Fate/stay night in Duo   作:トータス

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活躍させないつもりだったのですが、一寸は活躍します。


英霊召喚

 デュオは弓を引く。

扱い方はそれなりに習っているが、矢をつがえずに引いている。

手の力で引くのではなく、肩と腕を開く様にして、その開く力を用いて引いて行く。

手の力や腕の力ではなく、手から腕、肩の力を用いて引く。

 

「そう、それで良いね。

そのまま何処に矢を運ぶか、それを考えて放つ」

 

 美綴 綾子に手を取られ、丁寧に教わっている。

 

「じゃぁ、放つ時は手首を返して」

 

 手を重ねたまま、放とうとした時。

 

「おい! 何故部外者がココに居るんだ!」

 

 そう罵声を浴びせられた。

その声の先には、若布頭・・・こと、間桐 慎二。

 一寸怖い。

サササッと、主将の後ろに隠れて見た。

 

「一寸! 危ないじゃない! 折角良い感じだったのに!」

「はん? それはお前の性癖か?」

「な、何て事を!」

「否定しないのか?」

「・・・そうね、否定する必要は無いかしら。だって、この子はアンタに比べて素直だから」

 

 そう言って、ギュッと抱きしめられた。

辺りからは黄色い悲鳴が・・・

 

「部、部長・・・」

「部長って、そっちだったんだ・・・」

「姐ゴー!」

「な! 何なんだ!」

 

 それ以上は何も言えないのか、苛立ちながら早々に弓道場から立ち去って行く慎二。

 

「さて、皆も練習を続けて!」

 

 周りに居た部員達に声を掛け、練習を再開させた。

 

「じゃあ、続き。始めようか」

 

 そして練習再開、士郎が弓道場に顔を出すまで・・・

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 面倒を見て貰った代わりに、弓道場の後片付けを申し出た士郎を手伝った。

 

「さて、片付けも終わったし、帰るよ」

 

 コク!

 

 弓道場を出て、戸締りをして帰ろうかという頃、屋上に誰かが居た。

 

「あれ、遠坂?」

 

 ドシタ?

 

「ああ、一寸知り合いが居たみたいで」

 

 それだけ言って、校舎へ向って走り出した士郎。

走りながらこちらへ向って、

「先に門の所で待っててくれ、一寸確かめて来るから!」

それだけ言って走って行った。

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

「おっかしいなぁ。確かに遠坂だと思ったのに・・・」

 

 ふと窓に目を向けると、二人の男性が剣と槍で以て剣戟を繰り広げている場面だった。

 

「な!」

 

 それを見てへたり込むが、そんな現実があるのであれば、直にでもここを離れるべきだと考えた。

そして、もう一度それを確かめ様とそっと窓辺を伺って見た。

槍を手にした方と目が合った。続いて、双剣を手にした方とも。

 直に隠れはしたが、自分が認識された事が分かった。

 

「逃げなきゃ。! 遠坂!」

 

 屋上で見掛けたクラスメートが気掛かりだった。

デュオは門の所で待っているだろうし、あそこは幾らか人通りがある。

だったら、逃げられる。

 だけど、遠坂は・・・

そっと、その場から離れ、クラスメートを探しに走り出した!

 

 どれだけ走ったのか判らない内に、目の前に人影が現れた。

 

「と!」

 

 ドンッ! とぶつかり、はね飛ばされた!

そのまま尻餅をつき、咄嗟に相手に謝った。

 

「いちち! 済みません! 急いでいたんで・・・」

「へぇー、何で急いでいたんだ?」

「そ、それは・・・!」

 

 相手を見上げて気が付いた。自分がぶつかった相手が、剣戟を繰り広げていた相手の片割れだった事に。

 

「悪いな。見られちまったんなら、お前も消さなきゃならんからな。

運が悪かったと思って、諦めてくれ」

 

 そう言いながら、男は槍を振り被った。

 

「う、うわぁぁああ!」

 

 咄嗟に側に在った消火器を手に持ち、ピンを抜き去り、相手に向かって噴射した!

 

「何!?」

 

 相手がうろたえた隙に体を横に転がした次の瞬間!

ガスッ! っと槍がコンクリートの床に穿たれているのを目にした!

 

 兎に角、逃げるべくそのまま転がりながら体を起し、走り出した。

抱えていた消火器は咄嗟にガラス窓へと叩き付け、ガラスが割れた音で誰かが異常に気が付いてくれる様祈った。

 

 その直ぐ後、男がどう回り込んだのか、目の前に居た。

 

「ワリィな。逃がす訳にはいかねぇんだ。

このまま死んでくれなきゃ、また殺す相手が増えるんでな。

オメェの機転に敬意を表し、俺の最高を以って葬らせて貰うよ」

 

 そう言うと、男は紅い槍を構えた。

 

「う、うわぁぁぁあ!」

刺し穿つ死棘の・・・(ゲイ・ボル)何の真似だ?」

 

 男の後ろには仮面を被り黒い布で身を包む人影が立っていた。

その男の背に鋭い三つ爪を突き立てんとしていた。

 

「へぇ・・・お前、アサシンか。

だとすると、この小僧がマスターか?

それにしては、この戦いに関して知らな過ぎる気がするが・・・」

 

 そう逡巡すると、

「わあった、ここは引き下がらせて貰うとしよう。

次会う時は、その仮面の下を拝ませて貰おうか」

 

 それだけ言うと、その姿は薄く消えて行った。

それを確認すると、人影はそのまま立ち去ろうとした。

 

「あ! 待って!」

 

 それに意を返さず、相手は窓の外へと身を投げた。

 

「あぶな!」

 

 直に窓の下を見るが、その姿は既に消えていた。

窓辺には黒い暗幕だけが残されていた。

 

「誰だったんだ?」

「さぁな。取敢えず、君には死んでもらうよ」

 

 その声は直ぐ傍から聞こえた。

 

「な! き、消えたんじゃ!」

「邪魔がいたら厄介だからな、居なくなったのを確認させて貰ったよ。

じゃぁ、消えて貰おう!」

 

 槍が繰り出され、その穂先が胸を抉り抜く・・・

 

「がぁ!」

「かはっ!?」

 

 繰り出されるその手を、矢が貫いていた。

 

「やっぱり、そういう訳にはいかないか!」

 

 そう言いながら、その目は窓の外へと向けられた。

そこには離れた所から和弓でもって弓を射たであろう相手が居た。

遠目で分かり辛いが、それが女性の姿だという事はその起伏で確認した。

 

 だが、槍も繰り出され、心臓ではなく片肺を抉っていた。

 

「まぁ良い。それなら直にでも死に至る。苦しむ事になるが、それはアサシンを恨んでくれ」

 

 そう言い残すと、今度こそランサーは消えて行った。

 

 あ、クソ! こんな所で! 急いで逃げなきゃ・・・

 

 暗転して行く視界の中、気になるクラスメートの姿が目に飛び込んで来た。

 

「一寸、こんな事で!」

「放っておけ。ここで死ぬのならまだ幸せかもしれないんだぞ」

「何言ってるの! アーチャー!

このまま死なせられる訳が無いでしょ!」

「だが・・・分かった。なら、アサシンが手を出さない様、見張って居よう」

「ええ、お願いね。私は何とか助けて見るから」

 

 そんな声を耳にしながら、意識が途切れた・・・

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 ユサユサ揺すられて目が覚めた。

 

「イツツ!」

 

 目を開けて起き上がると、目の前には心配そうにしている弟分=デュオが居た。

 

「オレ、槍で抉られて・・・! デュオ、怪我は!?

変な奴は居なかったか!?」

 

 フルフル!

 

「そ、そっか」

 

 ゆっくりと起き上がり、自分の身に起きた事を確かめた。

 

「なっ! 制服が・・・」

 

 そこには片側を貫かれた血塗れの制服。

 

「あ、ああ・・・これは? 助かったのか?

兎に角、急いで帰るぞ。このままココに居たら、また何に巻き込まれるか」

 

 コクコク!

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 屋上から、駆け足で校舎から出て行く二人を目にした二人。

 

「良いのか?」

「良いのよ、アレで悪い夢だと思ってくれるのなら好都合よ」

「だが、本当に良かったのか? あの宝石の力まで使って」

「もう済んだ事よ。今さら如何こう言っても変わらないわ」

「・・・分かった」

 

 だが、あの子供は、誰なんだ?

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

 家に帰り、夕飯を二人で済ませ、一息ついて寝転んだ。

 

「はぁ・・・何だったんだ? アレは、俺の気のせいだったのか?」

 

 考えを纏めるために目を閉じた。

ふと、顔に陰りを感じ、目を開けると。目の前に槍を持った男が立っていた。

 

「な!」

 

 咄嗟に横に転がり、繰り出される槍を避けた!

 

「ちっ! 運が良いな! さっきは邪魔が入ったが、今度はそうは行かんぞ」

「デュオ! 逃げろ!」

「ん? 他にも誰かいるのか? なら、ソイツも殺さないといけないな」

「させるか!」

 

 咄嗟に男に掴みかかろうとするが、アッサリと振り払われた。

 

「邪魔すんな。せめて苦しまない様にするだけだ。

ん? へぇ、お前か」

 

 そこには長柄の何かを手に持った子供の姿。

 

「・・・成る程、変な魔力を感じるとは思っていたが、お前がねぇ」

「弟に、手を出すな!」

 

 咄嗟に手にしたモノで相手の気を逸らそうと、士郎は殴り掛った!

 

「おっと、怖い怖い。

ん? ブッハハハハハッ! な、何だよ、そりゃ!」

 

 目の良いランサーからすると、そのモノに書かれた【えくすかりばー】という字が読めた様だ。

 

「そんな事を行ってられる場合か!

デュオ! 急いで逃げろ! 藤村の家に!」

「あー、笑った笑った。

大層な名前が付いてんだな。その蠅叩きには」

「ああ、これでもかなりの勝率《=対くろいあくま》が有るんでね。

って! デュオ! お前は逃げろって!」

「ははっ! 良いじゃねぇか、心配だから駆けつけて来たんだろ?」

 

 そこにはデュオが網の取れた虫捕り網を構えている。

それを目にし、一変。

 

「ああ゛ん? 何じゃそりゃ!」

 

【7代目ゲイボルグ】と書きこまれていた。

 

「それをどうするのか、教えて貰おうか」

 

 そう言って凄むランサー。

その声に、針金で出来た輪っかを槍の穂先に潜らせ、捻り上げた。

それで穂先を封じ込めて見せた。

 

「へぇー中々、やるじゃねぇか。だが、お前の相手はまだ後だ、寝てな!」

 

 そう言うと、その槍をそのままの状態で振り回し、相手ごと壁へと叩き付ける!

 

「デュオ!」

 

 その叩きつけられた壁は雲の巣状に罅が入り、その下に蹲ってしまった。

 

「おっと、お前さんにはまだ用が有るんでな」

「くっ!」

 

 このままこれで相手をする訳にも行かない!

叩きつけられはしたものの、アレ位ならまだデュオは生きている筈!

 

 咄嗟に土蔵へと飛び込み、使えそうなモノを物色した。

とにかく時間を稼がないと・・・せめて、逃がす為の時間を・・・

 

 在ったモノ【ポスター】を手に、相手に向き直った。

 

「はん! そんなんで俺様を相手にとろうとは、片腹痛いな」

 

 それを軽く斬り払う気持ちで槍を振るったランサー。

だが、その異様な手応えで、その気持ちを改めた。

 

「・・・成る程、強化か」

 

 それを見て、侮るべき相手とは思わない事にした。

 

「来な。相手をしてやる」

「おぉお!」

 

 絶えず打ち込み、払われる。

相手の切り払いは容易く届く。

兎に角、時間を稼ぐべく、打ち込み続ける。

それらはいとも容易くかわされ、打ち払われた。

 

「・・・駄目だな。ワリィが、これで終わりにさせて貰うぞ。

運が悪かったな、坊主」

「う、うわぁああ!」

 

 せめて大声を上げる事で、少しでも助けが入る事を祈った!

咄嗟に血に塗れた腕を振り上げ、少しでも時間を稼ごうと振り回した。

その血があちこちへと滴り、足元へも滴る。

 

「っく! 何事だ!」

 

 その槍の穂先が、目前で止まっていた。

 

「問おう。貴方が私のマスターか」

「え?」

 

 その声に驚き、見上げるとそこには凛々しい甲冑を纏った騎士が居た。

 

「・・・へぇ。お前がセイバーのマスターか。

なら、この勝負、預けさせて貰おうか。あばよ!」

 

 それだけ言い捨ててその場を去って行くランサー。

 

「あ! ま、まて!」

 

 咄嗟に引き留めようとするが、その姿は既に消え去った後だった。

 

「済まないが、貴方が私のマスターで良いのか?」

「え? ま、待ってくれ! その、助けてくれた事はありがとう。

でもその前に、弟が!」

 

 土蔵を飛び出し、叩き付けられた所へと向かう。

壁はひび割れ、大きくへこんでいる。

その下に、倒れこんでいた。

 直ぐに駆け寄り確かめる。

 

「だ、大丈夫か!?」

「あら、大丈夫みたいよ」

「! 遠坂!?」

「な、何よ。退いて、怪我の具合を見て上げるから」

「あ、頼む!」

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

「・・・頑丈ね。骨折は無いみたいだし、一寸打ち身が酷い位かしら?」

「だ、大丈夫なのか?」

「ええ、心配はいらないみたい」

「そっか、ありがとう」

「べ、別にこれ位は・・・」

 

 一寸顔を赤らめながら顔を伏せている凛。

 

「ところで聞いても良いか?」

「何よ、アーチャー」

「ああ。悪い、凛。一寸気になったのでな。

その子は、本当にお前の弟なのか?」

「ああ、俺の、弟だよ。血の繋がりは無いんだけどね。

ジイさんに一緒に拾われたんだ」

「・・・そうか」

「へぇー、道理で似てない兄弟な訳ね。

あ、でも何だかアーチャーに似てるかも・・・」

「うん? あ、何だか似ているかな?」

 

 士郎も外見から見て似ていると思ったのか同意した。

 

「・・・そんな事は無いと思うが?」

 

 一応の反論を試みるアーチャー。

 

「・・・うん、似てないわね」

 

 凛は一寸考えた後、意を翻した。

 

「何を思ってそう言ったのか聞いても良いか、凛」

「何って、こんなに可愛い子がアンタみたいなのと似ていたりしたら可哀そうでしょ?」

「え? そうなのか?」

「ええ、コイツ。ホント気に食わないのよ」

「フン、それはこちらもそうだと言わせて貰おうか!」

「ほらね? この子はそんな事無いわよね?」

「そ、それは・・・どうだろ」

 

 実情を知っている側からすると、そうとも言い切れ無い事を知っている。

 

「さて、今置かれた状況。貴方は何処まで判っているのかしら?」

 

 

 聖杯システムについて、サーヴァントについて、そしてそのサーヴァントが争い互いをつぶし合うという意味。

その事について分かり易く説明をした。

 

 

「さて、私達はこれで失礼するわ。これでも私とあなたは敵同士な訳だし」

「ま、待ってくれ、遠坂!」

「何?」

「その、助けてくれてありがとう」

 

 そう言って深々と頭を下げた。

 

「フ、フン! 次会う時は敵同士だからね!」

「それでも助かったよ」

「・・・行くわよ、アーチャー」

「了解した」

 

 凛の後を追って消えて行く。

 

「はぁ、今日は何だったのか・・・」

「あの、貴方が私のマスターで良いのか?」

「あ! えっと、何方ですか?」

「失礼、私はセイバーとしてアナタに召喚されたサーヴァントだ」

「ええっと、セイバー?」

「はい、主。所で、ここは?」

「あ、えぇっと。

その、今日は休ませて貰っても良いかな?

色々とあり過ぎて整理が付かないんだ」

「・・・分かりました」

「それで、部屋なんだけど・・・

この部屋を使って貰って良いから」

 

 客間として空けてある部屋へとセイバーを案内した。

 

「何か判らない事が有ったら、遠慮なく声を掛けて貰ってもいいから」

「・・・はい」

「じゃ、じゃあ。お休み」

「はい、お休みなさい」

 

 士郎は士郎で弟が寝ている部屋へと出向き、隣に布団を敷いて眠りに付いた。

 

 

   ・・・   ・・・

 

 

思い浮かぶがままに、思い描けるがままに・・・




分かっちゃいますよね?
バレますよね?
一寸工夫はしています。

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