企業主導型保育所に問題が多発している。待機児童対策の「切り札」といわれたが、施設数拡大を急ぐあまり、保育の「質」が置き去りになっている。とても安心して子どもたちを預けられない。
待機児童の解消をはじめ子育て支援の充実は安倍晋三政権の重要な政策だが、どうも対応のちぐはぐさが目立つ。
十月から始まる幼児教育・保育の無償化も首相が打ち出した。当初、認可外施設は対象外としたため批判が出た。いまだに一部施設は対象になっていない。
迅速な問題解決にはさまざまな対策があっていいが、首相の意向を重視するあまりの拙速な制度整備だとしたら改めるべきだ。
企業型保育事業は二〇一六年度から始まった。企業が主に従業員向けに整備したり、保育事業者が企業向けに設置する施設だ。地域の子どもたちも一定割合で利用できる。
運営基準は一定の保育の質を確保した認可施設より緩い認可外施設になるが、政府は認可施設並みの手厚い助成金で整備の促進を図っている。
今年三月現在で約三千八百施設、定員約八万六千人分の助成が決定、二〇年度末までに計十一万人分の整備を目標としている。
自治体が施設整備に関与できないため地域のニーズに合わないケースがあり、定員割れする施設が出ている。経営難に陥り開設から短期間での閉鎖や事業から撤退する動きも出始めた。
助成金を巡る不正も相次いでいる。約五億円をだまし取ったとして、開設手続きなどを請け負っていたコンサルタント会社社長らが詐欺罪で起訴された。
開設の審査は政府の責任だが、実際は公益財団法人が担っている。だが、人材不足で審査が追いつかないようだ。運営能力に疑問符が付くような事業者にも助成金が交付されていた可能性がある。審査が甘いと言わざるを得ない。
不適切な事業者の参入を許さぬよう早急な審査体制の見直しが必要だ。
事業を所管する内閣府は審査を担う実施機関を新たに公募する。事業の実施状況のチェック体制も強化する。本来なら事業開始当初から考えるべき対応だった。
保育所は子どもたちが日中の大半を過ごす場所だ。混乱のしわ寄せは利用する子どもたちに来ることを忘れてほしくない。
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