前編「動画広告で結局人は動いたか? モノは売れたのか? 」では、ブランディングの手段として普及する動画広告の市場概況を説明し、パフォーマンスの計測とそれに基づく運用が今後の課題であると述べました。
この課題に挑むのが化粧品メーカーのアテニアです。同社では、スマートフォンに特化したアドネットワーク「LODEO(ロデオ)」を導入し、ターゲットを最適化した上でブランディングを実践しています。また単に認知を獲得するのみならず、その後の購買やリピートまで活用範囲を広げています。
後編ではアテニアより、営業戦略本部通販営業部長の新海喜顕氏と通販営業部広告企画グループの冨山裕美氏を迎え、LODEOの責任者にして本稿の執筆者でもあるサイバーエージェント プロダクトマネジャーの加藤 徹、営業担当の豊田 俊も加わって、取り組みの詳細について話を聞きました。
加藤 新海さん、冨山さんの現在のお仕事内容について簡単に教えてください。
新海 アテニアは、2019年に30周年を迎えるファンケルグループの会社です。「一流ブランドの品質を、1/3価格で提供することに挑戦し続けます」をブランドコンセプトとしており、続けられる価格を実現するために商品開発・製造から販売までを自社で行っています。ターゲットは高価格帯購買層の40代以上の女性ユーザーです。私は、現在は通販営業部の責任者をしており、主に社外へブランド発信を行う広告宣伝と既にWebサイトを利用しているユーザーへコミュニケーション設計を行う2つの領域を管轄しています。
冨山 私は、ECサイトの管理がメインで、部分的に広告の仕事をしています。
加藤 LODEO導入当時、ブランドの課題はどこにあったのでしょうか。
新海 既存の外部施策では、アテニアの認知やブランドイメージが広がっていかないという課題がありました。テレビCMや雑誌露出は定量的な検証もしづらいですし、正直投資体力的にも難しく、どうやったら変化をつけられるのか、悩んでいました。アテニアの場合、高価格帯の購買層がターゲットなのですが、そういう方って百貨店で購入することがまだまだ多くて、じゃあネット内ではどこにいるのだろう、そのユーザーに向けての新しいデジタル施策はないものかと
加藤 確かにアテニアさんはWeb完結型メーカーですから、ある意味デジタルでどれだけのユーザーに認知して、その後どれだけ購買、リピートしてもらうかがポイントですもんね。
新海 はい。そんなときに「LODEO」を知りました。縦型のインパクトのある動画クリエイティブを初めて見せてもらったときは、インパクトがある上にリッチで驚きました。また、狙いたいターゲットと親和性の高いメディアでダイレクトに配信ができることは魅力的だなと。それと、弊社がサイト内のユーザー解析で利用するCXプラットフォームの「KARTE」のデータと連動でき、動画での認知だけではなくその先の購買、リピートと顧客行動を検証できるスキームをご提案いただきましたよね。これは、態度変容を数値化する上で、われわれにとっても一つのきっかけ、実験になるだろうと思いました。
加藤 ありがとうございます。当初は、ブランドリフト数値を配信先のメディア単位の細かい粒度でレポーティングできることをLODEO活用のメリットとして提案させてもらいましたが、そもそも態度変容をさせることが施策の最終的なゴールではないなと思ったのです。もし、KARTEとデータ連携がかなえば、広告の流入からWebサイトの中のKPIまで一気通貫して分析が可能となり、すごく面白いなと思いました。通常の購買行動においては、広告を見てから空間を越えて実店舗での購入に至るプロセスをトレースすることは困難ですが、アテニアさんはWeb完結型メーカーだからこそ、Webサイト内のユーザーの行動変化を数値化できるのではないかと。LODEOとしても、われわれのような認知媒体がどれだけ最終的な購買やリピート獲得へと数値的貢献ができるのか、ユーザーの態度変容を細かく見てみたいと思ってご提案させていただきました。
冨山 広告を見たユーザーのWebサイトでの行動を追いかける例はまだあまりないのですか。
加藤 ユーザーがどこから流入したか検索エンジンなどのパラメータ別で見ていることは多いと思いますが、動画広告一つ一つのクリエイティブとひも付けて一気通貫でWeb内のKPIを可視化して解析するケースは少ないと思います。一般的な計測の状況としては、動画広告とWebサイトは計測する手段自体が分断されているケースも多いと思います。例えばWebサイトの解析ツールはGoogle アナリティクス、広告計測はツールというように、別々のものを使っているお客さまも多いです。ですから、今回のご提案において、動画広告がCVに寄与したかどうかのみを評価するとなると、動画広告の接触数と最終的なCV数という、入り口と出口の数字だけが可視化されるので、それだけだと評価するには必要十分ではないと感じました。
豊田 こちらが今回の取り組みを概要図にしてみたものになります(下図)。LODEOとKARTEのデータをひも付けることで、動画広告を見た後のユーザーのWeb内行動を数値化して可視化できました。動画広告部分はLODEO側、Webサイト内のユーザーデータはKARTEさんのデータを活用させていただきました。この両データをつなげることで、動画を見たユーザーと見てないユーザーがその後サイトに来たときに、各KPIの上昇率がどう変わるのか比較分析できるようになります。
冨山 まさに動画広告を見たユーザーがWebサイト内でどう行動しているのか可視化でき、弊社でも新しい取り組みになりました。でも、データのひも付けは正直大変でしたよね(笑)
豊田 はい(笑)。膨大な量のデータを扱い、一つ一つひも付けていく必要があるので、エンジニアたちが頑張ってくれました。
新海 おかげで、LODEOの動画広告を見たユーザーが態度変容して、Webサイトに来て、購入したという事実だけ捉えるのではなく、Webサイト内でどのような行動が起こっているのか細かく検証することができ、次の仮説が見えていろいろなヒントを得ることができました。
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