力の差を見せつけられた。初の4強に進んだ中京学院大中京は二塁を踏めずに完封負け。7回まで投げた奥川には2安打、10三振と手も足も出なかった。
主将、4番の重責を担ったプロ注目の藤田健斗捕手(3年)は大粒の涙を流しながら、奥川に脱帽した。「球の切れが思った以上で、全ての球種がコーナーに決まった。失投もなかった。これまで対戦した中で最高の投手だった」
せめてもの意地を見せたのは7回。2死からの打席で、初球の高めに来た速球を右前へはじき返した。「意地は見せられたが、チームが勝てなかったので悔しい。後輩には、この悔しさを晴らしてほしい」。涙は止まらず、雪辱を後輩たちに託した。自身の進路については「プロ一本でいきたい」と語り、次の舞台へと目標は移っていく。
バトンを引き継ぐのは下級生たちだ。準々決勝の作新学院(栃木)戦で逆転満塁本塁打を放った元(げん)謙太内野手(2年)は「3年生には助けられてばかり。あと1試合やりたかった」と涙。来年も甲子園出場を果たすため、土は拾わなかった。
3回戦の東海大相模(神奈川)戦で決勝打を放った小田康一郎内野手(1年)は「先輩の記録を越えることが恩返しになる」と甲子園の決勝進出を目標に掲げた。来春からは19年ぶりに校名が「中京高」へ戻る見込み。活躍も、悔しさも経験した選手を中心に、新たな歴史を刻む。(堤誠人)