黒田博樹氏が考える、正しい投球フォーム
「長く投げる」ために大切なこととは?

子どもたちもいろんな知識を吸収してほしい

2007年にドジャースに入団。移籍後は、調整を日本式からMLB式に変えることで、環境の変化に順応した
2007年にドジャースに入団。移籍後は、調整を日本式からMLB式に変えることで、環境の変化に順応した【写真は共同】

――メジャーでは、キャンプから球数制限をしていると聞きましたが?


 キャンプから、球数はあまり投げ過ぎないように管理されています。キャンプインして1回目のブルペンは、だいたい30球くらい。それから中1日空けながら10球、20球と球数を増やします。開幕後に先発する日からすべて逆算して、キャンプ、オープン戦と球数含め、コーチが管理していくんですよ。ただ、僕はオープン戦まで少なめの球数で、いきなり公式戦で球数が増えては体に負担がかかると思っていたので、個人的に1月の自主トレ中に一度ピークを作って、100球以上投げるようにしていました。


 それはなぜかというと、メジャーの主流として100球で交代というメドがありますが、試合で100球といっても、試合前のブルペンでの投球練習で仮に30球投げていれば、それで130球。加えてイニングの間に投げる投球練習が7、8球と考えると、100球で交代してもトータルでは150、160球投げる計算になる。そう考えると、キャンプ中に100球をメドに状態を上げていっても、体はなかなかなじみません。例えばマラソンでも、42キロを走ったことのない人が、いきなりレースで42.195キロを走ってもペース配分が分からないし、体のピークの持っていき方も分からないのではないでしょうか。僕はそれが怖くて、投球日を作っていたわけです。あくまで僕の調整法でありますが。


――100球が目安になっている意味については、どうお考えですか?


 なぜ100球という数字なのかは、正直よく分かりません。ただメジャーのシーズンは長くて試合数も多いので、1年間怪我をせず中4日でローテーションを回ってほしい。そこで無理をさせない数が、100球ということなんでしょう。とはいえ、アメリカもすべて100球とは限らないんです。前後の登板日が中5日空いているとか、スケジュールによっては100球以上投げさせることもありますし、前回は早いイニングの降板で球数が少ないのであれば今回は110球まで、というように臨機応変であったように思います。


 日本でも100球、100球と言いますが、日本は中6日あるので、そこまで100球にこだわる必要はないと思います。当然無理をさせない前提ですが、それぞれのチームで置かれている立場、その投手のスタミナによっては投球数に幅があってもいいものだと思います。

16年に惜しまれつつ引退。現役生活で大きな故障をすることなく、最後の年も2ケタ勝利をマークしていた
16年に惜しまれつつ引退。現役生活で大きな故障をすることなく、最後の年も2ケタ勝利をマークしていた【写真は共同】

――今野球をしている子どもたちが故障をせず、長く野球ができるようになるためにはどうすればいいと思われますか?


 プロ野球という日本のトップリーグがあるなかで、そのトレーナーやコンディショニングコーチは、経験も知識も非常に豊富だと思うんです。僕も現役生活の中でたくさんのトレーナー、メディカルスタッフの方々に助けていただきました。もしかしたらすでにそういった取り組みが進んでいるのかもしれませんが、プロとアマの関係性として可能であるなら、彼らとアマチュア野球の団体が……例えば高校生なら都道府県の高野連が入って、学校単位ではなく指導者を集めて最新のトレーニングやケアについて、情報提供し、意見交換をする。当然球数制限も大事ではありますが、それと共に正しいケアの仕方をもっと下の世代に流していってあげることも必要なのではないでしょうか。


 ただ一生懸命投げる、強く投げる、速く投げることだけでなく、これから先、自分の体を守って「長く投げる」ためにはどんなことに気をつければいいか。指導者はもちろん、子どもたちの意識も変えていければいいですね。例えば「自分は股関節が硬い」と思ったら、硬いなりに動かしながら、硬さを強さに変えるとか。今はトレーニング方法も豊富に見つかりますから、自分なりに多方面にアンテナを張り、プラスになりそうだと思ったものにどんどんチャレンジしていけば、自分に最適なトレーニング方法もきっと見つかるのではないかと思います。


(企画構成:株式会社スリーライト)

黒田博樹 (くろだ・ひろき)

【写真提供:吉本興業】

1975年2月10日生まれ。大阪府出身。上宮高から専修大を経て、96年にドラフト2位(逆指名)で広島に入団。2001年に12勝を挙げ、自身初の2桁勝利をマークするなど、広島のエースとして活躍。04年はアテネ五輪に出場し、日本代表の銅メダル獲得に貢献した。05年は15勝で最多勝、06年は防御率1.85の成績を残し、最優秀防御率のタイトルを獲得。07年オフにドジャースへFA移籍し、12年にヤンキースに移籍。15年に古巣の広島に復帰し、16年のリーグ優勝に貢献。16年、NPB通算124勝105敗、MLB通算79勝79敗の成績を残し、現役を引退した。なお、日米通算イニング数3340回3分の2はNPB、MLBの経験者として歴代最高となっている。

前田恵

1963年、兵庫県神戸市生まれ。上智大学在学中の85、86年、川崎球場でグラウンドガールを務める。卒業後、ベースボール・マガジン社で野球誌編集記者。91年シーズン限りで退社し、フリーライターに。野球、サッカーなど各種スポーツのほか、旅行、教育、犬関係も執筆。著書に『母たちのプロ野球』(中央公論新社)、『野球酒場』(ベースボール・マガジン社)ほか。編集協力に野村克也著『野村克也からの手紙』(ベースボール・マガジン社)ほか。豪州プロ野球リーグABLの取材歴は20年を超え、昨季よりABL公認でABL Japan公式サイト(http://abl-japan.com)を運営中。

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