東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

ドラッグストア 再編第二幕の号砲

 ドラッグストア(DS)業界五位のマツモトキヨシホールディングス(千葉県松戸市)と七位のココカラファイン(横浜市)が、統合協議を始めた。DS業界にも再編の波が押し寄せてきた。

 ココカラに対しては、業界六位のスギホールディングス(愛知県大府市)も統合を提案していた。ココカラはマツキヨ、スギからの「求婚」を受け、六月に外部有識者らによる特別委員会を設立。同委の検討も踏まえ、自主企画商品などで「大きな相乗効果が生じる」と、マツキヨに軍配が上がった。統合が実現すれば売上高約一兆円、店舗数三千超で業界トップのガリバーが誕生する。

 ココカラを巡る争奪戦にまで発展した今回の統合劇。急成長を続けてきたDS業界に、逆風が吹き始めていることが背景にある。

 DSは医薬品で利益を上げ、日用品や食品で安売りを仕掛ける手法でスーパー、コンビニエンスストアから客を奪ってきた。日本チェーンドラッグストア協会によると、二〇一八年度の売上高は推計で前年度比6%増の約七兆二千七百億円。売上高が0・8%減の約五兆九千億円だった百貨店との差を広げ、約十一兆円規模のコンビニを猛追する勢いだ。〇〇年度に約一万一千だった店舗数も、一八年度は二万超とほぼ倍増した。

 一方、出店過多で他業態との競争は激化。一店舗当たりの売上高伸び率は、鈍化傾向にある。人手不足で高騰する薬剤師らの人件費は、利益を圧迫する。規制緩和により、ネット通販で多くの大衆薬(一般用医薬品)が販売されるようになっており、DSの優位性は失われつつある。再編による効率化が不可避の情勢なのだ。

 DS業界では近年、首位のツルハホールディングス(札幌市)などが中小を子会社化する形で合従連衡が進んできた。〇四年度に六百七十一だったDSの企業数は、一八年度は四百九にまで減少。今後は大手同士による「再編第二幕」が進むとみられる。

 流通アナリストの渡辺広明氏は「食品などの安売り合戦は限界がある。地域住民が安心できる医療分野の対面販売が、DSの生き残り策となる」と強調。「DSもコンビニと同様、大手は実質的に三社程度に集約される」と予想する。高齢化が進む中、DSの役割もより多様になっていく。企業の論理で規模拡大を進めるだけではなく、地域医療の担い手として消費者に信頼されるサービス向上につなげていくべきだ。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】