ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~   作:善太夫

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特別編 亡国の吸血娘(五さい)【後編】

※   ※   ※

 

 

 ありんすちゃんと悟は城内の探索を始めました。

 

「えと……埃いっぱいでありんちゅ」

 

「まぁ、何年間も使われていなかったわけですしね」

 

「……床にはちろい埃がちゅもって……なんでありんちゅ? ルプー?」

 

『ありんすちゃん、それはセリフじゃないっす。ト書きっすよ』

 

 ありんすちゃんにルプスレギナがあわてて伝えます。

 

「ありんちゅちゃはちっているでありんちゅよ。トガキは渋い柿でありんちゅ。でも、フデガキは甘いんでありんちゅ」

 

 ありんすちゃんは得意気に胸を張ります。

 

『……いや、柿じゃ……まあいいっす。……ありんすちゃんの次のセリフは『よろしければ掃除をさせてくださいますか?』っす』

 

 ありんすちゃんは悟に向き直りました。

 

「……えとえと……ありんちゅちゃセリフ、よろしく掃除でありんちゅか?……出来たでありんちゅ!」

 

 ありんすちゃんはうれしそうに手を叩きました。

 

「うん? よくわかりませんが……まあ良いですよ」

 

 悟は巻物を取り出すと下級の風精霊と水精霊を召喚して部屋を綺麗にしました。

 

『……ありんすちゃん、次のセリフっす。『それではどこから調べますか?』っすよ。あ、さっきみたいに『ありんちゅちゃセリフ──』って言っちゃダメっすよ』

 

「……えとえと……ちらべますか? って言っちゃダメっすよでありんちゅ」

 

 悟は一瞬だけ怪訝な表情になりますが、すぐに気を取り直して言いました。

 

「まずはこの羊皮紙の束から調べてみましょう。あのアンデッドの正体や目的がわかればゾンビになった人々を救う手段がわかるかもしれません」

 

 ありんすちゃんは変な臭いのする羊皮紙の巻物に手を伸ばしました。すると悟は止めようとします。

 

 ありんすちゃんは悟の手をぎゅっと両手で握り返しました。

 

「……アインジュちゃま」

 

『……ええ? 違うっす。そこは……マズイっす。ユリ姉、別にさぼってるんじゃないっすよ。これには理由があるっす……』

 

「ん? いや、罠について調べましたか? 魔法的な罠がある可能性が……」

 

 悟が上目使いで見つめてくるありんすちゃんに説明します。

 

「大丈夫でありんちゅ。〈ナパーム!〉……こりで罠無くなったでありんちゅ」

 

「──え?」

 

 悟は唖然としてしまいました。

 

『……お待たせっす。ユリ姉を誤魔化して戻ってきたっす。次のセリフは『申し訳ありません。悟さま。私にはこの文字を読むことができません……』っす』

 

「えとえと……ありんちゅちゃ読めないでありんちゅ」

 

「……うん。確かに燃えつきてしまいましたから誰にも読めませんよね」

 

 悟は気を取り直して回収したアイテムを床に並べていきます。

 

「では、このアイテムを見てもらえますか?」

 

 ありんすちゃんはアイテムを手にとりました。

 

『……えっと、“イルビア・ホルダンの仮面”、“建国王の長外套(ローブ・オブ・ファーストインベルン)”、“鷲獅子王の爪(ガントレット・オブ・グリフォンロード)”、“虹よりこぼれし白(ロスト・ホワイト)” っすね。ありんすちゃんは透明な短杖を拾い上げて『これです! これがあれば!』って叫ぶっす』

 

「わかったでありんちゅ」

 

 ありんすちゃんは床のアイテムを一つ拾い叫びました。

 

「こりで……ええと……こりでありんちゅ」

 

 悟はありんすちゃんが手にした皮袋を見ながら考え込みました。

 

(この中身はどうやら金貨みたいだが……この世界での蘇生魔法は金貨が必要という事だろうか? それとも『地獄の沙汰も金次第』という事なのだろうか?)

 

 悟が考え込んでいるとありんすちゃんがヒョイと床から銀のネックレスを拾い上げ、自分の首にかけました。

 

「こりはありんちゅちゃに似合うでありんちゅ」

 

(ん? ……なにかシンボルや文字らしきものが刻まれているが……魔法のアイテムではないしまあ良いだろう。しかしあのアンデッドは何故こんなものを身に付けていたのだろう?)

 

 

※   ※   ※

 

 ありんすちゃんと悟は城下でゾンビを一体掴むと〈転移門(ゲート)〉を使い都市の外に移動しました。そこでゾンビを殺しました。

 

「それではそのアイテムを使ってくれますか?」

 

 悟がありんすちゃんに振り返りましたが、ありんすちゃんはまごまごしています。

 

『ありんすちゃん、さっきの透明のワンドを使うっすよ』

 

 困っているありんすちゃんにルプスレギナが〈メッセージ〉ですかさずサポートします。

 

「えいっ」とありんすちゃんはワンドを使いました。

 

「……いや、私にでなくこのゾンビの死体に使うんですよ」

 

 ありんすちゃんが死体にワンドを使うと死体はゆっくりと起き上がりよたよと歩きだしました。

 

『ありんすちゃん、次のセリフっす。『──悟さま。私が研究して努力すれば、みんなを、みんなを元に戻せると思いますか?』っす』

 

 ありんすちゃんはじっと悟の目を見つめました。

 

「……えとえと……アインジュちゃま。研究ちたらみんな元気なりまちゅでありんちゅか?」

 

 どことなく棒読みなありんすちゃんの言葉に悟が答えました。

 

「可能性が絶対にゼロとは言えない。俺には分からないが、この現象を説明できる人物がこの世界のどかにいるかもしれない。そうすればどうにかできる手段がわかるかもしれない。ただし……かなり困難だろうな」

 

『ありんすちゃん、ここで泣くっす』

 

「どうちて泣くでありんちゅか? ありんちゅちゃはおっきなったから泣かないでありんちゅ」

 

『……あー……ここでお涙頂戴してアインズ様が〈星に願いを〉で『この都市の住人たちを元に戻す方法を教えたまえ!』って願うっすけど……飛ばして次にいくっす。じゃ、『共に世界を見に行く、私がついて行っても本当によろしいのでしょうか』って言ってくださいっす。そんで手を見ながら『お邪魔に──』って言うっす』

 

 ありんすちゃんは頷きました。

 

「えと……世界を見るいくありんちゅ」ありんすちゃんは手を見ながら続けました。「邪魔でありんちゅ」

 

「……乗りかかった船だ。もう少し協力するさ。アリンチュチャさん。共に、そう共に旅をしよう」

 

 かくして原作『亡国の吸血姫』とは微妙に異なりながらもありんすちゃんは鈴木悟と一緒に旅をする事になりました。

 

 旅の支度の為に馬車を調達しようとする際に悟が見せた『カボチャの馬車と写るドレス姿のぶくぶく茶釜』の写真を見たありんすちゃんが『どうちてもカボチャの馬車に乗るでありんちゅ』と駄々をこねたりという事がありましたが……仕方ありませんよね。だって、ありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なのですから。

 

 尚、この後ありんすちゃんは悟と一緒にインベリアを死の街に代えた元兇、元、■■の竜王で現、朽棺の竜王キュアイーリム=ロスマルヴァーと闘う事になりますが……機会があればまたいつかの話という事にします。


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