「一緒に死のうと思った」高嶋ちさ子を支えてきた“厳しい母”への思い

  • 超満員のコンサートにはクラシックの常識を覆す4つの演出が
  • 母親が高嶋ちさ子へ言い続けた4つの言葉
  • 「母がいなきゃ生きていけない」母親と過ごした最後の2年半

バラエティー番組などでも活躍するヴァイオリニストの高嶋ちさ子さん。

8月15日放送の「直撃!シンソウ坂上」(フジテレビ系)では、成功の裏に隠された亡き母への思いや超満員のクラシックコンサートの裏側に密着。番組MCの坂上忍は、肉好きだという高嶋さん行きつけの焼き肉店へ。そこで、高嶋さんの素顔を直撃した。

クラシックの常識を覆す4つの演出

高嶋さんが年間約100本開催するクラシックの常識を覆すというコンサートに密着。

楽屋に入ると決まったルーティンがあるというが、その中身がとにかく雑。本番で着るドレスを床に落したり、大事な化粧道具も床に置いたり、6億円もするヴァイオリンも人任せにするほど雑な扱い。

普段は雑さが目立つ高嶋さんだが、ちょっと難しいクラシックを少しでも身近に感じてもらうため、0歳からも入場できるバギーコンサートなど、エンターテインメント性溢れるコンサートを開催。

さらに、クラシック界を盛り上げるために、日本を代表するヴァイオリニストの古澤巌さんや葉加瀬太郎さんとタッグを組んだり、女性グループ「12人のヴァイオリニスト」を立ち上げるなど幅広く活動している。

そして、今回は“男組”と呼ばれる4人の男性とタッグ。弦楽四重奏にピアノを加えた構成の「ピアノクインテット」。

メンバーは、東京都交響楽団の副首席チェロ奏者の江口心一さん、世界の小澤征爾さんや久石譲さんとも共演するビオラの生野正樹さん、嵐など多くのアーティストの楽曲に参加するヴァイオリンの今野均さん、数々のCM曲を手がけてきたピアノの伊賀拓郎さんと、一流たちが揃っている。

高嶋さんは「満席、満員御礼、完売」という3つの言葉が好きだと言うが、「最近は、満席になることが多くなって、それはそれですごく心配。こんなのが永遠に続くわけないから。満員の状態をどうキープしていけばいいのか」という悩みもあるという。

そこで客を呼び込むためのための4つの演出を紹介。それはクラシック界の常識を覆すものだった。

まず、一般的なクラシックコンサートで交響曲ともなれば1曲1時間コースは当たり前だが、高嶋さんの場合は「1曲の演奏は5分以内」に収めているという。「5分以内で、みんなが知っている曲を弾くことがテーマ。飽きちゃうとか長く座っていられないとか、集中力が足りないとか、いろいろあるじゃないですか。ウチの子とか音楽聴かない友達とかが楽しめるような作りにしてあるんです」。

2つ目は「初心者に優しいMCトーク」。一般的なクラシックコンサートは、曲や楽章が終わると拍手を受けて次の曲へ移るが、クラシックコンサートでは珍しいMCトークや、楽器などの紹介も行っている。

3つ目は「ゲストボーカルを入れて有名な曲を演奏」。荻野目洋子さんや森高千里さんなどを呼び、コンサートを盛り上げている。「弦楽器は主役にもなるけど、言葉や歌詞がないからサポートという部分で(歌手と)コラボするのに一番良い楽器です」。

そして、4つ目は「笑いに包まれる一芸を披露」。演奏中に全員が立ち上がり楽器を演奏しながら縦一列に並び、まるでTRFの『Choo Choo TRAIN』をダンスしているかのような動きに。「堅苦しい感じが嫌なのと、(男組の)見た目が悪いんだから芸ぐらいしろって言って、ちょっと笑わしたろか、と思って」ということで発案されたという。

こうした破天荒な試みに巻き込まれている超一流のアーティスト・グループ“男組”に高嶋さんのことを聞くと、生野さんが「ただ演奏するだけじゃなくて芸をさせられて…」と言葉を濁す様子。すると今野さんは一歩踏み込んで「パワハラですね」と苦笑。江口さんが「機嫌悪いときに少しでも音程を外したときには『お前もうクビだ!』とか言われたり」と明かすと、今野さんは「完全にブラック企業!」と応じるなど、息の合ったコンビネーションを見せた。

ここで、「実は努力家なのであまり言うと嫌がりますが、真面目です。僕のイメージでは」と今野さんがフォローすると、江口さんも「あれだけヴァイオリンが弾けて、しゃべれる人は他にいないと思うのですごいと思います」と絶賛した。

坂上が「真面目で努力家だって」と高嶋さんに振ると「いやいや。けど、生まれつきすごい才能があるわけじゃないので、努力しないとどんどんどんどん落ちていっちゃうからやっていないと不安なんです」と照れ笑いを浮かべた。

母親が高嶋ちさ子へ言い続けた4つの言葉

今やコンサートを連日満員にする高嶋さんだが、今日に至るまで決して順風満帆だったわけではない。

1968年に東京・世田谷で3人きょうだいの末っ子として誕生した高嶋さん。

父の弘之さんは、今年6月にこの世を去った俳優・高島忠夫さんの実の弟で、かつてレコード会社に勤務し、日本でまだ無名だったビートルズを売り出し、一躍有名にした人物。母の薫子さんはピアニストという音楽一家に生まれた。

母の影響からか4歳でピアノを始めたが、母親から「あなたは才能がない」と言われ、2ヵ月でやめさせられたという。ハッキリと物を言う性格は母親似だと高嶋さんから聞いた坂上は、思わず苦笑した。

あっさりピアノをやめさせられたが、5歳の時、幼稚園で女の子がヴァイオリンを弾いている姿に一目惚れ。母親に「やりたい」とせがんだという高嶋さんだったが、「『ピアノもできない子は無理だ』って1年間やらせてくれなくて。粘った結果、1年生になったときにやらせてくれた」と話した。

1年かけて母親を説得し、ようやく習い始めた高嶋さんだが、楽しいはずのヴァイオリンが母親によって地獄になってしまう。全てのレッスンは母親が立ち会い、先生が教えたことやできなかった箇所を細々とメモ。そして、帰りには「何であそこで間違えたの!バカじゃないの!」と指摘を受けていたという。

厳しく叱られる中、我慢し続けた高嶋さんだが母親から思わぬプレゼントが。
「小学5年生の時に、母がへそくりで180万円の楽器を買ってくれたんです」と告白。驚く坂上に高嶋さんは「きちっと弾こうと思ったら当時はそれぐらいの楽器が必要。けど、180万円の楽器は売るときも180万円では売れるので」と、ヴァイオリン界の事情を明かした。

そんな教育熱心な母親は、「『いい人』だと言われたら他に褒めるところがないことだと思え」、「孝行したい時に親はなし…今でしょ!」、「稼ぐやつには貧乏なし」、「人を見たら泥棒と思え」の4つを常に高嶋さんに言い続けたという。

母親の厳しい教育も愛情の裏返し

母親がここまで厳しく指導し、高嶋さんに期待を掛けた理由は、ダウン症の姉・未知子さんの存在があったからだという。

「私と兄を産んだのは将来、母と父が亡くなった後に、みっちゃん(姉)の面倒を見る人を産むため」と物心ついたときから母親に言われていたという。

「『みっちゃんがいなかったら産んでないから』と。
『みっちゃんは、太郎(兄)とあなたがちゃんと面倒を見なきゃいけないんだから、ちゃんと自立して、自活していけるようにしておかないといけない。将来何になるか、ちゃんと稼げるようにしておきなさい』」と言われ、ヴァイオリニストという道を選んだ理由についても母親から「『お嫁に行った後も、みっちゃんと一緒にお嫁に行くことになるんだから、肩身が狭くならないように、お金さえ稼げれば肩見狭くならないから』」と言われていたためだったと明かした。言いにくいこともハッキリと言う高嶋さんの母親。だが、高嶋さんは「めちゃめちゃ愛があるから、それは分かるから」と語った。

スタジオで薬丸裕英さんは「お母さんは、やっぱり強い心を持って人生を渡ってほしいなと思って、強めの言葉を彼女にぶつけていたんだろうと思うけど、でもそれはたぶん『この子だったら大丈夫』というのがお母さんは分かっていたんだよね」と話した。

その後、音楽の名門・桐朋学園の高校、大学へと進学。さらに、卒業後は世界的な名門アメリカのイェール大学の音楽学部大学院に入学した。

あまり英語もできず環境になじめずにいた高嶋さんの寂しさを救ってくれたのも母親だった。「毎日、手紙が来ました。面白い手紙だったの。やっぱり、私のこと溺愛していたんですよね。だから、私を笑わせようとか、家族のこととか、そういうのを全部書いて送ってきていた」と懐かしそうに振り返った。

母親からの手紙の支えもあり、大学院を卒業後、マイアミのオーケストラに入団。しかし、26歳の時、レコード会社勤務の父親が勝手に「チョコレート・ファッション」という音楽デュオを結成。アイドルユニットとしてデビューした高嶋さん。歌を歌うというジャンルに挑戦するも全く売れずにすぐ解散。

その後、一人で活動を続けるもうまくいかず、少しでも収入を得ようとみかん箱に乗って路上で演奏することもあったというが、誰も聴いてくれる人はいなかったという。

「その時、母から毎月借金して。その頃から借金帳を母が作り始めて。26歳にもなってお金を1円も稼がないから。兄は普通にチャラチャラ大学生やった後に、バブルの頃だから簡単に就職して、普通にお金稼いでいた。だから、その頃は超ツラくて。(兄から)『お前、どんだけヴァイオリンやってきたか知らないけど、1円も稼げないんだったら人間のクズ』とか言われて」と話す高嶋さんに、坂上も「ひどい…もうすごいね」と驚きを隠せないでいた。しかし、「ひどい?それくらいのこと毎日言われていたから別に…」とけろっとしていた。

運命を変えたのは高田純次

人気もない収入もない暗黒期を過ごしていたが、30歳を過ぎた頃、高田純次さんと出会ったことが高嶋さんの運命を変えた。

高嶋さんの曲が高田さんの番組のオープニングに使われたことがきっかけで「『番組に1回出ませんか?』と言ってもらえて。 そしたら、高田さんに『キミ、面白いね。ウチの事務所に来ないか』って。高田さんのところに入ってから、『踊る!さんま御殿!!』とか出させてもらって。だから、高田さんがいなかったら今の私はいないんですよ」と明かした。

その後は、何でもハッキリ言う母譲りのトークがウケて、一躍テレビの人気者に。知名度が上がると、 コンサートでもお客さんが集まるようになっていった。

すると坂上は「ヴァイオリンというより、バラエティーから火が付いたようなところがあるから、自分の中で『ん?』みたいなのはなかったんですか?」と問うと、「もちろん、あります。汚い手を使って、客席を満員にしていると思われているだろうと思いますから。だから、私が守っているのは、既存のクラシックファンは一人も奪わないようにしようと。そこは聖域。だから、私は新規開拓。コンサートは常に年間80、90回用意して、日本中どこにいる人も行けるような状況にしておこうと思っている」と話した。

そして今や、コンサートを超満員にするほどになった高嶋さんだが、中でも代表的なのが、『めざましクラシックス』。22年続く大人気のコンサートで、母親や姉も会場によく足を運び、高嶋さんの晴れ姿を見に来たという。

「母がいなきゃ生きていけない」

まさに、母親が望んだ“自分で稼げる女性”になったが、2015年に母親は間質性肺炎を患ってしまう。医師からは「最悪の場合、2ヵ月もたないかもしれません」と告げられた。

「病気が分かった時は、一緒に死のうと思った。母がいなきゃ生きていけないから私は。だけど、最後は“死ぬ死ぬ詐欺”だねって言ったくらい、2年もってくれて。その間にいろいろな話も、もともといろいろ話していましたけど、心の準備もできたし、世の中にはどうしようもないことってあるんだなと思った」

当時、仕事が多忙を極めていたが、自宅で闘病をする母親をできる限り見舞い、手作りの料理を届け、母親の話し相手になっていた。

そして発病から2年半が経った、2017年8月29日、母親はこの世を去った。母親の死をすぐには公表せず、高嶋さんが初めてブログで明かしたのは4ヵ月後のことだった。

「亡くなった時も、みんなやるだけのことをやったから、明るかったです、葬式も。母は、ウチの子どもたちを溺愛していたので、子どもの成長を見せられた。ただ、ウチの長男が反抗期になった時、母は『あなた(ちさ子)のことをクソババアって言うのを見たかった』って言っていました。自分がさんざん言われてきたから、『このカワイイ孫に、(ちさ子が)クソババアって言われているのを見たい』って」という話を聞いた坂上は、「やっぱり、この家ちょっと狂ってるな…」とこぼした。

(「直撃!シンソウ坂上」毎週木曜 夜9:00~9:54)

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