「コスパ」とは「コストパフォーマンス」の略で費用対効果を意味します。コンピューターの世界ではよく聞く指標ですが最近では「食べ物」のように性能や満足感を数値化できないものにまで広義に用いられています。
(ところで皆様は、仮に自ら「コスパ最強」ののぼりを立てている飲食店が世の中のどこかに存在するとして、それは何屋さんだと思いますか。やはり牛丼屋が浮かびますか?)
パソコンやスマホのコスパで言えばCPUやGPUのような半導体プロセッサの[性能]やHDDやSSDのような記憶媒体の[容量]を[価格]で割ったもので明確に数値化されます。
●CPU・GPU等のコスパ=[ベンチマークのスコア]/[価格]
●HDD・SSD等のコスパ=[記憶媒体の容量]/[価格]
一般向けIntel社製CPUでは上位から順に「Core i7」「Core i5」「Core i3」「Pentium」「Celeron」とラインナップされ、この中で実際にコスパに優れるのは上位の「Core シリーズ」ではなく下位の「Pentium」や「Celeron」です。
さてここで賃貸管理ソフトの「コスパ」について考察してみます。
弊社ではWEBサイトや賃貸住宅フェアのブースで『賃貸名人』に対してこの「コスパ」という表現を用いておりますがあれはセールスキャッチコピーです。以下はその意味をもう少し考えてみる遊びだと思っていただければ幸いです。

まず分母である[価格]については賃貸管理ソフト各社の商品価格として明確な数字があります。問題は分子の[パフォーマンス]が何を示すかにあります。
これは大体次の2つ(+1)に落ち着きそうです。 ●導入することによって既存の業務時間を短縮できる効果。
(ソフトに習熟するために要する時間の少なさ=簡単さもここに含める)
●導入することによってこれまで実現できなかった新しい価値を自社にもたらす効果。
(業務分析、オンライン送金明細等)
○快適さ。
[パフォーマンス]として言いたいことは何となく決まりますが、業界にベンチマーク基準が無いので数値化が難しいという最初から見えていた結論にはや落ち着きそうです。もっとも機能が多岐にわたるソフトウェアに対してベンチマークを作るという試み自体が他業界においてもあまり存在しません。例えば『Word』と『一太郎』でどちらのコスパが良いかなんていう問いは聞いたことがありません。
数字と言えば、大抵は賃貸管理ソフトメーカー各社が何となく「数字らしきもの」を出している程度です。出力可能帳票○○種類、HOME'Sコンバート率○○%等々。これらは数ある機能の一部かつ基準がザックリしすぎているので[パフォーマンス]の数値に用いることは困難です。
そして「快適さ」は人によってよるウェイトが全然異なります。次の東京~新大阪間の陸路移動手段(キャンペーン価格を除く)の例えを用いてまとめてしまいます。下の表には「快適さ」は含めませんので脳内で補完してください。 | 価格(レギュラーシーズン) | 目的地までの所要時間 |
のぞみ(自由席) | 13,620円 | 約2時間30分 |
のぞみ(指定席) | 14,450円 | 〃 |
のぞみ(グリーン) | 19,230円 | 〃 |
格安深夜高速バス | 約4,000~5,000円 | 約8~9時間 |
高級深夜高速バス | 約10,000円前後 | 〃 |
近くにギャン泣きベビーがいる可能性が最も低く、広めのシートでゆったり過ごせる「グリーン」を“コスパNo.1”と評する人もいるでしょうが、ここは私のフィーリングでコスパに優れるサービスとして次の2つを選んでみます。 ●のぞみ(指定席):自由席と大差ない価格で確実な席を確保できる。ノイズキャンセリングイヤホンでギャン泣きベビー対策もばっちり。
or
●格安深夜高速バス:どうせ寝ている深夜なので移動時間を気にしないならば圧倒的に安い。
※もっとも高速バスは高級タイプでも到底快適とは言えない旅でしたから仕事で用いることはないと思います。
「コスパ」という言葉は「まあまあの価格で少しの我慢をすれば最高性能とあまり差が無い」(のぞみ指定席系)と、はっきり「安かろう悪かろう」(格安深夜高速バス系)のどちらかとしてサービス・商品を印象付けます。
ここで賃貸管理ソフトに話題を戻します。「コスパ」はキャッチコピーですからはもちろん前者として受け取ってもらうことを期待しています。しかし同時に「コスパ」は「最高に快適ではない」(グリーンではない)ことを自ら認めていると受け取られるリスクがある言葉でもあります。
『賃貸名人+』リリース後の次の目標として「コスパ」以外の標語も掲げられることを目指して頑張ります。 Posted By Tanaka(tanaka@dangonet.co.jp) 更新日時 : 2019年08月15日 | この記事へのリンク :