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(麻子)それで 今日はイッキュウさんを誘いに来たの。
(坂場)えっ?(なつ)誘いに?
イッキュウさんまた アニメーションを作る気はない?
あります!また 作りたいと思ってます。
(麻子)そうなの?
はい… それは どういうことでしょうか?
実は 会社を興したのよ。会社を?
そう。 アニメーションを製作する会社。
といっても まだ小さな会社なんだけど…。
それに 下山さんも参加してくれることになったから。今 うちで動き出してるテレビ漫画の企画に乗ってくれてね。それに イッキュウさんにも参加してもらいたいと思ってるの。
もちろん 演出家として。イッキュウさんが来てくれたら心強いわ。ただし あの漫画映画のように凝ったことはできないわよ。あくまで テレビ漫画が中心なんだから。
あまり画を動かさないことが今は かっこいいの。
それでもよかったら一緒にやらない? また。
どうして黙ってるの?よかったじゃない!
マコさんと また一緒にアニメーションが作れるなんて…こんないい話ないでしょ!君は どうなるんだ。
えっ?
僕が 働きに出てしまったら君は どうやって働くんだ?
そんなことは後から 一緒に考えればいいでしょ。
いや 生まれてから考えたってもう遅いんだよ。
そうだけど…。のんきに喜んでる場合じゃないだろ。
それでも…。
なっちゃんは 今の会社辞めるわけにはいかないんでしょ?
はい…。
それは… いきません。
本当は あなたのことも誘いたかったのよ。
マコさん。
誰よりも 真っ先に誘いたかった。
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
私はね とうとう子どもはできなかったわ。
それで 旦那と相談して自由に 好きなことをしようって決めたの。
別れちゃったんですか?
くっついてるわよ 円満に。あ… すいません。
ありがとう。
それで 会社の名前はマコプロダクションにしたの。
マコプロダクション?
名前は旧姓のままです。 よろしく。
へえ~ マコプロか…。
いいですね ハハハ…。
そこはね 女性のアニメーターが母親になっても 安心して働ける場所にしたいと思ってるの。
母親が…?
だから いつか… そういう時が来たらいつでも来てちょうだいよ。
まあ まだ会社があればの話だけど。
うれしいです。
イッキュウさんも 現実的なことも考えてできると思ったら来てちょうだい。
ありがとうございます。本当に光栄です。
変わったわね イッキュウさん。
えっ?そうですか?
だって 物分かりがいいんだもの。ハッ… 何ですか それは。
だけど イッキュウさんらしさを失ってほしくもないけど… 私としては。
予算と締め切りを守らなくてもいいってことですか?
そういうことじゃないでしょ!冗談です。
もう…。
それで どうするの?ん?
マコさんの仕事…やってみたいと思わないの?
その話は今 考えなくてもいいじゃないか。
どうして? やりたいなら私のために諦めてほしくないな。
君のためじゃないだろ。僕たちの子どものためだ。
そう言ってくれるのはすごく ありがたいんだけどそれで あなたがどんどん変わってしまうのは私は嫌だな。
なら どうしろと言うんだ?
昔みたいに自分のことだけ考えろとでも言うのか?
一緒に考えるって言ったでしょ。
一緒に考えようって…2人にとって 一番いい方法を。
とにかく 今は… 今もらってる仕事をちゃんと やらなくちゃならない。
君は ちゃんと産まなくちゃならない。
それが 一番大事なことだ。
うん…。
うん。
♪~
(茜)赤ちゃんを預けるの?
うん… それしかないと思って。
イッキュウさんは働きに行きたいんだもん 本当は。
それを我慢してるのが分かるの。
なっちゃんは 本当に それでいいの?困らないの?
やっぱり子どもを預けるのは大変なんですか?
うん… もう大変よ。
0歳児を預けられる所を見つけるなんて奇跡に近いかもね。
せめて 1歳ぐらいにはならないと預かってくれる所は 本当に少ないと思う。
1年か…。
♪~
でも イッキュウさんにもやっぱり 夢を諦めてほしくないんです。
(茜)イッキュウさんは ただ諦めてるだけじゃないと思うわよ。
えっ?
実は イッキュウさんなっちゃんが 昼間働いてる間ここに 何度も来てるのよ。
ここに?うん。
子育てのことを教えてくれって。茜さんに?
明子のオムツを取り替えてくれたりミルクの作り方を覚えたりあっ それにオムツの縫い方まで覚えたのよ。
あの人が そんなことまで…。
恥ずかしいから なっちゃんにはないしょにしてくれって言われてたけど。
楽しそうに見えたな。
待ちわびてるのよ子どもが生まれてくることを。
♪~
イッキュウさん!(下山)おい!
アッハハハ… よく来てくれたわね。
下山さんは もうここに移ったんですか?
いや まだだよ。でも 東洋動画には話してあるんだ。
別に 引き止められやしなかったから円満退社だ。
そうですか。うん。 なんとかしてここを日本のアニメーションの新天地にしてやるよ。
新天地か。
散らかってて驚いたでしょ?
まだ作画作業には入ってないんだけど下山さんと企画の打ち合わせをしていたところよ。
これ。
ここで少数精鋭でやっていこうと思ってる。
動画と仕上げは 更に下請けに外注したりもしなきゃいけないけどだからこそ好きなものが作れると思ってる。
うん。 イッキュウさんも是非 ここで一緒にやろうよ。
そうですね… 面白そうですね。
(笑い声)
(戸が開く音)・ただいま。
あっ お帰り。
あ… 遅くなって ごめんね。
お疲れさま。
あ… もしかして オムツ縫ってるの?
うん… ちょっとずつね。
本で 縫い方 覚えたから。
ちょっと待って。 ここまでやったらすぐ ごはんの用意するから。
私も手伝う!
よいしょ… 縫い方 教えてよ。
いいよ 疲れてるのに。大丈夫。
♪~
ああ… ふ~ん なるほど。
それを こう縫えばいいのか…。
実は 今日… 行ってきたんだ。
どこに?
マコさんの会社だ。
それで 君に相談せず悪いと思ったけど…決めてきた。
マコさんのところで働くことに?
うん…。あ… そうなんだ。
ただし 1年は待ってもらうことにした。
1年?
子どもが生まれてから1年ぐらいたてば預けられる保育園も見つかるかもしれない。
生まれたばかりの赤ん坊を預けるのはやはり難しいと思うんだ。
それまでは 僕が家にいることにするよ。
だけど 僕にもまだ 君が言うようにアニメーションに挑戦したいという気持ちはあるんだ。
だから それまで待ってもらうことにした。
そこまで考えてくれてたんだね。
調べてくれたんだね。
ありがとう。
それじゃ… いいのか?
それは こっちのセリフだよ…。
ごめんね… イッキュウさんにいろいろ 気を遣わせたよね。
ごめんね。
何を言ってるんだ。
全部 それも覚悟して結婚したんじゃないか。
うん… そうだね。
よかった。
なつよ イッキュウさんがうれしそうで よかったな。