| 駅と言えば… それこそ鉄道網が発達している日本では、毎日の生活には無くてはならないものであり、また1日に少なくとも数回は利用することになるかもしれない、いわば生活に根付いた場所….ということになる。このブログでネタにさせて頂いている70&80年代のアイドルポップスにも、この‘駅’を舞台にした楽曲が存在し…その触手を歌謡曲やNM(ニューミュージック)にまで伸ばしてみるとその数も更にググっと多くなっていくのである(←本来は演歌…がコレの独壇場なのだが^^;)。 「北駅のソリチュード」 河合奈保子 「卒業」 斉藤由貴 「桜桃記-ひとひら-」 小川範子 「レースのガーディガン」 坂上香織 「さよならレイニー・ステーション」 倉田まり子 「北物語」 ルー・フィン・チャウ 「うさぎ」 野咲たみこ/谷山浩子 「セシリアBの片想い」 山瀬まみ 「もう逢えないかもしれない」 菊池桃子 「駅」 竹内まりや 「終着駅」 奥村チヨ 「たぶんあなたはむかえにこない」 「雨のステイション」 以上、荒井由実 ☆PON助さんよりご教示 「赤いスイートピー」 「続・赤いスイートピー」以上、松田聖子 ☆モーリーさんよりご教示 「なごり雪」 イルカ/伊勢正三 ☆やぬすさんよりご教示 「冬の駅」 小柳ルミ子 ☆キツネオーさんよりご教示 「花嫁」 はしだのりひこ&シューベルツ どの曲も名曲&傑作のオンパレードなのだが… ♪夏の前の 淡い陽射しが 駅のホームに こぼれてる という、この曲はどうだろうか?これもまさしく‘駅’がモチーフとなっており、紛れも無く上の楽曲郡のお仲間さん…ということに相成るのである。 このような歌詞で、その物語が展開されてゆくこの曲は、河合その子さんのシングル第3弾として1986年3月21日に「青いスタスィオン」というタイトルで発売された楽曲である。この出だしの部分だけで、その夏の前のまだ柔らかな日差しが木陰の間をぬい、おそらくは片田舎あたりに佇む駅のホームに降り注いでくる様…そんな絵画のような情景が聴き手の瞳に色鮮やかに浮かんでくるという、実に高品質な歌詞が秀逸。そして哀愁味を帯びた切ないメロがソレに絶妙に絡まってくる、傑作とも言える作品なのである。 さて、その子さんと言えば、おニャン子クラブ会員番号12番として大人気を博した方。彼女はその他メンツと比べても素材的にはかなりの正統派。ルックスも歌唱センスも…おそらくはおニャン子から出なくても充分にアピールできたであろう、その質の良さがウリとなっていたのである。なんせ彼女の芸能界入りのきっかけは天下のソニーが主催した「ティーンズポップ」というコンテスト。おニャン子加入前の彼女はこの大会において準優勝の座をゲットしていたのである。ちなみに同大会での優勝をもぎ取ったのは、1986年に‘ソニーの神秘’というキャッチフレーズにより「花の精-わたしのON AIR-」でデビューをカマした沢田玉恵さんである。 そんなその子さんが唄ったこの楽曲…作詞を手がけたのは秋元康氏、作曲は後藤次利氏という、それこそおニャン子楽曲としては定番&お馴染みの作家陣による作品だったのだが、この曲もその子さんのクオリティ同様に…他おニャン子曲のソレラよりも遥かに本格的な構成がウリ、アイドルポップスとしてはもちろんのこと、アーチストの楽曲…としても充分に通用してしまうような‘まとまり感’が特徴となっていたのである。この楽曲の作曲を担当された後藤氏がなぜにここまで気合の入りまくったチューンをその子さんに提供したのか…今となってはそんなの‘ウンウン’それこそ容易く頷けてしまうお事柄…と言えようか。(笑) この曲のテーマはとある若い男女による駅での別れ。その別離の理由は男性側が都会へと旅立っていってしまうという…ある意味、日本のアイドルポップシーンにおける定番なシチュエーションとなっているのである。こういった情景を描いた作品として… 「木綿のハンカチーフ」 太田裕美 「レースのカーディガン」 坂上香織 「桜桃記-ひとひら-」 小川範子 「卒業」 斉藤由貴 などがあり、コレラの逆バージョン(女が都会へ&男が居残り)が… 「水色のカチューシャ」 小林千絵 ということになりそうである。(笑) ♪あなたは今 都会へむかう地図を持たない旅人ね はて…‘地図を持たない’ということは、それこそ行き先は都会と決まっているものの、仕事はおろか住む場所すらも決まっていないような状態なのだろうか。彼にとったらそのすべてが1から始まる、いわば裸一貫からスタートということなのか。 ♪少年の頃に見た 小さな夢が忘れられない この男性…要はその夢とやらを追い都会へとその歩を進ませることを決心した模様。そう…彼女をたったひとり、非都会エリアに置き去りにして。 ♪想い出だけをそっと着替えて あなたの夢を探して 想い出だけをそっと着替えて 愛はそのまま ツライ….つらすぎるけれど、彼女は彼との想い出を心の中の引き出しにそっとしまって…彼の決断を尊重しようと努力している。まさにTry to understand & endeavourの世界である。しかし、2番におけるこの部分の歌詞を見てよ。 ♪列車のベルが風に響けば そんな強がりも消える 微笑ながらそっと隠した 涙 ひとつぶ これだもの。彼女としたら心の中の引き出しに…とかなんとかってのは、いささか建前めいたお話であり、これこそが彼女の…いわば‘本音’なのである。 この曲はオリコン最高1位、34.0万枚を記録して押しも押されもしないその子さんの代表曲と相成った。この曲には元々「思い出着替えて」というタイトルが付けられていたと聞くが、レコーディング・ディレクターの意向でフレンチライクなタイトルを…という希望から「風のチェルシー」へと変更された。が、しかしこの曲が森永製菓のCMソングに起用されることが決定、チェルシーという単語(「チェルシー」は明治製菓の商品だったため)が使えなくなり、最終的に「青いスタスィオン」に落ち着いたようである。実質、おニャン子としての彼女におけるラストシングルとなったこの楽曲。もしかしたらこの曲はその子さんご本人のキモチを投影させた作品だったのかも?当時はいい曲だなと思うだけでその内容まではさほど気にはしていなかったものの、今回のように歌詞を掘り下げてみたら。あらら?という感じで気が付いた次第なのでゴザイマス^^;。 自らの意思(事務所の要請もあったのか?)によりおニャン子から旅立つことを決めたその子さん…そんな彼女こそがこの曲中における主人公の心情にピタリと一致しているように思うのである。それは‘アイドル’じゃなくて‘アーチスト’になりたいという彼女の‘夢’。その夢のために安泰軍団だったおニャン子から人気絶頂の最中にあっさりとその身を引いていった彼女。そう言われてみれば彼女はこのレビューで前述したようにソニーが主催した「ティーンズポップ」のご出身。このコンテストの趣旨はアイドル発掘ではなく、楽器などを駆使してパフォーマンスが出来る人材を探すことに重点が置かれていたのである。後の宮原学さんもこのコンテストのご出身と言えば、その趣旨がより明確になってくるだろうか…。 いずれにしてもその子さんはこの楽曲の主人公と同じように…自身のその‘夢’を追い、おニャン子という名の‘青いスタスィオン’から旅立っていったのである。もしかしたらコレは作詞を担当された秋元氏の確信犯!?歌の中でひとまずはその子さんを男性に置き換え、そのストーリーを構成。おニャン子より卒業が決定した彼女からファンへのメッセージソングのようなモノにしたかったのかもしれないなと。なんて…こんなのは単なる邪推かもしれないが、我ながら結構自信があったりもして。(笑)
コレはその子さんがおニャン子在籍中から自らに向けて投げかけていたメッセージ…そのものだったのかもしれない。 ☆作品データ 作詞:秋元康 作曲:後藤次利(1986年度作品・CBSソニー) |
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