「選択肢をくれ」…山本太郎とMMTの評価軸 | Tempo rubato

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アニメーター・演出家 平松禎史のブログ


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山本寛監督作品『薄暮』 6月21日より上映。

ボクは「朧月夜」を弾く場面を担当しました。

https://www.hakubo-movie.jp/

 

 

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 春以来、話題の中心はステファニー・ケルトン教授が主唱する現代貨幣理論〈MMT〉と山本太郎・れいわ新選組になっています。玉木雄一郎・国民民主党にも重なる。与党では安藤裕議員、西田昌司議員だ。

 そもそも、三橋貴明、藤井聡、中野剛志、青木泰樹、宍戸俊太郎、西部邁、佐藤健志など諸先生方が異口同音述べているところ…特に経済への態度…がボクの基礎認識になっているのだけど、ようやく堂々主張する政治家が出てきた、というところ。

 

 ところが見る場所によって、山本太郎代表への警戒感の方を強く出す人もいる。いわゆる保守系の人に多い。警戒感の理由は、天皇に対する意識の軽さ、反原発が中心になるだろう。わかりますよ。ボクも山本代表と全部重なるわけじゃありませんから。

 逆に、強い共感を覚えムーブメントと捉える向きでは、反権威・反政府的な訴えかけを歓迎して取り出しているように思う。ニヒリスティックな主張で共通しています。頭に置いているところではあるけども、そこを主眼にして基礎を捨てるわけにはいかないのです。

 

 ボクが、山本太郎代表を評価しているのは、経済の基礎認識です。

 

 「財源は税収に限らない」「新規国債発行、政府支出拡大」「政府、公共の役割」など

 

 これを選挙における政策集に書き込んだ政治家・政党は、30年以上なかったのではないか。

 

 ここのところを整理する意味でとてもおもしろかったのが、『自民党 価値とリスクのマトリクス』を出版した中島岳志氏の分析です。

 こちらの講演で要点を知ることができますのでお聞きください。

 

 

講演の中で中島氏が用いているマトリクスです。

スタンド・ブックスのツイッターからお借りしてコメント追加しました。

 

*野党政治家の場合、社会福祉の重視を言ってる人が多いですが、財源を税収にこだわるので結局下側に行くことになります。

 

 中島氏は政治学的な見地で分析しておりますので、経済政策の見地で考えてみましょう。

 ちなみに、中野剛志さんが作ったマトリクスを三橋さんが整理したのがこちら。

 中島氏のでは右上が、こちらでは左下が空白になる。意味するところは同じです。

 

 「リスクの社会化」と「リスクの個人化」を縦軸に、「リベラル」と「パターナル」を横軸にしています。「リベラル」とは寛容の精神、自由主義の大本になっているもの。「パターナリズム」とは、辞書によれば「父権的温情主義」で、父子のような保護・支配の関係を主義としたものだそう。右派的な権力によって組織をまとめ、計画的に施策を遂行する意識とでも訳せましょうか。

 他の言い方を使えば、縦軸は「大きな政府」⇔「小さな政府」になるし、「投資型」⇔「緊縮型」にもなるでしょう。横軸は「不確実性の自覚」⇔「不確実性の無視」とも言えましょう。

 右派的な権力で、組織を組織と結託するグローバリストでまとめ、不確実性を無視する主流派経済学に依拠し「小さな政府」で「緊縮」政策をやっている安倍晋三がもっとも右下にあり、まだ派閥議論が存在した自民党で不確実性を自覚しながら社会福祉を重視し政府支出を拡大した小渕恵三が左上にあるのは理にかなっており、腑に落ちます。

 「安倍は保守ではない」と看破する中島氏に激しく同意します。本来の保守思想は不確実性を自覚していて、寛容さを重視する「リベラル」と重なりますから。

 

 ここ20年、「小さな政府」と「緊縮」で政治が行われてきました。他にも国際政治の観点を入れる必要がありますが内政を中心に見ればそうなります。いちいち例を引くと長くなるので省きますが、中島氏が述べているように、明確な「小さな政府」政策は橋本龍太郎と小泉純一郎の内閣によって日本政治のスタンダードになりました。「小さな政府」は、政府支出を絞る「緊縮」とイコールです。

 このような傾きが大きくなったのは、オイルショック以降の財政問題に端を発します。「財源は税収」…つまり「お金のプール」論に縛られて政治が緊縮傾向になり、デフレ不況で内需が衰退すると、「選択と集中」は冷戦終結以来高まったグローバリズム傾向に乗って、外需依存へと大きく傾いた。その結果、政府機能は小さくして民営化で市場競争にさらす、公共部門にまで外資参入、外国人労働者に頼る、外国人観光客に頼る。輸出に頼る…といった傾向が強くなった。なってるでしょう?

 外需依存そのものが間違っている上に、米中の関税合戦、ハードブレグジット、韓国の「ホワイト国」除外による日韓の貿易対立など、悪材料がほとんどの状況で外需依存を継続し、国内に投資しないのは、完全な大間違いです。

 

 デフレ不況による国民貧困化。社会の不安定化。国民に高まる閉塞感。

 この元凶は、「財源は税収」という根本的な間違いによって起こったのです。

 

 だから、政府は財政拡大で広く国民に投資せよ、という上記三橋氏 など言論人の指摘が重要だったのです。ところが、政治家でこれに呼応する人はほとんどいなかった。自民党にも野党にもほぼ皆無だった(または政権を取り戻した安倍政権の緊縮に抑え込まれてしまった)のだ。そこに来て安藤裕議員が主催する「日本の未来を考える勉強会」が正しい経済観を学びはじめた。ケルトン教授以前に日本で現代貨幣理論〈MMT〉を紹介したのは中野剛志氏だったが、2年前の講演では「これ、ただの基礎だよね」という確認のために使っていただけで強く推してたわけではなかった。ケルトン教授の「出現」は、正しい貨幣観、正しい財政観が周知されることに意義があるのだが、同様の萌芽はすでにあったのです。おそらく同じ経緯で、リベラル側から正しい(=ごく基礎的な)ことを言い出したのが山本太郎氏だった。ただ、そういうことなのです。

 

 ごく普通の生活感覚と同じように、政治は状況を見て方法を選ばなければいけません。

 

 山本太郎代表が重要なのは、彼によって政治と政策の方向性に選択肢ができるからです。

 

 総需要が不足するデフレ状況では、「小さな政府」「緊縮政策」では状況を悪化させます。

 さらに緊縮デフレは選択肢を失わせました。

 だから、「財源は税収にこだわらない」「新規国債発行、政府支出拡大」で、広く国民に投資する政治へ、選択肢のある政治状況へと、軸を転換…ピボットする必要がある。山本太郎代表への評価軸は、選択肢を作ることにある。

 

 デフレ状況に陥ったのは、ほとんどの政治家が上記マトリクスの下側に集中してしまって選択肢が失われたからだ。リベラルとパターナルの両方で上側の政治家を増やすことが重要なのです。

 その意識を共有する政治家が既存政党を飛び出して党を作れば、選択肢に飢えている国民にとって、さらに心強い環境になるでしょう。

 

 右か左かではない。与党か野党かでもない。状況を見て必要な政策を選べる政治家を増やしましょう。

 

 「誰が」でなく「中身で」考えよう。

 

 

 + + + + +

 

「日本の未来を考える勉強会」公式サイトができました。

https://nihonm.jp/

 

 

中島岳志さんの新刊 「誰が」でなく「中身で」考える助けにもなるでしょう。

 

中野剛志さんの新刊 国民に投資するのは当たり前、という考え方に根拠と自信をくれる本。

 

 

藤井聡教授の新刊 前向きな気持をもつための一冊。

 

佐藤健志さんの近著 現状維持で爽快になれる方にはこちらを。

 

 

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