6次化商品 販売苦戦 売り上げ目標 8割未達成 農水省調査
2019年07月08日
農水省の交付金を活用して開発された6次産業化商品のうち、売り上げ目標に達成した商品は2割弱にとどまることが同省の調査で分かった。原料や販路の確保が難しかったことが主な要因。交付金を活用する事業者には、農林漁業者が多く、食品関連事業のノウハウを十分持っていないケースもある。経営安定に向けて、どうサポートしていくかが問われる。……
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知人と杯を傾けていたら、こんな話になった 知人と杯を傾けていたら、こんな話になった。「自由」の対義語って何だろうか。「専制」「束縛」「統制」。ネットにはさまざまな言葉が並ぶ。でも、しっくりこない▼知人が用意した答えは「桎梏(しっこく)」。『広辞苑』第七版には「足かせと手かせ。また、手足にかせをはめること」「厳しく自由を束縛するもの」とある。「桎梏から逃れられない」は、決定的な束縛、絶望的な響きが漂う▼小説家の小川未明は『人間否定か社会肯定か』で、「いかんともし難い桎梏の前に、これを不可抗の運命とさえ思わなければならなくなってしまった」と嘆いた。宮本百合子は『合図の旗』で、勤労大衆や婦人、青少年の生活が「封建的な桎梏から自由になって民主化する」ことを呼び掛けた。大正や昭和時代前期。桎梏は克服すべき壁だった▼〈悲しみのない自由な空へ 翼はためかせ 行きたい〉。1970年代のフォークソング「翼をください」は解き放たれたように自由への思いを歌い上げた▼自由経済から統制経済へ。トランプ米大統領の「米国第一主義」の取引はそう例えられる。米中貿易戦争と報復合戦、これに同調する一部の国の動き。日本にも強引な農畜産物の市場開放要求を突き付ける。農民に悲しみを押し付ける隷属の関係に今こそノーを。 2019年08月19日
農村活性化 企業、学生らとチーム 課題解決へモデル育成 農水省新事業 農水省は、過疎化や高齢化など農村の課題解決策を地域主導で取りまとめるための新たな試みを始める。農家ら地域住民と行政だけでなく、企業や大学生らでチームを編成し、さまざまな技術、知識を持つ官民の人材がアイデアを出し合う「アイデアソン」の手法を採用。同省は複数の地域を8月中に選定し、それぞれの地域でのチーム参加者を9月から募集する。自発的に地域の解決策を見いだすモデル地域の育成を目指す。 「アイデアソン」は、「アイデア」と、長時間議論するという趣旨から「マラソン」の言葉を組み合わせた造語。国や自治体で最近活用されている注目の取り組みだ。… 2019年08月20日
19年上半期 冷凍野菜輸入 最多ペース 53万トン 業務、家庭向けで定着 2019年上半期(1~6月)の冷凍野菜の輸入量が52万6178トンとなり、過去最多だった前年の同時期を3%上回ったことが財務省の貿易統計で分かった。国産の生鮮原料野菜は、品薄高だった前年より価格が下がったものの、安定供給に強みのある輸入の冷凍品の増加が続いている。業界関係者は「業務向け、家庭向けともに輸入品の需要が定着している」とみる。国内産地にとって冷凍加工向けの原料供給を強めることが急務で、生産基盤の強化に向けた政策支援も重要になる。 19年上半期の冷凍野菜(調製品を含む)の輸入量は、前年同期を1590トン上回った。品目別で増加が目立ったのはジャガイモ(調製品含む)で前年比6%増の19万4934トン。加工されたフライドポテトが中心となる。産地関係者は「16年の国産ジャガイモの不作を契機に輸入量が増え、冷凍品の需要は現状も奪われたままだ」と指摘する。 ブロッコリーは5%増の2万9056トンで、上半期では2000年以降で最多だった。ホウレンソウは2万3799トンで、前年同期比では6%下回ったものの高水準にある。国別では、全体の4割を占める中国産が22万7615トンで前年比3%増、3割を占める米国産が16万5764トンで7%増と、共に増えた。 輸入品は従来、業務向けの販売が主軸だったが、近年は家庭向けとして扱うスーパーでの販売が増えている。首都圏に展開するスーパーのいなげやでは、冷凍野菜の中でも人気が高いブロッコリー、エダマメの今年上半期の売上高が、共に前年比7%増。いずれもメーカー品やプライベートブランドの商品で、原料は輸入だという。同社は「生鮮品の相場が安くても、調理の簡便性を求めるニーズが高く、人気が定着している」とみる。 国産強化も 追い付かず 一方、国産原料野菜を含む国内冷凍農産物の生産量は、減少傾向にある。日本冷凍食品協会の調べによると、18年は前年比9%減の7万1288トンだった。 輸入品が攻勢を強める中で、国産原料の供給力が焦点となる。ジャガイモやタマネギなど複数品目で冷凍野菜を展開するホクレンでは、販売量が「毎年増加している」という。ニーズの高まりを受けて、今春から家庭向け商品の包装を刷新するなど、訴求力を高める。「冷凍野菜の売り場はスーパーやドラッグストアなど多岐にわたる。家庭向け商品のシェアを伸ばしたい」と鼻息が荒い。 JA宮崎経済連の関連会社で冷凍ホウレンソウを手掛けるジェイエイフーズみやざきも、小松菜やゴボウなど品目を広げるなど商品提案を強化する。 冷凍野菜は、消費の簡便化志向を受けて需要の伸びしろが見込める分野だ。「国産ニーズは根強いものがある」(九州の産地)として、シェア拡大のために安定供給できる生産基盤のてこ入れが求められる。 2019年08月17日
終戦の日 記憶つなぎ歴史に学ぶ 今日は74回目の「終戦の日」。戦争体験者の話を聞けるのは、いつまでだろう。終戦時に10歳だと今年で84歳。近い将来、肉声を聞くことはできなくなる。次の世代が戦争の真実を語り継ぐことでしか、歴史はつないでいけない。歴史に学ばない者は同じ過ちを繰り返す。 日本農業新聞は、くらし面で「記憶のかけら」を連載している。戦争体験者が年々減り、当時の記憶を伝える品々も失われていく中、「物」に込められた人々の思いをたどり、戦争の記憶を伝えようと試みた。だが、事例探しは困難を極めた。生存する体験者が想像以上に少なく、たどり着けても高齢のため「話をするのが難しい」と家族から断られた例もあった。 そのような状況で、記憶をつなぎ伝える役割を果たすのが、手紙や写真、身に着けていたものなど体験者にまつわる「物」だ。想像するしかないこともあるが、それでも当人の「記憶のかけら」は得られる。 今年8月、核兵器に関する注目すべき二つの動きがあった。一つは、ボリビアの核兵器禁止条約批准。8月6日、国連での手続きを終えた。この日にした理由を、同国の国連大使は「1945年の今日、広島に原爆が落とされた。あの日に亡くなった全ての人を忘れず、敬意を表したい」と語った。条約発効には50の国・地域の批准が必要で、同国は25番目となった。 日本はどうか。世界で唯一の被爆国なのに、同条約に批准しておらず、核廃絶の流れに逆行している。9日に長崎市で行われた平和祈念式典で、安倍晋三首相は「核兵器保有国と非保有国の橋渡しに努める」と述べたが、被爆者が切望する条約には一言も触れなかった。 もう一つは、米国とロシアの中距離核戦力(INF)全廃条約の破棄、失効だ。一触即発だった米ソ時代の軍拡抗争が再燃するのでは、と懸念する。 「戦争はいつの間にか忍び寄り、気付くと渦中にいる」と語る体験者は多い。そして、その状況を受け入れてしまう要因の一つには人々の意識がある。 連載に登場した長尾多津子さん(88)は「何をするにもお国のため、兵隊さんのためと教え込まれた」とし、それを苦とも思わなかった自分を「洗脳されたようだった」と振り返る。石見幸子さん(84)は「戦争の火種となったのは、偏見や差別ではないかと今は思う」と話す。 違う意見をたたき、排除する風潮は差別を生み、声を上げないことは容認につながる。「疑問に思わない」意識はどう出来上がり、穏やかな日常が戦争でどう奪われていったか。過程をたどり、その様を脳裏に刻むことが必要だ。 戦争で亡くなった人たちは、忘れ去られることで二度死ぬ。毎年忘れずに戦争の歴史を伝え続けることが戦争の火種を消し、亡くなった人の記憶を生かす。身近にある「戦争の記憶」を探すことから始めたい。 2019年08月15日
農業関連の皇室行事に注目したい 農業関連の皇室行事に注目したい。新天皇陛下にも引き継がれたお田植え、さらには29年ぶりの「大嘗祭(だいじょうさい)」もある▼皇居での稲作は昭和天皇の時代に始まった。現在の種もみまきから田植え、陛下一家総出の刈り取り、餅つきは平成に入ってから。昭和、平成、そして令和へ。稲作を通じて何とか農家の苦労を知ろうとした昭和天皇の思いが、今も脈々と受け継がれる▼元々、稲作は日本の風土と生活に深く根付いてきた。日本を象徴する花である桜の〈さ〉は稲の神様を表す。さつきとも読む「五月」は田植えの時期である。国技の相撲は奉納相撲で出来秋と結び付く。伝統芸能・歌舞伎は田楽踊りから出た。さ(稲)の神が帰れば〈さかえる〉から〈栄える〉、祝えば〈さいわい〉から〈幸い〉などに転じた。『イネという不思議な植物』(稲垣栄洋著)に学ぶ▼11月14、15の両日に皇室の重要行事である「大嘗祭」。新天皇が皇室の祖とされる天照(あまてらす)大神(おおみかみ)などにその年に収穫した米や酒などを供え、国と国民の安寧、五穀豊穣(ほうじょう)を祈る。天武天皇の時代から1350年近く続いてきたとされる。その意味で、稲作は日本文化と伝統を紡いできた“源流”と言えよう▼米需給に懸念が募る。改めて水田の大切さを考える。そんな機会にしたい。 2019年08月21日
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19年上半期 鶏卵輸出が拡大 温泉卵需要けん引 国産殻付き鶏卵の輸出が好調だ。農水省によると、今年1~6月の輸出額が約10億円で、平成(1989年)以降で最も多かった前年の同期を6割上回った。主力の香港などで、スーパー向けの生卵に加え、半熟加工した温泉卵の需要が外食店などで拡大。安全性が高く、賞味期間が長いことなどが、海外の消費者に支持されている。 農水省によると、殻付き鶏卵の1~6月の輸出額は前年同期比56%増の9億8000万円(3862トン)だった。伸び率は前年同期(47%増)より9ポイント拡大した。 国・地域別では、香港が9億円と最高。「生に近い状態で食べられる衛生面が評価され、現地スーパーで鶏卵売り場が広がっている」と業界関係者は話す。半熟加工した温泉卵も、丼メニューを提供する外食店中心に需要を伸ばした。生卵より賞味期間が4倍以上長く、船便輸送が可能で、コストを抑えられるという。 18年の1年間(15億円)は輸出の99%を香港に頼っていたが、今年は新興市場へ輸出が広がった。18年1月に台湾向けが再開、同10月には米国向けが解禁となった。シンガポールを含む3カ国・地域への輸出額は計5000万円。全体量からすれば少ないが、シェアは5%と増えた。 一方で国内生産量は潤沢だ。同省の鶏卵流通統計調査によると18年は263万トンと2年連続で過去最多を更新。今年も前年を上回るペースで増えており、鶏卵価格は異例の安値を付けている。供給先の拡大が求められる中で、産地の輸出機運が高まっている。 2019年08月20日
閉鎖のJA支店 にぎわいの場として住民が“再生” 統廃合や経営合理化のために閉鎖し使われなくなったJAの支店が、地域活性化を目指す農家や住民たちによってにぎわいの場になった。和歌山県ではカフェに、福井県では住民の集いの場として活用。元JAの支店とあって住民の認知度も高く、人気スポットになっている。 カフェ開店 特産発信 和歌山県海南市 和歌山県海南市にあるJAながみねの支店跡が、地域の農家らの手によってカフェに生まれ変わった。支店時代に使われていたタイル張りの床などをそのまま生かし、支店の雰囲気を残したデザインにしている。運営する農家らが、季節ごとにミカンやビワなど地場産果実を使ったジュースやパフェを提供。地元の農産物の情報発信や、地域内外の人が集まる交流の拠点を目指す。 金融窓口のカウンターにタイル張りの床──。店内はJA支店の面影が残る。入り口には「ながみね農業協同組合大崎支店」と書かれたままだ。店舗名は「カモゴウ」。地元の農家らでつくる加茂川協議会が運営する。店の立ち上げや店内のデザインを考案したのが、協議会会長の大谷幸司さん(41)だ。大谷さんは同市出身で、2007年にUターン。県内の農産物を使ったドライフルーツの加工・販売をする他、ミカン農家と収穫を手伝う季節労働者のマッチングに取り組んでいる。 「地域に飲食店が少ないため、人が集まれる場所をつくりたかった」と大谷さん。行政やJAに相談したところ、JAから10年以上も未利用となっていた大崎支店跡を紹介してもらい、借りてカフェにした。改装費用は約1000万円。1年ほどかけて改装した。 店では旬の地元の農産物を使ったメニューが人気だ。ビワを盛り付けたパフェの他、ハッサクやミカンなどを店で搾ったジュースを1杯500円(税別)で提供。地元の豆腐店の豆乳を使ったドーナツや、和歌山市のコーヒー店から仕入れた豆を使ったコーヒーなども提供し、地場産を中心に県内産の食材にこだわる。 3月に開店。40席あり、土・日曜日は約100人が来店する。店では、地元の農産物や、大谷さんが製造したドライフルーツなどの加工品も販売している。大谷さんは「地元の食材や景色など、地域の魅力を感じてもらえる場所にしたい」と意気込む。 気軽に集う 交流拠点 福井県あわら市 福井県あわら市のJR細呂木駅前にある「細呂木ふれあいセンター・らくーざ」は、地域住民が集まる憩いの場だ。2014年に営業が終了したJA花咲ふくいの旧細呂木支店を改修・整備し、16年7月にオープン。1日平均20人が訪れ、にぎわいをもたらしている。 地元のNPO法人細呂木地区創成会が運営を担う。営業は月~金曜日の午前10時~午後4時。地元女性29人がボランティアで接客する。施設利用代は200円。食べ物の持ち込みは自由で、コーヒー、紅茶、ジュースを提供している。飲食スペースの横では、地元の農産物も販売する。 2階にある36畳の和室は会議室として3時間1000円で貸し出す。落語会や音楽会の他、住民の絵や工作物を展示。特に毎年10月ごろ行われる、地元の山に落ちている小枝や木の実を使って人形や動物、城を模した作品を展示する「小枝アート」は評判が良く、多くの客が訪れる。 JAは支店業務の終了後、建物を取り壊す予定だったが、細呂木地区創成会から賃貸依頼を受け、老朽化が進んでいたことや同会による大幅な改修工事が予定されていたことから、建物を無償譲渡することにした。 改修費用は、既存施設を活用して交流拠点を整備する県の「福井ふるさと茶屋整備支援事業」を活用。同地区創成会の藤川龍七会長は「駅前で立地も良く、元JAということもあって住民の認知度も高い」と話す。 JAは「支店として愛され続けた建物が再度命を吹き込まれ、地区の活性化や情報発信の場となっていることは素晴らしいこと。今後も笑顔が集まる場所として使われ続けてほしい」(企画管理課)と期待する。 2019年08月20日
25年度生産努力目標 達成は米、鶏肉、鶏卵 小麦、大豆の減少顕著 農水省は、食料自給率目標達成に向けて設定した主要15品目の生産努力目標(2025年度)の18年度達成状況をまとめた。米と鶏肉、鶏卵の3品目は既に目標を達成した。小麦や大豆で生産量の落ち込みが目立ち、野菜や複数の畜産物は横ばいが続き、上向いていない。各品目の増産に向けて、生産基盤をどう拡充していくかが問われている。 政府は食料・農業・農村基本計画で、25年度のカロリーベース自給率目標を45%に設定。主要品目ごとに生産努力目標を設けた。だが自給率に上昇の兆しは見えてこず、18年度は37%と前年度から1ポイント減り、過去最低に落ち込んだ。 前年度と比べて減産が目立ったのが、小麦と大豆だ。小麦の生産量は77万トンで前年度から15%減、大豆も21万トンで同16%減となった。 目標と比べると、小麦は81%、大豆は66%にとどまる。最近5年間で、小麦は15年度に100万トンに達し、目標の95万トンを超えたが、その後は目標を下回り続けている。大豆は目標が32万トンだが、30万トンを超えたことは一度もない。生産量が上向かない中、18年度は、両品目の主産地、北海道が低温や日照不足に見舞われ、減少に拍車が掛かった。 天候不順は飼料作物の生産にも影響を与えた。飼料自給率は25%と3年連続で下がり、目標の40%との差は広がり続けている。 野菜の生産量は1131万トンで、4年連続の減少となった。他品目と同様に高齢化が進行。防除などの手間がかかる中、縮小傾向が続き、目標の81%にとどまっている。 生乳は728万トンと、1985年度以降で最少に落ち込んだ。北海道の生産が持ち直す一方、都府県の離農が加速している。 牛肉は48万トンで前年より1万トン増えたが、目標とは4万トンの開きがある。需要が伸びる中、「国産の増加を上回るペースで輸入が増えている」(同省大臣官房)だけに、外国産とのすみ分けを改めて検討し、国産牛肉の需要をどう確保するかが課題となっている。 18年度時点で目標を達成した3品目のうち、米は775万トンと前年度並みで推移。目標を3%上回った。鶏肉は160万トン、鶏卵は263万トンで、ともに増産が続き目標を9%以上上回った。 2019年08月19日
和牛精液取り違い 罰則強化へ法改正を 再発防止訴え 畜産現場 宮城県の獣医師が交配した牛の中から父牛とDNAが異なる和牛が見つかった問題で、畜産農家から家畜改良増殖法の罰則規定を強化するよう法改正を求める声が上がっている。現行の法律では、県が立ち入り検査や指導はできるが、人工授精師の資格剥奪など処分規定がないためだ。畜産業界の信頼が失墜しかねない事態だけに、再発防止へ厳しいルール作りを求めている。…… 2019年08月19日
11カ月ぶり 前年上回る 7月生乳受託乳量 中央酪農会議がまとめた7月の指定団体の生乳受託乳量(生産量)は、前年同月より0・2%増の59万211トンとなった。前年を上回るのは、昨年8月以来、11カ月ぶり。北海道が増産傾向にあることに加え、都府県も猛暑の影響で生産量が落ち込んだ前年より減少率を縮小した。…… 2019年08月19日
リンゴ有袋20%切る 労働力減り無袋に需要 周年出荷影響も 青森 青森県の2018年のリンゴの有袋栽培率が19%になり、1990年の統計開始以降初めて20%を割り込んだ。少子高齢化による労働力不足、無袋栽培の需要増で、有袋栽培が敬遠されているためだ。有袋栽培が減るとリンゴの周年販売ができなくなる恐れがあり、県りんご協会やJAなどは有袋栽培の維持に力を入れている。 有袋栽培はリンゴの果実を病害虫から守り、果実の表面がさび状になる障害を軽減するために、摘果後に1個ずつ袋をかぶせる。貯蔵性も高く、果皮も薄いことから皮ごと食べやすいという特徴もある。4月以降に出回るリンゴのほとんどが有袋栽培のものだ。また、近年輸出が好調な同県のリンゴの中でもベトナム向けは有袋栽培が条件となっている。 一方、無袋栽培に比べて袋代や人件費、袋掛けなどのコストがかかる。また、近年では無袋栽培の食味の良さが評価されている。農家手取りで比べると、無袋は有袋と比べて20キロ当たり1400~1500円安い。しかし、無袋の方が収量が1、2割多く、加工用の需要も高まっていることから、無袋栽培に切り替える農家が多いという。 平川市のリンゴ農家、七戸茂春さん(70)は今年から有袋栽培をやめた。七戸さんによると、小売店など出荷先から無袋栽培の需要が高まっていることに加え、袋掛けができる人材が不足しているという。 七戸さんは「昔はシルバー人材センターから袋掛け作業ができる人が十分に来たが、センターの時給も上がり、人材不足も相まって最後まで作業を貫徹できなくなった。一度無袋に変えると袋の掛け方も分からなくなり、有袋に戻せない」と話す。 JA津軽みらいは「選果場の従業員も高齢化し、処理能力が落ちている。無袋が増えたら選果が間に合わない」と危機感を募らせる。JAは除袋が楽な「一発袋」と呼ばれる袋の普及を進め、労力削減をアピールする。 県りんご協会は農家への巡回講座で有袋栽培の利便性を強調。「有袋栽培は袋の数から収穫量が把握でき、価格も安定しているので収益が安定する。日焼けをしなければほとんどを上級品で出せる」という話を農家にしている。同協会は「農家には周年供給の柱として有袋栽培をお願いしている。有袋栽培率2割は維持したい」と思いを語る。 2019年08月18日
GAPや加工で日仏農高生 活動プラン始動 日本、フランス両政府は、農業の担い手育成につながる教育手法の共有、発展を目的としたアクションプランをスタートさせる。農業生産工程管理(GAP)や農産物加工など、五つのテーマを設定した上で、長期的な活動計画を策定。農業高校の生徒同士の交流も深め、国際感覚を備えた人材を育成する。農業教育の分野で、日本政府が他国とアクションプランを作るのは初。…… 2019年08月18日
19年上半期 冷凍野菜輸入 最多ペース 53万トン 業務、家庭向けで定着 2019年上半期(1~6月)の冷凍野菜の輸入量が52万6178トンとなり、過去最多だった前年の同時期を3%上回ったことが財務省の貿易統計で分かった。国産の生鮮原料野菜は、品薄高だった前年より価格が下がったものの、安定供給に強みのある輸入の冷凍品の増加が続いている。業界関係者は「業務向け、家庭向けともに輸入品の需要が定着している」とみる。国内産地にとって冷凍加工向けの原料供給を強めることが急務で、生産基盤の強化に向けた政策支援も重要になる。 19年上半期の冷凍野菜(調製品を含む)の輸入量は、前年同期を1590トン上回った。品目別で増加が目立ったのはジャガイモ(調製品含む)で前年比6%増の19万4934トン。加工されたフライドポテトが中心となる。産地関係者は「16年の国産ジャガイモの不作を契機に輸入量が増え、冷凍品の需要は現状も奪われたままだ」と指摘する。 ブロッコリーは5%増の2万9056トンで、上半期では2000年以降で最多だった。ホウレンソウは2万3799トンで、前年同期比では6%下回ったものの高水準にある。国別では、全体の4割を占める中国産が22万7615トンで前年比3%増、3割を占める米国産が16万5764トンで7%増と、共に増えた。 輸入品は従来、業務向けの販売が主軸だったが、近年は家庭向けとして扱うスーパーでの販売が増えている。首都圏に展開するスーパーのいなげやでは、冷凍野菜の中でも人気が高いブロッコリー、エダマメの今年上半期の売上高が、共に前年比7%増。いずれもメーカー品やプライベートブランドの商品で、原料は輸入だという。同社は「生鮮品の相場が安くても、調理の簡便性を求めるニーズが高く、人気が定着している」とみる。 国産強化も 追い付かず 一方、国産原料野菜を含む国内冷凍農産物の生産量は、減少傾向にある。日本冷凍食品協会の調べによると、18年は前年比9%減の7万1288トンだった。 輸入品が攻勢を強める中で、国産原料の供給力が焦点となる。ジャガイモやタマネギなど複数品目で冷凍野菜を展開するホクレンでは、販売量が「毎年増加している」という。ニーズの高まりを受けて、今春から家庭向け商品の包装を刷新するなど、訴求力を高める。「冷凍野菜の売り場はスーパーやドラッグストアなど多岐にわたる。家庭向け商品のシェアを伸ばしたい」と鼻息が荒い。 JA宮崎経済連の関連会社で冷凍ホウレンソウを手掛けるジェイエイフーズみやざきも、小松菜やゴボウなど品目を広げるなど商品提案を強化する。 冷凍野菜は、消費の簡便化志向を受けて需要の伸びしろが見込める分野だ。「国産ニーズは根強いものがある」(九州の産地)として、シェア拡大のために安定供給できる生産基盤のてこ入れが求められる。 2019年08月17日
[活写] 35分の1に 迫力ぎゅっ 大手模型メーカー、ハセガワが農機のプラモデルに力を入れている。22日に第2弾となる6条刈りコンバインを売り出す。 機種はヤンマーの「YH6115」。実物を取材して35分の1サイズで再現した。105個の部品を組むと全長14センチ、幅7センチになる。もみを排出するオーガーなどは実物同様に動く。農家のフィギュアも付けた。 昨年12月に初の本格的な農機のプラモデルとして、高いデザイン性で知られるヤンマーのトラクター「YT5113A」を発売し、模型ファンの心をつかんだ。 同社企画開発部の枡本泰人さん(58)は「スーパーカーのようなトラクターの見た目に驚いて、企画会議で提案した。コンバインも格好いい。次は田植え機に挑戦したい」と意欲を見せる。3000円(税別)。(富永健太郎) 2019年08月17日
輸出増へ交流サイト 生産者・商社 連携促す 農水省 農水省は、農林水産物の輸出拡大を支援する「グローバル・ファーマーズ・プロジェクト」(GFP)の会員となっている生産者や食品業者、輸出商社などが交流できるインターネットサイトを開設した。生産者側は、輸出したい品目などを提示することができる。そうした情報を閲覧した商社が連携を持ち掛け、取引の成約にも結び付いている。…… 2019年08月17日