、それならどうしてあんな浮かない顔をしてたの?」
「え?それは…その…」

どうしよう。いくらお姉ちゃんでもこんな事相談できないよ。
いや、できない訳じゃないんだけど…恥ずかしいというか。

「その、嘘…吐いちゃったの。友達に…」

本当は友達なんて簡単なものじゃないんだけど、嘘は吐いてないよね?

「嘘?」
「私はさとり妖怪じゃないって…。あの人には嫌われたくなかったから…」
「…そうなの」
「やっぱりダメなことだよね…」

それが好きな人なのに…

「…こいし、ちょっとこっちに来て」
「…何?お姉ちゃん?」

どうしたんだろう?…やっぱり怒られちゃうのかな?
内心ビクビクしていた私だったけど、そんな私に待っていたのは予想外のことだった。

「…ひゃっ!」

お姉ちゃんの近くまでいくと、私は急に抱きしめられた。
そんな私の頭を撫でながらお姉ちゃんは諭すように呟く。

「…確かに、嘘を吐くなんてダメなことね。それが貴女の大切な人なら尚更…」
「うぅ…やっぱり」
「でも、こいしはその大切な人を信じてあげてないの?」
「…ぇ?」
「今の貴女の言葉だと、その大切な人はこいしがさとり妖怪だから嫌う程度の人、ということを考えてる証拠よ?」
「ち…違うよ。そんなこと考えてない」

本心を当てられたような気がした私は、誤魔化すようにお姉ちゃんの胸に顔を埋めた。
ふわりと香る優しくて温かいお姉ちゃんの香。ただただ、誰かに甘えたかった。

「だったら…信じてあげなさい。そうすればきっと上手くいくわ」
「でもでも…やっぱり嫌われちゃったら…」
「大丈夫。…こいしの選んだ人なら嫌ったりしないわ。嫌われた痛みを知っているからこそ、こいしには人を見る目があるんだから」

あぁ、やっぱりお姉ちゃんには勝てないな。
私だけなら絶対に考えられないことなのに、お姉ちゃんはスパッと言えちゃうんだから…

やっぱり、自慢のお姉ちゃんだよ…

















あの日の翌日も彼女、こいしは僕の店にやって来た。
しかし、どうも今日は彼女の様子がおかしい。
どのくらいおかしいかというと…

「…こいしちゃん?」
「ひゃいっ!?」

特に何かを話した訳でもないのにどこかよそよそしく、名前を呼んでみたらこんな返事が返ってくるほどだ。
僕は何か気に障る事でもしたのだろうか?
そんなこんなで微妙な雰囲気のまま夕方なってしまっている。

しばらく何も話さないでいると、こいしは俯いていた顔を上げる。

「霖之助さん!」
「うわっ!…どうしたんだい?」

ものすごい剣幕で僕を呼んだ彼女に一瞬気圧されてしまった。
しかしその次にはまたよそよそしい様子、いや、どちらかというとおどおどした様子に戻ってしまう。

「…あの、ごめんなさい」
「?。本当にどうしたんだい?僕は君に謝られるようなことされた覚えは無いが…」

こいしは帽子を深めに被り、俯いて言葉を続ける。

「私、霖之助さんに嘘を吐いてた…」
「嘘?」
「私…種族が人間だって言ったよね?……本当は違うの」
「へぇ、そうなのか」

別に謝られるような嘘ではない気がするが…
むしろ生身の人間で魔理沙達に対抗できる訳がないので、ある意味ほっとしている。

「それで?…本当は何の種族なのかな?」
「それは…その…」

何故だか分からないが言葉を濁す彼女。
何かに耐えるように小さな体を震わせ、言わなければいけない言葉を探しているようにも見える。

やがて、聞こえるかどうかの声でこいしは呟くように言った。

「……さとり…妖怪なの」
「…さとり妖怪?」

どこかで聞いたことがある。
確か、第3の目で相手の心を読むことができる妖怪。
なるほど、アクセサリだと思っていたあの丸いものが第3の目なのか。

「…ごめんなさい!本当に…ごめんなさいっ…!」

嗚咽の混じった彼女の悲しげな声。
しかし、どうして彼女がこんなに謝っているのかが分からなかった。

「落ち着いて。…どうしてそんなに必死になって謝るんだい?」
「だ、だって…また嫌われちゃうから。さとり妖怪だってことを…ぐすっ…隠してたから…」
「嫌われる?」

こいしの言葉でまた思い出した。

さとり妖怪はその力故に他人から嫌われることが多い。
確かに心を読まれることは気持ちいい事ではないだろう。人に言えない事、言いたくないことまで分かってしまうのだから。

「…なるほど、嫌われ者…か」
「で、でも違うの。私はもう心が読めないよ?霖之助さんの考えてることも分からない。…だから」
「…嫌いにならないで、かい?」

本格的に泣きだしてしまったこいしを見て、僕はようやく分かった。

…何で彼女といると心が落ち着いたのかが。

「…一つ、昔話をしよう」
「…ぐすん……え?」
「昔々ある所に、一人の少年がいたんだ。その子は人間と妖怪の間に生まれた、所謂…人妖のハーフだ」
「人妖の…ハーフ?」
「彼は人でも妖怪でもないという理由でどちらの社会にも馴染めなかった。人からは白い目で見られ、時に石を投げつけられた。妖怪からは格下だと蔑まれ、集団から弾き出された…」
「…ひどい」
「彼は成長して店を持った。それも、人っ子一人来ないような辺鄙な場所に…。そして、来るか来ないか分からないお客を待って暮らしていきましたとさ…」
「そんなのって…」

何の事も無い、ただバッドエンド直行の物語。
こいしは唇を噛みしめ、震えている。恐らく、彼女も似たような人生を送ってきたのだろう。

「…酷過ぎるよ。その子が何をしたっていうの?…ただ、そういう種族に生まれただけなのに」
「君も同じだったのだろう?心を読んで悪さをするつもりも無いのに周りは離れていく。やった覚えの無い罪を着せられて隅に追いやられる。…思い出しただけで胸が痛くなる」

…だから、こいしに惹かれていたのかもしれない。
同じ痛みを知っていたから。その事を無意識に感じていたから。

「…君を嫌いになんてならないさ。寧ろ、好きだ…」
「…え?ふええ?」

泣いたり驚いたり、本当に表情が豊かに変わるな。

「やっぱり…嫌かい?」
「え?ち、違うの。私…てっきり嫌われちゃうと思ってたから…」

彼女の頬は薄らと朱に染まり、幸せそうに細められた瞳からは涙が零れた。

「…その、私も…霖之助さんのこと…大好き」

返答を聞いた僕は彼女の体を抱き寄せた。
半ば強引に抱き寄せたので、彼女はなすがままに僕の腕の中に、帽子は床に落ちる。

「…あの、私なんかでいいの?……私…嫌われ者なのに」
「…お互い様さ。僕は…君じゃなきゃだめなんだ」
「霖之助さん…」

こいしは僕をぎゅっと抱きしめ、胸に顔を埋める。

「…さっきの話の子って、もしかして霖之助さんなの?」
「…さあね。その辺は想像に任せるよ」
「だから、かな。…私が霖之助さんを好きになったのって。あなたは私の気持ちを分かってくれるから…」

僕が髪を撫でるとこいしはくすぐったそうに身を捩じらせた。
ふわりとして指通りのよい髪質なので、撫でている僕も気持ちいい。

「ねぇ、キス…して?」
「キス…?」
「うん。霖之助さんにだったらファーストキス…あげてもいいから」

目を瞑って唇を突き出すこいし。
頬は真っ赤に染まり、緊張しているのかぷるぷると震えている。
本当に可愛いな…。彼女に能力なんてなかったら、僕にこんな姿を見せることも無かったかもしれなかったのに…

僕は彼女の頬に手を添え、ゆっくりと自分の唇と彼女唇を重ねた…

「んっ…」

ぴくん、と目に見えて彼女は反応する。
そんな彼女を驚かせないように何度も…何度も初心な唇を啄ばんだ。

「ぷぁ…」

口付けを終えるとこいしはうっとりとこちらを見つめる…

「…もう、終わり?」
「…物足りないかい?」

僕の問いかけに彼女はこくんと頷いた。
こいしは再び目を閉じて『んっ』と唇を突き出す。
やはり、どうもあれだ。…女の子の扱いに慣れてないから、これ以上口付けなんてしたら自分がどうなるか分からない。

僕はこいしの唇に人差し指を当てて、彼女を制止する。

「今日のキスのバーゲンセールは終わりだ。また日を改めて来てくれ」
「…ぶぅ。つまんないの…」

こいしはあからさまに拗ねたような表情でそう呟いた。
やはりまだ彼女にはこんな少女の部分があるのだ、一時の気の高ぶりで間違いを犯す訳にはいかない。

「…そういえば、いつもならもう帰る時間なんじゃないかな?」

日は既に西に傾きかけている。
これ以上ここにいれば確実に夜になってしまい、帰宅には苦労することになるだろう。

「…やだ」
「え?」

上目遣いに僕の方を見つめるこいし。

「今日は家に帰りたくないよ…。ずっと霖之助さんの傍にいる」
「…それだと、君のお姉さんは心配しないかい?」
「ううん、帰って来ないのは慣れてると思うから。…多分、大丈夫」
「そう…なのか」

だとしたらどうすべきなのか。
このまま泊めてしまっていいのだろうか?準備も何もしていないんだが…

「…やっぱり、だめ?」
「え?」
「そうだよね…。私と一緒にいても楽しくないだろうし…」
「い、いや。そんなことはないが。…その、見ての通り何もない家だ。寝床も何も用意できてないんだ」

僕がそう言うとこいしはポンと手を叩く。
そしてにっこりと微笑んでこともなげに答えた。

「大丈夫だよ。私と霖之助さんが一緒に寝ればいいだけじゃない」
「…何だって?」
「だって寝床が無いなら、二人で一つの寝床を使えばいいんじゃない?」
「いや、確かにそうだが…」

それでは色々とまずいのでは…
果たして彼女は天然でそう言っているのだろうか?

「…それでいいなら、僕は構わないが」

ちょっと待て。僕は何を言っている。
さっきまで帰さないとまずいと思っていたのはどこのどいつなんだ。

「ほんと?やったぁ♪」

ぽふん、と僕に抱きつくこいし。
まるで猫のように体を擦り寄せてくる。

あぁ…、果たして今日は何事もなく過ぎ去るのだろうか?











「それじゃ、そろそろ眠ろうか」
「え~、もう寝るの?」

ベッドの上で寝転んでいるこいしは不満な気持ちを表しているのか、その上をごろごろと転がる。
食事、入浴を済ませた僕たちは色々と話しこんでいたが、このまま話し続けていると際限なく続けそうだった。

「明日も店番があるんだから、体力は回復しておかないとね」
「む~。どうせ明日もお客さんなんて来ないよ。私が来る時はいつも暇そうに本を読んでるじゃない」
「うっ…」

中々痛い所を突いてくれるな。
まあ確かに客は滅多に訪れないんだが…

「…ま、まぁ、明日は来るかもしれないじゃないか」
「しょうがないな~。じゃあ、寝よっかな」

こいしはそう言うとベッドの中に潜り込む。
布団に顔を埋めてすんすんと鼻を鳴らすとニコリと微笑んだ。

「えへへ、霖之助さんの匂いがする」
「…おかしいな、ちゃんと洗ったはずなんだが」
「ううん、違うよ。良い匂いがするって話だよ。ほら、霖之助さんも布団に入ったら?」

布団を捲ってポンポンと軽く叩き僕をその中に誘うこいし。
無邪気そのものの行為のはずなのだが…

「…やっぱり、僕は別の所で寝させてもらうよ」

どうも駄目だ。このまま一緒に寝たら変なことをしてしまうかもしれない。

「…どうして?」
「いや、どうしてと言われても…」

ストレートに理由を伝えると絶対に彼女は失望するだろう。
言葉を濁した僕を見て、こいしの表情が曇る。

「…やっぱり、私の事…嫌い?」
「い…いや、そんなことは全然ない。ただ…」
「ただ?」
「いや、その…ほらあれだ。僕が入ると君の寝る場所が狭くなってしまうから…」
「そんなことないって。このベッド、二人でも十分すぎるほど大きいじゃない。…ほら、入って」
「うわっ!」

これ以上言い訳などさせないつもりなのか、こいしは僕をベッドに引きずり込む。
ベッドに寝転ぶと彼女の顔が思った以上に近くにあった。

「ほら、十分広いでしょ?」
「あ…ああ、確かにそうだが」

やはり色々とまずい。
十分に場所はあるはずなのにこいしは体を密着させてくる。

「そ、それじゃ灯りを消すよ?」
「うん、分かった。でも、おやすみのキス…してほしいな」

目を閉じて唇を微かに突き出すこいし。
僕はその唇に軽く、ほんの一瞬だけ唇を重ねた。

「…これだけ?」

あからさまに不満そうな彼女の表情に苦笑する。
こちらを誘っているのではなく、無意識、無邪気の産物なのだと勝手に納得しておく。

そして僕は部屋の灯りを消した。
真っ暗ではなく月の薄明かりがぼんやりと部屋の中を照らしている。

「えへへ、霖之助さん♪」

できるだけ彼女を見まいと反対側を向いている僕に、こいしは抱きついてきた。
布団とは違う彼女の温もりが心地よい。

「どうしたんだい?」
「実はね、私ってまだ心が読めるんだ」
「…何だって?」

だったらさっきまで考えていたことは筒抜けだったのだろうか?

「その証拠に、さっき霖之助さんが考えていたこと当ててあげよっか?」

いや、できれば止めてくれ。
悪戯っぽい彼女の声にそう願ったが、どうも無理だったらしい。

「…えっちなこと、考えてたでしょ?」
「なっ!?いや、そんなことは全然ないが」

必死に言い訳を考えてみるが、多分この事も筒抜けなのだろう。
そんな慌てた僕の様子を見て、こいしはくすりと微笑む。

「なんてね。嘘だよ?私は本当に心は読めないから」
「…え?」
「ほんとに嘘。でも、本当は考えてたんじゃない?」

否定できないところが悲しい所だ。
そんな自分に落胆していると、彼女はぴとりと身体を密着させて耳元で囁く。

「――しても…いいよ?」
「…はい?」
「だ、だから。その…えっちなこと……してもいいよ?」

…やはり今日は疲れているらしい。
内容の濃い一日だったから無理もないかもしれないな…。

…と、現実から離れてみようとするがそうもいかない。
こいしのこちらを抱きしめる力がだんだんと強くなっていき、僕の返答を求めているように思える。

「…君は、本当に僕でいいのかい?」
「よくなかったらこんなこと言わないよ?私は…あなたしか好きになれないと思うから…」
「こいしちゃん…」

よく考えたら、僕は彼女に触れるのに少し躊躇いがあったのかもしれない。
そして、こいしは距離が離れてしまうことを恐れている。過去のトラウマに縛られるという意味ではやはり同類なのだろう。

僕は彼女と向き合うように寝転び、その華奢な身体を抱きしめる…

「…じゃあ、しようか。こいしちゃん…」
「えへへ。…こいし、でいいよ」

はにかんだ彼女の笑顔。月明かりに照らされた部屋。
その場に慣れた僕の目には彼女の顔がどこかぼんやりと映る。

「……こいし」

そのまま吸い寄せられるように僕はこいしの唇を奪った…
何度も、何度も唇を重ねて彼女の温もりを感じる。

「ん……ちゅぅ…」

こいしも目を閉じて口付けにのめり込んでいるようである。
こちらにしっかりと抱きついて唇を吸い、時折する呼吸の際に可愛らしい声が漏れる。

高ぶる興奮を抑えきれず、舌を入れようとすると彼女の身体がぴくんと震える。

「…舌はだめだったかい?」

口付けを中断して彼女に訊ねると、微笑みながら首を横に振る。

「ううん。ちょっとびっくりしただけだから大丈夫」
「それじゃ、続けるよ?」
「うん。…大人のキス、もっとしてほしいな…」

子供のような外見だが、彼女の瞳は妖艶な『女』そのものだった。

僕たちは再び抱きあうと唇を重ね合う…
彼女を怯えさせないように出来る限りゆっくりと舌を口内に滑り込ませた。

「…んっ……くちゅ…」

こいしも舌を突き出して僕のものと絡み合わせる。
ざらつくお互いの舌が絡み合うと頭が蕩けそうになった…
もっと、もっとその刺激がほしくて、お互いの舌使いは激しさを増していった…

「ぷぁっ…。これが、ディープキスなんだね」

口付けを終えるとこいしはうっとりと呟く。
唇の端から流れる微かな唾液が、彼女が余韻に浸っている事を物語っていて、いやらしさを強調している…

「すごく気持ちよかった。…次は、どうするの?」

とろんとした瞳でこちらを見つめて次の行動を待つこいし。
服を脱がせようと手を伸ばすと、彼女はそれを制止して自ら服を脱ぎ始めた…
服を全て脱ぎ終え下着のみになった彼女は頬を染めてにこりと微笑んだ。

「え…えへへ。何だから恥ずかしいね。やっぱりブラやショーツも…脱ぐんだよね?」」
「ま…まあ、そうだろうね」

改めて聞かれるとこちらも何となく気恥ずかしいものである。
確かに、これから交わるのなら脱がなければならないんだが…

「り…霖之助さんも脱いでよ。私だけだと不公平だって」

やはり下着を脱ぐ事は少し抵抗があるらしい、彼女は苦し紛れの言い訳のようにそう呟く。

「ふむ…、確かにそうだね。では――」
「え?うわぁ…」

着ていた服、下着を脱ぎ去る。
想像していた反応と違っていたのか、こいしは驚いたように身じろぎする。
裸になった僕の身体に彼女の視線が突き刺さる。
興味深そうに上から下まで見つめると、あるところで彼女の視線が固まる。

「…おっきくなってる」

大きく勃起した淫茎に釘付けになる視線。
こいしは恐る恐る手を近づけると、指先でつんと突く。

「わっ、ぴくんってなった!?ごめんね、痛かった?」
「い…いや、大丈夫だ」
「そ…そう?」

尚も心配そうに陰茎を見つめるこいし。

「…さあ、こいしちゃんも脱いで貰えるかな?」

そんな彼女の視線に晒される気恥ずかしさから、僕は誤魔化すようにそう切り出した。
するとこいしは頬を膨らませる。

「もう、また戻ってる!…こいしって呼んでくれるまで脱がないよ?」
「す…すまない。……脱いで貰えるかな、こいし?」
「えへへ、うん」

僕がそう呼ぶ事が嬉しいのか、こいしは微笑みながらブラとショーツを脱ぎ去った。
平均よりは少し小さめの胸。初めて見た彼女の胸の膨らみに抱いた印象はそれだった。
秘所の割れ目はまだぴったりと閉じていて、未だ誰の侵入も許してないことを物語っている。

「ご…ごめんね。私のおっぱい…ちっちゃいよね?」

胸への視線を感じとったのか、こいしは恥ずかしそうに呟く。
そんな様子に愛しさを抑えきれず、僕は彼女を抱きしめて耳元で囁く。

「…気に病む事は無いさ。こいしはこいし、僕が好きなのは君自身なんだから」
「……嬉しい。そんなこと言って貰えたのは初めてだから」
「それに、…ほら」

僕は彼女の胸に手を当てて、先端の蕾を摘みあげる…

「ひゃん!?…り、霖之助さん?」
「こんなに感度がいいんだから…」
「で、でも……ぁん…」

胸を揉む、と言うよりも撫でるに近い感覚。
微かに感じる胸の柔らかさ、彼女の甘い声に理性は少しずつ溶かされていく。

「ひゃっ…んっ…。何だか不思議な感じ…」
「…何がだい?」
「んぅ……分からないけど。…頭がふわふわして気持ちいいの」

こちらに抱きついて小さな身体を擦り寄せるこいし…
彼女の滑らかな肌の感触が心地よい。

そんな彼女の身体に手を回して全身を満遍なく撫でまわした…

「んん…霖之助さんの手つき…ぁん…すごくいやらしい…」
「こいしの声もすごく艶っぽいよ。…お互い様さ」
「ゃん……それは、あなたの所為だよ…んっ…」

こいしの息づかいは次第に荒くなっていき、乳首は尖ってきている。
悩ましげな声は彼女の幼い容姿には似つかわしくないほど妖艶で、聞いている僕の劣情を嫌でも駆り立てる。

燃え上がる欲情に命じられるままに僕はこいしを押し倒した…
そのまま彼女の膨らみかけの乳房に口を付ける…

「ふにゃっ!?…ぁあん…おっぱい…んっ…舐めちゃだめぇ…」

敢えて先端の突起には触れず、その周りの乳輪をなぞるように舌を這わす…
じっくりと時間をかけて焦らしながら舐め回すとさらに艶っぽい声が彼女の口から漏れた…

「やっ…んんっ!り…霖之助さん、先っぽを…舐めて…。もっと気持ちよくして…」

ベッドのシーツを握りしめながらおねだりをするこいし。
そんな彼女に応えようと僕はその桃色の突起を口に含む…

「あっ…ひぅっ!…き、気持ちいいよぉ…」

口内で乳首を転がし、時に強く吸い上げる…
片手でもう一方の胸を弄り回すことも忘れない。
唾液に塗れた乳首が擦られる度にこいしの身体は大きく跳ね、切ない嬌声は部屋の中に響いた。

「り…霖之助さん。なんか…変、だよ。身体に…力が入んないよ」

切れ切れの息、何かに耐えるように彼女の身体は震えている。

「…ん、そうか。なら…」

今まで以上の勢いで乳首を吸い上げ、もう一方は少し強めに摘みあげる。
そしてこいしの身体はより大きく震え――

「あっ…んんんっ!」

身体を弓なりに反らしながら彼女は絶頂に達した。
絶頂が落ち着くと、荒い息を吐きながらこいしはこちらに話しかける。

「はぁ…はぁ…、今のが…イったの…かな?」
「こいしが気持ちよかったのなら、多分そうだと思うよ」
「…そうなんだ。身体がふわってして、すごく気持ちよかった…」

穏やかに微笑みながら胸に手を当てるこいし。
絶頂の余韻を味わっているのか、僕を見つめる彼女の目は幸せそうに細められる。

「ねぇ…次はどうするの?やっぱり…ここ?」

こいしは頬を薄らと染めて自らの秘所を擦る。
ぴっちりと閉じていた淫唇は微かに蠢き、その間からは愛液がとろりと流れ出る…
こいしが初めてということもあるから、もう少し濡らしておいた方がいいかもしれない…

「…え?霖之助さん?」

僕が秘所に顔を近づけるとこいしはびくりと震える。
これからされる行為の想像がついたのか、愛液が少しだけ溢れる…
その液を舐め取るように僕はその花弁に舌を這わせた…

「あっ…ひゃあんっ!だ…だめ、そこは汚いよ」
「ふふっ、大丈夫だよ。…こいしは気持ちよくなってくれればいいさ」

初心な秘貝の周り、そして割れ目に沿って舐め回すと彼女はあられもない声を上げて身悶えた。

「やっ…ふあぁ……」

溢れる愛液、気持ちよさそうなこいしの喘ぎ声…
興奮を煽る燃料としては十分すぎる。僕は本能、愛情の赴くままに彼女の秘所を舐めた…

「…ここは、どうかな?」
「…ふぇ?…ひゃうんっ!?」

先ほどからぷっくりと膨れている淫核に舌で触れるとこいしは一際甲高く声を上げた。
そんな反応に気をよくした僕はそのまま淫核への舌での愛撫を続ける。

「ひゃっ…はぁんっ…そ、そこっ…すごいよ。身体がびりびりって…んっ…なる」

舌で吸い上げられる度に身体は大きく跳ね、嬌声は部屋に響きわたる…
意識してかどうかは分からないが、こいしは僕の頭を押さえつけて秘所に密着させる。

「んっ!だめ、…また……イっちゃう」

押さえつける力が大きくなったと思うと、彼女の身体がびくんと痙攣する。
どうやらまた絶頂したらしく、淫唇からは愛液が多めに流れ落ちた…

絶頂の痙攣も落ち着くと、こいしはこちらに抱きついて耳元で囁く…

「…来て、霖之助さん」

僕も最早我慢の限界だった。
こいしのその言葉が引き金になり、彼女をベッドに押し倒す…

「行くよ…、こいし」
「うん…」

小さく微笑む彼女に口付けをして、僕は挿入を始める…
いくら濡れているとはいえ未経験の彼女の秘所。亀頭が入り込むだけでも強めの力で締め付けてくる…

「んっ…くぅ…」
「…大丈夫かい?」

苦しげに呻きながら彼女はこくんと頷いた。
できるだけ彼女の負担にならないようにゆっくりと腰を落としていくと、行く手を阻む障壁に突き当たった…

「……」

こいしは何も言わずに目を瞑る。
まるでこれから起こる事に備えるかのように…

そして、僕はそのまま腰を落とした…

「あっ…ひゃっ!」

膜が破れ、ペニスを全て飲み込んだ膣内はきゅっと締まる。
瞑られた彼女の目尻からは涙が溢れ、シーツを握りしめている。
こいしが激痛に耐えているのは明白の事実だった。

「大丈夫かい…?」
「うぅ…ちょっと大丈夫じゃないかも…。今は…動かないで」
「ああ、分かった」

結合部からは純潔の証である鮮血がたらりと流れる。
僕は彼女に覆いかぶさったまま、しばらくその震える身体を撫でた…

「…霖之助さん」
「ん?」
「私達、繋がってるんだよね…?」

結合部を眺めながら、こいしは小さく微笑む。

「…ぁあ、ちゃんと繋がってるさ」
「…えへへ、何だか不思議な感じ。この熱いのがあなたの…なんだね?」
「くっ…そうだよ」
「ふふっ…もう動いてもいいよ?私なら大丈夫だから…」

そう言って自ら腰を動かすこいし。
狭い膣道に絡み付かれ、扱かれる事でペニスからは耐えがたい快楽が送られる。
誘惑に勝つ事ができず、僕はゆっくりと腰を動かし始めた…

「んっ!はぁ…んっ…気持ちいい」
「うっ…こ、こいし…膣内…すごい…」
「そ、そこっ…やんっ…もっと突いて」

ピストン運動を続けると結合部からは白っぽい泡がたつ。
十分すぎるほどに濡れた膣壁とペニスが擦れ合い僕とこいしはお互いにあられもない声を上げる。
僕たちはお互い快楽を貪るように腰を動かし合った…

「はっ…こいし…もう射精る」
「う、うんっ…膣内に射精して!…いっぱい射精して!」
「くっ…こいしっ!」

一際強く腰を打ち付けると彼女の膣内はきゅうっと締まる。
擦れ合う感触、そして止めの締め上げに耐えきれず、僕は彼女の膣内で果てた…

「あっ!な…膣内で射精てるぅ。私の膣内で…ふああああああああああああ」

射精の快楽に浸る僕のものをさらに強く締め付けて彼女の身体は震えた…
こいしはこちらの腰に足を絡みつけて腰を密着させる…

やがて射精も終わり、ペニスを引き抜くと薄桃色の精液がどろりと零れ落ちた…

「…いっぱい射精たね?」
「す、すまない。ちゃんと直前で抜くつもりだったんだが…」
「ううん、気にしなくていいよ。私、霖之助さんのことが大好きだから…」

えへへ、と笑い彼女は抱きついてくる。
そんな彼女の髪を撫でると幸せそうに喉を鳴らす…

「今度は…地霊殿にも来てね?お姉ちゃんにもペットにも紹介したいから」
「あぁ、それは喜んで引き受けるよ。楽しみにしておく」
「ふふ、よかった…。じゃあもう寝よっか?」

抱きついたまま、すぐにこいしは寝息を立て始めた。
そして僕の意識も幸せな余韻の中、深いまどろみへと落ちていった…



            ~続く?~
どうも、おはようございます、こんにちは、そしてこんばんは。猫軍団の幹部と申します。
駄文を最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。
以前ちらりと告知していたこい霖がやっと完成しました。

こーりんの設定的に過去にこういうことがあったのではないかと勝手に想像したら、こいし嬢と相性がいいんじゃないかとこれまた勝手に想像して完成した次第です。
それにしても、この霖之助は予定していたよりも若くなってしまった気がしてならないですが、どうでしたでしょうか?
そしてそれに伴い、こいし嬢も若干性格が明るくなってしまいました(笑)。
暗い感じの作品の多いこいし嬢ですが、この作品では幸せになってほしいものです。
反響が良ければまた続編の方も考えておきますw

また例のごとく誤字、脱字も随時募集しています。
それでは次の作品で会いましょう…。

Ps.こいし嬢はHなことに興味津津なお年頃。それは我が揺るがぬ信念。
猫軍団の幹部
コメント




1.華彩神護削除
超GJ!!ハラショ――!!
素晴らしい!!続け!!!
2.名無しのよっしん削除
霖之助きた!しかもこいしまできた!これは続きに期待せざるを得ない!
3.名前が無い程度の能力削除
語句誤用報告

>>そうなのか。なら余計とすごいな<<
「余計と」ではなく「尚又に」或いは「尚更に」とするべきです。
余計とは"それは必要の無い事"→"無用である"という意思通達です。
件の文脈にて霖之助はこいしを誉めているので、この場合は誤用となります。
4.名前が無い程度の能力削除
猫軍団の幹部さんが、こいしちゃんを書いてくださるとは!
あなたの作品はみんなイイ人?ばかりで心が洗われます。
続編、心より期待しております<m(__)m>。 あなたの書くさとり様ももっと見てみたい!!
5.名前が無い程度の能力削除
こいしちゃああああん!
霖乃助ええええええ!
最高だあああああ!!
これ続くとなるとさとりんも交えて三角関係とかいやな雰囲気になりそうな...いやむしろいいのか
6.JENO削除
な、なんという・・・・

コーリン俺と変われ

あなたが書くと誰もかもきれいになる・・・・

さとり様編も大妖精シリーズも楽しみにしております
7.GOJU削除
おぉ~これはいい霖こい!
確かに霖之助が霧雨店から独立した背景にこういうのがあったとか考えるとちょっと切なくなりますね…

続きを読みたいのはやまやまですがそれより大妖精5部作の残り3つを!

P.S.フロイト先生の理論をスペカ名に採用しているこいしちゃんがエロくないわけないじゃないですか!
8.タカハウス削除
いい、すごくいいこい霖でした。
貴方の作品にいつも甘アマにされてしまいます。
続いてくださるのであれば、全力で正座待機せざるを得ない!
9.アダム&イブ削除
なんででしょう…?ものすごく甘くて良い話なのに地霊殿に行くのはフラグな気が…、するけど大丈夫なはず!さとりさんもわかってくれますよ!…ね?
10.モヒカーン削除
きた!こい霖きた!
活発なこいしちゃんが悩むのも可愛かったですが奥手な霖之助が凄く可愛かったです(ぇ

しかも続くかもなんて・・・首洗って待ってます!
11.名前が無い程度の能力削除
うっひょーいいものを見れたと思ったらあなたでしたか
可愛すぎるこいしちゃんの続編をぜひとも!!!

PS.禿同
12.名前が無い程度の能力削除
大ちゃん・・・・?あれ?

こいしちゃんかわいいじゃないですか。
貴方の書く甘い話にもう虜です。抜け出せませんwww
これで続く・・・2作品同時進行がんばってください。
全裸でまってます。
13.名前が無い程度の能力削除
お~、なるほどその発想はなかった……
確かに霖之助が幼少期に迫害されていたとするとこいしと似た者同士ということになりますね。
霖之助もこいしも可愛かったです。続きに期待させていただきます!
14.名前が無い程度の能力削除
かゆ 甘

つ づ け ! w
15.名前が無い程度の能力削除
性格の明るいこいし
すごく、いいんじゃないか!

この二人には、ぜひとも幸せになってもらいたいものです。
16.猫軍団の幹部削除
今回も多くの感想ありがとうございました。
しかし、折角間違いを指摘して頂いたにも関わらず、まさかの投稿時のパスワード入力ミスの所為で直せなくなるとか(涙)
それでは返信をば…



華彩神護さん:すばらしいの三連星ありがとうございましたw
       期待に沿えるように頑張ります。


名無しのよっしん さん:しかし続きは自分のやってるものが一段落終えてからでw


3の名無しさん:ものすごく丁寧な間違いの指摘ありがとうございました。
        しかし上記の通り直せなくなってしまいました(汗。折角ご指摘頂けたのに…
       

4の名無しさん:良い人ですねぇ…。現実もこのくらい良い人で溢れてたらねw


5の名無しさん:さて、果たして三角関係になるのでしょうかw


JENOさん:某シリーズも水面下で頑張っていますぜ。
     プロットはできているはずなのに、これでいいのかと日夜悩みつつ地道に進めていますw


GOJUさん:霖之助が人妖のハーフだという設定から突発的に思いつき、それがこいし嬢と繋がった訳ですw


タカハウスさん:今回は氏のこいし嬢も参考とさせて頂きました。
        しかし『こいし』と使うと他のひらがなと混じって少し使いにくかったんだぜw


アダム&イブ さん:さとり様は良いお姉さんなので分かってくれる……はず。


モヒカーン さん:若いイメージの霖之助が思った以上に奥手になっちゃいましたねw
         しかしそれがマイナス効果にならなくて本当によかったです。


11の名無しさん:私目の作品をいいものと評して頂けてありがたい限りですw


12の名無しさん:さて、どうやって更なる深みに引きずり落とすかねw
        最優先事項は某シリーズなんでこちらはひとまず小休止ですw


13の名無しさん:あの設定は勝手な想像なので、もしそうなら絶対にこの二人はくっ付いてるとさらに妄想しましたw
        こいしちゃんウフフ…


14の名無しさん:続くぜ!……結構後に。




レス追加しました。


15の名無しさん:性格の明るいこいしちゃんは……あると思います!
        次回はどんな方面でいきましょうかねぇ…。生温かく期待しておいてくださいなw