〔PHOTO〕西﨑進也

文在寅という「災厄」…元駐韓大使が明かす、その絶望的な無能ぶり

韓国が生き残る道は一つしかない

史上最悪とも言える緊張状態に陥った日韓関係。いったい韓国はどうなってしまったのか。果たして関係改善の糸口は残されているのか。元駐韓日本大使で日韓外交に40年携わってきた武藤正敏氏と、30年に及ぶ朝鮮半島関連取材を続けるジャーナリスト近藤大介氏が、文在寅政権について、4時間にわたって語り尽くしたーー。

金正恩と同じように見えてきた

近藤: まずは武藤大使に対する懺悔(ざんげ)から始めさせてください。

2年前、正確に言うと2017年5月に、文在寅政権が発足し、そのタイミングで武藤大使が、前作『韓国人に生まれなくてよかった』を上梓されました。その本は文在寅新大統領への批判に満ちていて、韓国のほぼすべての主要メディアが、センセーショナルに取り上げました。発足当初の文在寅政権の支持率は84%もあり、韓国からすれば「日本の元駐韓大使が何を言うか!」と猛反発したわけです。

武藤: そうですね、私もあの時は韓国に随分叩かれました。

近藤: 私は当時、武藤大使の前作を拝読し、7~8割は納得したけれども、2~3割は反発がありました。あの頃の韓国は、朴槿恵前大統領に反対する累計1600万人もが参加した「ろうそくデモ」や、その後の朴大統領の弾劾などで、大混乱に陥っていた。そんな中で、文在寅という絶妙のバランス感覚を兼ね備えた政治家が新大統領に就いた、と思ったものです。

大統領選挙期間中、3回にわたって候補者たちのテレビ討論会が行われ、私は3回ともインターネットの生中継で見ましたが、文在寅候補の存在感は際立っていました。内政から外交まで、あらゆる質問に淀みなく答え、しかも誰も傷つけず、常に笑顔を絶やさない。

5月10日の大統領就任演説も、やはりインターネットの生中継で見ましたが、韓国現代史に残る名演説だと感心したものです。「私は手ぶらで青瓦台(韓国大統領府)に入って、また5年後に手ぶらで出ていく」「国民統合と和解の大韓民国を作るのが私の使命だ」……。

いまになって振り返ると、自分の見通しの甘さを恥じるばかりです。今回、『韓国人に生まれなくてよかった』を再読しましたが、100%納得がいきました(笑)。加えて、2年以上前にここまで見通していた武藤大使の洞察力には脱帽です。

武藤: 私の知人のソウル大学名誉教授も、私が文在寅大統領に懸念するといったら、彼は現実主義者だから大丈夫だといっていました。今韓国では、「文在寅を誤解していたのか、それとも文在寅が変節したのか?」という議論があるそうです。もちろん前者に決まっていますが(笑)。

また就任演説については、後に『朝鮮日報』が社説で、「ウソの饗宴だった」と酷評しています。「国民統合」なんて言っておきながら、真っ先に始めたのは「積弊清算」という保守派への仁義なき粛清だったのですから。

 

近藤: 武藤大使は先週テレビで、「文在寅の最近の盗人猛々しい等々の発言を聞いて文在寅は金正恩に似てきた」と喝破されていましたね。たしかに文在寅が最近やっている政敵の粛清という意味では、相手を殺すか監獄に入れるかの違いですね。

武藤: いやいや、「抗議の自殺」を遂げた李載寿・元国軍機務司令官を始め、すでに大物が何人も自殺しています。投獄された元幹部は50人以上に上ります。

私の前作を引き合いに出すなら、文在寅政権はこの2年余りで、当時私が予測した以上のことをやってのけた。つまり私の想像以上にひどい大統領だったわけです(笑)。