塁上でゲームセットを見届けると、星稜の主将・山瀬慎之助捕手(3年)の目から悔し涙がとめどなくあふれ出た。「勝って終わりたかった。勝ちたかった」
エースの奥川とは小学時代からバッテリーを組んできた。決勝前には履正社の各打者を宿舎のビデオ部屋にこもって研究。「いつものキレがない」と奥川の不調を感じつつ、終盤まで3ランによる失点だけにとどめた。
2点を追う7回1死二塁の好機では、三振に倒れたばかりの奥川に「俺に任せろ」と一声掛けてから適時二塁打。9回にも先頭で中前打を放った。最後までナインを鼓舞したが勝利には届かず「奥川のおかげでここまできた。勝たせたかった」と再び涙をぬぐった。
中日の米村チーフスカウトが「地肩の強さは大学生、社会人と合わせてもピカイチ」と語るように、その強肩にはプロも注目している。山瀬も「プロを考えている。奥川とはいつか日本代表でもバッテリーを組みたい」と夢を語る。
一方の奥川は「2人で日本一になりたかった思いはあるし、チームメートにも恵まれた」と振り返った。剛腕の女房役を全うし、次のステージへと飛躍する。(木村尚公)