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【高校野球】

履正社、甲子園初V 6戦連続2桁安打、奥川の防御率「0」止めた

2019年8月23日 紙面から

星稜を破って初優勝を遂げ、喜ぶ履正社ナイン=甲子園球場で

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◇全国高校野球選手権<決勝> 履正社5-3星稜

 令和最初の甲子園で新王者が誕生した。第101回全国高校野球選手権大会は22日、決勝を行い、履正社(大阪)が5-3で星稜(石川)に打ち勝って春夏通じて初優勝。井上広大外野手(3年)が3ランを放つなど11安打を浴びせて、センバツで完封を喫した奥川恭伸投手(3年)にリベンジした。大阪勢が2年連続優勝、北陸勢の初制覇はまたもならなかった。

 このうえない大舞台で宿願を果たした。履正社が、今春センバツで3安打完封を喫した奥川打ちで頂点。この夏の甲子園では、霞ケ浦の鈴木、津田学園の前ら好投手を次々と打ち砕き、フィーナーレは奥川から5点をもぎ取った。バックスクリーン左に逆転3ランを放った主砲の井上は「奥川君が、ここまで連れてきてくれた」とうれし涙をぬぐった。

 1球で仕留めて流れを呼び込んだ。1点を追う3回、2死から連続四球でつくった一、二塁。井上は全神経を集中して初球のスライダーをたたいた。「1打席目にスライダーに完全に合っていなかったので、絶対にスライダーで来ると思った。打った瞬間に確信しました」。ライナーで突き刺した高校通算49号がチームを勇気づけた。この大会3本塁打、14打点の4番は「きょうのホームランが一番でした」と素直に喜んだ。

 3年生の部室に、センバツの星稜スタメン表を張り、全員で雪辱を誓い合ってきた。朝6時半からの自主練習の回数も増えた。同点にされた直後の8回は「ここからや」の声が上がって奥川を一気にのみこんだ。チームが3安打完封されたセンバツで2安打の奥川キラーの野口がV打。「奥川君に負けたのが、このチームの原動力。ベルトより上だけを打とうと話していた」。やや高めの151キロをきれいに中堅へ打ち返した。

 試合前、硬さも少しあったナインを、岡田龍生監督(58)はジョークをまじえて解きほぐした。「世の中は7対3ぐらいで星稜が勝つと思っているんだから気楽にいけ、(負けてもともと)先発が菅野(巨人)だと思え」。好投手を打ち込んできた打線はひるむことなくドラフト1位候補に向かっていった。早いカウントから球種にこだわらず高さだけ絞って、どんどん振って6試合連続2ケタ安打となる11安打を浴びせた。

 1987年に就任してから32年目、初の頂点に導いた岡田監督は目を潤ませた。体罰問題で謹慎期間もあり、選手との対話重視でチームを強化した。大阪桐蔭が主将だけで返しにきた深紅の大優勝旗を再び大阪の地にとどめ「桐蔭だけじゃないよと皆さんが思ってくれたらいい」と笑った。大阪桐蔭とは対称的に寮はなく部員は全員が自宅から通学。食事面などで選手をサポートする父母らは「家庭のコーチ」と呼ぶ。令和の甲子園で新時代にふさわしい新王者が誕生した。 (小原栄二)

 

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