セガサミーホールディングスの大株主に対する株主共同提案議案への合意嘆願
かねてより、セガのプロダクト、サービス、及び、カスタマサポートの質の低下を憂慮していたが、2006年2月2日、セガサミーホールディングスの大株主の内、
日本マスタートラスト信託銀行株式会社
日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社
ステートストリートバンクアンドトラストカンパニー
ゴールドマンサックスインターナショナル
に対して、セガの体質改善を主たる目的とした株主共同提案議案への、合意を求める書簡を送った。
以下が、その「セガサミーホールディングスに対する共同株主提案議案のお願い」の概要である。
1.提案の全体趣旨
現在、セガのアーケード、及び、コンシューマゲームは、コアユーザの間では「SSQ(それが・セガ・クオリティ)」と呼ばれて卑下されるほどにまでにゲームの質、及び、ユーザ/カスタマサポートの質が低下しております。
また、2005年4月18日には、東京ジョイポリスにおいて30歳の男性がアトラクション「ビバ!スカイダイビング」より転落して死亡すると言う事故も起き、セガのユーザ軽視の姿勢は一般ユーザに対しても知れる事となりました。
これらは、セガサミーホールディングスとしての会社のイメージを著しく損ないかねない状況であり、実際に、コアユーザのみではなく、一般ユーザからの信用も低下しつつあります。
そこで株主として、会社のユーザからの信用を回復すべく、セガブランドのプロダクトの質の向上、及び、ユーザ/カスタマサポートの質量共の向上を求めるべく議案を提出したく思います。
つきましては、共同提案者として議案にご賛同戴けないかと、ご連絡を差し上げた次第です。ご考慮の上、2006年2月末までにアンケート(別紙)に賛否等をご記入の上、同封の返信用封筒にてご返信下さい。ご賛同とご返信戴いた場合は、再度、詳細な「株主提案議案」と「株主提案権行使合意書」を送付させて戴きますので、それにご記入/ご返信戴く事となります。
2.ユーザの信用低下を招いた具体的要因例
例1.ドリームキャスト版「ファンタシースターオンライン(ver.2)」における、不具合の発生、管理/サポートの杜撰さ、及び、背信行為
a.同オンライン(ネットワーク)ゲームにおいて、複数のバグ(プログラム上の不具合)によって多くの障害がユーザ側に起きているにも関わらず、その殆どの存在をセガ側は公式に認めておらず、ユーザに対して隠匿したままである。
b.同ゲームがオンラインで使用するサーバの管理が杜撰であり、度々使用不能状態になったり、また、その状態のまま長期間復旧がなされなかったり、サーバの設定のミスによって障害を引き起きしたりしている(参照:資料1)。これらに関しても多くの場合、障害発生の報告が無かったり、あるいは遅れたりもしている。
c.a、及び、bの障害に関して、公式にセガ側から告知がされないために、WWW上のセガの公式掲示板にて複数のユーザが症状/警告を訴えたところ、セガ側の管理者によってこうした書き込みが削除され、また、その中にはその掲示板への書き込み自体を拒否されるユーザが多数発生した。こうした事は一度のみではなく、以後繰り返され、ユーザ側のセガに対する不信を根付かせる事となった。
d.a、及び、bの障害に関して、ユーザがセガのカスタマサポートに連絡を取ったところ、十分な証拠を提示されているにも関わらず、カスタマサポートは充分な検証さえ行わず、「お客様の回線状態が原因です」とのみ度々回答し、責任逃れに終始し、まともな対応を行わず、最終的に障害発生を認めるまでには極端に長い時間を要する事となった(参照:資料2)。
e.カスタマサポートは月~金曜日の10:00~17:00となっているが、オンラインゲームの性質上、余暇に最もプレイ頻度が高いため、即時性の必要なサポートは全く行えない状況である。実際に、週末から週明けまでとか、年末年始の休みの間とか、プレイ人口が最も多い期間に長期間に渡ってプレイが不能になっていた事も少なくない。
f.オンラインゲームサーバ管理者の知識/技術不足により、不具合の把握、対処が不十分で遅い。これの大部分の要因は、コスト削減を優先したためと思われる。
参考URL:
http://akiba.ascii24.com/akiba/game/interview/2002/02/24/print/633792.html
http://akiba.ascii24.com/akiba/game/interview/2002/03/02/print/634122.html
g.同ゲームはJP(日本)版、US(アメリカ合衆国)版、EU(欧州)版と世界的に発売され、それぞれのユーザが互いに交流できるのがその魅力の一つであった(現在、US版はサービスを終了し、US版ユーザの多くはEU版を入手する事によってプレイを継続している)。しかしながら、その管理が一元化されておらず、JPユーザがEU側サーバの不具合をカスタマサポートに訴えても、「SOE(セガ・オブ・ヨーロッパ)にお問い合わせ下さい」との回答があるのみで、全く取り合っては貰えなかった(実際にSOEに問い合わせたところ、「障害はソニックチーム(現セガ内担当部署)に報告済みなので、対処をお待ち下さい」と回答があった)。このように、世界規模のオンラインゲームであるにも関わらず、そのサポート体制が脆弱、かつ、たらい回し体質であるのも、ユーザの不信感を煽っている。
発生した障害によっては、単にまともなプレイが不能になったりするだけではなく、ユーザ側のセーブデータが破壊される事も度々起きている。こうしたゲームにおけるセーブデータというのは、ユーザが多くの時間を費やした結果であり、ゲーム上においてはユーザの分身であり命そのものであるとも言える。そのため、これが破壊されるような障害が度々起こるという事、及び、それに対してセガが隠蔽とも思われる行動を繰り返し取っていたという事により、ユーザ側のセガに対する信用が大きく損なわれたと言える。
また、起きた障害に対してセガ側が取った行動は、「重要事項に関する事実の不告知、不実の告知」に抵触しかねないものであり、ユーザに対する明かな背信行為となっている。
確かにドリームキャストは既に正規生産を終了されたコンシューマ機ではあるが、現在でも新作ソフトウェアが発売されている事などを含め、現役の機体であると言える上、安価であるにせよ、ユーザから料金を徴収してサービスを提供している以上、ユーザに対して誠実な管理/サポートを行うべきである。また、現在では当該機種/ソフトウェアのユーザ数は決して多くないが、最盛期ではライセンス(オンライン接続)料だけで一月あたり約40,000,000円以上もの売上を計上していただけに、その利益を内部留保して以降のサポートのためにも充当するのは当然の事であったと考えられる。
実は、これらの管理/サポートの杜撰さは、ドリームキャストにおけるもののみではなく、他機種(ゲームキューブ、X-BOX、PC)の同「ファンタシースターオンライン」シリーズにおいても、同様の不誠実な管理/サポートが度々行われており、いずれもユーザの間でセガに対する信用を失わせる結果となっている。
例2.プロダクトの不完全性、及び、それに関する責任転嫁体質
a.ドリームキャスト版「ファンタシースターオンライン(ver.2)」において、トライアル版から指摘されていた不具合があったにも関わらず発売を強行し、発売後にその不具合が顕在化してユーザがカスタマサポートに問い合わせると、カスタマサポートは殆どの場合が「お客様の回線の問題です」等と回答し、責任逃れをしていた。
b.ゲームキューブ版「ファンタシースターオンライン・エピソード1&2」において、トライアル版から指摘されていた不具合があったにも関わらず発売を強行した。発売後にその不具合が顕在化すると、修正版を配布して事態の収拾をはかったが、その修正版にはプレイ中にフリーズ(画面停止)を起こすと言う重大なバグを含有していた。これに関してユーザがカスタマサポートに問い合わせると、やはりカスタマサポートは「お客様の回線の問題です」等と回答し、責任逃れをしていた。
c.アーケードオンラインゲーム「クエスト・オブ・D」において、不正行為対策が不十分で、不正行為が蔓延していたにも関わらず長い間対処せず、Ver2.0のリリースによってようやく対処をした。
d.アーケードオンラインゲーム「三国志大戦」において、バグを放置した状態のまま新バージョンをリリースした。
プロダクトの作成において、ある程度の割合で不具合が含有される事は有り得るし、事後処理さえきちんと出来ているなら許容すべきだが、明かなテストプレイの不足によるバグの見落としや、トライアルで指摘されているにも関わらず不具合を修正しないでそのまま発売を強行するといったスケジュール優先で品質を低下させるような体質がセガには蔓延していると言える。
また、不具合が顕在化した後、その不具合を認めようとしないばかりか、カスタマサポートがユーザの責任と決め付けるような行為を繰り返しているために、一段とユーザの信用を失う事となっている。
例3.東京ジョイポリスにおける死亡事故
2005年4月18日13時頃、セガの運営する東京ジョイポリスの乗用アトラクション「ビバ!スカイダイビング」にて乗客の坪内潤一さん(当時30才)が運転中の同機から約5m転落し、胸などを強く打って間も無く死亡した。転落の原因は、坪内さんの体が大きかったため安全ベルトを締める事が出来ず、ロールバーのみで体を固定し運転したためである。
坪内さんは下半身が不自由であったが、本来同機はロールバーとベルトで体を固定し運転すべきものであり、係員が現場責任者に確認したところ、その判断でベルトを締める事なく運転をしたために起きた事故であり、結果として、セガ側のユーザに対する責任意識の甘さが露呈する結果となった。
これ以前もセガに対するユーザの不評は少なからずあったが、それは殆どがコア層のユーザのみであった。しかし、オンラインゲームの普及によって、その不評は一般ユーザにも広がりを見せ始め、東京ジョイポリスにおける死亡事故によって、一般ユーザの不信感を決定的に煽る事となった。
この事故の直後(20005年4月25日)に尼崎JR西日本列車事故(107人死亡)が起きたために、以後、この事件は影に隠れ、マスコミに表立って取り正される事は無くなったが、ユーザの間にはセガに対する大きな不信感が残る事になった。
3.提案議案概案
(中略)
資料1.ドリームキャスト版「ファンタシースターオンライン」関連サーバ等における、主な障害発生経過
(中略)
資料2.実際のユーザとセガカスタマサポートとのメールのやり取り(一部)
(後略)
これに対し、大株主各社は期限までに(と言うより、今現在までも)回答を行わず、事実上、拒否の姿勢を示した。
大株主は、その全てが目先の利益を優先する選択をし、セガの体質の調査も充分に行わなかったために、結果として自らの利益さえも失う事となった。
セガサミーホールディングスの株価は、2006年3月頃に比べて、同10月には約4割の下落を起こした。