魔法少女リリカルなのは DOUBLE STANDARD 作:トータス
余り活躍しません。
こうなるのではないかと言った事を捏造しております。
ざっと流しております。
有り得難い、出会い
突如、急停車したリムジン。
その車内では、
「ねぇ、何が有ったの!」
「わ、判りません。お嬢様方、お怪我は!?」
「・・・私は、大丈夫!」
「わ、私も!」
習い事から帰る為、友達と共に車で帰る途中だった。
行き成り、ハンドルが切られ、横滑りして停まった。
「・・・確かめてまいります。このままで、お待ち下さい。
・・・万が一に備え。携帯をご用意願います」
「わ、判った! 気を付けて、鮫島!」
「気を付けて! 鮫島さん!」
バダン!
車から降り、中からロックされるのを確認し。
前方に有る、何かに・・・近寄った。
一瞬では有ったが、確かに、人影が見えた。
小さな人影が、倒れ伏していた。
周囲には、翡翠の如きモノが散乱している。
上空高くから落下し、破壊され、飛散した様に思われた。
警戒しつつ近寄る。ただ、何事もなくは無い筈であり。
陰惨なモノに成っているかもしれないと、考え。
その覚悟をし、窺った。
その小さな人影は、見慣れない衣服を身に着け、その背中は、小さく動いて居た。
そっと近付き、様子を伺う。その息が有り、そう酷い事にもなっていない事を確認し、コートを脱ぎ、包み込んだ。
そっと抱き上げ、戻った。
「お嬢様、申し訳ありませんが。
スズカお嬢様のお宅に、暫しご逗留下さいませ」
「・・・何が、有ったの?」
「それは、構わないけど」
「私は、急ぎ。病院へと向かいます」
「! そ、それじゃぁ」
「え? えぇっと!?」
「・・・このままにする訳にも行きませんので、急ぎます!」
「「キャッ、キャア!」」
急発進に伴い、二人はシートに押し付けられる事になった!
リムジンは猛スピードで直に月村邸に着き、二人を降ろすと。急ぎ、走り去った。
・・・ ・・・
病院での出来事
全てを話し、警察にも連絡を入れ、報告すべき事は全て、伝えた。
「・・・では、宜しく、お願いいたします」
今は、目の前の女医に対し、慇懃に礼を言い。
深々と頭を下げ、後の事をお願いした。
ネームプレートには、石田と銘打ってある。
「はい、承ります。
それにしても、災難でしたね」
「いえ、これもまた、巡り合わせかと」
そう言って、小さな主を残して来てしまった為、急ぎ引き返す。
「では、何か有りましたなら、ご連絡しますね」
「はい、お願いいたします」
バタン! キュルルルルッ!
車のドアを閉め、発進させる。
その間、何が有ったのかを考える。
何が有ったのか。
それは解らない。
何故、あんな所に、あんな時間に、子供が居たのか。
それは不明だった。
ただ、そのままにする訳にもいかず、咄嗟に連れて来てしまった。
その事に関し、特に後悔する事は無い。
あんな不思議なモノを見た事も、そんなモノが有るとも、聞いた事も無かった。
若草色をした、翡翠の様にも見える石が散らばった、あの様な現象は、終ぞ聞いたことも無かった。
ただ、怪我はしている様だが、大事には至らないだろう事を素直に喜ぶべきなのだろう。
その後の事は、その時にでも考えれば良い。
そう考え、小さな主を迎えに車を走らせる。
・・・ ・・・
とある霊廟
シンと静まり、塵一つなく清められた空間。
そこに、一人蹲る修道女(シスター)。
胸の辺りを押さえ、急に襲って来た苦痛を、訳も判らずに治まるのを待った。
暫くすると、痛みは引いたが自分自身に違和感を覚えた。
「私は、何を?」
感覚としては、頭が重く感じる。
記憶を手繰り、何をして来たのかを確かめる。
今は、聖王の聖骸布を、レプリカとすり替え、帰還する筈だった。
なのに、急に胸が痛み、蹲ってしまった。
有ってはならない事だ。
戻ったら精密検査を受けるべきだろう。
だが、この喪失感は、何だ?
何かが、この腕から零れてしまった。
守る筈だったモノを、守れなかった感覚は・・・
それに、何故か余計な記憶が増えている?
覚えの無い、何かが、そこには有った。
今は戻り、その違和感をハッキリさせるべきなのだろう。
そう考え、帰還する事と検査をする事を、ある場所へと連絡した。
・・・ ・・・
とあるアジト
外部からの連絡を受け、その応対をするクアットロ。
「ハァイ。受け賜りましたわ、ドゥーエ姉さま。
帰還をお待ちしています」
『頼んだわよ。
何か、言い表せないけど、違和感が有るから。
その事も、ドクターに伝えて頂戴』
「ええ、その事は、しっかり伝えておきますわ」
そこへ、別件でクアットロの元へ来たチンクが声を掛けた。
「ん? 如何したクアットロ?」
「あら、チンクちゃん。
ドゥーエ姉さまが帰って来られるってだけよ」
「そうか。しかし、珍しい。
行ったら、当分は返っては来れないだろうと仰っていたと思ったが?」
「そうね。
でも、何だか原因不明の痛みが有って、身に覚えの無い傷痕が出来たって事だから。
何か、相当な不具合が起きたのかもしれないわね」
「そうで無ければ良いのだが」
・・・ ・・・
その連絡を受け、首を傾げるスカリエッティ。
原因と思われるモノを、脳裏に思い浮かべるが、該当するモノは無い。
「フム、成程。
ならば、急ぎ準備に取り掛かってくれ、ウーノ」
傍に控えているウーノに声を掛け、必要と思われる検査項目を並べる。
「はい、ドクター」
「あと、記憶を洗う必要も有りそうだから、その準備も頼む」
「・・・判りました」
・・・ ・・・
検査結果としては、特に異常は無い。
任務にも、支障は無い様だ。
胸に現れた、傷痕は、実際に受けたのであれば。
致命傷で有るだろうが。表面的にだけ、現れているだけで、原因は不明で有った。
ただ、刺突による傷痕の様にも、思えるものであった。
記憶に関しては、不明瞭な何がしかの記憶が検出された。
取敢えず、そのままでは、何の意味も持たないソレを、解析に回している。
直には判らないだろうが、いずれは解析できるだろう。
・・・ ・・・
数週間後
運び込まれた子供に関しては、一応、傷も癒え、幾つか判った事は有った。
言葉は通じてはいない様だが、何となく、理解はしている様で、名前と年齢、家族構成は判明した。
身寄りが無い事が、ハッキリとした。
何処の国の出身かも判らず。
何処から来たのかすら、判らないとの事。
このままで有れば、然るべき施設に送られる事となるだろうとの事。
その事を、不憫には思った。
だが、それもまた、ありふれたモノでしか無い。
ただ、切っ掛けが有るのならば。
本の少しだけ、縁を持ち、手を差し伸べる者も居た。
・・・ ・・・
「・・・私の元へ、来るかい?
直に、返事を出さなくても良い。
良く考え、それからでも、構わない」
「えっと、このお爺さんの所で、暫く一緒に居る?
このお爺さんは、信用出来る人で、暫く面倒を見て貰えるって、お話なんだけど・・・
それまでに、家族と連絡が取れるかもしれないけど・・・」
そんな事は、有り得ないかもしれない。
そんな事を思いながら、尋ねてみた。
・・・コク
意味が判っているかは、不明だが。
暫し、躊躇した後・・・
小さく頷きを返した。
「・・・判りました。
一応、引き取り手が無いので、その様に手配して見ます。
・・・定期的に様子を見ましょう。それまでに・・・何か分るかも知れませんし・・・」
「お手数をおかけします」
「では、こちらに。書類を用意します」
「はい」
そう言いながら、病室を後にする二人。
病室を出て、診察室に入り、他に人の目が居ない事を確認し、鍵を閉めた。
「・・・端的に言います」
「何でしょう?」
「どうして、あの子を引き取ろうと?」
「・・・私には、子供が居りません。
この様な仕事柄、後を任せられる者も居りますが、それでも・・・自分の持つモノを、誰かに託せたらと考える事が、有ります」
「子供は、物では有りません」
「それは・・・判っています。
それでも、自分の持てる何かを、あの子に持たせてやりたいと、考えてはいけませんか?」
「そ、それは・・・ですが! 子供をそれにつき合わせるのは・・・」
「判っています。
それが、自分のエゴでしかない事も・・・
ただ、本の少しでも、縁(ゆかり)を持った相手であるなら、託しても良いのではないかと、そんな事を・・・考えたのです」
「・・・そうですか。
なら、私からは、言いたい事も有りますが、今はその言葉を信じます。
ですが、無理強いはしないでください。
私も、あの子とは縁が有ります。
ですから、定期的に面会はさせて貰います」
「構いません。
むしろ、こちらからお願いをいたします。
私ひとりでは、至らぬ事も間々あるかと考えます。
ですので、宜しくお願いいたします」
そう言いつつ、深々と頭を下げた。
それに対し、慌てふためく事となった。
「そ、そんな! そこまでされる事では無いです!
当たり前の事を言ったまでなんですから!
・・・その、顔を上げてください!」
「いえ、そこまで考えて貰えるのであれば、尚更に上げる訳にも・・・」
「それでも! そこまでされる覚えは有りません!」
「有難うございます」
そう言うと、ゆっくりと顔を上げ、微笑んだ。
お互いに笑みが零れた。
「コホン! まぁ、それはそうとして。
身元引き受けは良いとして、後見人・保証人を立てなければなりません。
どなたか、心当たりはございますか?」
「私の主人にお伺いした所、快諾していただけました」
「あー、それだと一寸、弱いですね。
社会的にも、人格的にも良いのですが、近過ぎてしまうので、それだけではちょっと・・・
身内贔屓と見られてしまう事にも、繋がってしまいます。
出来れば、近過ぎず、遠過ぎない第三者で、公平だと思われる方の方が、良いのですが・・・
心当たりは?」
「・・・そうですね、お嬢様のご学友の月村家では・・・
駄目ですね」
「? どうしてですか?」
「いえ、年齢が・・・」
「お年を召していらっしゃる?」
「イエイエ、ご当主はお若過ぎてしまって・・・
だとするなら、高町家の方なら、お引き受け願えるかと・・・」
「・・・では、一度お会いして、お引き受け願えるか、お伺いしてからですね」
「はい」
・・・ ・・・
トントン拍子に物事は運び、首尾よく快諾して貰えた。
ただ、本人に会って見たいと言われ、連れて行った所「家の子にする!」と、押し切られそうになったとか・・・
それで、ご息女が子供返りしたとかしなかったとか?
その事自体は、双方にとって良い事でも有り、結果的には、良い方へと転んだ。
・・・ ・・・
「では、お嬢様。ご紹介いたします。
本日より、私が後見人となりました。仮の名前となりますが、鮫島 デュオとなります。
以後、お見知り置きを。
デュオ、こちらは当家の御息女に当たられる、アリサお嬢様だ。ご挨拶を」
おずおずと、鮫島の足に掴まり、少し驚いたような顔をしながら、こちらを見ている子供が居る。
眼が合うと、緊張した面持ちで、それでも、シッカリと頭(こうべ)を垂れた。
怖がらせても何だし、これから顔を合わせる事も多くなる。
そう格式ばった挨拶も如何かと思った事から、気楽に返す事にした。
「・・・そう。よろしくね、デュオ。
私は、アリサ・バニングス。
アリサで良いわ」
それを聞き咎めた鮫島。
「いけません、お嬢様。
子供とは言え、私が監督する以上。そう言った上下は、ハッキリとさせねばなりません」
そう言われ、反論するアリサ。
「でも! まだ幼いのよ?」
「それでも、いけません。
見る人から見れば、良い様には見られなくなります。
だからこそ、この様なけじめはハッキリとさせねばなりません」
「・・・だぁぁ! 良いの! この子は、私の弟分として扱うの!」
「なりません! その様な事は、私の沽券にも関わります!」
「良いの! 私が決めたんだから!」
「・・・判りました、そこまで仰られるのでしたら、その様になされませ。
ですが、私の目の在る所では、その様な振る舞いはさせません。
それで宜しいですな?」
「わ、判った。じゃあ、デュオ。付いてらっしゃい。
貴方に紹介しておく相手が沢山いるの!」
そう言い、その手を取り、走り出す!
引っ張られるまま、後ろを振り返ると、行って来いとばかりに見送る執事。
その後は、暫くお嬢様に対してのお小言が聞かれたとか・・・
この様に、バニングス家の鮫島さんへと引き取られる事と相なりました。
次回 発動! 魔王様・・・降臨?