MRIでは、完全に凍結した物質はシグナルを与えないが、解凍 するに従ってシグナルが出現する。だから、冷解凍によるシグナ ルの消失および出現過程を解析することで試料の性質を知ること ができる。 ① サンプルによって解凍が開始される部位、解凍が進む 過程は異なっている。 ② ソラマメでは、サンプル管に接触した位置から解凍が 始まり、マメの外側から解凍のフロントが進む様子が 観察された。 ③ アスパラガスでは、多数存在する維管束が急速に解け、 その後、外側から内側に解凍が進んだ。 ④ オクラでは、全組織がどちらかというと均等に解凍される ように見えた。 ⑤ 水が多く、固い細胞壁を持つ野菜の冷凍で問題となる のは、冷凍により、それぞれの野菜に固有の風味と 歯触りを失うことである。新鮮オクラと冷凍オクラのイメー ジを比較すると、新鮮オクラでは各々の組織が異なる 水の分布を示すのに対して、凍結することによって水の 分布が均一になり、かつ、運動性が非常に高くなった。 ⑥ 1T小型MRIは非常に安定であるから、解凍過程における シグナル強度変化についてモデル解析をすることが できる。ソラマメ、アスパラガス、オクラの解凍過程を 簡単な潜熱伝達モデルで当てはめると、ソラマメは塊状、 アスパラガスは棒状、オクラは板状物質と類似した熱 伝達をすることが解った。これらの結果は野菜の冷凍法 を考察する上で役に立つと期待している。 ⑦ MRIは不均一な内部形態と不均質な組織を持つ食品が、 凍結過程または冷凍保存中にどのような状態を経過 するかを知るための有効な手段となると思われる。 (研究員)